理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

理研モニタリング委評価書の感想

 運営・改革モニタリング委員会評価書をざっと読みました。
この評価書の最大の役割は、理研として、STAP細胞問題に最終的に終止符を打ち、その「改革」について、第三者委員会のお墨付きを得ることにあります。それはもちろん、特定研究開発法人法案の国会提出と指定の環境整備に最大の眼目があります。
 下村文科大臣に提出している様子が写真で出ていましたが、これで法案は提出されることになるでしょう。法案の早期成立は、歓迎すべきことですから、そのための環境が整ったこと自体は結構なことかと思います。


 感じたことはいくつかあって、注目すべき話もありますが、まずは、やや細かい話からご紹介しておきます。

【検証実験実施の意義の件】 
 評価書はそういう役回りですから、理研がやってきたことを追認することがほとんどです。したがって、検証実験のことも、科学的真実の追求という社会的要請に応えるためには必要ということを認めていますから、あれだけ検証実験に反対していた人々にとっては不満な内容でしょう。もっとも、丹羽氏、小保方氏ともに実験に「失敗」してくれたから、いまさらどうでもいいということなのでしょうが・・・(笑)
 
【告訴見送りの件】
 それから、参考資料のP87以下に、告訴しなかった理由が書かれています。


 調査委の委員長と弁護士委員に相談して、見解を得たとのことですが、それなら告訴しないという結論になるのは見えています。あの報告書の内容であれば、ES細胞の混入が故意の疑いもあるが過失の可能性もある、混入者はだれだかわからないというだけで、告訴など無理ですし、それ以前に、どのES細胞なのか、それがどうしてそこにあるのか、それは誰のものなのか、といった大前提がはっきりしないのですから、告訴も何もあったものではありません。そんなことは、桂報告書が出た瞬間に判断できる話です。
 それなのに、理研の広報室長は、あえて告訴の可能性に言及したというのは、石川氏の告発に引きずられて、理研としても厳しい対応も視野に入れているというポーズをとるためでしょう。「どういう被害かも含めて検討」というような笑止の説明をし、罪名にまで言及して、世間に刑事事件化の「期待」を与えたことは、極めて問題です。あの記者会見で広報室長が公式見解として述べることができるのは、
「桂調査委員会報告書を踏まえて、刑事面で何らかの対応の可能性があり得るのかどうかについては、法律の専門家と慎重に相談しながら検討したい。」
 ということに留めるべきでした。あたかも、刑事責任を負うような犯罪行為を小保方氏が犯したかのような強い印象を与えたのは、許されるべきではありません。広報室長として、言葉が軽すぎます。
 
【新任研究室主宰者の件】
 あと細かい話ですが、報告書本体のP16に、新任研究室主宰者11名に対して、延べ22名のメンターを配置した旨が書かれています。
 改革委の報告書では、何度も「准教授クラスの」という言葉が出てきます。そんな重要ポストをろくに実績も調べず選任したという文脈ですが、「実績を調べずに」というのは事実無根ですし、准教授クラスのポストではもともとないという意味でも、事実誤認なわけです。この評価書で、メンターを2人つけるような研究室主宰者が准教授クラスではあり得ないということは、これでよくわかるでしょう。小保方氏のときにも、笹井、丹羽両氏をメンターとしてつけたことは、改革委も認知していたわけですから、それにも関わらず、「准教授クラスの」云々を文字通り連呼(連書?)したことは、シナリオを補強する意図があったのだろうと勘ぐりたくなります。
 竹市氏は、須田記者らのインタビューで、次のように語っていますが、その竹市氏にヒアリングもせずに、自分の大学のセンスで思い込んで、断罪するなど実に杜撰です。
 
「(2)小保方氏をPIとしたことについて
「ただし、いきなりPIにしていいのかという議論は当然ありました」
研究員でもいいのでは、という意見もあったが、小保方氏自身の発見であるSTAP細胞を研究室のテーマに据えるには、規模は小さくともPIになる方がよいという結論になったという。
改革委員会は提言の中で、研究ユニットリーダーを「国立大学では准教授に相当する」と説明したが、竹市氏はこれにも反論した研究ユニットは、数理科学分野など小規模で研究可能なテーマの場合と、萌芽的な研究テーマで、未完成だが将来性豊かな研究者に主宰させる場合の二種類あり、小保方氏は後者の目的での初めての採用例だったという。「この人をいれたらすごく面白いことになるんじゃないかという場合に、リスクを覚悟でPIにし、それからトレーニングしよう、という目的。准教授クラスの人を選んだつもりは元々ない」。」


【特許出願や共同研究をする場合の保秘との関係】
 あと、STAP細胞の場合は、特許出願することとの関係で公知にならないように配慮することや、ハーバード大との共同研究の関係上、営業秘密的情報管理が必要だったわけですが、このモニタリング評価書を見ても、そういうことを理研がやっているようには見えません。生命科学の分野では、i-PS細胞に見られるように、特許化は今や当然のことになっていますし、特許がなければ資金が集まらないということは、NHKスペシャルで分子生物学会の学者がはからずも指摘していたことです。
 そういうことは、改革委提言では問題意識皆無ですし、分子生物学会の大隅理事長などは、「商業化」だといって、批判的に見ています。
 しかし、特許出願、共同研究の上では、情報管理・保秘は必須なのですから、そういう観点からの研修をやらないのだとしたら、由々しきことです。