バカンティ氏の特許出願における脊髄損傷治療の実施例
(その意味で発明者がバカンティ氏と小島氏だけになっているのではないかと)
2016/1/16(土) 午後 9:57 [ JISAI ]」
2016/1/17(日) 午後 2:06 [ JISAI ]」
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【0304】
実施例6:ラット脊髄のNK-1発現ニューロンの化学的除去によって低下した正常な
痛覚過敏反応の成体STAP幹細胞による回復。
脊髄損傷には、痺れ感、錯感覚および疼痛を含めた高頻度の慢性神経知覚障害が複合的
に認められる。これらの外傷により生じる病理学的変化は広範囲に及ぶため、そのいずれ
の1つでも、その根底のある機序を理解し、有効な治療法を開発するのは複雑なものとな
る。ここでは、限定的であるが十分に定義されている感覚消失を生じた後、ストレスを加
えた成体幹細胞(刺激惹起性多能性獲得、STAPによって変化した細胞)を埋植するこ
とによって正常な状態に戻った極めて特異的な脊髄の細胞損傷について記載する。
ニューロキニン-1受容体(NK1R)発現ニューロンの大部分を除去するため、雄ラ
ット脊髄の髄腔内(i.t.)腔に特異性の高い細胞毒素SSP-SAP(20μL、1
μM)を注射した。2~3週間後、フォン・フレイ線維による刺激に対する機械的痛覚過
敏と放射熱源から引っ込める動作の潜伏時間の短縮として現れる熱痛覚過敏とからなる、
後肢足底部へのカプサイシン(1μL、0.1%)注射に対する正常な強い痛覚過敏反応
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がほとんど認められなくなった。次いで、STAP幹細胞のi.t.注射を実施したとこ
ろ、個々の細胞の懸濁液であっても球状の細胞集塊であっても、その後1~2週間かけて
、振幅も経時変化も除去前の元の反応と同じであり、K-1RアンタゴニストであるL-
733,060(300μM)のi.t.注射によって完全に抑制された。痛覚過敏機能
が回復したラットの腰髄の免疫細胞化学検査では、後角全体にわたってNK-1Rの染色
が認められた。したがって、STAP幹細胞は、特異的な脊髄ニューロン喪失後に正常な
機能を回復させることが可能であり、脊髄損傷の治療法のモデルになるものと思われる。
ストレス誘導性無痛覚を最小限に抑え、ベースラインとなる未処置の初期の行動データ
を得るため、成体雄S-Dラットを最初、4~5日間ハンドリングして試験活動領域に慣
らした。一方の後肢足底表面を15gのフォン・フレイ線維(VFH)で3秒ごとに10
回探索することにより、触覚に対する反応性を決定した。治療もカプサイシン注射も実施
していないベースライン感度は、探索10回当たり約1~2回の肢引っ込め動作に相当す
るものであった。放射熱源からの肢引っ込め動作の潜伏時間(ハーグリーブス法:カット
オフ時間は18秒に設定)によって熱感度を明らかにした。ベースライン潜伏時間は約1
6秒であった。髄腔内注射を実施する前、未処置ラットの後肢へのカプサイシン注射に対
する反応は、触覚がVFH探索10回当たり6回の引っ込め動作、熱が潜伏時間6秒であ
ることがわかった。
30gの針を使用し、大部分のNK1-R発現脊髄ニューロンを除去するSSP-SA
P(修飾P物質-サポリンコンジュゲート)(Mantyhら)またはその不活性類似体
であるBlank-SAP(サポリンとコンジュゲートしたナンセンスペプチド)を送達
する仙骨法により髄腔内注射を実施した。
数週間後、SSP-SAP処置個体(Blank-SAP処置個体ではない)のカプサ
イシンによる急性の反応亢進が消失したとき、腰髄のSAPコンジュゲートを注射した領
域と同じ領域に刺激惹起性多能性活性化(STAP)幹細胞(図26を参照されたい)を
注射した。
カプサイシン注射後の触覚刺激および熱刺激に対する反応をさらに5週間追跡し、その
時点でラットにペントバルビタール(75mg/kg i.p.)で麻酔をかけ、冷生理
食塩水、次いで4%パラホルムアルデヒドを経心灌流した。脊髄を厚さ50μmに薄切し
、抗NK1-Rおよび抗ニューロン一次抗体:[1%のNDSおよび0.3%のTrit
on X-100を含むPBSに溶かしたウサギ抗NK-1R(ロット番号011M48
3g/ml)およびマウス抗NeuN(ロット番号LV1825845、Millipo
re社、ビレリカ、マサチューセッツ州)1:500(2μg/ml)]で染色し、次い
で、十分に洗浄し、相関する2°Ab[1%のNDSおよび0.3%のTriton X
-100を含むPBSに溶かしたロバ抗ウサギAlexa Fluor 555(ロット
番号819572)およびロバ抗マウスAlexa Fluor 488(ロット番号1
113537)(Invitrogen社、グランドアイランド、ニューヨーク州、米国
)、ともに1:1000(2μg/ml)]中でインキュベートした後、蛍光顕微鏡で観
察した。
各実験グループ(n=3/グループ)の表層(IおよびII)および深部(III~V
)の薄片について1組織切片当たりのNK-1およびNeu-N免疫陽性細胞体の総数を
カウントした。結果を、SSP-SAP(または溶媒)を投与し幹細胞治療を実施したラ
ットまたは実施しなかったラットの表層および深部の薄片中の生存ニューロンの平均百分
率で表す。
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低下によって示される機械的痛覚過敏の減少がみられる(図27)。脊髄幹細胞を埋植し
てから5週間後、カプサイシン誘導性痛覚過敏の回復がみられる。幹細胞埋植物により、
SSP-SAP処置ラットの痛覚過敏反応が未処置ラットおよびBlank-SAP処置
対照のものに戻った(図28)。幹細胞埋植物によってカプサイシン感受性が回復した場
合、NK1-Rの特異的アンタゴニストの効力の増大がみられる(図29)。
SSP-SAPは、脊髄のNK1R発現ニューロンを除去する効果が高く、それにより
後肢に注射したカプサイシンに対する初期痛覚過敏反応を実質的に消失させる。STAP
幹細胞を送達することにより、SSP-SAP処理ラットのカプサイシンに対する「正常
な」痛覚過敏性の触覚および熱反応が回復する。Blank-SAPの注射により痛覚過
敏反応性に変化がみられなかったラットでは、STAP幹細胞の送達はカプサイシンに対
する反応に何ら効果を示さなかった。STAP幹細胞による痛覚過敏反応の正常化に伴っ
て、脊髄にNK1R-IRの回復がみられた。STAP幹細胞で回復したラットでは、N
K1Rのアンタゴニストがカプサイシン痛覚過敏を抑制する効力が未処置ラットまたはB
lank-SAP投与ラットの10~60倍増強された。理論に束縛されることを望むも
のではないが、この現象は、回復したラットではSTAP幹細胞によって誘導されたNK
1Rのアンタゴニストの親和性または痛覚過敏反応のスキーム全体へのNK1Rの結合の
差が変化したことにより起こったのではないかと考えられる。
****************************** これに限らず、7つの実施例で書かれているのは、いずれもバカンティ氏と
小島氏による実験の経過です。
これらが虚偽となると、それこそ刑事罰ですし、V-CELL社の出願の方では、
宣誓書まで出していましたので、自らのプロトコルによる実験には裏付けが
あるとの主張をしているということかと思います。
こちらの出願がどういう扱いになるのかは、まだまだこれからです。
■ そうこうするうちに、V-CELL社/ハーバード大による元々の特許出願
のほうが、5月18日の FinalRejection からもう間もなく、期限の6か月
が経過しようとしています。
今週がその山場になるはずですが、今日時点では特にUSPTOのサイトに変化
はありません。
いつも変化が現れるのは、期限ぎりぎりの土壇場ですので、今回もそうなの
でしょうか・・・。
認められず「放棄」扱いになるのか、それとも請求項が縮減されて認容されるのか、はたまた、継続審査請求となるのか・・・。
要注目です。