理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

6-1 理研・自己点検委への違和感、怪しさ(6)―疑問④若山氏への言及の希薄さ、⑤各著者の関与の記載が恣意的

疑問4:責任著者であるはずの若山氏への言及が、あまりに希薄で軽すぎる。
疑問5:容易に事実関係がわかるはずの各著者の関与の記載が極めて恣意的。
 
 報告書では、P6以下で、「2.STAP 論文の作成に関する検証」として、「(1)論文著者らの関与」が冒頭に書かれています。小保方氏の手記でメール等の裏付けを以て述べていると考えられる、若山研での幹細胞研究の推進や特許出願についての実態を踏まえてこれ読むと、一見しておかしいことがわかります。
若山氏の関与は、極めて限定的かつ側面支援的なものとして記載されています。
 
「②若山氏
若山氏は、小保方氏を理研の客員規程に従ってハーバード大学から受け入れたが、小保方氏はC.バカンティ研究室に籍があり、受入れの目的は技術支援であると認識していた。そのため、実験計画や結果の判断に深入りしない方針で共同研究を進め、批判的な観点からの議論や詳細なデータの確認を行わなかった。客員研究員の身分でも、小保方氏は研究室に常勤の状態にあり、若山氏自身がその研究に深く関わっていたからには、小保方氏に対し通常の研究室メンバーと同様の研究指導をすべきであった。
若山氏はレター論文の責任著者であったが、小保方氏、笹井GD らとの連絡が十分ではなく、投稿前の原稿を精査する機会が不十分となった。」
 
 これもかなり巧妙な書き方になっています。客員規程に基づく受入れ時点では、確かに、STAP細胞のキメラマウスの作成による万能性確認という点に目的があって、技術支援目的の色彩が濃かったことは確かでしょう。しかし、そこから幹細胞研究を若山研挙げて推進し、特許出願も幹細胞研究について、理研単独で出すというところまで一時は行ったのですから、積極的イニシアティブをとったのは、若山氏だったわけです。
 にもかかわらず、幹細胞研究まで含めて、小保方氏や笹井氏が主導したかのように描き、若山氏はそれも含めて、終始一貫、「技術支援」の立場で、「実験計画や結果の判断に深入りしない方針」であったかのように描いているのです。
 
 次のような記述は、幹細胞研究とそれに関する論文作成まで含めて、小保方氏や笹井氏が主導したような印象を与えますし、実際、そういう認定内容になっています。これらの記述でも、「若山氏の支援を受けて」という書き方になっています。
 
【小保方氏】
小保方氏は、研究の着想、研究の中核部分の実行、論文の執筆のそれぞれのステップを複数の研究室で行った。しかし、これらの研究グループ間の情報共有は不十分で、注意深い論文の作成を怠ったと考えられる。小保方氏は、全ての研究グループと直接連絡を取り、全体を統合すべき立場にあったが、その責任を十分に果たせたとはいえない。」p7
 
「⑦2012 6 6 日にセル誌へ投稿し不採択となった原稿には切り貼りのなされたTCR 再構成データが含まれており、この一部が2013 3 10 日投稿のネイチャー誌アーティクル論文の切り貼りされたTCR 再構成のデータとして使われている。このころ、小保方氏は、若山氏の支援を受けてSTAP細胞から胎盤形成に寄与する幹細胞を樹立する研究に取り組んだ。」p4
 
【笹井氏】
「④サイエンス誌に投稿し2012 8 21 日に不採択となった原稿を小保方氏が改訂していたもの(12 11 日バージョン)を参考に、笹井GD はネイチャー誌アーティクル論文の執筆指導を行い、小保方氏と共同でたたき台を12 28 日に完成させた。小保方氏は、翌2013 1 月上旬にハーバード大学を訪問し、C.バカンティ氏と論文原稿を検討した。C.バカンティ氏は、笹井GD にメールで謝意を伝えるとともに、この論文の共著者として加わることを要請した。
笹井GD は、引き続き小保方氏とともに第2 の論文(ネイチャー誌レター論文)の執筆を進めた。この論文は、CDB の若山研究室で着想され、若山氏の支援を受けて小保方氏が解析し取りまとめたデータを基に作成されており、STAP 細胞が胎盤形成にも寄与すること、STAP 幹細胞の樹立(最終段階でアーティクル論文に編入)、胎盤形成に寄与する幹細胞(FI Stem Cell) の樹立を主要な内容としていた。この論文の執筆によりSTAP 細胞研究における若山研究室のクレジット及びCDB の貢献が明確となった。」p4
 
笹井GD 論文作成の支援を開始した2012 12 月以降、STAP 研究の重要性やインパクトを認識し、論文の作成に積極的に取り組んだ。また、複雑な経緯を持つ国際的共同研究における日米著者間の調整にも対応した。こうした背景やC.バカンティ氏の意向の下、秘密保持を優先した。その結果、外部からの批判や評価が遮断された閉鎖的状況が作り出されることとなった。一方、小保方氏の過去のデータを信用し、批判的に再検討・再検証することなく、結果として多くの誤りを見逃した。」p8
 
 ほとんど、小保方氏と笹井氏とが二人三脚で中核的作業を担ったかのような書きぶりです
 
 しかし、一連の事実経過等や役割分担等を検証するに際して、「検証」という以上、必須な作業が行われていないと思います。
 
(1)最も基本的な当事者である小保方氏からの聴取の欠如
 基本的な当事者は、小保方氏、若山氏、笹井氏、丹羽氏らですが、小保方氏、笹井氏からは明らかに聴取を行っていません。
 小保方氏については、体調不良のためということもあったのでしょうが、しかし、当事者からの聴取は基本的初動対応です。小保方氏の次の手記の記述からは、一切聴取はなされず、5月下旬時点で初めて、既に出来上がっている報告書案511日が最終会合で、610日に改革委提言とともに公表)の確認を、竹市センター長から言われたという流れです。最も基本的な当事者である小保方氏からの聴取が一切なされないまま、報告書が取りまとめられたというのは、異常な経過です。それは、決定的瑕疵があることを意味します。
 
5月下旬になると、センター長の竹市先生から、理研が設置した外部有識者による正再発防止のための改革委員会」に提出する自己点検委員会の書類の中で、私が関与している部分の確認をさせてほしいという要請を受けた。部分的に聞かされた内容は、若山研での実験状況などは省かれていて、実情とはかけ離れ、責任の多くを笹井先生に押しつけているような内容だった。「このまま発表されては実情とはあまりにも異なっているので、私にも陳述させてほしい」と申し出たが、竹市先生ももう手一杯だったのか、「いまさら変更が増えると混乱が起きるので、もうあきらめてほしい」と言われた。若山研での実験状況の実情やSTAPの研究が秘密裏に行われていたわけではないことなどを盛り込むことは叶わず、自己点検委員会の報告書に私の証言は一切盛り込まれなかった。その上、事務方の幹部の一人からは、「事実が淡々と、ということになっていますが、実際にはかなり推測が入っているし、多くの部分について小保方さんに何の事実確認もなく偏重して書かれていて、かなりの試練になると思う」と伝えられた。」
 
(2)笹井氏の記者会見内容との基本的構図についての齟齬(=同氏からの聴取の欠如、無視)
 笹井氏は、(2014年)416日に記者会見を開き、自らの認識について説明しています。下記のサイトに、書き起こしがありましたのが、引用させていただきます。
 
「私のNature論文に対する役割などについて説明させていただきたく思います。これまで具体的にお答えできず大変申し訳ありませんでした。順次説明いたします。まず論文作成における私の役割を説明します。通常の論文では一つの研究室の中で作成されますが、今回は複雑な構成でした。まず第一段階ではハーバード大学と若山研で行われました。
私が参加したのは第4段階の論文の書き上げの段階です。小保方さんと若山さんにより2012年春に一度、Nature誌に投稿されていました。それが却下された後の書き直しの段階で参加しました。
 具体的には小保方さんをユニットリーダーに選考する面接の際に、それまでに小保方さんと若山さんがまとめた論文について、内容の重大さに比して原稿が十分でなかった。そこで、Nature論文への投稿が多い私が面倒を見るように依頼を受けました。科学的な価値の大変高い物をお見受けして協力することになりました。
 若山さんは山梨大学への移転で忙殺されていたため、若山さんの分も含めて協力しました。STAP細胞の論文の改定作業を20134月の上旬から小保方ユニットリーダーの元で行われましたが、その際にも協力しました。論文投稿への3年間の過程で、最後の2カ月強だけ参加しました。最終段階で協力したわけです。当初は著者として加わらず協力指導だけしていましたが、しかしバカンティ教授の要請で著者として加わることになりました。改訂論文の投稿直前に若山さんから、責任著者として加わって欲しいという依頼があったので、私もそのように名を連ねることになりました。
 なぜ不正過誤を見抜けなかったのかということですが、こうしたことは決してあってはならないことです。私が複数の問題を見抜けなかったことは慚愧の念に耐えません。私は最終段階で参加したため、多くのデータはすでに図表になっていました。
 そのため、残念ながら私は研究の生データやノートを見る機会はありませんでした。また小保方さんは直属の部下ではないため、学生などに言うように「実験ノートを見せなさい」と言うことはなかったです。私は自分の参加後に追加された実験(ライブ・セル・イメージ)についてはつぶさに見ています。
今回は複数のシニアが入る特殊な論文のケースでした。第三段階までの面倒を見た若山さんは別の人間だったし、バカンティ教授も外国にいるため、二重三重のチェック機構を果たせなかった原因だと反省しています。文章書き上げに協力した私は、文章全体を俯瞰する立場だったのに十分でなかったことを反省しています。」
 
 自己点検委報告書が描くところの基本的構図と大きく食い違っています。自己点検委では、次のような文言を散りばめ、解析とデータとりまとめは小保方氏で、論文作成は、小保方氏と笹井氏とで、あたかも一から取り組んだかのような印象を与えるものとなっています。
 
「小保方氏と共同でたたき台を完成させた。」
「引き続き小保方氏とともに第2 の論文(ネイチャー誌レター論文)の執筆を進めた。」
STAP 研究の重要性やインパクトを認識し、論文の作成に積極的に取り組んだ。また、複雑な経緯を持つ国際的共同研究における日米著者間の調整にも対応した。」
 
 しかし、上記の笹井氏の会見での説明は、小保方氏と若山氏とがその研究成果をもとに作成・投稿してきたが没になった論文のリバイス、仕上げを支援する形で関わったというもので、事実経過からみてもそういう構図であることは容易に把握できる話です。実際に把握していますが、それを踏まえた関与の実態を無視してしまっています。
 この笹井氏の会見は、416日です。自己点検委会合は、411日に第1回、17日にたたき台、23日で案の審議、511日にとりまとめ?という流れであり、笹井氏に直接聴取しないとしても、この公式会見での説明は、なによりも笹井氏の基本的認識を示しているものと言えます。
 しかし、点検委は、審議期間の真っ最中における会見での説明であるのに、これを文字通り、全く無視しました。ネットや報道等では、「自分の責任を回避した」かのように非難する指摘が多かったですが、しかし、これは基本的事実関係を淡々と述べたものでしょう。
 初めから、この点検委員会とその報告書の狙いが、笹井氏の失脚、放逐であったとすれば、その説明を無視するのはむべなるかなですが、いくら何でも露骨すぎます。こういう基本的矛盾と報告書の瑕疵を誰も指摘しないというのが、またおかしな話です。若山氏=善玉、笹井氏、小保方氏=悪玉、という構図が、ネットとリークによって刷り込まれてしまっていたからでしょう。
 
 笹井氏の説明の無視は、改革委提言で更に露骨なものとなっています。
 
「この2月の頃には、共著者として小保方氏の研究不正及び論文の真正性を疑うべき事情が生じているにもかかわらず、笹井氏は、「STAP 現象はリアルフェノメノンである」「STAP現象は有力仮説である」との発言を繰り返し、一般国民、とくに再生医療への応用を期待したパーキンソン病などの難病患者に大きな期待を生ぜしめた。(中略)
・・・成果主義に走るあまり、真実の解明を最優先として行動する、という科学者として当然に求められる基本を疎かにした笹井氏の行動は、厳しく責任が問われるべきものであると同時に、理研 CDB 成果主義の負の側面を端的に表しているものと評価できよう。」P9
 
 このあまりに非科学的記述、評価については、当時のブログ記事でも批判しました。
 具体的な科学的根拠を説明資料に基づき説明して、真実の解明を最優先と考えたからこそ述べた仮説の有力性についての説明がなぜ指弾されなければならないのか、まったく理解できませんし、こういうことを平気で書く委員や事務局の人々の異様さに憤ったものでした。
 しかし、今改めて、自己点検委とそのお墨付きを与える改革委の目的が、笹井氏や竹市氏らの理研上層部の放逐と、中堅及び外部=分子生物学会によるCDBの実権掌握にあったと考えれば、基本的当事者の聴取・反映がなされないという基本的瑕疵がある代物で、押し通そうとしたことも理解できるというものです。
 これは、かなりの政治的文書と言えます。