理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

STAP細胞の特許出願継続は当然の選択―取り下げたら背任行為になってしまう

 
 国際出願の各国への国内移行期限が、1024日でしたが、理研が主要国で国内移行手続きを取った旨の報道がありました。
 各紙は、概ね、理研側の説明とともに、事実関係だけを報じていますが、一紙だけ、比較的詳細に、かつ解説までつけて批判的に報じているのが、毎日新聞です。よほど、STAP細胞がないことを願っているのでしょうか。とにかく批判的なトーンで書いておけば間違いないというところなのでしょう。
 毎日新聞は、記者会見資料などをそのまま画像化して直ちにHPにアップするなどの面では優れていると思いますが、報道内容は、視野狭窄的な面があることは否定できません。今回の報道も一面的です。
 記事はいずれ消えてしまいますので、全文引用しておきます。


**********************************
<STAP特許>理研、手続き進める…「存在否定できぬ」
毎日新聞 1025()231分配信
<STAP特許>理研、手続き進める…「存在否定できぬ」
 
STAP細胞作製の特許出願の流れ

 理化学研究所などが国際出願していたSTAP細胞に関する特許について、理研が出願を取り下げず、特許取得に必要な「国内移行」という手続きを複数の国でしたことが24日、分かった。STAP細胞作製を報告した論文2本は既に撤回され、研究が白紙に戻ったにもかかわらず特許取得手続きを継続する理由について、理研は「(STAP細胞の真偽を確かめる)検証実験は継続中で、完全に否定されたとはとらえていない」と説明した。

 出願していたのは、論文の主要著者が所属していた理研東京女子医大、米ハーバード大関連病院の3機関。このうち東京女子医大は「得られる利益は少ないと判断した」として、国内移行手続きには加わらなかった。
 3機関は2012年4月24日、正式な出願前に審査の優先日を確保する「仮出願」を米国で実施し、その1年後の13年4月に国際出願をした。特許取得には仮出願から30カ月以内に当該国の特許庁へ「国内移行」の手続きをすることが必要で、24日がその期限だった。期限までに手続きをしなければ、出願取り下げと見なされる。

 理研は、どの国で移行手続きをしたかを明らかにしていないが、加賀屋悟広報室長は「実用化された場合に市場が期待できる複数の主要国」と説明した。特許の出願や移行手続きで理研がこれまでに負担した費用は数百万円という。特許は、論文撤回の影響は直接的には受けない。【須田桃子】

◇解説…乏しい裏付け、取得の望み薄

 STAP細胞に関する特許の出願書類には、捏造や改ざんなどがあるとして撤回された論文と重なるデータが多数記載されている。STAP細胞が再現できたという報告もまだなく、今後、各国で審査に進んでも「信ぴょう性がない」と判断され、特許は認められない可能性が高い。
 一方、論文の主要著者の小保方晴子・研究ユニットリーダーは11月末まで、丹羽仁史プロジェクトリーダーらは来年3月末まで検証実験に取り組む予定だ。また、将来、出願した特許の一部だけの審査を求めることも可能だ。こうしたことから、理研は今回、取り下げの判断を保留し、審査の道を残したとみられる。
 今回の手続きを含め、特許の維持には費用もかさむが、それらは税金から支出されている。生命科学分野の特許に詳しい大澤健一弁理士は「理研がとった方法はビジネスとしてはあり得るが、『不正が含まれるデータで特許を取るのか』と批判を受けることも覚悟しなければならない」と指摘する。【須田桃子、清水健二】

     *******************************
 
まず、STAP細胞の存在自体については、現在検証中であり、理研調査委、改革委含めて、存在を否定しているところはありません。調査委は、それは調査の埒外だと言い(研究不正と論文の再現性、細胞の存在の有無とは一体で判断される話ですが、それを無視してそう言っています)、改革委は、存在の有無を確認するために研究不正調査を急げ、再現実験をさせよ、と言っています(他方で、途中から捏造だと決めつけて、前代未聞の不正、世界三大不正と結語しているから支離滅裂です)。
 「STAP仮説が諸事象を説明する上で最有力の仮説」として笹井氏らが指摘している点について、反駁材料は出ていません。
 論文取り下げの理由も、「複数の過誤が見つかり、現象を疑念もなく説明することはできない。現象を新たに検証する研究は現在進行中である。」というものであり、STAP現象を捏造と認めているわけではもちろんありません。理研調査委で「不正」と認定された過誤も、STAP細胞の有無とは関係ないとされているものです。
 
 こういう状況の中で、特許出願を取り下げる選択肢は生じようがありません。これまでの特許取得を前提に積み重ねてきた研究成果は、理研の「知的財産」です。それは、STAP細胞の存在が実証されれば、莫大な知財収入を生み、世界の再生細胞研究をリードするかもしれない無形財産です。
 それを、根拠なく特許出願取下げをしてしまうならば、
 
 その出願取下げ行為は、理研の知的財産を大きく損なう背任行為である
 
 ということになります。その決定をした理事は、背任行為で訴えられるリスクを負うことになるでしょう。取り下げ後にSTAP細胞の存在が確認されれば、間違いなく責任を問われます。
 事の構図はこういう単純な話で、それが理解されれば、出願取り下げの選択肢はあり得ないということはわかると思うのですが、毎日新聞は、一方的に「『不正が含まれるデータで特許を取るのか』と批判を受けることも覚悟しなければならない」との弁理士の談を引いて批判しています。
 
●誤解又は曲解があると思いますが、特許出願された内容には、請求項が70件以上あり、様々な刺激を与えることによって初期化させる方法が記載されています。小保方氏が論文で採用した手法は「酸による刺激」ですから、数ある請求項のうちの一つに過ぎません。そのことは、ずっとSTAP細胞問題をフォローしている記者であればわかっているはずです。
 最も包括的な請求項1は、「細胞をストレスにさらすことを備える多能性細胞生成方法」というものですが、これは、国際出願後の先行技術調査(サーチレポート)によって、東北大学の出澤真里教授による「Muse細胞」という多能性幹細胞の先行特許出願があるので、新規性がないとされています(ですので、それとの関係で、必要な補正をして国内移行手続きをしているはずです)。
 ※ Muse細胞は、昨2013年2月に特許が認められているそうです。
 
 逆に言うと、STAP細胞の特許出願は、その請求内容の柱である「細胞をストレスにさらすことを備える多能性細胞生成方法」というのは、既に特許の世界では、先行例ありとして認知されているということに他なりません。
 あとは、細かい請求項ごとに記載された内容が、「記載要件」、「実施可能性要件」、「最良実施形態要件」を満たすのかどうか、という点がそれぞれ判断されることになります。
 
●国内移行手続きにより、審査請求がなされたことになるとしても、実際の審査が始まるのはずっと先です(少なくとも日本では)。来年3月までには、小保方氏の論文による手法や、丹羽氏が追加的におこなっている他の手法、バカンティ教授らがこの9月に新たに発表したプロトコルなどの有効性の有無が明らかになるでしょうから、それを以て要件の具備の可否を含めて、特許付与の可否が判断されることになるでしょう。
 ですから、毎日新聞が言うような「不正が含まれるデータで特許を取る」事態は考えにくいということです。・・・まあ、もっとも、例の韓国の真正の捏造ES細胞の特許出願が、忘れた頃に認められた、という珍事件もありましたから、いい加減な審査官に当たると、国によってはあっさり認められてしまうかもしれませんが・・・(笑)。
 
●なお、今回の毎日新聞もそうですが、二言目には「税金で」というセリフを持ち出してくるのには辟易します。国内移行の出願料自体は、1件1万5千円です(日本の特許庁の例)。これに請求項の数とかによって変わってくるのかもしれませんが、あとは出願する国の数によります。弁理士費用のほうがよほど高額でしょうが、これらは特許化を目指す以上は当然必要な経費です。上述したように、もしSTAP細胞が実証されたにもかかわらず、出願取り下げなり失効していたという事態を考えれば、極めて安い保険料とも言えます。 
(参考)
国際出願制度の概要
国際出願関連の料金
 
 
●上記の述べた「特許出願取下げは背任行為である」という点との関連で、改革委提言が小保方氏の採用時に、研究内容を内部の公開セミナーで述べる機会を理研が設けなかったことを「秘密主義」と批判していますが、これも特許のイロハを知らない話です。出願前に少人数であっても公開してしまえば、「公知」となり、特許は認められなくなってしまいます。まして、その研究は、ハーバード大との共同研究の延長だったわけですから、出願前の公開などはあり得ず、それをやったら、特許という知的財産取得の機会を失わせる背任行為になってしまいます。
 こういう構図に無知なままに、「秘密主義」という俗耳に入りやすいレッテルを貼って、CDB解体提言のセリフの一つにしたという悪質とも言えることをしたのが理研改革委なのです。この点は、以前の記事で詳しく書きましたのでご参照ください。
 
 
また、特許との関係では、理研改革委の市川正國氏(信州大特任教授)が、提言とりまとめ後の記者会見で、「虚偽のデータをもとに特許を申請すると、刑事罰の対象になる。」という暴言をしていたことを改めて想起しておきたいと思います。さすがに、弁護士の竹岡委員から打ち消されていましたが、提言でも「STAP細胞の有無は今後急ぎ解明せよ」としているのに、「世界三大不正」発言の延長で、「(STAP細胞が存在しないという意味の)虚偽による申請」と決めつけたのですから、暴走も極まれりです。
 
市川委員:小保方さんがなかなか「間違っていました」と言いにくいところがあるかなと思う。遠藤先生と若山先生のデータは、何を意味するかというと、ES細胞とTS細胞を混ぜたということだ。小保方さんたちは特許を申請をしている。虚偽のデータをもとに特許を申請すると、刑事罰の対象になる。
ここから先の話は素人だが、「故意におこなったこと」が条件になっているから、「故意におこなったのではない」ということを言い続けないといけない。彼女のそういう立場もあるんじゃないか、と。彼女はこれだけいろいろ調べる方法があるということを知らなかった。
竹岡委員刑事罰の対象になるかどうかは、市川先生の私見というかたちで、受け取っていただいたほうが良いのではないか。一般的な刑事罰の対象にならない。刑事罰の責任とは、切り離してお考えになったほうが良い。特許の話をするのであれば、特許を出願しただけで、特許化されていない。特許化するにあたって、かなりネガティブな事実が出てきたと受け止めるべきと思う。それは理研が判断することだ。」