理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

日本の特許庁での分割出願の動向(2019年12月初め現在)

 

Hidetaroさんに教えていただいた日本の特許庁での一連の動きについては、(仕事が多忙で落ち着いて読む余裕がなかったので)年末年始に読んでみたいと思います。

 

■2018年6月になされた分割出願の審査情報を閲覧するには、以下の画面から次のように辿ります。

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2015-516812/4D92FD4AEBCC7C813319CF58F47322014AE0C30B0CE7C9F998A6F49668E6F57A/11/ja 

 のサイトの右欄の、「経過情報」をクリックします。

 その表のタブの「分割出願情報」をクリックします。

 そうすると、「第一世代」の分割出願として、「特許出願 2018-117481」が記載されていくので、それをクリックします。

 そこに、一連の審査記録が表示されます。

 

■それをざっとみると、主な変更は次のようなものかと思います。

 

1 出願人の変更

日本の特許庁への出願人は、米国の場合と異なって、ハーバード大ブリガム&ウィメンズ病院でしたが、米国と同様、V-CELL社に変更になっています。

 

2 日本での代理人の変更

 代理人が、高島特許法律事務所から山本特許法律事務所に変更になっています。11月28日付で山本事務所の代理人が選任され、12月2日付で高島事務所の代理人が辞任しています。

 11月28日の請求項の補正、意見書等は、すべて、山本事務所の代理人によって行われています。

 

3 請求項の変更

 19年5月28日付の拒絶理由通知を受けて、請求項を、

分割出願後当初の、

「Oct4を発現する細胞を含有する細胞塊を生成する方法」から、

「細胞集団中の多能性の幹細胞マーカーを発現する細胞の数を増やす工程を含む、非胚性の正常な分化した体細胞の集団において多能性細胞の数を増やす方法」

 に補正(修正)しています。

 

 STAP細胞出願の一番当初は、「多能性細胞を生成する方法」でしたが、それが「OCT4発現細胞含有の細胞塊の生成方法」になり、今回、「細胞集団の中の多能性マーカー発現細胞増加を含む多能性細胞を増やす方法」になりました。

 

 大きな拒絶理由の一つが、「もともとの出願の発明の課題が、細胞を脱分化させて多能性細胞を生成することだったはずだが、OCT4発現だけでは課題解決にならない」というものでしたので、それに対応して、再び、多能性細胞について、「細胞集団の中で増やす方法」としたようです。

 「増やす」という意味が分かりにくいのですが、11月28日付の「意見書」の中で、次のように書かれています。

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「ほとんどの組織は、少数の多能性細胞を含みます。本願発明は、元々少数含まれている多能性細胞の数を増やす方法に係る発明です。

 当業者は、本願発明の解決課題(すなわち、細胞をストレスに供することにより細胞を脱分化させ、多能性細胞を生成すること)が、補正後の本願発明の方法によって解決可能であることを容易に認識できますし、本願明細書の開示内容は、当業者が過度の試行錯誤を強いられることなく補正後の本願発明を容易に実施できる程度に十分に理解できるものです。

  また、補正後の本願発明の方法は、多数の第三者機関によって検証されていることから、実施可能であることは明確です。出願人はここに、本願において開示される方法の確実性を証明した、本願出願後の3つの論文を甲第1~3号証として提出いたします。甲第1~3号証は、審査官殿のご指摘とは異なり、外来遺伝子などを導入することなく、ストレス曝露のみによって細胞が脱分化できることを明確に実証しています。」

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 「元々少数含まれている多能性細胞の数を増やす方法」と書かれているのを読むと、嘗てのバカンティ研究室の「芽胞様細胞(spore-like cells)」や東北大のMuse細胞のコンセプトを連想しますが、その後には、「脱分化」と書いてあります。

 

拒絶理由の中に、以下の指摘があります。

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そうすると、両Nature論文に掲載された実験データを取得した一連の研究活動と同一の研究活動に基づく本願明細書記載の実験データは、本願明細書に記載されたとおりの手法により得られたものであるか否かが不明であり、その信憑性について疑義があるというほかない。

一方で、本願の発明の詳細な説明の実施例と同内容を開示していた両Nature論文(参考文献1、2)の研究内容自体、すなわち、外来遺伝子の導入等なしに低pH等のストレス曝露のみによって細胞を脱分化させ得るか否かについて、参考文献5には、複数の研究グループによって、低pH曝露等による多能性細胞生成(STAP現象)についての再現実験が行われた結果(本願発明者の一人であるVacanti氏の研究室で行われたと認められるものも含む)、両Nature論文に記載されるようなSTAP現象を再現することはできなかった、と結論付けられている(参考文献5の第E6頁左欄第1,2段落, 第E8頁左欄第2段落)。その上、理化学研究所における解析の結果において、両Nature論文につき、用いられた全てのSTAP細胞関連材料はES細胞に由来するものであったことが判明し、細胞ストレスによって多能性細胞へと再プログラム化するという論文の証拠には異議がある、との結論となっ  たものと認められる(参考文献6の第E5頁右欄第2段落)。そして、両Nature論文の共著者の一人(本願発明者ではない)による理化学研究所の検証実験チームの報告においても、STAP現象の実際の科学的重要性を調査すべく両Nature論文や関連情報に示された方法に基づいて再現実験を行ったものの、両論文に記載されたようなSTAP現象は、再現不可能(not reproducible)であると結論付けた、とされている(参考文献7のSummary)。

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 これに対する反論のひとつとして、下記の****以下のように述べています。

 専門的なことはよくわかりませんが、反駁の趣旨は、以下のようなことだと理解しました。違っていたら、ご指摘ください。

 

「審査官は、「ネイチャー論文が取り下げられたし、桂調査委やそれを踏まえた理研グループの論文でES細胞混入だと結論とされているのだから、その取り下げ論文に依拠した主張をしても駄目だ」というが、取り下げ理由に含まれない部分で有効なデータが多々ある。透過電子顕微法や細胞ライブイメージングなど、小保方氏らが操作しようがないもので、「公正な参考研究所で行なわれた」客観的な試験データである。

 それらのデータをみれば、ES細胞では説明できない事象が多々ある。それらのデータによって、ストレスによる多能性細胞の増加という現象を裏付けできる。

 補正後の本願発明の方法は、多数の第三者機関によって検証されていることから、実施可能である。」

 

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【意見書抜粋】

 審査官殿は、参考文献1および2の両Nature論文が共に2014年7月3日に取り下げられた点についてご指摘です。これら両Nature論文が取下げられた理由は、当業者が本願発明を追試するのに必要な情報である「ATP」の必要性について開示していなかったからです。

 ATPの重要性については、本願の実施例1において明確に示され、表3によって実証されています。

 多能性の意味をどのように規定するかは様々ですが、データははっきりと、細胞にストレスを加えて多能性へと方向付けることができることを実証しています。例えば、本願の図1A~1Dをご参照いただきますと、図1A~1Dは、CD45陽性体細胞からのOct4発現細胞の生成を示しており、特に、図1Aは、ストレス処理細胞のOct4-GFP発現を示していますが、ストレス処理細胞がOct4-GFPを発現した一方、非処理コントロールはそうではありませんでした。また、図1Bは、ストレス処理細胞および非ストレス処理コントロール集団分析を示していますが、GFP発現細胞集団は5日目でストレス処理群においてのみ観察されました。図1Cは、ストレス処理の前および後(7日目)のCD45陽性細胞の細胞サイズ分析を示しており、図1Dは、ストレス処理後のCD45陽性細胞の経時変化を示しています。これらの図は、ストレス処理した細胞において、最初はCD45が強発現していたものが、OCT4が出現し、経時的に強くなるとともに、CD45発現が経時的に次第に弱まる様子を示す、連続的な画像を示しています。胚性幹細胞はCD45を発現しませんので、この現象が胚性幹細胞の混入に拠るものであったと主張することはできません。CD45+細胞、STAP細胞および胚性幹細胞の透過電子顕微法は、STAP細胞の像が、胚性幹細胞とは異なるユニークな核クロマチン密度を有しており、それが、混入した胚性幹細胞ではあり得ないことを示しています。

 Nature論文(参考文献1)は、STAP細胞が多能性マーカーを発現することを示しています。特に、GFP陽性STAP細胞が、様々な幹細胞マーカーを発現し、その発現が3日目~7日目にかけて増える様子を示した、図2bをご参照ください。個々の量が、胚性幹細胞について示されるものとは異なるので、その発現が、胚性幹細胞の混入に起因するものではなかったことを示しています。また、図2cは、成体CD45+細胞と比較した、STAPおよび胚性幹細胞のOCT4プロモーターの後成的な変化を示しています。

この試験は、公正な参考研究所で行なわれたものです。STAP細胞および胚性幹細胞は、対照と比較して顕著な脱メチル化を示しています。STAP細胞は、胚性幹細胞とは異なる脱メチル化パターンを有しており、胚性幹細胞の混入の可能性を排除しています。図2fは、アルカリホスファターゼ染色を用いた異なる解離パターンを示しており、これもまた、胚性幹細胞の混入の可能性を排除しています。図3は、低pH処理による様々な細胞からのSTAP細胞変換を示しています。図3aおよびbは、STAP細胞および胚性幹細胞の両方からの胚性幹細胞マーカーの相対的発現を示しています。両方の細胞型がこれらのマーカーを発現していますが、その相対的な発現パターンは明確に異なり、このことは、STAP細胞の結果が、胚性幹細胞の混入に起因するものではなかったことを証明しています。図5aは、STAP細胞と胚性幹細胞の間の明確な形態の違い、ならびに、ki67およびBRDUの量の間の顕著な違いを示しており、STAP細胞が胚性幹細胞と異なるものであることを示し、胚性幹細胞の混入の可能性を排除しています。図6は、体細胞組織に由来するストレス処理した細胞から誘導された、体細胞組織のSTAP細胞への変換を示しています。図5fは、STAP細胞がX染色体不活化の形跡を示す一方で、胚性幹細胞がX染色体不活化の形跡を示さない様子を示しており、STAP細胞を胚性幹細胞から区別しています。また、図9は、OCT4産生に関して様々な組織に対する様々なストレスの影響を示しています(成体組織が胚性幹細胞を含まないことから、根拠が確実であると言えます)。さらに、図1cはFACS分析を用い、図2bの広範囲にわたるデータは、ストレス処理したCD45+細胞が次第にCD45発現を失う一方で、OCT4の発現が増していくことを示すために、細胞ライブイメージングを用いています。混入したとされる胚性幹細胞はCD45を発現しませんし、死細胞がOCT4産生を次第に増加させることもありません。

 Nature論文(参考文献2)は以下に示すような広範囲にわたるデータを提供しています:図3bおよびcは、胚性幹細胞および成熟CD45+細胞と比較した、STAP細胞のトランスクリプトーム分析のヒートマップを示しています。各細胞型がユニークな発現パターンを有しており、STAP細胞がユニークな細胞であり、その由来となった成体CD45+細胞とも胚性幹細胞とも異なることを示しています。図4もまた、セグメントbおよびcにおけるトランスクリプトーム分析を示し、そのヒートマップは、成熟CD45+細胞、CD45+細胞および胚性幹細胞をストレス処理することによって誘導されたSTAP細胞についての異なる発現値を示しています。図6dは、全般的発現プロフィールの階層的クラスタリングからの1クラスターを示し、STAP細胞が、その由来となったCD45+細胞とも胚性幹細胞とも異なり、かつ、別の細胞であることを明確に示しています。

 上記Nature論文の方法が機能しない(STAP現象が再現不可能)と結論付けた論文は、OCT4+GFP蛍光が死細胞の自発蛍光であったと記載しています。このように、本願明細書および参考文献1~2は、ストレス誘導因子が、高い割合の成体CD45+細胞を死に追いやったことを示しています。これらは自発蛍光を有したはずです。ストレス処理したCD45+細胞の時系列動画(対応する論文

https://www.researchgate.net/profile/Masayuki_Yamato/publication/259984904_Stimulustriggered_fate_conversion_of_somatic_cells_into_pluripotency/links/544edcd90cf2bca5ce90beeb/Stimulus-triggered-fate-conversion-of-somatic-cells-into-pluripotency.pdf)のvideo 1)は、堅牢な拡張型のプロセスであり、ストレス処理したCD45+細胞が非常に生き生きしており、次第に緑になる(OCT4発現が徐々に増える)様を示しています。ここで観察された細胞はあらゆる時点においてOCT4を発現し、初めから緑になっていますので、混入した胚性幹細胞ではあり得ません。なお、参考文献1と同様、図1cではFACS分析を用い、図2の広範囲にわたるデータは、ストレス処理したCD45+細胞が次第にCD45発現を失う一方で、OCT4の発現が増していくことを示すために、細胞ライブイメージングを用いています。混入したとされる胚性幹細胞はCD45を発現しませんし、死細胞がOCT4産生を次第に増加させることもありません。

 上記のとおり、本願明細書のデータは、ATPの重要性を示しており、補正後の本願発明の方法をサポートしています。ATP処理を含めた本願発明の方法は、参考文献1~2の方法に基づくものであって、その後の論文において反駁されておらず、また、実施可能であることを裏付ける証拠も存在しています。

 例えば、上記甲第3号証(Batieら)は、多能性を取り扱った文献ではなく、ATP処理も含めていませんが、補正後の本願発明を裏付けています。

 (以下略)」

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 これまで、拒絶理由に対して、「Oct4発現細胞の作製方法」というところに請求項を変えてきたところを、本来の「多能性細胞の作製方法(増加方法)」というところに戻した上で、操作できない公正客観的なデータ部分を援用して(笹井氏が2014年4月の記者会見で主張していたようなES細胞、死細胞では説明できない点を含めて反駁しつつ)、主張するということのようです。

 http://www3.riken.jp/stap/j/s3document1.pdf

 

 ただ、実施可能であることを裏付ける証拠として挙げている甲3号証以下の実験論文?等が、実際どういうものなのかは、よくわかりませんが・・・・。