理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

責任者の相澤氏自身が検証実験の進め方に疑義を呈し謝罪した意味―再現阻止のために非常識な「制約」を課したことは明らか

 
 検証実験で、「多能性が確認されるようなSTAP細胞は、小保方氏も丹羽氏も再現できなかったと」いうことや、「桂調査委による、ES細胞の(故意の)混入可能性大との報告とによって、STAP細胞の存在を信じる科学者はいない」ということを何度となく繰り返す人々が多いですが、いずれも、その正当性に極めて大きな疑念があるということを無視しています。
 それらの疑念を無視して、STAP細胞や小保方氏を擁護的に見る者を、非科学的な期待をするものであるかの如く批判する人々は、逆に、その不可解な決めつけの目的は何なのか? 既に決着しているのに期待をかけるとは非科学的な蒙昧の面々だとして無視すればいいものを、なぜ延々と擁護ブログを訪れてSTAP否定を繰り返すのか?・・・という疑念を逆に招いています。
 
■ 「検証実験では、再現できなかったのだから、それで決着だ!」などと言われても、健全な一般常識から見て、それを信じられるはずもありません。どうやったら信じられるというのでしょうか?
 そもそも、検証実験責任者である相澤氏自身が、検証実験の方法は、科学的なものではなかったとして謝罪するという異例の展開でした。その点について、マスコミは何らの追及もせず(文字通り一言も)、理研は追及されないことをいいことに、一切釈明しようとしません。相澤氏による検証実験結果論文は、丹羽氏のそれとは異なり、理研STAP実験関連サイトでリンクも張らず、認知しようとしていません。科学的検証方法ではないということが、実質的に書かれているからでしょう。
 こういう混乱は、普通の組織であれば、徹底追及されて幹部の首が飛ぶところです。
 
■ では、その相澤氏が科学的でないとして指摘することは、まさに生命科学分野の、その中でも特に培養系の実験の再現の難しさの理由とされる要因を、更に意図的に増幅させているに等しいものです
 何度も本ブログでは紹介していますが、若山氏自身が、STAP細胞の再現の難しさの要因として、
「細胞の濃度を揃えるといったことや、洗浄は何回しなければならないといったコツがある」「どの実験室でやるかによって成功率も変わってくる」「水ひとつとっても、どの会社の水でなければならないとか、すべての試薬について最適なものを使わないと、再現できない場合がある」
 といった指摘をし、須田記者に対しても、
STAP細胞作製は、酸性処理が難しい。全滅するかほとんど死なないかのどちらかになってしまう」
 と、笹井氏の指摘と同じことを語っています。

 若山氏の指摘は、STAP問題とはまったく関係ない日経記事(後述の【参考】参照)の中で述べられている、
「(生命科学分野で論文再現が難しいのは)生命科学特有の事情がある。実験に使う動物や生体組織、細胞などの試料は均一ではない。同じ会社の試料や試薬を使っていても、あるときを境に実験結果が変わることもある。例えば、遺伝子の解析によく使う電気泳動は同じ人がやっても結果が違うことが多い。実験条件が微妙にばらつくからだといわれる。」
という共通認識であるはずのものと同じことです。
 
 そして、相澤氏が、小保方氏が述べた「予想をはるかに超える制約」の内容として、会見の中で述べ、検証実験報告論文の中でも言及しているのは、
「(犯罪人扱いして)監視が付く」
「モノの出し入れも、好きなものを自由に取りに行ったりあるいは注文したりということも出来ないず、またいちいち記録される」「日常使っていた研究室ではなく、すべて新しくセットされたスペースで、自ら解析もできなかった」

 ・・・といったものであり、小保方氏の『あの日』での次の指摘をそのまま裏付けるものです。 
「作製されたSTAP細胞塊が多能性遺伝子 を発現しているかなどの解析は第三者によって行われ、自分で解析することが許されていなかった。STAP細胞は変化しやすい細胞で、解析を迅速に行う必要があったが、解析のために細胞は別の場所に運ばれ、第三者によって行われ、即時に結果を見ることができなかった。実際にどのように解析されているのかさえ、知ることができなかった。
 マウスから採取される細胞は、生き物であるため、状態には若干のバラつきがあり、少しの処理の違いによってもストレスへの応答が異なる場合がある。毎回の実験結果を自分で解析し、即時に結果を見ることができていたら、たとえばストレスが少し弱かったと考えられたら次の実験ではストレスを与える時間を少しだけ延ばすなどの、毎回採取される細胞の状 態や数に応じた細かな工夫をすることができただろう。」
 
 相澤氏や小保方氏が指摘する「大きな制約」「予想をはるかに超える制約」の実態は、生命科学の再現の難しさを更に意図的に増幅させたものでしょう。そのような生命科学、培養系の再現実験の難しさの常識がわかっていれば、細心の注意を払って、実験室自体、実験器具、シャーレ、試薬等をSTAP実験が行われた際と同等のものにし、解析とそのための時間、微妙な調整等を、論文での実験と同じものにしなければ、「再現」実験にならないはずです。
 それを、敢えて、あのような生命科学の常識外の制約を課するということは、「何としても失敗させなければならない!」という強力が意思が働いたとみるのが、常識的な受け止め方です。
 
■ また、あまり注目されていませんが、小保方氏による検証実験報告書「④その他の検討」で、実験に留保がついています。ここに書かれているのは、課された制約の影響を示唆するものでしょう。
 
定量 PCR 解析においては、生細胞を判定する Gapdh glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase)の発現が不安定で、サンプル調製に要する時間の影響も想定された。
FACS 解析によるSTAP 様細胞塊の出現数は、細胞採取後の染色条件、処理時間によって変動する可能性も示唆された。
 
■ 以上のような、生命科学の実験常識に反して、明らかに意図的に再現できないような環境条件にしたとしか思えないような実態を知れば、そこで「小保方氏自身が再現できなかったではないか!」「科学者はSTAPなどもう信じていない」と言い募るのは、そのような非常識な実験条件を敢えて設定した人々のシンパか、生命科学での再現実験の難しさ、微妙さを理解していない人々か、あるいは、ともかくSTAP細胞があってもらっては困る人々か、それらのいずれかなのではないか、と思えてきます。
今まで、生命科学の(特に培養系の)再現の難しさの諸要因や、相澤氏による検証実験の方法に対する自己否定的批判について、STAP否定の人々からの解説を聞いたことがありません。それらを無視しての「STAPはないんだ!」という繰り返しに説得力はありません。


■ 現時点では、指摘されているように、多能性が確認されたものとしてのSTAP細胞が再現されているわけではありませんから、今は期待でしかありません。しかし、別に根拠がない期待ではありません。
笹井氏や丹羽氏がES細胞ではあり得ない事象を会見の場で指摘しており(丹羽氏による胎盤の観察を含む)、一連の実験は、操作ができない電子顕微鏡映像として記録されています。
丹羽氏は、検証実験報告の記者会見では、以前の指摘との関係を問われて、キメラマウスができなかったために、「緑色蛍光は出るものの、そこから先が道が無くなっちゃった」「我々の手では、そこから先へつなげることは出来なかった」と述べ、「解釈が変わった」としていますが、「残っているもの、データに照らしてどうなのか?」と問われて、「それは桂調査委の調査対象であり、その結果を見て判断されるものだ」としています。

しかし、桂調査委では、胎盤の切片の現物については、
「調査できなかった」
と理由も説明しないまま述べ(記者もなぜか追及せず)、画像を以て
「光っているものが、図によっては胎盤なのか別の組織なのか、専門家は、疑わしいと言っている人がいる。疑わしいという言い方だが・・・。」
胎盤でないというところまで突き詰めて証明することは難しかったが・・・、胎盤であったとの証明があったとは思っていない。」

 というような極めて曖昧かつ薄弱な根拠で、
STAP 細胞の胎盤への寄与は、Letterの論点として重要であり、研究の価値を高めるために強引に胎盤と断定した可能性がある」

 とまで「強引に断定」してしまいました。会見での発言と報告書の記載ぶりとのあまりの落差(!)に唖然とします。
丹羽氏の
「免疫染色等で確認すべきだとのご意見があったが、まさにそのような手段を用いて、かつ 胎盤実質細胞で発現するマーカーとも共染色を以って、確かにSTAP細胞由来と思われるGFP陽性細胞が胎盤組織にインテグレートしていることを、切片を顕微鏡で自分の目で確認している」
という観察と180度異なる見解ですし、石井調査委の前提とも異なるでしょう。このES細胞混入説にとって、物証上のもっとも弱点となる点についての強引な断定に対して、不可解さを感じないほうが不可解です。

 もちろん、最も不可解なのは、笹井氏、丹羽氏によるES細胞では説明できない事象についての見解を問われて、
「どうして彼ららそう考えるのかわからない。」「調査対象外だ」 
 とした点ですが・・・。

 ことほど左様に、検証実験にせよ、桂調査委の報告にせよ、その正当性について大きな疑念があることは否定できません。
 
■ 特許出願で、減縮補正をしたのは、単純に最終の拒絶理由通知がなされていて、多能性細胞としてのSTAP細胞の再現例が他にないことから、これ以上を争うことができなかったというだけの話です。
 Oct4細胞塊の作製法だけの特許に留まるのでは、指摘されているように産業利用上の意義が比較的低いでしょうから(それが皆無に近いならば特許要件を満たしませんし、昔からよく知られた事実だというのなら新規性なしで同様に特許要件を満たしません)、それでも手間とコストをかけて、減縮補正してでも出願を維持する以上は、次のステップとして、多能性細胞としてのSTAP細胞の再現を目指すという意図であろうという推測のほうが自然でしょう。「彼らも、もうあきらめたのだ」と解説するほうがよほど不自然です。
 「バカンティ氏も小島氏も、もうSTAP細胞の存在を信じていない」ということであれば、自らが出願者となり、マウスの脊髄神経修復まで実施例として記載しているもうひとつの特許出願も放棄するということになるでしょうが、そのような動きはありません。

 ・・・ということで、長々と書きましたが、言わんとすることは、「STAP論文は否定され、STAP細胞に多能性を期待することは非科学的であり、特許出願も縮減補正されたことを以て、STAP細胞の多能性を主張している者はいなくなったのだから、もはや論ずるべきではないし、ことさらに期待を煽るようなことを言うべきではない」という主張には与することはできないということです。
 今後、丹羽氏論文での有意なOct4発現との報告を踏まえて、特許出願が認められるならば、研究環境的、権利的に落ち着いた中で、再現に向けた研究が進められるであろうという推測は、ごく自然な流れだと思います。

 検証実験結果の記者会見時の後の方で、以下の質疑がありました。
 
質問 今まで、酸処理によって緑色に光る細胞なり細胞塊ができるということは知られていなかったと思うが、結局あれは何だったのか?
(丹羽、相澤) ―沈黙―
(相澤)それは検証実験の範囲を超えており、個々の研究で明らかにされるものである。
 
 そういうことで、今後の個々の研究で、やりたい人がやればいい話なのですから、水をかけようとする方が非科学的姿勢でしょう。「もう多能性が確認されるようなSTAP細胞はない。科学的に決着済みだ」と考える人は、無視するなり静観していればいいことです。
 コメント欄に大量に投稿されたSTAP否定の方々のお考えはもう十分にわかりましたし、繰り返されても困りますから、今後の投稿はご遠慮下さい。

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【参考】
 
1 検証実験は科学的やり方ではなかったとした相澤氏の発言
 2041219日の検証実験結果発表の記者会見の最後で、実験責任者だったにも拘らず検証実験は科学の方法ではないとして、謝罪しています。
 
【相澤】一つだけ、番外だが、コメントさせて下さい。
この検証実験が元々どう行われたかは別として、検証実験―特に小保方さんの検証実験が、このようにモニターを設置したり、立会人を置いたりして科学のことをするというのは、科学のやり方ではないと思う。科学のことは科学として処理しなければならないので、そういう検証実験にしてしまったことに、検証実験責任者として、ものすごい責任を感じている。
 今後このようなことがあるとしても、犯罪人扱いした形で、科学の行為を検証しようとするようなことはあってはならない。深くお詫びするとともに、責任を痛感しているということを、こういう形でお詫びさせていただきたい。
 
2 小保方氏の言う大きな制約はあったとする相澤氏の指摘
(1)記者会見での発言
【相澤】大きな制約ということですけれども、それは実際に大きな制約がありました。モノの出し入れも、好きなものを自由に取りに行ったりあるいは注文したりということも出来ず、またいちいち記録されますし。
それから彼女が細胞塊を採ったあと、そのデータの解析は彼女自身が他の部屋において出来るわけではなくて、彼女の実験はモニターのある部屋に限られるということですから、そのようなことは他の人に委ねられなければいけないので、それはもちろん大きな制約であることは間違いないと思いますが。・・・私から見ても、明らかに大きな制約があったと思う。
 
(2)検証実験論文での指摘
 
【小保方氏は、日常使っていた研究室ではなく、すべて新しくセットされたスペースで、自ら解析もできなかった】
The experiments were conducted in a newsetting, not in the  laboratory that Obokata had used for thepreviousstudies described in the retracted Nature(publications. All reagents, materials,instruments,and  experimental spaces were freshlyfurnished. Obokata waspermitted to conduct experiments only in designated rooms, and she did notmake any of theanalyses  herself, other than observationsby phase andfluorescence microscopy; she prepared cell aggregates for analysis byother members of the team.
 
3 小保方氏の「予想をはるかに超える制約」についての具体的説明
 
「私が許されていた検証実験は、マウスから細胞を取り出し、STAP細胞塊を作製するところまでだった。作製されたSTAP細胞塊が多能性遺伝子 を発現しているかなどの解析は第三者によって行われ、自分で解析することが許されていなかった。STAP細胞は変化しやすい細胞で、解析を迅速に行う必要があったが、解析のために細胞は別の場所に運ばれ、第三者によって行われ、即時に結果を見ることができなかった。実際にどのように解析されているのかさえ、知ることができなかった。
 マウスから採取される細胞は、生き物であるため、状態には若干のバラつきがあり、少しの処理の違いによってもストレスへの応答が異なる場合がある。毎回の実験結果を自分で解析し、即時に結果を見ることができていたら、たとえばストレスが少し弱かったと考えられたら次の実験ではストレスを与える時間を少しだけ延ばすなどの、毎回採取される細胞の状 態や数に応じた細かな工夫をすることができただろう。しかし、実際には、ただただ檬朧とした意識の中で、毎日同じ作業の繰り返ししかできなかった。毎回の実験を次の実験に生かすことができなかった。私が犯人なのかを検証するのではなく、本当に科学の検証を目的としていたのなら、STAP細胞塊の扱いに一番慣れている私に解析もさせて、科学的な結果を見極めるべきだったと思う。」(『あの日』p225)
 
4 小保方氏の指摘と符合する面がある小保方氏検証実験報告書の留保
 
「■実験報告書「 その他の検討」で示された4つの留保
定量 PCR 解析においては、生細胞を判定するGapdh glyceraldehyde3-phosphate dehydrogenase)の発現が不安定で、サンプル調製に要する時間の影響も想定された。
○FACS 解析によるSTAP 様細胞塊の出現数は、細胞採取後 の染色条件、処理時間によって変動する可能性も示唆された。
また、FACS 解析の結果では生存している細胞の大半は CD45 陽性細胞であり、実験条件が論文レベルの条件と適合していない可能性も考えられたが、本検証では検討を行わなかった。
また、研究論文において、より頻度が低いとされた他のス トレス条件についても、本検証では検討しなかった。」
 
5 若山氏が語るSTAP細胞再現の難しさ
(1)20144月号(310日発売)の文藝春秋
■「STAP細胞は、体細胞を弱酸性の液体に浸して作るので、小学生でもできそうで
すが、細胞の濃度を揃えるといったことや、洗浄は何回しなければならないといったコツがあります。遺伝子を入れるか入れないかは作業としてはっきりしていますが、コツが含まれる作業というのは、際限なく難しい場合がある。僕も理研から山梨大に引っ越す直前、STAP細胞の作り方を教わってやってみたら成功しましたが、山梨大に移ってからは、まだ成功していません。
■「コツの習得以外に、どの実験室でやるかによって成功率も変わってきます。昔、ハワイ大学からロックフェラー大学に移ったときも、ハワイ大学で何度も成功していた体細胞クローンマウスの作製に半年間、成功できなかった。自分自身が開発して世界でいちばんのテクニックを持っているにもかかわらず、うまくいかないことがある。」
■「水ひとつとっても、どの会社の水でなければならないとか、すべての試薬について最適なものを使わないと、再現できない場合があるんです。」
 
(2)須田桃子『捏造の科学者』 p48-52)より。20142月下旬(24日)
「ネイチャーの記事にあった通り、CDBを去る前の2013年春、小保方氏から直接、作製方法を習ったときはSTAP細胞ができたが、山梨大学では成功していないという。「酸性処理が難しい。全滅するかほとんど死なないかのどちらかになってしまう」。
⇒(注)笹井氏の指摘と符合(「ストレスが強すぎると全滅、弱過ぎるとストレス反応がなく、リプログラミングされない。」)
 
(同趣旨参考記事1)小保方氏が行った方法ではうまくいかなかった理由についての生物学専門家談
『培養系の実験では、緩衝材の違いはもちろん、試薬のロット(製造日)差によっても結果が違ってくるというのは周知の事実ですし、シャーレのメーカーによっても結果に違いが出ることがあるほどです。それほど微妙な調整が必要な世界であり、プロトコル(手順)通りにやっても同じ結果が得られないことは普通です。」2016.05.14 ビジネスジャーナル誌の大宅氏記事)
 
(同趣旨参考記事2)日経新聞記事
「英科学誌ネイチャーが2016年、1576人の科学者を対象に「他の科学者の実験を再現して失敗した経験があるか」と調査したところ「ある」という回答が70%を超えた。論文にある手順を踏んだにもかかわらず、同じ結果にならない。
 研究予算が最も多く投じられる生命科学分野で顕著だ。「90%の論文で再現性がなかった」との調査がある。独バイエルの製薬子会社や米アムジェンはがんに関する論文を追試し、大半の論文で同じ結果が出なかったと報告した。
  研究者は必ずしも意図しているわけではなく、生命科学特有の事情がある。実験に使う動物や生体組織、細胞などの試料は均一ではない。同じ会社の試料や試薬を使っていても、あるときを境に実験結果が変わることもある。例えば、遺伝子の解析によく使う電気泳動は同じ人がやっても結果が違うことが多い。実験条件が微妙にばらつくからだといわれる。まだ見つかっていない分子や解明されていない機能も数多く、物理や工学などの分野に比べて再現性を得にくいことも大きい。」
 
(同趣旨参考記事3)和戸川純氏の指摘
「4 再現性試験の難しさ
「細胞を洗浄するときに、細胞が入った溶液を細いピペットで攪拌する。攪拌のときの手の力の入れ方を、客観的に数字で表現することはできない。
個々の実験者の筋力が異なるだけではなく、一人の研究者の力の入れ方が、毎回完全に同じになることは、あり得ないからだ。バカンティが、細胞を毛細管に通すことを勧めているが、ピペッティングは、まさにそのようなコントロールができない物理的刺激になる。
このピペッティングの例でも分かるように、あらゆる刺激が万能性誘発の原因になるとすると、実験が極めて難しくなる。STAP細胞作成の最適条件を検討するときに、極端に多様な実験条件を、正確にコントロールしなければならないからだ。酸性化の影響を調べるには、溶液の酸性度以外のすべての条件を、一定に保たなければならない。
再現性試験の難しいことが、私の上のような推測の正しさを示唆している。
他の研究室で、あらゆる物理・化学的条件を小保方の研究室と同一にすることは、不可能だ。器具の操作には人間ファクターが入るので、そこでも条件を一定にはできない。それを小保方は経験的に知っていて、「コツ」という言い方をしたと思われる。からだで覚えたその「コツ」を、他人に明確に説明するのは困難だ。」

6 丹羽氏の一連の指摘のポイント

 ・STAP作製プロトコルの作製時に電子顕微鏡でそれができるのを3回見た。
 ・検証実験で見たものは、その時に見たものと同じだった。
 ・胎盤に寄与していることを、この目ではっきりとみた。
 ・若山氏は、注入したのは極めて均一な細胞だったと言っていた。
 ・ES細胞とTS細胞とは混ぜてもすぐに分離してしまう(均一に混ぜることはできない)。
 ・FI培地の中では、ES細胞は死滅する。

7 若山氏が1回だけ、STAP細胞の作製に一から成功したことについての桂委員長説明

Q 以前、若山氏が、ただ一度だけ小保方氏の指導で、一からSTAP細胞を作りSTAP幹細胞を作ったとのことですが、これは、マウスから作ったわけではなく、何らかの処理された細胞から作ったという理解でいいか。
A マウスから作った。最初から最後まで。山梨大に出る前に、若山さんでもできるかやってみようと思って、若山研の人たちが試したができなかったので、自分でやってみたいということで教えてもらってやったらできた。これは若山研に保存されていたので、それをいただいて調べた。
Q なぜ一回再現できたか不思議ですが・・・。
A 不思議です。STAP細胞ができたというのは、小保方氏以外で操作してできたというのは、我々の確認している限りでは、この若山氏の1回だけ。
Q 引きちぎって挿入するようにしたらできたとあるが、その時にES細胞が混入したということか。
A 前の状況が何も残っていないのでわからないが、小保方氏が理研に来てから半年ほどはできなかったが、2011年の11月くらいになってから急にキメラができるようになった。なぜできなかったはわからない。樹立日のFLS3GLS1とが、20121月から2月の初めにかけて、この時にたくさんできたようだが、少なくともこれはESコンタミだった。なぜ急にできるようになったのかを尋ねたら、答えは二つ。若いマウスを使うようにしたことと、細胞をバラバラではなく引きちぎって塊にして挿入するようにしたらできるようになったとのこと。そう信じていたようだ。しかし、我々としては、できるようになった時点で、もう一度塊をバラバラにしてできたら、これだけ(騒ぎは?)大きくはならなかったろうという思いはある。
 (注)報告書のP30に同趣旨の記載あり。