【再度ご紹介】WiLL3月号掲載の「『小保方殺し』9つの疑問」の記事で指摘されている疑問点の内容
西岡昌紀氏がWiLL3月号に寄せた「『小保方殺し』9つの疑問」の記事があることは、先日ご紹介しましたが、お金を出して雑誌を買って読む方は少ないかもしれませんので、概要をご紹介しておきたいと思います。一部事実誤認があると思いますが、科学的論点の提示になっています。
スタンスは、STAP細胞の有無という高度に専門的な科学上の問題に判断を下すことはできないが、「小保方氏によるES細胞を使った捏造」という理研調査委の桂報告書に対して疑問を呈するというものです。STAP細胞の存在の挙証責任も果たされていないが、捏造だとの挙証責任も果たされていないとの主張です。
科学的問題であるのに、科学的に議論を尽くそうとしない研究者、科学ジャーナリストたちに対する警鐘でしょう。
事実誤認があると思われる疑問1~3は後に紹介するとして、疑問4から順次要約してご紹介します。このブログのコメント欄でも指摘されている点かと思いますし、本質に関わる点だと思います。
疑問4 FACSは役に立たなかったのか?
FACSという光学的識別装置を使うと、死んでいく細胞と万能細胞を見分けることができ、その信頼性を(STAP捏造派であっても)疑う人はいない。笹井氏は、このFACSを使って、死んでいく細胞ではないことを確認したとしている。(死んでいく細胞だとする者にとって)この指摘は間違っていたということか?
疑問5 ES細胞を若山教授の培養条件で生存させることができたのか?
丹羽氏は、培養に用いられた(FIの)培養液ではES細胞は死滅してしまうと指摘している。仮に小保方氏が若山氏に渡した細胞がES細胞だったら、培養できなかったはずである。培養に成功したということは、少なくともES細胞ではなかったということではないか?
疑問6 小保方さんはどのようにしてES細胞を入手したのか?
桂調査委報告では、ES細胞の混入者の特定ができなかったばかりか、小保方氏の冷蔵庫にあったとされる「ES細胞」がなぜ若山研にあったかすら「分からない」状態だと指摘されている。NHKスペシャルでは、若山研にいたことのある元留学生を匿名の電話で登場させて、「なぜあの細胞が小保方氏の研究室にあるかわからない」との趣旨の発言をさせている。この番組を見た人の多くは、小保方氏が捏造目的で若山研から持ち出したような印象をもったはずである。これは報道側に「捏造」を捏造する作為があったのではないか?
疑問7 「遺伝子解析」は妥当だったのか?
偽造の証拠として持ち出された若山氏側の「遺伝子解析」は「間違いだったかもしれない」と話が変わった。トリソミーの件もいつもの間にかうやむやにされている。捏造派の主張は、「遺伝子解析」をめぐってくるくる変わっている。まずいと思って、報告書では、STAP細胞とされた細胞は、保存されていたES細胞とDNAが保存されており、ES細胞そのものであろうと判断されるとの「解析」をした。しかし、元をただせばともにマウスから得られる細胞であるから、その元のマウスが極めて近いマウスであったら、、DNAが似ているのは当たり前である。この点について、調査委発表は十分な説明を加えていない。
疑問8 検証実験は本当に失敗したのか?
理研発表によれば、たしかにキメラ作製には成功しなかったが、あの緑色発光細胞自体は45回試みて40回は作製に成功している。その先のキメラ作製に至らなければ実験再現にはならないが、それを担当したのは若山氏である。小保方氏は自分が担当した部分は45回中40回再現に成功しているにもかかわらず、彼女が何一つ再現できなかったようなイメージ形成されているのは、あまりにも公平さを欠いている。
比較のための電気泳動の画像処理はは強く批判されるべきだが、このゲルの加工は誰の意向で行われたものなのか? こうした加工があったことで、STAP細胞がリンパ球を初期化させた細胞である証拠はないことになるが、しかしそれでも、マウスの脾臓から得た細胞の中に、何らかの新しい万能細胞が存在した可能性は依然として残される。TCR再構成をめぐる小保方さんの失態をもってSTAP細胞の存在を全否定することは正しくない。
【注】
以下の3つの疑問点は、西岡氏に誤解があると思われます。胎盤形成を切片で確認したのは小保方氏であり、若山氏自身は、血管の発光と間違えないように確認せよと指示したのみです。しかし他方で、丹羽氏は切片でしっかり確認した旨を述べています(捏造派は、切片作成したのは小保方氏で確認したのも小保方氏だからそこで偽造なり嘘をついたとし、桂調査委員会は、写真からそもそも誤認だとしています(切片も実物も見ずに!))。「若山氏」を「丹羽氏」に置き換えれば当てはまる疑問かと思います(やや意味が取りにくいところもありますが)。画像だけを見せて「胎盤ではないという人もいる」という極めて薄弱かつ曖昧な判定など通るはずがありません。丹羽氏が切片で最大の焦点として観察し確認したものですから、調査委判断の根拠と、両者の判断の齟齬を徹底的に詰めなければなりません。
疑問1 ES細胞でSTAP細胞を捏造できるのか?
疑問2 小保方さんは、胎盤形成を予想したのか?
「ES細胞は胎盤を作らない」というのは発生生物学の常識である。小保方氏も若山氏もその認識は共有していたはずである。小保方氏が渡したのがES細胞であれば、胎盤形成は予想しなかったはずだが、若山氏は胎盤形成したと判断した。小保方氏が予想しなかったことが起こったということか?
疑問3 小保方さんはES細胞を混入する必要があったのか?
発光している細胞が、死んでいく細胞なのか万能細胞なのかを最終的に判断するには、マウスの初期胚に注入しなければわからないが、若山氏が胎盤形成したと判断したのだから、小保方氏は光る細胞はSTAP細胞だと思ったはずである。そう思っているのに、わざわざES細胞を混入した細胞を渡した理由は何か?
【補足】(1月31日 11:59)
上記の私の「西岡先生の事実誤認」という記述に関して、読者の方からご指摘をいただきました。
【再補足】(2月1日0時40分)
若山氏の6月16日の記者会見録を確認しましたが、若山氏の発言趣旨は次のようなことでした。そうすると、若山氏が胎盤が光ったと判断したのは、やはり小保方氏から切片の解析結果を聞いたことが根拠になっているということかと思われます。