理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

日本の特許庁によるSTAP特許出願拒絶査定書全文です

 den*****さん に教えていただいた日本の特許庁の拒絶査定書全文を掲載しておきます。
 アンダーライン部分は、査定書にある通りです。

 出願したものは、多能性細胞生成方法のはずが、Oct4発現細胞塊の生成では、その「技術課題
を解決したことにならないとの判断による「サポート要件」の問題と、当業者に実施可能性が十
でないという判断による「実施可能性要件」の問題に絞られています。
 まだ、ざっと読んだだけですが、専門家でなくても、論理は追えそです。
 
 出願内容が、多能性細胞の作製が技術課題だったはずのところを、Oct4発現細胞の作製だけでは解決にならないということ、実施例の方法はネイチャー論文に書かれているのと同じだが、それは撤回されていること、丹羽氏もそれに著者として名を連ねていること、STAP細胞関連材料はES細胞だとされたこと、等々が指摘されています。
 もう少し読んでみたいと思います。
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 拒絶査定
 
 
 特許出願の番号      特願2015-509109
 起案日          平成30年 2月 8日
 特許庁審査官       千葉 直紀        3434 4B00
 発明の名称        多能性細胞のデノボ生成
 特許出願人        ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタ
              ル インコーポレイテッド
 代理人          高島 一(外 6名)
 
 
 この出願については、平成29年2月23日付け起案の拒絶理由通知書に記載
した理由3、4によって、拒絶をすべきものです。
 なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足り
る根拠が見いだせません。
 
備考
 
●理由3、4(特許法第36条第4項第1号、第36条第6項第1号)について
 
・請求項 1-21
 
 本願出願人は、平成29年9月7日付けの手続補正書において、請求項1を次
のように補正している。
 
「細胞を、低pHストレスに供する工程を含む、Oct4を発現する細胞を含有
する細胞塊を生成する方法であって、該低pHが、5.4~5.8のpHであり
、且つ、pHの調整がATPを用いて行われることを特徴とする、方法。」
 
特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について>
 平成29年2月23日付け起案の拒絶理由通知書の理由4<サポート要件1>
に記載したとおり、請求項1に係る発明について、発明の詳細な説明の記載から
把握できる発明の課題は、細胞をストレスに供することによって細胞を脱分化さ
せて多能性細胞を生成することであると認められる([0002]-[0018
])。一方、補正後の請求項1には、生成するものについて、Oct4を発現す
る細胞を含有する細胞塊としか規定されていない。すなわち、補正後の請求項1
に係る発明は、あらゆる発現レベルでOct4を発現する細胞を含有する細胞塊
を生成する方法を包含するものである。
 
                                                                     P.2
 ここで、細胞の分化・脱分化誘導においては、Oct4遺伝子は多能性マーカ
ーの1つではあるものの、当該遺伝子の発現のみをもって多能性細胞が生成した
ということができないことが本願出願時の技術常識である。さらに、その発現レ
ベルについても、例えば、ES細胞等と比較して生物学的に意義のあるレベルで
発現することが請求項に規定されているわけでもなく、その発現レベルにかかわ
らず単にOct4を発現するという性質を有する細胞を含有する細胞塊を生成し
たというだけでは、細胞を脱分化させて多能性細胞を生成したこと、すなわち、
本願発明の課題を解決したことにならないことは、出願時の技術常識に照らし、
明らかである。そうすると、発明の詳細な説明には、Oct4を発現する細胞を
含有する細胞塊であれば、本願の上記課題を解決できると当業者に認識できる程
度に記載されているとはいえない。
 請求項2-21に係る発明についても同様である。
 
特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について>
 特許法第36条第4項第1号の規定は、その発明の属する技術分野において研
究開発のための通常の技術的手段を用い、通常の創作能力を発揮できる者が、明
細書及び図面に記載した事項と出願時の技術常識とに基づき、請求項に係る発明
を実施することができる程度に、発明の詳細な説明を記載しなければならない旨
を意味する。
 ここで、細胞の分化・脱分化誘導に関する技術分野においては、細胞を脱分化
させて多能性細胞を生成するには、外来遺伝子導入等が必須と認識されており、
そのような処置なしには多能性細胞への脱分化を誘導し得ないことが、本願出願
時における当業者の技術常識であったと認められる(例えば参考文献8の第5
右欄下から2段落目参照)。そして、平成29年2月23日付け起案の拒絶理由
通知書の理由3<実施可能要件1-1>に記載したとおり、本願の発明の詳細な
説明の実施例において示された内容はNature論文と同内容のものと認められると
ころ、当該論文取り下げ及び再現実験の結果という事情に鑑みれば、現時点にお
いては、当該論文において確認された現象は、その信憑性については疑義があり
、また、再現不可能なものというほかない。つまりこのことは、Nature論文と同
内容の実施例を具体的根拠とする、本願の発明の詳細な説明の内容についても妥
当するものであり、実施例における記述自体にかかわらず、外来遺伝子の導入等
なしに細胞を脱分化させ多能性細胞を生成することや、Oct4を発現する細胞
を含有する細胞塊を生成するという発明の技術内容が、発明の詳細な説明におい
て明確かつ十分に記載されているとはいえないことを意味する。
 したがって、本願の発明の詳細な説明には、上記補正後の請求項1に係る発明
について、外来遺伝子の導入をすることなく多能性幹細胞への脱分化を誘導し得
ないという技術常識にもかかわらず、細胞をストレスに供するだけで脱分化させ
多能性細胞を生成すること、あるいは、多能性を示す可能性がある細胞としてO
ct4を発現する細胞を含有する細胞塊を生成することが実施可能である、とい
  
                                                                    P.3
える程度に明確かつ十分には記載されていない。
 請求項2-21に係る発明についても同様である。
 
 この点について、本願出願人は、平成29年9月7日付けの意見書において、
以下の2点について主張している。
 
「上述の通り、新請求項1に係る発明は、「細胞を低pHストレスに供する工程
を含む、Oct4を発現する細胞を含有する細胞塊を生成する方法であって、該
低pHが、5.4~5.8のpHであり、且つ、pHの調整がATPを用いて行
われることを特徴とする、方法」です。このストレス条件(即ち、ATPにより
調整された5.4~5.8の低pHストレス)については、本願の発明の詳細な
説明において、Oct4遺伝子を発現する細胞を含有する細胞塊を生成したこと
が具体的に示されています(本明細書の段落[0155]~[0164]、[0
190]~[0196]等をご参照ください)。従いまして、本願の発明の詳細
な説明は、新請求項1に係る発明を、当業者が実施可能であるといえる程度に明
確且つ十分に記載しており、また、新請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明
に記載されたものです。」(本願出願人の主張1)
 
「参考文献の1つとして審査官殿より引用された「11.Hitoshi Niwa, et al.
Scientific Report,2016年6月,6:28003p.1-9doi:10.1038/srep28
003」には、新請求項1に係る発明が、当業者により再現できた事実が明確に示
されています(当該文献のp2、下から8行目~2行目;p3、上から16行目
~23行目及び上から27行目~31行目;p5、上から1行目~4行目及び下
から8行目~5行目、図1等をご参照ください)。具体的には、当該参考文献中
のこれらの箇所においては、ATPを用いての低pHストレスを細胞に与えるこ
とによって、細胞塊が生成し、且つ当該細胞塊にはOct4遺伝子が発現してい
る細胞が含まれていたことが端的に記載されています。従いまして、新請求項1
に係る発明は、本願明細書の実施例においてだけでなく、当該技術分野において
一流誌の1つと認められている学術雑誌に掲載された論文によっても実施可能で
あることが実証された発明にほかなりません。
 上記のように、ATPにより調整された5.4~5.8の低pHストレスに細
胞を供することにより、Oct4遺伝子を発現する細胞を含有する細胞塊が生成
されることは、他の当業者による追試によって、その再現性が確認されているわ
けですから、少なくとも、その点について記載された本願実施例の内容は、信憑
性に疑義はなく、当業者であれば、発明の詳細な説明の記載に基づいて、再現可
能なものであることは明らかであります。」(本願出願人の主張2)
 
 まず、本願出願人の主張1について検討する。
 本願明細書[0155]~[0164]、[0190]~[0196]には、
  
                                                                    P.4
Oct4-GFP(GOF)マウスから入手した脾臓から回収したCD45陽性
細胞を、低pHへ曝露させ、GFP発現細胞をFACSを使用して同定し、分別
し、回収して、Oct4の遺伝子発現をRT-PCRによって確認したところ、
細胞をOct4を発現するように変化させることができたことが記載されている
。さらに、脳、皮膚、筋肉、脂肪、骨髄、肺及び肝臓をOct4-GFP(GO
F)マウスから回収し、低pHへ曝露させることにより、細胞をOct4-GF
Pを発現するように変化させることができたことも記載されている。
 しかしながら、平成29年2月23日付け起案の拒絶理由通知書の「理由3、
4(実施可能要件、サポート要件)について」に記載したとおり、本願の発明の
詳細な説明の実施例において説明された内容は、本願出願後に公開されたNature
誌掲載の参考文献4及び5の内容と同じものであり(以下、参考文献4及び5を
まとめて「両Nature論文」という。)、当該両Nature論文には、本願の発明者が
共著者として名を連ねていることから(特に、参考文献4の共著者には本願発明
者全員が含まれる)、この特許出願と論文発表は、ともに本願発明者らによって
行われた同一の研究活動によって得られた成果に基づくものであるといえる。そ
して、両Nature論文は共に2014年7月3日に取り下げられ、その際、それぞ
れの著者全員による文面として「これらの複数の誤りは本研究の信頼性を全体と
して損なうものであり、STAP幹細胞の現象が真実であるか否かについて、我々は
疑いなく述べることができない。」と記載されている(参考文献6,7第112
それぞれの最終段落)。さらに、当初本願の共同出願人であった理化学研究所
おける解析の結果において、Nature論文につき、用いられた全てのSTAP細胞関
連材料はES細胞に由来するものであったことが判明し、細胞ストレスによって多
能性細胞へと再プログラム化するという論文の証拠には異議がある、との結論と
なったものと認められる(参考文献10の第E5頁右欄第2段落)。そうすると、
Nature論文に掲載された実験データを取得した一連の研究活動と同一の研究活
動に基づく本願明細書記載の実験データは、本願明細書に記載されたとおりの手
法により得られたものであるか否かが不明であり、その信憑性について疑義があ
るというほかない。
 したがって、本願出願人の上記主張1は採用することができない。
 
 次に、本願出願人の主張2について検討する。
 本願出願人が主張するとおり、参考文献1には、ATPを用いての低pHスト
レスを細胞に与えることによって、細胞塊が生成し、且つ当該細胞塊にはOct
4遺伝子が発現している細胞が含まれていたことが記載されている。
 しかしながら、他の当業者による追試によって、少なくともOct4遺伝子の
発現という現象については、その再現性が確認されたとしても、そのことをもっ
て、本願明細書記載の実験データが、本願明細書に記載されたとおりの手法によ
り得られたものであったことを証明したことにならないことは明らかであるから
、本願出願人の上記主張2は採用することができない。
 
                                                                     P.5
 また、参考文献1において、細胞塊にOct4遺伝子が発現している細胞が含
まれていたことが端的に記載されているとされた実験では、GOFマウスから得
られた肝臓を低pH条件で処理し、定量PCRによって内在性のOct3/4の
発現がES細胞におけるOct3/4発現の10%以上に達するものが存在する
ことが示されている(参考文献1 Figure 3)。しかしながら、本願明細書に記
載された実施例において、低pH条件での処理後にOct4発現を確認している
のは、GOFマウスから得られたCD45陽性細胞を対象とするものであって、
参考文献1で使用された肝臓細胞とは異なっている。また、本願明細書に記載さ
れた実施例において、GOFマウスから得られた肝臓を低pH条件で処理した後
に発現を確認しているのは、Oct4-GFPであって、参考文献1で確認した
内在性のOct3/4とは異なっている。すなわち、参考文献1に記載された実
験データは、本願明細書に記載された実施例と同じ方法及び条件によって得られ
たものとはいえず、当初明細書に記載されていた事項であったとすることはでき
ない。そして、参考文献1に記載された実験データは、本願出願後に得られたも
のであることが明らかであるところ、サポート要件及び実施可能要件の判断にあ
たり、明細書等に記載されていなかった事項について、出願後に補充した実験結
果を参酌することはできない。
 したがって、本願出願人の上記主張2は採用することができない。