理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

STAP細胞特許出願の放棄により、理研幹部が背任で訴えられる可能性

Themisテーミス)という時事ネタを扱うややマイナーが月刊誌がありますが、そこの2月号に、
 
STAP細胞驚愕の新展開―小保方晴子 理研への『大逆襲』を始めた」


という記事が載っていました。この雑誌は、全般的にやや扇情的なところもままあるのですが、既存のメディアにはない面白い視点、材料を提供することがしばしばあります。
 この記事では、「理研関係者」「理研幹部」の話がかなり出てきます。
 
 やや逆陰謀論?的な感がありますが、この「理研関係者」らがいっているという趣旨を要約すると、


「小保方氏は、理研に利益がいくのを阻止するためにわざと失敗し、膨大な実験データを個人用パソコンに保存し、真のプロトコル(コツ)を記した裏ノートも公表せずに秘匿して、自らの元に確保している」
「『理研幹部』は、小保方氏は依願退職することにより、『晴れて自由の身になった』が、これは小保方氏にフリーハンドを与えるもので、認めるべきではなかった、と悔恨を口にしている」
 
 そのあとに、「国際特許に詳しい科学ジャーナリスト」が、STAP特許は莫大な特許収入につながるため、米国側の持ち分を増やしたいとのバカンティ氏の思惑も絡んでいるとの指摘があり、「米国の医療特許問題に詳しい研究者」の談として、


「バカンティは自ら休職を願い出て、この1年の休職期間を利用してベンチャーを立ち上げ、小保方氏に再現実験をさせようとしているのではないか、との憶測が、理研内部に広がり始めている」


としています。
 
 小保方氏個人がそこまで考えているとは思いにくいですが、バカンティ教授ら米国側の思惑、動きとしては、十分あり得る話だと思います。
 小保方氏の実験環境を提供するなど、投資ファンドからすれば微々たる資金で可能であり、その投資ファンドに、特許を受ける権利の数パーセントでも与えれば、そのリターンには莫大なものがあり得ます。STAP細胞があるとしても、その医療面での応用可能性に過剰に期待すべきではないとの指摘はありますが、どういう展開がありうるのか未知ながら、期待が大きい新しい細胞であることは間違いありません。結果として失敗しても、もし大化けしたときの権利を確保しておいて損はありません。


 米国では、ノーベル賞を受賞した中村修二教授が言っていたように、大学発のベンチャー企業は山ほどあります。バカンティ教授がそれを狙っていることは容易に想像されます。
 1年の休職という話や、バカンティ研自らが昨年秋に独自のプロトコルを発表していること、今年になって特許出願の具体的補正が始まったということをつなぎ合わせれば、バカンティ教授は、投資ファンドと組んで、STAPベンチャーの起業を狙っていることは十分あり得るでしょう。というか、しないほうがかえって不自然です。
 
 ただし、現時点では、特許の「出願人」は次の所属組織になっていますから、これを自らのものにする必要があります。東京女子医大は放棄しましたから、いずれこの出願人表記も変わるでしょう。
 
 BRIGHAM & WOMENS HOSPITAL[US];
 RIKEN[JP];
 UNIVTOKYO WOMENS MEDICAL[JP]
 
●さて、そこからいろいろ考えていくと、このSTAP細胞問題の展開していく先には、
 
理研幹部が背任で訴えられる可能性が出てくるのではないか?
 
 と感じ始めました。
 一見、突飛と思われるかもしれませんが、私もそれなりの組織人ですから、荒唐無稽なことを言っているつもりは毛頭ありません。
 話の展開の筋道は次のようなことです。
 
 1226日の桂調査委員会報告書が出され、その会見の際に、理事は「特許は放棄する方向で調整する」と発言していました。
 一手法を述べたに過ぎない論文の「不正」が、他の広範な刺激手法を包含する特許出願の放棄に直結させることがそもそもおかしいと思います。それはまた後に述べるとして、理研として放棄ということになると、これは、小保方氏の職務発明ですから、「特許を受ける権利」は、小保方氏のものに戻るというのが筋です。
 改めて、理研職務発明規程を検索して、読んでみました。
 
 規程の第5条以下に、次のように書かれています。
 
 (認定、決定及び通知)
第5条 理事長は、前条の規定による届出を受けたときは、その発明等が職務発明等であるか否かの認定をし、職務発明等であると認定したときは、その発明等について、特許を受ける権利等を承継するか否かを決定する。
理事長は、発明者等の氏名又は発明者等の間の寄与割合等について発明者等の間で意見が異なる届出を受けたときは、前項における職務発明等の可否を認定する前に、関係者等から必要に応じて意見を聴取し、発明者等の氏名又は発明者等の間の寄与割合等を決定する。
理事長は、前二項に定める認定及び決定の結果を速やかに所属長を経て発明者等に、別に定める職務発明等認定及び権利承継決定書により通知する。
(特許を受ける権利等の譲渡)
第6条 前条の規定により、理事長が各発明者等の特許を受ける権利等を承継すると決定したときは、その承継される特許を受ける権利等は、発明等がなされたときに遡って各発明者等から研究所に譲渡したものとみなされる。
(特許出願等)
第7条 研究所は、第5条の規定により発明者等の特許を受ける権利等の承継を決定し、かつ、理事長が出願を決定した場合は、特許出願等を行う。
 
 このような手続きに従って、理研は小保方氏から特許を受ける権利等を「承継し」、「譲渡を受けた」という部内的整理の下に、特許出願を理研名で出願したということでしょう。
 しかし、今回の検証実験、再現実験の失敗、不正調査委員会のES細胞混入認定により、職務発明はそもそも存在しなかった」というスタンスになるでしょうから、職務発明であるとの認定は、「錯誤」に基づくものだとして、遡って「無効」になるということになるでしょう。そうすると、おのずと、小保方氏の元に特許を受ける権利等が改めて帰属されることになるはずです。出願は既に理研の名前でされていますから、特許手続きとしては、このような理研内部の整理の下に、小保方氏が出願人の地位を理研から承継する(譲渡を受ける)ということになるでしょう。
 職務発明を承継した際の金額は、1件につき25000円と規定されていますので、それを受け取っているのであれば、返却する必要があるかもしれませんが、いずれにしても、小保方氏が出願人としての地位を確保することになります。
 ハーバードのバカンティ教授の所属する病院と、同教授らとの関係も同じように整理されるのではないかと思いますが、そこはわかりません。不正調査が始まっているのかどうかもよく見えてきていません。
 
 いずれにしても、少なくとも小保方氏が発明者であり出願人として地位を得て、特許出願の審査手続きが進んでいくことになります。若山氏、笹井氏も発明者に名を連ねていますが、若山氏は当然放棄するでしょう(笹井氏の遺族がどうされるのかわかりませんが・・・)。
 調査次第で、バカンティ教授、大和教授が出願人の地位を承継する時期がくるかもしれません(大和教授は、女子医大の放棄との関係ではなどうなるのでしょう・・)。
 しかし、もし、バカンティ教授の休職期間中にベンチャーとして、小保方氏らとともに再現実験に改めて成功したならば、構図は一変します。ハーバード大の病院はその出願人の地位を維持することでしょう。それに対して、理研の「放棄」という愚かな判断が逆にクローズアップされ問題化されることになります。
 
 その理研の特許出願人の地位を「放棄する」という判断が正当なものだったか?ということが問われることになります。
 桂調査委員会のES細胞混入だとの認定が、ES細胞では説明が付かない点が少なからずあるために科学的合理性に乏しいこと、しかも、その説明がつかない材料は、理研が自ら主催した笹井氏、丹羽氏の記者会見の席上で提示されていること。また、ES細胞からではなく、同系のマウスから作ったという他の合理的推論の可能性が容易に思いつくにも拘らず、それを検討しなかったこと、そしてそれらの指摘は外部からもされていること等の状況である中で、桂調査委員会の認定を丸呑みし、然るべき検証をしないままに、ES細胞混入認定を前提として、特許を受ける権利等を放棄したということの責任が問われることになります。
 
 そして、今回の論文不正の問題と、特許出願の問題とは、イコールではありません。論文不正は、そこにかかれた脾臓細胞を対象に、酸を使った刺激という、特許出願の請求項74の中の1項に過ぎません。他の73の請求項についても、理研が出願した以上、それらすべてについて可能性を追求する責務を負っているはずです。
 丹羽氏による検証実験では、論文に書かれている実験以外の細胞、手法による実験を行いましたが、それもごく一部に過ぎません。ただ、それも全く失敗したわけでもなく、光るものは出現しているわけで、それが注入してキメラにならなかったから、「失敗」ということになったというだけのことです。
 
丹羽氏は、1219日の記者会見では、日経サイエンス古田記者の質問に答えて、「プロトコルイクスチェンジ作製の際に見たものと同じ形状のものを今回もみた。それはES細胞でもTS細胞でもなかった。ただ注入してもキメラにならなかったので万能性が確認できなかったので何物かわからない」と意味深長なことを述べています。
小保方氏は、細胞への注入、キメラ作製の分担ではありません。若山氏が協力を拒否したために、やむを得ず、代役の研究者を立てたというものです。立場上、その研究者は優秀で、若山氏並みの技量を持っていると強調せざるを得ないのでしょうが、あの若山氏でさえ、何度も失敗し、STAP細胞を注入しキメラにすることのむずかしさ、微妙なさじ加減ということを2月に強調していましたから、初めて取り組む研究者氏が、そうそう簡単にできるとは思いにくいところでづ(本当にES細胞だったら簡単だったでしょうに…笑)。
だから、丹羽氏の発言と併せ考えると、今回の再現実験、検証実験の「失敗」は、細胞注入、キメラ作製段階の失敗だったのではないか?とも考えられるわけです。そういう構図を理解せずに、「小保方氏が再現に失敗した」と断じるのはおかしな話でしょう。STAP否定派は、その点に話が及ぶことを極力避けたいがために、あの代役の研究者を「彼は大変優秀で、彼ができなかったということは、やはりSTAP細胞などなかったのだ」と、代役研究者の優秀さをことさらに強調している感があります。科学ジャーナリストの誰かが、わざわざ書いていた記憶があります。古田氏も、自らの質問に対する丹羽氏の答えには一顧だに与えていません。
 
 話が少しそれましたが、要するに、理研は、論文そのものの実験手法だけでなく、特許出願した手法全体に対して、責任を負っているということです。放棄する以上は、そこに書かれている物理的刺激や細胞の種類のすべてについて、本当に不合理なものか追求したのか?ということが、焦点となってくるということです。
 もし、小保方氏やバカンティ教授らが、再現に成功したら、更にはハーバード大側が、バカンティ氏らの説明に一定の合理性を認めたり、再現成功を受けたりして、特許出願人としての地位を維持したとしたら・・・・。その反動は激烈なものになるでしょう。
 東京女子医大が持ち分を放棄した後には、日本側としては理研が残っているだけです。その理研が放棄するということは、小保方氏、大和氏らの日本人が特許を受ける権利等を改めて確保することになるとしても、日本政府が全額出資した独立行政法人の権利は失われ、小保方氏ら個人の権利となってしまうということです。それは、特許によって得られるべき利益を得る機会を放棄したということになり、日本政府、更には日本国民に対する背任行為ということになってきます。
 
 理研理事には、通常の会社と同様に、運営する上で、善管注意義務があります。適正に然るべき注意を払って組織運営をしなければならないということです。会社であれば、善管注意義務違反によって株主代表訴訟が提起されることになります(もし、今回のケースが、企業における話であれば、放棄した瞬間に、株主代表訴訟が提起されることでしょう)。理研の場合には、株主代表訴訟に相当するものができるのか、よくわかりませんが、理研の財産的利益を大きく毀損することになりますから、監査請求から始まって何らかの形で損害賠償請求の対象とする手続きがあるはずです。
刑法上はみなし公務員により、背任罪の適用可能性もないわけではないでしょうが、さすがに加害目的はないでしょうから、その成立余地はまずないだろうと思いますが・・・。
 
 そうやって知的財産を毀損したという責任を問われた時に、「第三者委員会である不正調査委員会の結論に従ったまでで、責任はない」と抗弁したとしても、丹羽氏、笹井氏、かつての若山氏の指摘したES細胞では説明が付かない点や、様々な推論可能性について十分検証した上で、結論を出したものだと証明しない限り、責任は免れないと思います。
 論文は研究者が主体ですが、特許出願のほうは理研が主体です。論文で「研究者が十分に証明しなかったから」というセリフは、論文検証には使えても、特許出願については使えません。論文の手法は特許出願における手法の一つに過ぎないのですから。「特許を受ける権利等」という知的財産を守る最大限の努力をしたのか? という一点で、理研は説明を求められることになります。
 そういう構図を理解すれば、安易に「特許出願は放棄する方向で検討する」などとは軽々には言えないはずです。もし、ハーバード大が、理研には同調せず、出願人としての地位を維持する判断をした場合、理研は窮地に陥ります。
 
 依願退職届を出して去った小保方氏、1年の休職を願い出た姿を消したバカンティ氏・・・この二人の動静について、理研はそろそろ不気味さを感じ始めているのではないでしょうか。
 
●なお、蛇足ですが、理研職務発明規程の第29条には、次の規定があります。
 
(秘密保持)
第29条 職員等は、研究所の知的財産権に関して、研究所及びその職員等の利害に関係ある事項について、必要な期間秘密を遵守し、第3者に開示若しくは漏洩しないものとする。
 
 理研改革委は、小保方氏の研究について、内部での発表会等をさせず、意見交換の機会を設けなかったとして、秘密主義だと指弾していますが、この規程の存在を知って言っているのでしょうか? 
 既にさんざん述べましたが、もし、改革委の言う通り、特許出願前に、内部であってもオープンにしてしまったら、その瞬間に、その研究は公知になってしまい、特許は受けられなくなってしまいます。それは、特許法における「公知」の考え方として、知財関係者であれば誰でも常識として知っていることです。その常識に反するような非常識な認識の下に、改革委は秘密主義だと言って、組織解体のセリフの柱として使ったのです。背任をせよ!と言っているに等しいことを改革委提言として公にしたのです。
 かれらは、何の責任もとることはありません。無責任な立場で、背任行為をすべきだったと提言し、それが現実のものになってしまったという、噴飯ものの行為をしたのだ、ということは、もっと声を大にして世間に認識させることが必要だと思っています。

理研は、おそらく、今後の「処分」(「懲戒相当」等)内容の確定と、研究費の返還についてどうするか、悩ましい状況にあることでしょう。
 懲戒相当等の処分などは、小保方氏にとっては、今となってはどうでもいいのかもしれませんが、研究費の返還となってくると、実害が生じてきますから、そう簡単に応じるわけにはいかないでしょう。
 そうすると、そこから訴訟に発展して(小保方氏への理研の請求)、そもそも論からの科学論争になることは必定です。そんなことになったら、理研とすれば大変なことです。不正調査委の委員達を訴訟に動員するわけにもいきませんから、事務局が自ら弁護士と相談して対応しなければならなくなります。委員達も証人として出廷することになることでしょう。調査資料の開示等も求められることになるでしょう。
  ですから、そういう事態には発展しないように、「処分」内容は、ES細胞が故意によるものだったとの前提には決して立つことはなく(調査委も、断定はしていません)、「どうして混入したのかは不明」として、研究費の返還も求めないということで決着させるつもりであろうと、想像しています。
 停職処分相当かせいぜい諭旨退職処分程度で、そそくさと終わらせるつもりではないでしょうか。