理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

2 NHKスペシャルの放送倫理上の具体的問題点(2) 【STAP細胞不正の深層】


【若山氏に確認すべき点を、何ら確認も言及もしていないこと】


(1)間違いだった6月の発表内容について
 ES細胞混入と見立てる大きな根拠となっていた若山氏の6月での会見内容(自分の研究室にいたマウスからはできない旨)が間違いだったことが判明し、訂正も、番組放映前の時点でなされていたにも拘わらず、それについて一切言及しないまま、6月の発表に即して番組で若山氏に話させています。この点は、決定的に大きな問題です。
 この若山氏の6月の発表が、論文撤回の主たる理由となったのですから、それが間違いだったとなると、撤回理由の根幹が揺らいでしまいます。科学界でも、世間の人々でも、論文撤回を以て、白紙に戻った、やはり間違いだったとの理解を概ねしたと思われますから、その撤回理由が間違いだったということは、根幹に関わる話です。ところが、NHKは、それには一切触れず、間違いだった内容をそのまま若山氏に語らせてしまっています。
 ナレーションでは、「これまで再現に成功した人がいないこと、異なる遺伝子が含まれていたこと、ES細胞ではないかとの疑問があること、こういった疑問に答えないまま検証を進めようとしている。」と語っていましたが、異なる遺伝子云々の若山氏の6月発表の話は、誤りであることが判明し、ES細胞ではないかという件については、上記の通り、ES細胞では説明できない材料が多々あることは、笹井氏、丹羽氏、若山氏自身が指摘していたことです。またこれまで再現に成功した人がいないという点は、何より若山氏自身がマウスから始めて一から成功していますし、難しいということは笹井氏が具体的に述べ、若山氏も詳細にメディアに語っています(後述)。そういうことを取り上げずに、疑問に答えないまま検証実験等をするのはおかしいとの指摘こそおかしく、初めからSTAP細胞捏造との番組シナリオがあったとしか思えません。およそ科学的ではありません。
 
(2)キメラマウス、STAP幹細胞等の作成実験の際の状況について
 STAP細胞がES細胞であったのであれば、若山氏がSTAP細胞を受精卵に注入してキメラマウスを作成した際の状況や、STAP細胞からSTAP幹細胞、FI幹細胞を作成した際の状況との矛盾にすぐに行き着くはずです。
 若山氏自身、STAP細胞からキメラマウスを作成する際、受精卵にSTAP細胞を注入する時の苦労を事細かに説明しています。
 
 通常は単一細胞で注入するところ、STAP細胞ではそれではうまくいかないため、細胞の塊を、旧技術である方法によりカッターで20個ほどの塊にして注入したら成功したということでした。その切断と注入の様子とは、電子顕微鏡の映像で鮮明に記録されています。しかし、これがES細胞だったのであれば、そのような苦労はすることはなく、すんなりと注入されたのではないでしょうか?そこでは、ES細胞との明らかな相違を認識していたはずです。何より大きさが違います。
 そしてまた、STAP細胞からSTAP幹細胞、FI幹細胞を作成した際、小保方氏がなかなかできなったものを、若山氏が、キメラマウス作成に成功した際のSTAP細胞から作成したら成功したとのことでした。STAP幹細胞がES細胞だったのであれば、ES細胞からES幹細胞を作ったということになりますが、それはおかしな話で、初めからES細胞だったのであれば、作業するまでもないことでしょう。FI幹細胞培養の培地にES細胞を置いたら、数回の継代の後ぼろぼろになって全滅したということは、丹羽氏が理研の記者会見で明らかにしています。これらの事実は、STAP細胞がES細胞だったとすれば説明できない事象ばかりであり、理研の記者会見で説明されていることです。


 また、若山氏自身は最終的には自ら確認していないとしてはいますが、キメラマウスの胎盤の緑色発光については、若山研究室の研究者たちも「お~っ!」と一斉に驚いたくらいですから(須田記者の『捏造の科学者』での描写)、ES細胞を使った場合の光り方とは明らかに相違があったということでしょう。そして、その研究者たちが見た画像は、若山氏もキメラマウス作成に複数回成功して感動して眺めた際に、見ているはずです。そのときに、胎盤部分の光り方はどうだったのか?ES細胞によるものと比べて差異を感じなかったのか? 若山研の研究者たちが驚嘆の声をあげたくらいですから、若山氏も同様だったはずです。だからこそ、切片を作って確認せよ、ということになったのでしょう。
 最初にキメラ作成に成功した際、「間違いではないのか?マウスの取り違いでははないのか?ESの混入ではないのか?」と思い返したと述べていますから(須田記者の書籍)、当然、胎盤部分の光り方に注目したはずです。胎盤の発光は、ES細胞ではないことの証左となりますから、それがどうだったのかを確認しないというのは極めて不自然です。
 以上のような根幹に関わる点について、作成実験を担当した若山氏に確認しないということは、基本的、初動的取材を怠ったものであり、極めて杜撰かつ不公正な取材であって、その上に立った番組構成もまた極めて不公正であることは言うまでもありません。
 
(3)若山氏自身が一からSTAP細胞を作成し、ES細胞とは明らかに異なる点があった旨述べていることについて
また、既に述べたように、若山氏は、昨年2月時点で(=撤回呼びかけ前の時点)、朝日新聞その他の内外のメディアによるインタビューで、山梨大に移る前に、小保方氏の指導により、自らがマウスから始めて一からSTAP細胞を作ることに成功したことを紹介しています。そして、そこからSTAP幹細胞を作ったが、ES細胞より簡単にできたこと、ESと対比して明らかに異なることを指摘して、ES細胞ではない旨を主張していました。
 STAP細胞がES細胞であったのであれば、この時に若山氏が作った細胞は何だったのか? ES細胞とは明らかに異なるとしていた点は一体何だったのか?ということが当然問題となってきます。これもまた、根幹に関わる話です。この点を、若山氏に確認もせず、番組で取り上げもしないということは、初めからES細胞窃盗・混入というストーリーにとっては都合の悪い事実であるために、あえて取材・確認をしなかったとしか思えません。もしこういう複数のマスコミ報道もされた基本的事実である若山氏の発言を知らなかったとしたら、2000ページ以上の内部資料を入手し、100人以上の学者に取材したというNHKの説明もその信頼性を失います。知っているのであれば、なぜ確認しなかったのか、確認したのであれば、どういう整理なのかを説明すべきです。
 
(4)キメラマウスやSTAP幹細胞作成の際の実験ノートについて
 この点は、別途、バイアスのかかった番組構成という視点から説明します。要は、キメラマウスの作成は、若山氏の担当だった以上、若山氏にその実験ノートの提供なり閲覧なりの取材をすべきだったはずだということです。
番組の中で、小保方氏の実験ノートにその過程が書いていないと批判していましたが、それは担当違いのお門違いであり、小保方氏の実験は空実験だったのではないかとの予断を視聴者に与える不公正なナレーションであったということです。
 
(5)留学生のES細胞容器について
 また、留学生のES細胞の容器がなくなったという件は、本番組が描こうとした「小保方氏による窃取→STAP細胞実験で混入・捏造」というストーリーに直結しています。番組の流れとして、若山氏が「自分の研究室にはいなかったマウスの遺伝子がSTAP幹細胞から見つかった」という例の「証言」をし、遠藤氏がアクロシンGFPのことに言及し、それを受けて若山氏がそれを使ったES細胞の混入を疑った、という説明のあとに、「ある事実が判明した」として留学生のES細胞紛失の話につなげていますから、どう見ても、この留学生のES細胞をSTAP細胞と偽って使ったという印象を与えます。
そして、それは山梨大に持って行く予定だったがなくなってその留学生は研究継続を断念したとされていました。その窃取は、留学生の研究を断念させざるを得ないような悪質な行為だったかのような印象づけをしています。山梨大が理研から通報を受け、若山研側はそれを探していたかのように報じられていましたが、しかし桂調査委員会報告では、小保方氏も若山氏も知らないと答えたとされています。
 それであれば、若山氏にこの留学生のES細胞の容器の件を確認すれば、若山研が引っ越しで持っていく予定だったとか、探していたとかの話は、根拠のないものだということが瞬時にわかったはずです。


 そして、そもそも、若山研にあった冷凍庫で、各研究者が自分のものをピックアップし後はどうしたのか? 持ち主不明のジャンク細胞を残したまま山梨大に移ったのか、それとも廃棄して空にしてから移ったのか?といった基本的状況について、確認もしていません。おそらく、持ち主不明のジャンク細胞を残したまま山梨大に移ったと想像されますが、それであれば、小保方氏が、「若山研から譲り受けた」という証言とも符号し、おそらく真相は、ジャンク細胞が入ったままの冷凍庫を譲り受けたということでしょう。
 その辺の状況は、若山氏でなくても、理研当局に照会すればわかるはずです。細胞と言えども、備品の一種でしょうし、実際、山梨大に引っ越すときには事細かに移管する細胞群が書かれています。その中に、引っ越し時に紛失したES細胞も移管されるべきものして扱われていたのかどうかは,留学生の話からすれば当然確認すべき事項です(木星通信さんの情報公開請求結果を見れば、実際には、そういうものはなかったということではないのでしょうか?)そういう初動対応に属する取材を何らせず、小保方氏を執拗に追いかけ回し、ナレーションで「なぜその容器が小保方氏の元にあるのか、小保方氏に答えてもらいたいと私たちは思っています」と述べて、あたかも小保方氏が盗んだかのような印象付けをするとは,極めて理不尽です。若山氏に対して、留学生のES細胞について知っているかどうかを確認し、さらに若山研が引っ越した時の冷凍庫の中味の状況を確認すれば、留学生の話は信憑性を失いますから、そういう基本的、初歩的取材をあえてしなかったのでしょう。
 
【補論】中国人留学生の証言場面、内容等の不自然さ
 若山研の留学生が、山梨大に引っ越す際に、自分のES細胞の容器が紛失したものが、後に小保方研の冷凍庫から出てきたということで、そのES細胞をSTAP細胞の実験で使ったかのように結びつけることは、時系列からして全くあり得ないということは、既に指摘されているところです。そのようなストーリーを滲みださせることに、特定の意図と大きな作為が感じられますが、そもそも、あの留学生の電話での証言場面は、不自然ではないでしょうか?
 もともと、何か雰囲気に違和感がありましたが、考えてみれば、電話で初めて容器の存在を知らされたとすれば、それですぐ、それは自分のものだと判断できるものでしょうか? どういう容器なのか? チューブに書いてあるのは自分が書いたものなのか?など、自分の目で確認しなければ判断などできないはずです。
 そうだとすれば、現物を見せているのでなければ、写真を送って確認させているということしか考えにくいですが、あの数十本のチューブが入った容器の写真だけで判断できるものなのでしょうか? チューブに書いてある字が自分のものだということであれば判断できるのかもしれませんが、そういうことでしょうか?
 だいたい、そのチューブの存在から、中国人留学生にたどり着き、更には中国の電話番号まで突き止めるのは容易ではないはずです。しかし、「小保方氏による窃取」というストーリーを広めたい理研職員がいたとすれば、そこから情報提供を受けるのは容易です。
 事前に打ち合わせをしておいて、電話で初めて知らされたかのように演出しているのだとすれば、違和感のある雰囲気というのは合点がいきます。ここにも、特定の意図を持った理研職員のリーク、誘導の存在が強く感じられます。
 
 電話の場面のことは措くとして、そもそも、山梨大に移って研究を継続するつもりだったのであれば、試料がなくなったからと言って、研究を断念するものでしょうか?再度作成して、研究を続けるのではないのでしょうか? 紛失したES細胞が何か特異な系統のものなのかわかりませんが、その作り方は、保存してある実験ノートでの手順等に従って再現できないのでしょうか?
 
 こうやって見てくると、留学生の証言やその作成したというES細胞の「発見」という話は、不自然な要素が多すぎるよう感じます。もし、別の人間が、「小保方氏による捏造」のストーリーに即して、小保方氏の冷凍庫にそのES細胞を置いたなどの作為があり、NHKもそれに沿って、留学生の証言取りで演出をしたと仮定すると(あくまで仮定です)、それは、理研NHKを巻き込む大スキャンダルになってしまい、刑事事件にも発展しかねません。そういう作為の可能性を指摘する向きもありますが、その可能性を想像したくなるほど、不自然な要素が多いということです。
「真実は細部に宿る」といいますが、細部を詰めていくと、辻褄が合わなくなっています。

(6)STAP幹細胞にTCR再構成が見られないことについての考え方
 若山氏の撤回呼び掛け理由の一つにもなっていますが、実はすぐに納得してしまっている旨を、翌日に、毎日新聞の須田記者に語っています。この点は、次の項目で説明します。この点は、番組がSTAP細胞を捏造的意味合いでの「不正」と断じる主要根拠のひとつにもなっていますから、若山氏にも見解を質していれば、4月の会見での丹羽氏の説明もありましたし、話はそう簡単ではなさそうだということに気が付いたと思われます。