理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

5 【再論】早稲田大の小保方氏学位剥奪処分の不当性(5)―調査報告書の分析③


(5)報告書は、「小保方氏主張論文」が「小保方氏が真に提出しようとしていた最終的な完成版の博士論文である可能性は相当程度ある」と評価していること。
 
 調査報告書には、いくつかの段階別に博士論文が峻別されており、書かれている評価がどの博士論文を対象としたものかを慎重に確認しないと、混乱してしまいます(実際、さまざまなコメントを見ても混乱しています)。
 そして、どの博士論文までが、小保方氏が書いていたと認定されているのかが、猶予付き取消処分後の「訂正指導」「論文指導」のスタート時点を決めることになると思われます。
訂正、指導のゴールとなるのは、上記の(2)で述べた、報告書が指摘する箇所のうち、「小保方氏主張論文」でもまだ残っている箇所の訂正、修正のはずです。
 
 まず整理すると、小保方氏の博士論文に関しては、次のようなものが、報告書では述べられています。それぞれについての認定内容をまずまとめておきます。
 
「本件学位論文」―間違って提出・審査されて学位授与され、製本されたもの。公聴会以前の初期の草稿と認定。
公聴会時論文」―審査会前に実質審査する公聴会に提出された論文。説明用のPPT資料と照らし合わせながら、コアとなる画像の存在も確認したとの主査等の証言により、実在を認定。ただし、PPT資料は残っているが、「公聴会時論文」は残っていない(模様)。
「小保方氏主張論文」―小保方氏が審査会に本来提出する予定だったと主張する論文。昨年5月末に紙で提出し、6月に電子メールで提出。小保方氏の主張は裏付けられる旨認定。
「小保方氏が真に提出しようとしていた最終的な完成版の博士論文」―「「小保方氏主張論文」と全く同一である可能性は相当程度ある」との評価。
「博士学位の意義に値する博士論文」公聴会後に、公聴会時論文にあった報告書指摘の問題点の修正を行うことにより、小保方氏が作成できたはずと報告書が述べるもの。
 
 これらの峻別を間違うと、これまでしばしばあったように、議論がかみ合いません。
 
 調査報告書では、学位を与えた形になっているのが、間違って提出・製本された「本件学位論文」を対象として調査し、その問題点について考察しており、しばしば引用される次の報告書最後の「結語」の文言も、この「本件学位論文」を対象としたものです。
 
「本報告書記載の調査結果のとおり、本件博士論文には、著作権侵害行為、創作者誤認惹起行為、意味不明な記載、論旨が不明瞭な記載、Tissue誌論文との記載内容と整合性がない記載、及び論文の形式上の不備と多くの問題箇所が認められた。そして、本来であれば、これらの問題箇所を含む本件博士論文が博士論文審査において合格に値しないこと、本件博士論文の作成者である小保方氏が博士学位を授与されるべき人物に値しないことも、本報告書で検討したとおりである。」
 
 当初、報告書の中味を読まずに、最初の問題点の列挙と、この結語だけを読んで、早合点してしまった人も多いわけですが、しかし、この報告書の実質的なポイントは、p29以下の「2.本委員会による認定の補足」の調査、記述部分にあります。
 「本件学位論文」が、公聴会よりも前の初期の草稿だと認定されていることは、もう周知のことだと思います。問題点①~㉔までが、この初期の草稿にはあったというわけですが、それがその後、どう消えていったのか、依然として残ったのはどこなのか?を、改めて整理しておきたいと思います。
 
A 「公聴会時論文」
公聴会時論文」については、現存していないようです。しかし、常田氏、武岡氏ら主査、副査が証言において、事前に閲読され、公聴会時にパワーポイントのプレゼン資料と照らし合わせて確認しながら聴講していた旨を述べていたことから、テラトーマ形成実験結果を示す鍵となる3つの画像が配置されていたことが認定されています。
 
「ⅰ 平成2317日頃、小保方氏は、論文審査員の主査を務める常田氏、及び副査を務める武岡氏に対して、公聴会時論文を手交した。小保方氏が公聴会時論文を手交した目的は、公聴会の際に、主査及び副査からその内容について修正指導をもらうことにあった。そのため、常田氏及び武岡氏は、公聴会時論文を受領した日から公聴会が開催された平成23111日までの間に、公聴会時論文の内容を閲読していた。
ii. 平成23111日に開催された本件公聴会において、小保方氏は、論文審査員を務める常田氏、武岡氏及びR氏を含む公聴会の出席者に対して、小保方氏の研究成果についてのプレゼンテーションを行った。当該プレゼンテーションの内容は、小保方氏が公聴会時論文の要約である本件プレゼンテーション資料を参加者に配布するとともに、その資料内容と同じパワーポイント資料をスクリーンに投影した形で行われた。その際、主査及び副査は、公聴会時論文を確認しながら、プレゼンテーションを聴講していた。」(p35
 
「ⅴ 主査及び副査は、公聴会時論文の内容を閲読した上で、本件公聴会に出席し、かつ公聴会時論文の内容を確認しながら、本件公聴会における小保方氏のプレゼンテーションを聴講していた。本件プレゼンテーション資料が、公聴会時論文の要約であることからすれば、テラトーマ形成実験の結果を示す画像について、本件プレゼンテーション資料の内容と公聴会時論文の内容に相違点があれば、主査及び副査が、当該相違点に気が付き注意するものであるが、本件公聴会においては、主査の常田氏及び副査の武岡氏はそれに気付かず、また、他の副査であるR氏からもその旨の注意はなされなかった。
これらの事実に照らすと、公聴会時論文には、本件プレゼンテーション資料46頁、47頁及び48頁のスライドの画像と同様に、小保方氏のテラトーマ形成実験の結果を示す3つのFigureが掲載されていたと推認できる。」(p36
 
 このように、「公聴会時論文」その実在とコアとなる実験結果画像が記載されていたことが認定されています。
 この公聴会時論文での問題点として何があったか、については、現存していないために明確に確認はできないわけですが、既に紹介したように、常田氏の修正指導の記憶では、主として、「第1章の参考文献の記載がないので、するように」という点だったと書かれています。
 
(m)公聴会時論文を作成し、これを常田氏に対して手交した。常田氏は、本公聴会において、小保方氏に対し、公聴会時論文の複数の修正点について、公聴会時論文に赤字で書き込んだ68。」
68 常田氏は、第1章に参考文献の記載がないこと等を具体的な問題点として指摘したと述べるが、参考文献が個々の章ごとに記載されていたのか、第5章の最後に纏めて記載されていたのか明確ではない等とも述べており、この点に関する常田氏の供述の基礎となる記憶の信頼性は必ずしも高くない。」
 
 「小保方氏主張論文」では、参考文献の記載の問題点は、既に解消されていますから、この赤字の訂正部分は修正されたと捉えられているかと思います。
 
 なお、常田氏の修正指導箇所の記憶が、参考文献の箇所程度のものと推定される材料として、赤字で書いて小保方氏に渡した修正箇所を、その後修正されているか確認していなかったということが挙げられます。
 
「本研究科・本専攻の学位授与の審査過程においては、公聴会までの間は、指導教員(主査)及び副査が博士論文を精査することが予定されているものの、公聴会後、特にいったん博士論文が完成し製本されてしまった後には、その内容について、誰一人閲読せずに、博士論文として合格し、学位が授与され得る制度及び運用となっている。このことは、主査及び副査が審査し公聴会において合格相当であると話し合われた博士論文が、公聴会でなされた指示通りに修正された上で製本され審査分科会等に提出されるものであることを担保するシステムがないことを意味する。また、それにとどまらず、主査及び副査が公聴会において審査した博士論文とは全く異なる内容の博士論文が製本された上で審査分科会等に提出されることを防止するシステムがないことをも意味する。」P45
 
 上記の一文は、常田氏らが、赤字で訂正した箇所が反映されているか確認しなかったことを意味していますが、逆にいうと、その程度の形式的な「訂正」内容だったことを推測させるものです。これがもし、本質に関わるような点であれば、必ずチェックするでしょうし、そもそも公聴会で、「合格相当と判定」はできないはずです。
 報告書でも、参考文献程度の修正については、次のように述べています。
 
「本件公聴会において、武岡氏が、小保方氏に対して、参考文献に番号を付すべきとの修正指示を行ったとの事実が認められるところ、経験則に照らせば、学位請求者である小保方氏は、かかる武岡氏の指示に従うことが通常である(特に、参考文献の番号付け等の修正が容易なものについては、なおさらである。)。」P38
 
 その程度の修正であれば、簡単であるし当然直すだろうとの暗黙の認識があったわけであり、赤字で修正箇所を書いて渡したとなれば、なおのこと、確認するまでもないと暗々裡に思ったことでしょう。
 
B 「小保方氏主張論文」
 「小保方氏主張論文」は、平成26624日にワードファイルが提出されていますが、報じられたように、直前に更新履歴があったため、問題化した後にそれらの解消のための修正を加えたのではないか、と疑われたものです。
 調査委員会は、その点も含めて検討した上で、「小保方氏が真に提出しようとしていた最終的な完成版の博士論文」として、証拠に基づき完全に確定ではありませんが、「可能性は相当程度ある」として、実質的にはそれに近い旨評価しています。
 
 報告書では、学位授与の直接の対象となった「本件学位論文」と「小保方氏主張論文」の内容の対比を行っています。
 
b. 本件博士論文と小保方氏主張論文との主な差異の検討
本件博士論文と小保方氏主張論文との主な差異は、概要、以下のとおりである。
(a)本件博士論文においては参考文献の番号が本文に個別的に記載されていないのに対し、小保方氏主張論文においては、それが記載されており、問題箇所①についても、各段落の末尾に転載元①に該当する文献番号が13回記載されている44
(b)本件博士論文においては第2章から第5章の各章の末尾に参考文献が列挙されているのに対し、小保方氏主張論文においては第5章の末尾に参考文献が纏めて列挙されている。
(c)小保方氏主張論文には、問題箇所④、⑥、⑦及び⑨は存在せず、小保方氏主張論文に参考文献として記載されているものには、著作権侵害行為、及び創作者誤認惹起的行為にあたる記載はない。
(d)本件博士論文にあるFig. 7(注:問題箇所⑩)は、小保方氏主張論文には存在しない。
(e)本件博士論文のFig. 10(注:問題箇所⑤)は小保方氏主張論文には存在しない。
(f)本件博士論文には、小保方氏のテラトーマ形成実験の結果を示すFigure2つ(本件博士論文のFig.18及びFig. 19)(注:問題箇所⑳㉑)であるのに対し、小保方氏主張論文のFigure3つ(小保方氏主張論文のFig.16Fig. 17及びFig. 18)である。」(P3435
 
(p)②、③の1、③の2、③の3等の多くの問題箇所は、小保方氏主張論文においても、依然として認められる。」(p60
 
 これらの記述からすると、初期草稿である「本件学位論文」で問題箇所として指摘された24カ所のうち、①~⑦、⑨⑩、⑳㉑は、解消されているということになります。
 ただ、問題箇所①の、NIHサイトからの借用は、参考文献番号が15カ所振ってあると認めており、ただ、引用箇所が特定されていないことや多量であることが、依然として問題とされているというものです(p34の注釈)。
 そうすると、「小保方氏主張論文」で残っている問題箇所は、
 
    NIHサイトの文章の借用。ただし参考文献としては細かく明示)、
②~③(1-3)(企業サイトから借用したクリップアート的な臓器の絵)
⑧(企業サイトから借用したクリップアート的な白いマウスの絵)
 
 ということはわかりますが、次の箇所はどうなのでしょうか?
 
⑪~⑯(意味不明、論旨が不明瞭な記載がある箇所)、
⑰~⑲(Tissue 誌論文の記載内容との整合性がない箇所)
㉒~㉔(論文の形式上の不備がある箇所
 
 これらについては、この対比した箇所では明確には書かれていませんが、しかし、もしこれらに問題箇所が「小保方氏主張論文」に残っているとすれば、これだけ詳細に対比している以上、記載するでしょうし、また、提出する論文を取り違えたとする小保方氏の主張の当否について検討した箇所で、次のように述べられていることからすれば、既に解消されていると考えられます(残っているとすれば、本件博士論文が初期段階のものだったとの主張を否定する材料になるわけですから)。
 
(c)上記.1.において検討したとおり、本件博士論文には、意味不明な記載や趣旨不明瞭な記載が認められるところ、論文の作成初期段階に、これらの記載を行い、その後、完成版の論文に至るまでの段階で、これらの記載を修正していくという、論文の一般的な作成過程に鑑みれば、本件博士論文に意味不明な記載や趣旨不明瞭な記載が存在することは、本件博士論文が博士論文の作成初期段階のものであったことを伺わせる。」p38
 
 こうやって子細に報告書を見てくれば、小保方氏が、本来、審査会に提出・製本するはずだったと主張する「小保方氏主張論文」において、報告書が、草稿と認定された「本件博士論文」で残っている問題箇所は、次の箇所だけということがわかります。
 
①(NIHサイトの文章の借用。ただし参考文献としては細かく明示)、
②~③(1-3)(企業サイトから借用したクリップアート的な臓器の絵)
⑧(企業サイトから借用したクリップアート的な白いマウスの絵)
 
 これらが実際どういうものかは、報告書の付属資料を直接読んでみれば、②、③(1-3)、⑧などは、直ちに理解できます。以下を開いて、33枚目に掲載してある通り、本論部分とは関係がなく、報告書が述べる通り、「基本的概念に関する一般的・基礎的な知識をわかりやすく説明するための簡便な図であって、論文の本質的な部分ではないといえる」ものに過ぎません。
 
最初の①のNIHサイトの借用にしても、「幹細胞とは?」から始まる基礎用語の解説の類いであり、序論だから知識、課題を披瀝する重要部分であるという一般論からは想像もできません。それをことさらに盗用だ、コピペだとして、あたかも、論文の本質部分に盗用があったかのように印象づけようとするのは、フェアではありません。
 
昨年10月に報告書が発表された直後に、本ブログで書いた記事で、
「問題箇所一覧の次に、具体的な問題として、「コピペ」の具体的内容がすべて書いてあります。思わず笑ってしまった…と言っては不謹慎でしょうか・・・?
こんな程度(と言ってはいけないのでしょうが・・・)の話が、これまで仰々しく、学位論文コピペだ、捏造だと騒がれてきた実質だったのか・・・と思うと、脱力してしまいました。」
と書きましたが、その印象は、今も変わりません。
 
 NIHのサイトからの借用にしても、報告書が指摘する問題性は、「小保方氏主張論文」に関しては、かなり低いものになっています。
 まず、「本件学位論文」に関しても、次のように注釈をつけています。
 
11 なお、NIHの担当者の供述によると、転載元①の著作者は米国連邦政府の機関であるNIHであるところ、米国連邦著作権法によれば、NIHは転載元①について著作権法の保護を享受できず、著作権もないとする考え方もありうる。しかし、本件博士論文は我が国で作成されたものであるから、著作権の享有主体性の判断の準拠法は日本法であり、米国連邦著作権法105条は適用されず、NIHが転載元著作権を有すると解すことができる(田村善之「著作権法概説(第2版)」574頁注3、加戸守行「著作権法逐条講義(6訂新版)」425頁参照。)。」p1011
 
そして、「小保方氏主張論文」に関しては,次のように述べています。
 
44 本文に番号が個別的に記載されているとはいえ、引用部分の特定がなされていない上、問題箇所①が約4500語にわたる多量の転載行為であること等に鑑みると、転載元①に該当する文献番号が記載されているからといって、問題箇所①が、引用(著作権法32条)その他、著作権法上、適法とされる要件を充足することにはならない。そのため、小保方氏主張論文においても、著作権侵害行為であって、創作者誤認惹起行為である問題箇所①は、依然として存在するといえる。なお、問題箇所②、③の1、③の2、③の3及び⑧については、参考文献番号は記載されていない。」p34
 
 NIHのサイトの文章は、米国内では著作権自体がないパブリックドメインであり、誰でも自由に出所記載なく使えるということです。ただ、日本国内では、著作権があると学説を引いて述べていますが、相互主義の観点から本当にそうなのか疑問もありますし(公定解釈もありません)、日本でも、政府機関の著作物は、許諾なく「転載」できるという規定があります。この転載は、出所を示す必要はもちろんありますが、丸ごと使うことも認められています。その点が「引用」とは異なるところです。
 
「第三十二条
  国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。」
 
 転載部分が、具体的にどこからどこと明確に区別できないのは確かですが、ごく基礎的な解説部分であることや、小保方氏が、15カ所に亘って参考文献として掲げていることを念頭に入れれば、当初の「本件学位論文」の問題性よりははるかに低くなっていると思われます。
 
 さて、そのように、問題箇所が数カ所に絞られた「小保方氏主張論文」ですが、これが、
「小保方氏が真に提出しようとしていた最終的な完成版の博士論文」として評価できるのかどうか、という点が問題となりますが、報告書は、そう評価できると実質的に認めています(配布された要約ペーパーでは、下記フレーズの「証拠が十分にないというべきである」という箇所までになっていますが、それは正確な要約とはいえません)。
 
 
「かかる認定(注:「本件博士論文」が公聴会以前の初期の草稿である旨)のあと、次に問題となるのは、小保方氏が、最終的な完成版の博士論文として真に提出しようとしていた博士論文の内容である。
この点、小保方氏が供述するとおり、本調査において小保方氏が本委員会に対して提出した小保方氏主張論文が、最終的な完成版の博士論文と全く同一である可能性は相当程度あるといえる。
しかし、小保方氏が、マスコミ等で疑義が示された点について、最近になって修正等した上で論文を作成し直す時間的余裕が存在していたこと等に鑑みれば、小保方氏主張論文には、最近になってなされた修正が含まれている可能性を完全には否定できず、小保方氏主張論文が最終的な完成版の博士論文と全く同一であると認定するには、証拠が十分にないというべきである49
したがって、小保方氏が真に提出しようとしていた最終的な完成版の博士論文については、その内容を完全には確定することはできないということとなる。
そのため、小保方氏主張論文には存在しない問題箇所④、⑥、⑦及び⑨、並びに問題箇所⑤が、小保方氏が真に提出しようとしていた最終的な完成版の博士論文に存在していたか否かについて、さらに検討する必要がある。」(p4041
 
 として、その後に、p41~43にかけて検討を加えた結果、問題箇所④、⑥、⑦及び⑨、並びに問題箇所⑤は


「小保方氏が、最終的な完成版の博士論文として真に提出しようとしていた博士論文には、存在しなかったと推認できる。」

と結論しています。
なお、取り違えの主張について生じる疑問については、次のような理由で否定しています。
 
(d)小保方氏主張論文が、本件博士論文の問題点を指摘され、最近作成したものだとすれば、「問題がある」等として報道等において厳しく批判がなされた序章の修正もなされているのが通常であるが、小保方氏主張論文の序章においては、この点が修正等されず残されている。また、ウェブサイトにおいて「問題がある」等として取り上げられているFig. 6の画像、Fig. 12Iの画像、Fig. 17等の修正がなされているのが通常であるが、やはり、小保方氏主張論文においては修正等されず残されている。
(e)本件博士論文を作成していた当時、小保方氏は、大病を患う母親の看病、U氏とのキメラマウスの作製に関する実験等において、本件博士論文の作成に多くの時間をかけられなかった。このような状況からすれば、作成初期段階の博士論文を完成版と誤って製本したとの小保方氏の主張は、あながち荒唐無稽であるともいえない。」p38
 
「本調査において、小保方氏から本取り違えの主張が初めてなされたのは、(a)平成26430日であったが、小保方氏が本委員会に対して小保方氏主張論文を送付したのは、同年527日であり、主張が初めてなされた時点から小保方氏主張論文の送付がなされるまでに1か月程度の期間が経過しており、このことは、本取り違えの主張の真実性を否定する可能性がある。
しかし、関係各証拠によると、「小保方氏は、本調査の期間中、病気を患い、入院中であったこと」、「小保方氏は、病気を患いながら、理研が本調査と並行して行っていたNature誌論文に関する調査への対応にあたっていたこと」等の事実が認められ、これらの事実によると、小保方氏は、本調査への対応に十分な時間を確保することができなかったことが伺える。さらに、小保方氏の供述等に照らすと、小保方氏は、本件博士論文を2冊しか製本せず、そのいずれも大学に提出したため、自分では本件博士論文を所持しておらず、本調査の対象となっている博士論文自体を把握できていなかった可能性も高いといえる。これらの事情に照らすと、小保方氏主張論文の送付までに一定程度の時間が必要であると考えることは合理的であり、小保方氏主張論文の送付までに1か月の期間がかかったことは、必ずしも本取り違えの主張の真実性を否定する事情とはならない。」p39
 
 として、小保方氏の取り違え主張を認めています。
 かくして、報告書が検証しようとした点である、
「小保方氏が供述するとおり、本調査において小保方氏が本委員会に対して提出した小保方氏主張論文が、最終的な完成版の博士論文と全く同一である可能性は相当程度あるといえる。」
 という点は、否定する事情はないとされたということになります。