理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

6-2 理研・自己点検委への違和感、怪しさ(6)―疑問④若山氏への言及の希薄さ、⑤各著者の関与の記載が恣意的

 
(3)基本的物証による検証の欠如
 基本的当事者からの聴取とともに必要となるのが、メールや関連資料による裏付け等の物証です。
 1月末に,このブログ記事で、
 
 ◎「1 STAP問題の基本的構図を揺るがす可能性のある小保方氏による提示事実」
 
 というものを書きましたが、そこで小保方氏が提示している材料は、若山研での研究の実態を示すものですが、かなりの部分は、メールや記録により裏付けが取れるはずのものです。
 
○若山研では、小保方氏が作ったスフィア(STAP)細胞を元にした幹細胞株化を若山研の研究成果として論文投稿と特許化をめざすこととし、研究室員が手分けして解析を進めていった様子が描かれている。若山氏は、それに必要となる「胚操作」と呼ばれる実験技術を、小保方氏にだけは教えてくれなかったとのこと(「小保方氏に教えてしまうと、もう必要としてくれなくなって、どこかに行っちゃうかもしれないから」)。(P90~103)
 
○若山研の学生は、スフィア幹細胞株関係の論文を、若山氏と相談の上、ネイチャーの姉妹誌に投稿したが、騒動になった後、静かに取り下げたとのこと(P96、P211)。
 
STAP細胞の作り方は、若山研のほぼ全員に教えており、ES細胞様に増殖するラボのメンバーもいた。若山氏自身、単独でSTAP細胞からSTAP幹細胞作成まで成功していることを、ネイチャーのインタビュー記事で述べている(P209~210)。
 
○若山氏は20128月以降、特許申請を急ぎ、理研特許室への若山氏のメールには、「若山研のラボメンバーは、スフィアの作製も細胞株化もまあまあできる」「いつでも再現できる」「iPS細胞よりすごいものを作った」などと記されていた。(P102~103)
 若山氏は、自身に51%の特許配分を提示したため、それ以降、日米の著者間で不穏な空気が流れ、小保方氏が板挟みで苦しんだ(P107)。
 
○若山氏は、独立してSTAP細胞からSTAP幹細胞樹立まで成功したときに、小保方氏はついていなかった。テラト―マ実験も、若山氏の指揮の元で行われた(P116、P210)。
 
○「若山氏から論文を急がされているが、自分では再現が取れず不安でありもっと検証すべきと思う」旨を共著の先生たちに打ち明けた。若山氏は、実験を行う時にコントロール実験を行わなかった。誰もそれをしてほしいとはいえなかった。共著の先生方は、「それは注意したほうがいい」と意見を交じわした(P104~105)。
 
20136月頃、山梨大の若山氏から、培地を送った後の連絡では、Oct4をとてもよく発現するSTAP細胞はできるが、まだ幹細胞株化には至っていないこと、中国人留学生の元研究員も中国で、STAP細胞の実験がうまくいっているとの連絡がきているとのことだった(P122~123)
 
 中でも、若山研での研究実態を把握する上での有力なとっかかりは、特許問題でしょう。
 小保方氏の手記では、若山氏が幹細胞に関する単独での特許出願を行おうとし、特許室にも連絡を取り、若山氏自身に51%の配分を提示して、日米の著者間で不穏な空気が流れ、板挟みで苦しんだ、その後笹井氏が調整した、とありますから、理研内ではかなりのごたごたが発生したことは確実です。
 その際の若山氏の「米国側には何らの権利はない」「いつでも再現できる」「iPS細胞よりすごいものを作った」「自分自身に51%を配分せよ」等の強烈な主張とそれへの対処振りについては、当然のことながら、特許室だけに留まるはずもなく、CDBの幹部を巻き込む、神経と多大な労力とを要する調整作業になったはずです。若山氏が単独特許化を言い出したのは20128月であり、一本化された本出願を行ったのは、翌20134月ですから、実に7ヶ月近い調整を要したわけです。
 小保方氏が「不穏な空気」と形容した状況を鎮静化させ、一本化するというのは並大抵の調整ではありません。
 自己点検委報告書では、日米双方の特許室間の交渉で、仮出願の本出願に入れ込む形で一本の特許出願となったと、さらっと書いてありますが、その内情は熾烈なものだったことでしょう。
 
「当初は、ハーバード大学が中心になって2012 4 24 日に仮出願していた特許とは別に、上記⑤のデータを基にCDB を中心とする特許出願も考慮されていたが、ハーバード大学理研知財担当者とが交渉し、一つの特許として米国特許庁に国際出願した。」p5
 
 この際の若山氏の強硬な主張や、特許室とのやりとりは幹部以下関係者の皆知るところであり、若山氏が強力な主導を行っていたことは周知のことだったはずです。若山氏が「小保方氏の受入れの目的は技術支援であると認識していた。そのため、実験計画や結果の判断に深入りしない方針で共同研究を進め、」云々などという認識は、実態とは全く異なることは明白です。特許室や幹部が、そういう本当の実態を握りつぶしたことは、ここからも浮き彫りになってきます。
 
 また、小保方氏や他の共著者から事情聴取すれば、学生の論文投稿の事実や、小保方氏が若山氏の強引さに不安を訴えていたことは、すぐにわかることです。更に、山梨大転出後の若山氏から、培地の送付依頼があったわけですが、その際、手続き的にどういうことになるのかよくわかりませんが、これも理研財産の一つなのでしょうから、内部決裁等をとっているのではないかと思われますし、その際、若山氏からの依頼理由についても説明があったはずですから、それらを検証することによって、特許室への連絡内容と合わせて、若山研及び帰国した中国人留学生(=Li氏)の研究室においては、STAP細胞はできているようだ、ということは把握できたはずです。
 
 こうやって見てくると、自己点検委員会は、事実関係や正確な経緯を把握しようとは、はなから考えておらず、小保方氏が、STAP細胞だけでなくSTAP幹細胞まで捏造し、論文作成は、小保方氏と笹井氏とが二人三脚で執筆したかの如き構図を描き出し、それをテコにして、運営・組織の「改革」という名の下での奪権を目論んでいたことが明らかになってきます。科学的真実などは初めから関心はなく、多分に生臭い政治臭が感じられます。
 奪権という当初目的からすれば、「STAP細胞は捏造」「小保方氏は捏造犯」「笹井氏は共犯」ということは、「政治的真実」ということなのでしょう。奪権のためには、STAP細胞はあったはならないのは当然です。しばしば、ある国家において、歴史的事実と政治的事実との間には大きなギャップがあるように、STAP細胞問題においても、科学的真実と政治的真実との間には、埋めがたいほどのギャップがあるのだろうと思います。
 
 そういう視点に立って、一連のSTAP細胞問題を俯瞰すれば、分子生物学会の主要メンバーや、理研の上層部以外の幹部、理研関係者、そして改革委や2つの不正調査委員会の言動、報告書内容の不可解さの理由が氷解するような気がします。
 彼らのベクトルは、ただ一つの方向を向いていました。