理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

5 理研・自己点検委への違和感、怪しさ(5)―疑問②本来提言されるべきことの欠如./疑問③超短期間での結論ありきの印象


疑問2:提言されるべきことが、全く提言されていない。
 
 では、その時点で、何が提言されるべきだったのか?といえば、


「多くの根幹に関わるような疑念についての指摘がなされているのであるから、文科省ガイドラインを踏まえた理研不正調査規程に基づき、徹底的に調査を行え!」


 ということだったはずです。ところが、経緯のところで、


5 7 日調査委員会が再調査は不要と判断、5 8 理研は再調査を行わないことを決定)。」


 と書いてあるだけで、「それはおかしいだろう!なぜ、他の追加的に指摘されている疑念も含めて再調査しないのか?!レター論文も含めて全面的に調査せよ!」という、本来であれば述べられるべきことは、一切述べていません。
 あれだけ世間ではそう批判されていたのに、当の自己点検委がそういうことは一切述べないというのは、不思議であり、不自然ではないでしょうか?
 あれは、文科省の、特定国立研究開発法人法案提出時期が迫っているため、急ぎ収束させなければならないという思惑による指示によるものだったでしょう。だいたい、個別の論文について、最初に下村文科大臣がその撤回を記者会見時に勧めるということからして異常です。そして再調査はせずとし、追加調査も4月中にまとめろ、というように、文科省ガイドラインも何もあったものではない「惑乱」ぶりだったわけです。


理研関係者らが、ネイチャー論文に根幹に関わる疑義があるというのであれば、まずはこのような異常な文科省とその意向を受けた理研当局の問題性を指摘し、本来の研究不正の調査の速やかな実施を提言するのが、物事の順序というものです。
ガバナンスの問題云々を言うのであれば、この点に対してこそ問題提起すべきであり、研究不正規程にいうところの本来の「研究不正」の有無の検証はこれからという段階で、このようなガバナンス、運営の再構築云々などの提言をする状況では全くありません。
 
それでは、なぜ、「研究不正規程に基づいて徹底調査すべし」との提言は一切なされなかったのか?という疑問についてですが、それは、自己点検委の目的からすれば、そういう徹底調査はかえって邪魔だったということでしょう。
初めから、今回の件をテコとして、分子生物学会の主要メンバーの研究者たちの理研への影響力を強め、CDBの運営、人事に至るまで関与できるようにするための仕掛け作りを目指していたのだとすれば、石井調査委による何らかの「研究不正」認定さえあれば、十分だったのではないでしょうか。世間に、その認定を以て、巷間指摘されていたような根幹に関わる疑念がやはりあり、STAP細胞は捏造だったかのような印象付けができさえすれば、レター論文も含めた追加的な徹底調査などは、かえって不確定要因を増やしてしまう恐れがあると考えたのではないかと想像されます。


 つまり、アーティクル論文の問題だけであれば、例の報告書内容である、採用の不透明性だ、秘密主義だ、オープンな共有・検討の機会の排除だ、囲い込みだ云々の、「運営・ガバナンス改革」の提言の理由付けにする材料を小保方氏と笹井氏の問題だけに収斂できますが、レター論文も含めての調査となってくると、今度は若山氏の問題にも当然なってきますので、時間もかかる上、小保方氏だけの問題に収斂できなくなってきます。それは、自己点検委の潜在目的からすれば、阻害要因になるだけでしょう。
 彼らからすれば、早く、彼らの提言を実現させることが目的なわけですから、「小保方氏が主犯、笹井氏が共犯であり、若山氏は側面支援に留まる」という構図を早期に既成事実化し、それを前提とした運営・組織改革の提言に改革委からお墨付きを得たいと考えていたと思われます。
 それが、「徹底調査を!」という、本来主張すべきことに何らの言及もなされなかった理由でしょう。
 ※ もちろん、そういう主張は、所管省庁である文科省の方針に異を唱えることになって、その逆鱗に触れるためしなかった、という面もあると思います。

 
疑問3:ごく短期間で報告書案ができており、結論ありきの印象が濃厚。
 
3月中旬に自己点検委の構想とシナリオができたのち、3月末に石井調査委が不正認定を行い、ただちに43日に理事長から自己点検指示を出させたあとは、驚くべきスピードで、報告書案はまとまりました。同11日に第一回会合を開いたと思ったら、1週間も経たない同17日には「報告書たたき台」が提出され、同23日には「報告書案」が提出されています。あとは、不服申立て却下を見極めた上で、最後の511日会合で「報告書案」を実質的にセットしたという流れです。
ああいう内容が、この間の議論だけで初めて提起・検討されて固まるはずもなく、点検チームである(長期政権の上層部からの奪権を目論む)理研幹部とその下の関係者らの手によって、始まる前から既に報告書案はできていたということでしょう。
 
 そして、既に述べたように、5月19日に、依頼した外部有識者から、「遠藤氏の手法は正しいが、その解析結果によって、STAP細胞がES細胞だとすることには無理がある」との評価書が提出されたわけですが、それでは自己点検委の「STAP細胞は捏造」との前提とは相容れないことは明白です。そのためでしょう、それを点検委報告書に盛り込むこともせず、遠藤氏と若山氏の解析に依拠しようとしていた改革委にも報告もせず、結果、「前代未聞の不正」「世界三大不正」という改革委の評価を引き出し、既成事実化することに「成功」したというわけです。