理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

3 【再論】早稲田大の小保方氏学位剥奪処分の不当性(3)―調査報告書の分析①..

 以下、調査報告書の内容を、改めて順次検討していきます。
 
(1)論文調査報告書の作成に当たっては、常田氏を除く審査分科会メンバーによる確認・精査の自主調査結果も踏まえたものとなっていること。
 これは、冒頭の調査経緯からわかります(読みやすくなるように括弧内の文言を適宜省略して引用します)。
 
「当該報道を発端として、小保方氏が本専攻の博士課程在籍時にFirst Authorとして執筆し「Tissue誌」に掲載された幹細胞の万能性に関する論文(「Tissue誌論文」)、及び小保方氏がTissue誌論文の内容をもとに本研究科の博士学位論文として執筆し国会図書館に所蔵されていた論文(「本件博士論文」)についても、その問題点が指摘されるに至った。
この事態を受け、本専攻の教員により構成される本専攻の審査分科会は、本件博士論文の内容の確認を目的とする調査(「本件自主調査」)を行った。本件自主調査においては、平成26221日から平成26315日までの間、本件博士論文の論文審査において論文審査員の主任審査員(「主査」)を務めた常田聡氏を除く本専攻の審査分科会の構成員によって、本件博士論文の不備・問題点の確認・精査が行われた。
本件自主調査の結果、本件博士論文に不備や問題点が数多く認められると判断した本専攻の審査分科会は、平成26315日、本研究科の研究科長であるA氏に対して、本件博士論文についての調査委員会の設置を要請した。この要請を受けた本研究科は、平成26317日、早稲田大学の鎌田薫総長に対し、本件博士論文に関する厳正かつ慎重な調査を行うことを目的として、本研究科の外に調査委員会を設置することを依頼した。
平成26328日、早稲田大学は、上記本研究科からの依頼に基づき、本件博士論文の問題点、指導過程・審査過程における問題点の検証等を行うことを目的とする調査委員会を総長の下に設置することを決定し、同月31日、「大学院先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会」を設置した。」P12
 
(2) 本委員会は、本件博士論文の作成過程、作成指導過程、小保方氏への博士学位授与に係る審査過程等の事実調査を目的として、平成26411日から520日の間に、平成2329日に開催された本専攻の審査分科会による小保方氏に対する博士学位授与に係る審査時に審査分科会の構成員であったD氏、E氏、F氏、G氏、H氏、I氏、J氏、K氏及びL氏に対する事情聴取を実施した。
(3) 本委員会は、平成2652日、本件審査分科会審査には関与していないものの本件自主調査に参加し、本件博士論文の不備・問題点の確認・精査を行ったM氏に対する事情聴取も実施した。(中略)
(6) 本委員会は、上記の他、本研究科及び本専攻の関係者から、本調査に関する資料を受領し、その内容を検討した。P34
 
(2)の審査分科会メンバーに対する事情聴取は、「審査過程等の事実調査を目的として」とありますので、同メンバーも参加した自主調査結果内容についての聴取も含まれるのかどうかは、この文章からは明確ではありませんが、(3)の審査分科会メンバー外で自主調査に参加した者から、自主調査内容について聴取していることからすれば、当然、審査分科会メンバーからも自主調査内容について聴取したものと考えられます。
また、(6)で審査分科会メンバー以外の関係者からも諸試料を受領して検討対象としていますから、この調査時点で、問題とされた点は網羅していたと考えられます。それらの中には、Tissue誌論文の内容の信憑性及び妥当性についての問題指摘も含まれていたでしょうが、次の記載からみると、それらは調査対象外として参照されていません。
 
「本調査において実施した関係者に対する事情聴取の一覧は、別紙ヒアリング対象者一覧のとおりである。なお、Nature誌論文及びTissue誌論文の内容の信憑性及び妥当性については、本調査の対象ではないため、これらの論文に関する資料は、本件博士論文の検証に必要な範囲でのみ参照することとした。P3
 
 したがって、審査分科会メンバーらによる自主調査結果やその他の者から寄せられた問題指摘のうち、Tissue誌論文の内容の信憑性及び妥当性に関するものを除けば、すべて調査の俎上に載せられて、その結果が、報告書に反映されたということになります。
 
なお、巷間、論文調査委員会報告書は、小林弁護士ら法律的視点が前面に出すぎていて、科学者の視点が欠けているかのように批判する向きもありますが、それは間違いでしょう。
調査委員会のメンバーとしては、P2にある通り、全体が5人で、うち3人は、早稲田大の教授、国立大、東大の名誉教授(いずれも医学博士)であり、問題点のスクリーニングや評価に際しては、これらの3教授が専門家、科学者としてしかるべく作業を行ったはずです。
 

(2)昨年10月の猶予条件付き取消処分が決定された際に、「訂正」対象、「論文指導」対象とされる部分は、報告書で指摘された24カ所に限定されること。
 
 上記(1)の経緯を踏まえれば、仮に審査分科会メンバーが指導、審査するとしたならば、指摘したであろう問題点は、報告書で子細に整理されている24カ所に限られることになります。
Tissue誌論文の内容の信憑性及び妥当性に関する問題点については対象外であることは、今回の総長会見でも再確認されていましたから、なおのことそうなります。
 この点は、どういう問題指摘をしたのか?という質問に対する副総長の回答との関係で、重要な判断材料になります。
 
 その21カ所の問題点ですが、昨年7月時点で書いた記事でも述べましたが、論文の実質と関係あるものではありません。
 
◎「【補足1】小保方氏学位論文の「不正」なるものが、論文の実質に影響を全く与えないという点について」
 
 問題箇所は、報告書の「別紙」でわかりやすく整理されています。
 
問題類型としては、次のようになります。
なお、これらは、小保方氏が間違って初期の草稿段階のものを提出・製本してしまった論文(「本件博士論文」)に関するものであり、実際に公聴会で合格相当と評価されたと事実認定された「公聴会時論文」や、「最終的な完成版の博士論文と全く同一である(とは証拠が十分にないため確定できないものの)可能性は相当程度ある」旨認定された「小保方氏主張論文」では、かなりの部分が消えているはずです。その点は、この後に整理して述べます。
 
A 著作権侵害行為であり、かつ創作者誤認惹起行為といえる箇所
ⅰ 初歩的イントロ的解説(用語解説等)のため、米国政府NIHの基本QAの文章を使ったもの(問題点①)
ⅱ イメージを図示するときに、「クリップアート」的に図を借用したもの(問題点②③⑤⑧)。
ⅲ 参考文献の記載のために、他の複数の書籍での例を仮置で転載したもの(問題点④⑥⑦⑨)
B 意味不明、論旨不明瞭な記載といえる箇所(問題点⑩~⑯)
C Tissue 誌論文の記載内容との整合性がない箇所
 (写真や図がほとんど)(問題点⑰~㉑)
D 論文の形式上の不備がある箇所(問題点㉒~㉔)
E 誤字脱字
 
 なお、指摘されたこれらの問題点の中には、常田氏が、公聴会時論文に赤字で書き込んだとする複数の修正点も含まれているのかどうか、明確ではありませんが、以下の報告書の記述からすると、主として、参考文献の記載振りの話と思われます。
 
「平成2317日頃、小保方氏は、本件公聴会での審査の対象として、公聴会時論文を作成し、これを常田氏に対して手交した。常田氏は、本件公聴会において、小保方氏に対し、公聴会時論文の複数の修正点について、公聴会時論文に赤字で書き込んだ68。」
 
68 常田氏は、第1章に参考文献の記載がないこと等を具体的な問題点として指摘したと述べるが、参考文献が個々の章ごとに記載されていたのか、第5章の最後に纏めて記載されていたのか明確ではない等とも述べており、この点に関する常田氏の供述の基礎となる記憶の信頼性は必ずしも高くない。」
 
 いずれにしても、取消処分の前提となる「問題点」は、報告書の示された24カ所に限定されることになります。


 なお、このことは、指導教官である常田教授への処分理由からも裏付けられます。指導が十分でなかった理由は、24の問題箇所に関するものであることは明確です。どこにも、「科学的根拠や論理的記述」が不十分ということは書かれていません。
 
(a) 公聴会時論文作成に至るまでの義務違反
(中略)
そして、小保方氏が本件公聴会における指導を受けて修正したと述べる小保方氏主張論文においてすら本件博士論文に存在する問題箇所の多くが依然として認められることからすると、公聴会時論文においても、上記.1.の本件博士 論文に存在する問題箇所が多く存在していたことが推認できるのであって、常田氏が、本件公聴会までに指導教員として博士論文の内容等について十分な研 究指導を行ったとは認められない。
(b) 本件公聴会時の義務違反
 本件公聴会において、常田氏は、小保方氏の指導教員として、公聴会時論文 の内容を適切に審査し、小保方氏に対し適切な修正指示を行うべきであった。そうすれば、本件公聴会後に小保方氏が公聴会時論文の修正を行うことにより、 小保方氏が、博士学位の意義に値する博士論文を作成できた可能性があった。 しかし、小保方氏が本件公聴会における指導を受けて修正したと述べる小保方氏主張論文においてすら、上記.1.の本件博士論文に存在した問題箇所の多くが依然として存在しているのであって、常田氏が、指導教員として、公聴会 論文について、十分な精査を行い、本件公聴会において適切な修正指示を行ったとは認められない。
 (c) 常田氏の指導教員としての義務違反
このように、常田氏は、小保方氏の指導教員として、小保方氏の研究の進捗状況を十分に確認しておらず、また本件博士論文の内容や作成作法等について の十分な研究指導を行っていない。かかる常田氏の行為は、誠実に小保方氏に 対して研究指導を行うべき指導教員としての義務を怠ったものといえる。特に、常田氏は、研究倫理に関する考え方や論文作成の作法や知識等の指導 については、小保方氏が外研を行っていたとはいえ、基本的には、早稲田大学 の学内で研究指導を行っている場合と同程度の指導を行うことが求められていたところ、上記.1.のとおり、小保方氏が、多数の著作権侵害行為及び創作者 誤認惹起行為を行っていたことからすれば、小保方氏の研究倫理に関する考え 方や論文作成の作法や知識等は不十分だったといえ、これらの事項に対する常田氏の指導は徹底されていなかったといえる。」(p60-61
 
 
(3)問題箇所の24カ所の訂正、修正がなされれば、「博士論文は合格し、博士学位の意義に値する博士論文を作成できた可能性があった」との認識に立っていること。
  
報告書で指摘された問題箇所の24カ所の訂正、修正がなされれば、合格であり、学位にふさわしい意義のあるものとなったはずだ、という認識に立っていたということは、次のように繰り返して出てくる記述から明らかです。
 
iii. 小保方氏の場合でも、このような本来あるべき審査がきちんと行われていれば、上記Ⅱ.1.で検討した問題箇所はすべて解消されその結果、博士論文は合格し、正しく博士の学位が与えられていた蓋然性が高い」(P52
 
「本件公聴会において、常田氏は、小保方氏の指導教員として、公聴会時論文の内容を適切に審査し、小保方氏に対し適切な修正指示を行うべきであった。そうすれば、本件公聴会後に小保方氏が公聴会時論文の修正を行うことにより、小保方氏が、博士学位の意義に値する博士論文を作成できた可能性があった。」(P61
 
「そして、適切な研究指導が行われていれば、小保方氏は、より適切な内容の博士学位の意義に値する博士論文を作成できた可能性があったにもかかわらず、常田氏のかかる指導教員としての義務違反により、小保方氏は、本件公聴会時点において、多数の問題箇所を含んでいたと推認できる公聴会時論文を作成する結果となった。」(P62


                             続く