理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

理研はSTAP特許出願の地位を放棄する場合は、小保方氏に承継移譲するのが筋であるはずだし、国益にも合致する

 コメント欄で、特許出願の関係で議論がなされていますので、それに関して述べたいと思います。
 先日の運営改革モニタリング委員会報告書の参考資料に、昨年6月の自己点検委員会報告書の抜粋が載っているのを読んでいて気がついたのですが、そこでは、次のように書かれていて、小保方氏らCDB側の貢献が大きいため、一時は、米国からの仮出願とは別に、CDBとしての特許出願も検討された、とあります。しかし、理研とハーバードの交渉により、一本化されたとの経緯だそうです。
 この辺の話が、諸々のネットでの話になっているのでしょうか・・・。

 
「⑤笹井 GD は、引き続き小保方氏とともに第 2 の論文(ネイチャー誌レター論文)の執筆を進めた。この論文は、CDB の若山研究室で着想され、若山氏の支援を受けて小保方氏が解析し取りまとめたデータを基に作成されており、STAP 細胞が胎盤形成にも寄与すること、STAP 幹細胞の樹立(最終段階でアーティクル論文に編入)、胎盤形成に寄与する幹細胞(FI StemCell の樹立を主要な内容としていた。この論文の執筆により STAP 細胞研究における若山研究室のクレジット及びCDB の貢献が明確となった。
2013 3 1 日、小保方氏が RUL に着任した。小保方研究室の工事が同年 10月末に完了するまで、小保方氏は主に笹井研究室のスペースで研究を続けた。小保方研究室に専任のスタッフが配属されたのは 2014 1 月からである。
2013 3 10 日、小保方 RUL を筆頭著者とする 2 編の論文がネイチャー誌に投稿された。
2013 3 31 日、2012 3 月末に山梨大学に転出し、その後 2012 年度末までCDB の非常勤チームリーダー(TL)を務めていた若山氏の非常勤 TL の任期が終了した。若山氏の実験室は山梨大学に移った。
2013 4 24 日、米国特許庁に国際出願した。この出願書類には、上記⑤の投稿論文からのデータが追加された。本特許は、笹井 GD を発明者に加えて、2013 10 31 日に公開された(特許書類 WO2013/163296)。なお、当初は、ハーバード大学が中心になって 2012 4 24 日に仮出願していた特許とは別に、上記⑤のデータを基に CDB を中心とする特許出願も考慮されていたが、ハーバード大学理研知財担当者とが交渉し、一つの特許として米国特許庁に国際出願した。(p4-5)
 
 
STAP特許関係で、ちょうど1か月前の319日付で、以下の記事を書きました。
 
STAP特許の出願費用の扱いはどうなるのか?―「職務発明」としての扱いに関する頭の体操」
 
 その記事の後半で、職務発明規程との関係で、考えるところを書きました。以下、当該部分を抜粋します。
 
職務発明としての扱いは、理研職務発明規程があります。
 
 これを読みながら理屈を考えてみると、理研が承継を決定して出願人の地位(=「特許を受ける権利」)を得たわけですが、承継を受けるかどうかは、理研の判断であるから、承継を受けて出願したのも理研の判断によるものであり、その出願費用を小保方氏らに(返還の)請求するのは筋としておかしい、という気がします。
 「瑕疵のある発明だった」、あるいは「発明ではそもそもなかった」という認識であれば、承継決定が錯誤によるものだったから、小保方氏に「特許を受ける権利」を戻す、というのが手続き的筋道だと思います。ただ、特許出願は既になされていますから、手続き的には、理研から小保方氏に出願人の地位を譲渡し、出願費用の理研負担分を小保方氏に請求するということになるのではないかと想像します。それはもちろん、「返還を求める」云々の話とは次元の異なる話です。」
 
 これまでの特許法の規定では、職務の一環による研究を通じてなされた発明は、発明した研究者から、職場が一定の対価を払って承継することができる、という仕組みでした。その制度の下で、発明報酬をめぐって紛争が増えたため、特許法が改正されることになり、法案では、会社所有とされることになって、
「権利帰属の不安定性を解消するために、契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利は、その発生した時から使用者等に帰属するものとします。」とされました。
 
 この法案はこの3月中旬に国会提出されていますので、今後の案件についての話であり、小保方氏らの発明の場合は、旧規定が適用されます。理研が承継するかどうかは、理研の判断次第でしたが、理研は承継することを決定し、小保方氏に25000円支払って、承継したわけです。
 この理研職務発明規程は、あくまで職務上の「発明」について、職場である理研が承継するということですから、桂調査委員会の報告書で、「発明ではなかった」と認定された以上、そこに(発明でないのに発明であるとの)錯誤があったということで、承継は本来なされるものではなかったといことに理研側のスタンスからはなるはずです。そうすると、承継前の状態に戻すのが筋ですが、しかし既に出願済みですので、取り下げて出願前の状態に戻すわけにはいきませんから、理研の対応としては、小保方氏に出願人の地位を承継譲渡する(=戻す)ことについて小保方氏の意向を確認するというのが筋のはずです(その場合には、小保方氏から、報酬として支払った25000円の返還と出願費用の負担を要求することになります)。それに対して、もし小保方氏が出願人の地位の承継譲渡を受けないと回答して初めて、理研は出願人としての持ち分を「放棄」ということになると、私は考えています。
 
 そのような手続きを経て、もし小保方氏に出願人の地位が承継譲渡されれば(戻れば)、小保方氏とハーバード大の共有の特許出願ということになります。リスクも利益も、同時に負うことになります。
 
 もし理研が、小保方氏の意向を確認しないままに、放棄してしまったとした場合、小保方氏は理研を訴える選択肢があると思いますが、しかし、それで出願人の地位が戻るわけでもありませんし、損害賠償の金額算定も難しいですから、訴えるのはあまり実益がなく難しいかと思います。
しかし、ハーバード側とすれば、小保方氏が存在しなければ、STAP特許は生きてこないわけですので、(もちろん、STAP細胞の再現ができることが前提ですが)応分の報酬を与えるか、場合によっては理研の持ち分相当の出願人の地位を与えるということもあるのかもしれません。
そうならないのであれば、小保方氏と理研CDBの貢献によってできた発明の成果を、ハーバード側が独占することになってしまいますが、それはあまりにも理不尽な構図です。小保方氏が頑張っても使い捨てになり、STAP細胞研究の成果は、すべて米国の独占になってしまいます。
理研が特許(の出願人の地位)を放棄するということは、日本側の貢献が全部米国側に吸い取られる(献上する)に等しい理不尽な話ですから、理研はやはり、手続き的な筋の通り、小保方氏に出願人の地位を返すのが、国益維持のためにも望まれるところです。
 
出願人の地位の放棄の話がなかなかまとまらないのも、その辺のことがいろいろあって、交渉が長引いているのではないかという気もします。論文投稿費用の返還の件も、すんなり返還されたという話は聞こえてきません。これらをセットにして包括的に交渉しているのかもしれません。
 
共有特許(特許を受ける権利も含む)については、共有者の同意がいること、いらないことが特許法で決まっています。
 持ち分を放棄するだけなら、相手の同意がいらないはずです。その場合は自動的に他の共有者の持ち分になります。しかし、もし小保方氏ら第三者に譲渡承継しようとすると、相手の同意が必要になります。そこに交渉が発生します。放棄したという話が聞こえてこないということは、そういう交渉もしているのでは?とも想像されます。
 
本当は、理研がもっと科学的真相究明を続けつつ、出願人の地位も維持するというのが国益のためにも望まれたところではあります。しかし、それはおそらく、特定研究開発法人法案の提出・成立と指定という、政府としてプライオリティの高いかねてからの政治課題をクリアするために、不確実性が高すぎるSTAP細胞問題を長引かせるわけにはいかない、という政治的思惑があったものと思います。野依理事長の悲願でもありますし、CDBの弱体化ということに加えて、特定研究開発法人法指定までが宙に浮く事態はなんとしても避けなければならないということです。特定法人法案提出のためには、STAP細胞問題は決着したという形をとらなければなりませんので、そのためには「STAP細胞の科学的真相は不明である」というような宙ぶらりんの形にはできなかったということでしょう。少々(実は大いに)科学的には整合・説明がつかない構図ではあっても、「あれは実はES細胞だった」として決着を年末の段階で図るということが、政治的な路線だったものと推測しています。
本当に科学的真相を究明すべく、時間をかけて再現実験や調査を続けていたら、特定法人法案提出のタイミングを失してしまいます。だから、前倒しで打ち切ったという面も多分にあることでしょう。あるいは、下手に?「STAP細胞がやはりあるかもしれない」ということになってもまた、特定法人法提出との関係で混沌としてきてしまいます。そういった複雑な思惑の下で、特定法人法提出を最優先の課題として位置づけて、科学的に可能性が残っているとしても先行きの不確実性が高すぎるSTAP細胞問題は切り捨てた、ということなのでしょう。
 
おそらく、理研幹部としても、桂調査委員会報告書には無理があるということは内内には理解していることでしょう。理研に帰属する残存試料が少ないなかで、短期間での調査で限界があることはスタート当初からわかっていましたし、丹羽氏がES細胞では説明がつかない材料を、公式記者会見で述べているわけですから、理解していないはずはないと思います(本当にあれはES細胞だと思い込んでいるとしたら、末期的です)。しかし、それでも政治的決着を図らざるを得なかったということであれば、そしてその結果として特許放棄に流れざるを得なかったということであれば、そこは小保方氏に出願人の地位を承継譲渡して、日本(人)に特許の一端が残るようにするのが、せめてもの振る舞いであるべきだと私は思います。