理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

4 NHKスペシャルの放送倫理上の具体的問題点(4) 【STAP細胞不正の深層】


【ネイチャー誌インタビューの不自然さ】


 NHKは、STAP論文を掲載したネイチャー誌にインタビューをしています。これも、不自然さを感じさせるところがあります。
語ったことはごくわずかで、発言内容は「我々も画像の加工に注意を払う必要があった」ということのみです。ここで言う「画像の加工」とはなんのことでしょうか? 論文撤回の理由となった若山氏の6月発表の話とは思えません。
すぐに思い当たるのは、小保方氏が記者会見で説明していた、石井委員会から改竄認定を受けた電気泳動の写真の切り貼りのことです。小保方氏は、ネイチャー誌からは、二つの写真の間に線を引いておけばよかったとの指摘を事後に受けた旨を紹介していました。
このことは、2月時点で、若山氏も次のように、須田記者に説明していました。

「切り張りしたと指摘されている真ん中のレーンは、(比較対象となる)コントロールのデータ。生データでは離れていたレーンにあったか、間に関係ないレーンが挟まっていたのだろうが、右隣のOct4陽性細胞(STAP細胞)と比較しやすいよう、ここに持ってきたのではないか。一般には貼り付けてはいけないが、物差し(コントロール)の位置をずらしただけなのだとしたら、大きな問題ではない。むしろ、移動させたことが分かるように、白い線でも入れておけばよかった。大事なのは右隣(STAP細胞)のレーンなので、この図で示したい内容にも影響はない」(『捏造の科学者』p48-52
 
 STAP細胞の一連の不正の疑義の中で、この番組放映時点で、「画像の加工」という言葉で語られるのは、この改竄認定を受けた電気泳動の画像だけではないでしょうか?
 他方、笹井氏は、須田記者に対して、次のように述べており、ネイチャー側の慎重な姿勢を伝えています(ただし、これは3月中旬の時点)。
 
「ネイチャー側からは(3月)十三日、「撤回は今後の立証をほとんど不可能にするので、くれぐれも慎重に」という忠告を受けた。・・・欧米の研究者にとって、根幹の部分で結論が間違っているのが見つかったか、世の中で一定の期間が過ぎても全く再現されないか、どちらかのケースに該当する場合以外、考えられないということだ――。」P93
 
(参考)
 
 実際、マスコミは、あれだけネイチャー誌側が主体的に調査を進め、職権で撤回を検討しているかのように報じていましたが(4月以降、上記の姿勢は変わったのかもしれませんが)、ネイチャーが論文撤回の発表をした際には、淡々と、論文著者側からの申し出られた撤回理由を掲載したのみで、自らの判断は示していません。これは正直、拍子抜けの感がありました。著者たちからの撤回理由も、「その真実性を疑いの念無く述べることができない。」としつつ、STAP細胞の有無については検証実験が進められている旨言及されており、STAP細胞研究自体が捏造、架空のものであるとの前提には立っていません。
 そして、撤回理由のメインの理由だった若山氏の発表内容は、インタビュー時点で覆っています。ネイチャー誌にインタビューしたのがいつの時点なのかわかりませんが、若山氏の発表の誤りが未だ判明していないタイミングでしょう。それでも、「画像の加工」という言及しかしていないというのは、不自然な感があります。


 仮に、ネイチャーも、STAP細胞自体の存在に否定的な見方をしているのであれば、もっと別のいい方をしたのではないでしょうか。
 もし、ネイチャー誌側が、単に電気泳動画像の切り貼り加工の線引きの必要性のことを指して述べたにすぎない話を、あたかも、STAP細胞が捏造という印象付けをする中で使われたとすると、これは大きな問題となりえます。このネイチャー誌へのインタビューは、鍋島自己点検委員長の「笹井氏はこの一件で、人生をかけて積み上げてきた本当の大事なものを失った」と述べた直後に持ってきており、そのインタビューの後に、中山教授による「不正を働く人が段々増えているが、誰もそれを防止していない」という趣旨の締めくくりインタビューを持ってきています。
 もし、上記のような構図だったしたら、これは、放送倫理違反と判断された、テレビ朝日川内原発の安全審査に関する原子力規制委委員長の回答画面を、別の質問の答えであるかのように切り貼りした一件と共通するパターンかと思います。
 

【研究不正解明に関する文科省ガイドライン等を知らないまま再現実験等の凍結を求めていた分子生物学会の研究者の意見を一方的に流していることについて】


 分子生物学会は、小保方氏による再現実験や理研による検証実験の実施について、不正の解明が先決であり、税金の無駄遣いだとして強く批判し、その凍結を求める理事長声明を発表していました(74日付け)。この声明は、学会としての機関決定を経たものではありませんが、多くの学会理事の賛同を得ているとし、個別に支持表明している理事もいました(篠原教授ら)。
 しかし、この理事長声明は、研究不正の調査において、再現実験は被調査者にとっての権利として保証されているものであること、東大等の研究不正においても「嫌疑を晴らす機会」として、不正調査委側から求められていたこと等の、基礎知識を知らないままに発出された思い込みに基づくものでした。実際、大隅典子理事長(当時)は、自らのブログで、後に、文科省ガイドラインや規程での当該規定の存在を知らされたと紹介して上で、「不正調査規程等で保障されている手続きであれば仕方が無い」旨述べていました。これにより、同ガイドラインや規程における手続き規定の存在を知らないままに、「不正」の解明優先と再現実験、検証実験の凍結を提言していたことが明らかになりました。


 このことは、NHKスペシャルの番組において、中心的に発言していた九大の中山敬一教授も同様です。中山教授は、研究不正に詳しいとされる研究者ですが、昨年の文藝春秋6月号(510日発売)において、小保方氏のSTAP細胞研究は、「わが国における史上最大の捏造事件であると言っても過言ではない」「シェーン事件と小保方事件は、いろいろな点で酷似する」として、シェーン事件に匹敵する研究不正、即ち捏造だと断定していました。
 しかし、この記事を執筆したであろう4月下旬から5月初めにかけての時点で、STAP細胞研究自体が我が国での史上最大の捏造などと断じる根拠などなかったはずです(現時点でもありません)。記事でも言及していません。第一次の石井調査委員会は、STAP細胞の有無については判断していませんし、笹井氏、丹羽氏、2月の若山氏の発言(及びそれを裏付ける客観的データ)などにより、ES細胞混入では説明できない材料がありました。それらを否定する材料は、今に至るも誰からも提示されていません。にも拘らず、4月から5月初めという時点で、シェーン事件に匹敵する不正事件だと断じたということは、初めから強い思い込みがあったということに他なりません。
しかも、中山教授は、この文藝春秋の記事で、驚いたことに、不正調査に詳しいと言われながら、研究不正調査に関する文科省ガイドラインも、自らが勤める九州大の不正調査規程の存在も、記事執筆時点まで知らなかったと述べているのです。大隅理事長と同じだということです。「悪意」の意味も知らないままに激昂しています。
 つまり、理事長声明を指示した分子生物学会のメンバーたちは、「研究不正」の定義も、不正解明調査の手続きさえも、そして分子生物学会の主要メンバーだった東大教授らの不正調査の実際の進められ方さえも知らないままに、小保方氏のSTAP細胞研究を、捏造だと決めつけていたという構図です。不正として認定するためには、再現調査を行わせることは権利として保証されているにも拘わらず、その凍結を求めていたのが、「研究不正に詳しい」と言われた中山教授をはじめとした分子生物学会の幹部メンバーたちです。


 そういう同学会のメンバーたちが、NHKに協力して、番組の冒頭から、「こんなのはあり得ない」「単純ミスとは思えない」等と立て続けに述べて、STAP細胞の研究自体が捏造であるとの強烈な印象付けをすることに寄与した構図になっているのです。そして、番組の中途では、論文を皆で読みつつ(それまで読んでいなかったのでしょうか?)根拠を示さないまま「論文画像の7割、40点に不自然さや何らかの疑義」とし、番組最後には中山教授に「段々と不正を働く人が増えているが、誰も防止していない」と締めさせています。
研究不正の定義も知らず、不正調査の手続きも知らず、石井調査委員会もSTAP細胞の有無は判断していないとしている中で、そしてES細胞混入では説明できない材料が少なからずあるにも拘わらず、根拠なく捏造だと断定している分子生物学会の研究者たちが、同様に極めてバイアスのかかったNHKの番組作り、捏造の印象付けに、一貫して協力している形であって、いわば、利害と思い込みが一致するNHKと研究者たちの共同制作の感のある番組だったと言えましょう。
 
鍋島自己点検委員会委員長の発言にも、同様の決めつけがあります。番組では、
「笹井氏は、人生かけてやってきた本当に大事なものを、たった一つのことで失った」
 と述べました。石井委員会の不正認定だけであれば、そういう深刻な表現にはならないはずです。自己点検委員会報告書は、改革委報告書のベースとなったもので、小保方氏の採用経緯の「異例さ」や「秘密主義」を指摘しています。事実に反する話を書き、特許出願との関係に無理解な内容になっていて、竹市氏、笹井氏らCDB幹部の恣意性を滲みださせようとする意図が感じられます。ということは、鍋島氏を含む委員や事務局にも、そういう意図があったと想像されるところです。
 しかも、その事務局の職員らが、毎日新聞の須田記者にわざわざ自分から連絡して呼び寄せて全文リークしたのですから、この点検委の内容及び姿勢にも不公正さが多分に感じられるところです。そのヘッドである鍋島委員長の上記発言も同様に、笹井氏の不正関与、恣意的な組織運営を強く印象付ける不公正なものでした。