理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

1 STAP細胞の件を、特許の視点からみると別の構図が見えてくる―再現実験と特許出願の精緻化を急ぐ必要

【2014年3月27日投稿】

 STAP細胞の件は、特許の視点からみると、また別の構図が見えてくるような気がしますので、専門家ではありませんが、知財に関心を持つ者の一人として書いてみたいと思います。
 
 STAP細胞の小保方さんの件は、ほとんどバッシングの嵐となり、週刊誌に至っては、先週来、個人的なスキャンダル的記事を満載しています。 
 しかし、STAP細胞の件の「本筋」は、あくまでその再現性の可否にあり、研究倫理上の問題は別途厳しく対処しなくてはいけませんが、もし再現できるのであれば、画期的な大研究成果なのですから、現時点では、再現実験を研究チーム自らと第三者機関との双方で急ぐことが喫緊課題だと思います。論文撤回の可能性大ということだと、コストを掛けて再現実験をする意味がなくなりますから、うやむやになりかねません。
 マスコミは、もうこの点についても関心を失っているようで、「再現性について検証をすべきだ」とは一応は書いてはいるものの、これだけ論文にコピペ、流用等杜撰なものであった以上、再現などできるわけがない、と思いこんでいる風が見えます。佐村河内氏やかつての韓国の幹細胞捏造研究と同次元で見ているようでもあります。
 
 今日(326日)の記事で、小保方氏から「STAP細胞」として受け取って増殖させた若山・山梨大教授が、若山氏が渡したマウス細胞由来のものだったかを第三者機関で調べたところ、そうではなかったという報道がなされていました。
以前から、別の幹細胞混入か勘違いの可能性も取り沙汰されていますし、この点は、「本筋」に関わる話なので、軽視することはできないとは思います。
 
●しかし、それでもまだまだ速断するには早計だと思います。マスコミ報道では、本件研究に関する特許のことに触れているものがほとんどありませんが(特許申請をしていたことがわかったというベタ記事はありますが)、ブログ等では、その点に触れているものがあります。それに触発されて少し調べてみると、マスコミ報道ではわからない別の構図の可能性もあるように感じられてきます。
 
 前回の本件に関するブログ記事(http://blogs.yahoo.co.jp/teabreakt/69152028.html)の末尾で、「特許申請はどうなっているのだろう?」という疑問を書きましたが、この新聞のベタ記事に触発されてネットで検索してみると、次のブログ記事にぶつかりました。
 
 同じ週刊誌でも、週刊ポストは、「本筋」の点からヒントになる記事を載せていました。
 「特許申請の焦り」「特許申請によって学術論文を急がされた」との可能性指摘は、きわめて興味深いものがあります。
 
●ともかく、やはり特許申請はしていたということがわかりました。それも2年前の2012424日での米国特許庁への出願をもとにして、国際特許出願がされているそうです。ハーバード大のバカンティ教授らが基本構想を作ったことから、米国からの出願となったのでしょう。
 出願者は、米ハーバード大学のブリガム・アンド・ウイメンズ病院、東京女子医大理研の3者で、発明者が日米の研究者7名の連名になっています。
 
●さて、国際特許出願の制度を調べると、
上記ブログにあるように、最初の米国内出願から最大で26カ月(通常は18カ月)以内に、各国で国内移行手続きである審査請求等をしなければ、各国での出願は取り下げられるということのようです。
そうすると、もう延長手続きはしているとして、ブログ指摘の通り、ぎりぎり今年の1024日までに各国で審査請求等の国内手続き移行をしなければならないということになります。
 
●他方、上記ブログによると、下記の通り先行出願があるそうで、小保方氏ら出願の特許に関する先行技術調査で、その旨が添付されているそうです。
 
「国際特許出願をすると国際調査機関が先行技術を調査してサーチレポートを発行する。上記の公開公報の最後にはそのサーチレポートが添付されている。サーチレポートによれば、小保方博士の国際特許出願の請求項1.(注:「細胞をストレスにさらすことを備える多能性細胞生成方法」という包括的な請求項)は、別の日本人女性の先行技術により新規性がないとされている。その日本人女性とは、東北大学の出澤真里教授である。彼女もまた、「Muse細胞」という多能性幹細胞の発見者として有名である。」
 
 それで、その「Muse細胞」というのは、次のようなものである由。
 
「体の中に多能性幹細胞が存在し、ストレスを受けると活性化すると想定。人間の皮膚の線維芽細胞や骨髄の間葉系細胞を酵素で処理しストレスをかけると、ES細胞に似た細胞の塊ができ、これをMuse細胞とした。」
「増殖力は高くないが、「そもそも生体内にある細胞で、遺伝子導入など特別な操作を必要とせず、腫瘍化の危険性は低い」と安全面の利点を強調。胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)に取って代わるものではないが、再生医療に利用できる。」
 
 この発表が、2010年4月20日付けの「米科学アカデミー紀要(電子版)」だそうですが、遺伝子注入によらずに万能性が現れたことが確認された事例があるわけであり、小保方氏が「ネイチャー」に投稿した際に、レフリーから「過去何百年の細胞生物学の歴史を愚弄するものだ」と評されてリジェクトされたという、そのレフリーもお粗末な気がしてきます(「ネイチャー」へのSTAP論文の最初の投稿は、この紀要発表後です)。
 
●さて、STAP細胞に関する2年前の特許出願の内容をみると、(専門的なことは全くわかりませんが、機械翻訳で眺めてみると)「特許請求の範囲」の部分で、上記記事に言及されている「細胞をストレスにさらすことを備える多能性細胞生成方法」という包括的な請求項を第一請求項として、以下、そのストレスの種類、方法、組み合わせ等によって更に細分化された請求項が、実に74個(!)も並んでいます。これらがそれぞれ特許になる可能性が審査されることになります。上記のブログにあるように、最も広い請求項の第一は先行出願、先行発明があるという調査書があるということで、特許にはならないかもしれませんが、逆にいうと、他の請求項に先行出願等がないのであれば、特許になる可能性があるということになります。
 
 特許出願する以上は、基本要件として、その明細書によって実施可能性が担保されていなければなりません。記載要件、実施可能性要件、最良実施形態要件という3つが世界共通の要件で、記載要件はきちんと必要な項目を書けという当たり前のことですが、実施可能性要件については、次のようなものになります。

実施可能要件は、明細書の記載に、専門家(当業者)がそれを読んで発明を実施することができる程度に十分詳細なものであることを要求する要件である。物の発明については、明細書の記載に基づいてその物を製造でき使用できること、方法の発明については、明細書の記載に基づいて専門家がその方法を実行できること、が必要である。
例えば、日本の特許法は、明細書の発明の詳細な説明の記載は、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなくてはならないとしている(特許法36条第4項)。また、特許協力条約は、「明細書には、当該技術分野の専門家が実施することができる程度に明確かつ十分に、発明を開示する」としている(第6条)。この要件は、発明の内容を実質的に秘密にしているにもかかわらず特許が与えられるという公開代償説に反する事態を防ぐためにある。」
   米国特許法でも同様の要求がある。
 
 もし実施可能性がないのであれば、それは「未完成発明」として、明細書記載不備との理由での拒絶理由通知がなされることになるはずです。