理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

週刊新潮の座談会記事でのTCR再構成がなかったことの解釈その他

 今週の週刊新潮(2014.8.28号)の「『STAP細胞』とは何だったのか?」という科学者、サイエンスライターら5人の「本音座談会」の中から、気になった部分を抜粋しておきます。
 ※ 5人とは、池田清彦、丸山篤史、榎木英介、竹内薫、緑慎也の各氏です。

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1 TCR再構成がなかったことについて


榎木 写真の加工疑惑などは静観していましたが、3月上旬にSTAP細胞のプロトコルが公表された。そこで「STAP幹細胞にTCR再構成がない」と発表されたのを読んで、さすがにそれはマズいんじゃないかと思いました。
 
竹内 わかりやすく言うと、どういうことですか。
 
榎木 免疫の細胞は、無数に存在する細菌やウイルスなどの抗原に対応するために、複数のパーツを組み合わせて遺伝子の構造を再構成します。TCR遺伝子がそういう構造変化を起こすのはリンパ球の一種で免疫細胞であるT細胞だけなので、小保方さんらは、STAP細胞がマウスの脾臓から抽出したリンパ球を処理してできたことを証明するために、TCR再構成をメルクマールにしてきました。


池田 T細胞ができるとき、遺伝子がプッブッと切れて、それが再びくっつく。そうした組み換えが起きるのがTCR再構成で、それによって、ほとんどすべてのT細胞は異なる遺伝子を持つことになる。STAP幹細胞のTCR再構成を調べれば、T細胞が分化しているのがわかるんです。


竹内 つまり、いったんT細胞という非常に変わった細胞に分化していたものが、外部からの刺激でSTAP細胞になったという証拠になるわけですよね。


池田 プロトコルが発表された日、テレビ局から電話があって、小保方さんに好意的なコメントをしてしまった。その後、帰りの電車の中で読むと、終盤のほうに「STAP幹細胞にはTCR再構成がなかった」と書かれていて、榎木先生同様これはマズいぞと。多くの生物学者は、あの時点でぶつ飛んだと思います。
 
丸山 僕はTCR再構成がないという記述を見て、逆に面白い現象だと思ったんです。最初から常識を覆す発見なわけで、STAP細胞がSTAP幹細胞になるとき、再構成の形跡が消えると解釈すると、なぜそんなことが起きるのかという新しいテーマになると感じたんですけどね。


池田 それから、よく考えたらT細胞からできたらマズい、と思いました。
榎木 免疫不全になってしまいますよね。
 

2 ES細胞、TS細胞混合可能性について
 
竹内 その後、ES細胞とTS細胞が混ざったのではないか、という説も有力になりましたが、それらを混ぜたとして、その段階でも周囲の研究者にはわからないものなのですか。


池田 STAP細胞にESやTSを入れ、その塊を示せばわからないと思う。STAP細胞をSTAP幹細胞にするプロセスでSTAP細胞が死滅し、ES細胞とTS細胞だけが残ったとすれば理解できます。


竹内 幹細胞になったのはES細胞で、胎盤になったのはTS細胞だった・・・・・
丸山 個人的には、実験に応じて、データを作るための細胞を替えていたのではないかと思っています。ひとつの細胞がすべての実験を説明するのではなく、欲しいデータを作るための細胞をその都度あてがっていたと考えたほうがいいのかな、と。そうなると、小保方さんは故意ですよね。


竹内 STAP細胞を作る全工程を確認しているのは小保方さんしかいない。ということは手品と同じですね。後ろから見たらタネがバレしてしまうかもしれないが、舞台の正面からだけならバレない。


 今のところ、ES細胞、ES細胞とTS細胞の混ざり物、マウスの脾臓から摘出したそのままの細胞を使い分けたという説が有力ですね。つまり、ES細胞と比べるときには脾臓の細胞を使う。そうすればES細胞とは違う細胞と言えます。万能性を示したいならES細胞、胎盤を作るならTS細胞を使ってデータを作ればいい。


竹内 また、彼女は生物系の教育を受けていません。


榎木 元々は応用化学科ですから、微生物は扱うことがあっても、哺乳類の生物学はおそらくやっていない。


池田 だから、T細胞の仕組みがどうで、どんな処置を施すと免疫不全が起きるか、という知識がない。常識破りの発見はいいが、そもそも常識を知らなかった。
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 TCR再構成がなかったことの解釈が、興味深いかったのですが、門外漢の人間には、どういう意味なのかわかりません。「T細胞からできたら、免疫不全になり、まずい」というのは、どういうことなのか・・・???
何かいろいろ解釈の余地があるということなのでしょうか・・・。


 それにしても、笹井氏が、NHKにメールで回答した文章は、だいぶ長かったように見えたのですが、「TCR再構成だけで万能性を証明するわけではない」という趣旨について具体的にどう書いてあったのか気になります。



● 後半の、TS細胞・ES細胞混合説について、池田清彦氏は、当然のように混ざったものだろうと言っていますが、混ざって塊にならないとあれだけ言われているのに、なぜ依然としてこういう発言ができるのでしょう??
 竹内氏も、塊にならないと自ら語っていたのですから、なぜその点を、皆んにぶつけないのでしょう?? 
 
 それと、実験局面に応じて、細胞を使い分けたといいますが、若山氏の胚への挿入の際の証言と合致しませんし、実験データの管理が「杜撰」だという小保方氏に、そういう捏造となると、そんな精緻なシナリオに沿った使い分けができるとなぜ思えるのか?? ということも不思議です。


 この部分からあとは、捏造を前提とした放談会に堕していて、小保方氏を妄想人間と決めつけて、退場を求めています。例えば、

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「池田「ネイチャー」に論文を2本も掲載し、大々的に会見まで開いたんだから、疑義が生じれば恰好の餌食になりますよね。そうなることは事前にわかっただろうに、どうしてやってしまったのか。彼女には、インチキをやっているという考えがないとしか思えないんですよ。(しるのがわかっているウソを大々的に発表するなんて、理屈では理解できません。」
 
「緑 遺伝子解析の結果からも、生きたマウスの細胞からできたとは考えられない、というデータが明らかになっています。結局、小保方さんは独特の精神構造だとしか言えませんね。過去にシェーン事件というのが起きました。ドイツ人物理学者のヤン・ヘンドリック・シェーンは「ネイチャー」や「サイエンス」に別本前後の論文を載せていましたが、同僚が顕微鏡を覗いてもシェーンが望む結果は出ていない。しかし、彼は信じている。小保方さんもES細胞やTS細胞を持ち出しながら、彼女の中ではどこかで整合性が取れていたのかもしれません。
 
「池田 木嶋佳苗は自分でやっていないと信じている部分があるので、殺していないと断言する。小保方さんの場合は犯罪ではないけど、同様に、本人が思い込んでいるんじゃないか。真実と妄想がコンタミを起こしていると考えないと、彼女の行動は理解できません。

「榎木 彼女が科学界で生き残ると、あれだけのことをやっても生き残れるなら自分たちもやってもいいじゃないか、というモラルハザードを誘発しかねない。だから、研究の世界にい続けてはいけないと思います
 
 研究者として生き残るためには、学位を剥奪されたうえで大学院からやり直すべきですね。
池田 若い研究者たちがSTAP細胞論文について暴いた背景には、小保方さんが優遇されていることへの怨瑳もあったと思う。然るべき処分を下さないと、日本の科学技術はますますおかしくなります。
 
竹内 仮に小保方さんが大学院からやり直すとき、池田先生を訪ねてきたらどうですか。
池田 嫌だよ、僕は(笑)。」

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 それなりにフォローしているのであれば、普通の捉え方は、


「そんな露骨な方法で捏造しても、再現もできず、すぐバレるのだから、そういうことはしないだろう」


 
「若山氏も一から自ら作製に成功しているというし、細胞挿入場面の証言からしても、ES細胞では説明が難しいし、やはり未解明の部分が何かあるのだろう」
 
 という方向に向かうのではないかと思いますが、それを誇大妄想狂と決めつけて排除してしまいます。
 
 今回のSTAP細胞問題が、日本の科学史に残るのは、可能性としては、
 
 「小保方氏による捏造」
 
 ということではなく、むしろ、
 
「科学者らしからぬ激情に囚われて、小保方氏のミスに乗じて、提起されている疑問や科学的可能性を何ら検証しようとせずに、従前の固定観念、常識に囚われて、未知の可能性の解明努力を何らしようとしないままに、誇大妄想狂とのレッテルを貼って葬り去ろうとした日本の科学界」
 
 ということの方ではないか? という気がします。
 今現在、思考停止してしまっていて、誇大妄想ということでしか自分を納得させる選択肢を持ち合わせていないとすれば、情けない話です。
 
 結果として、もし捏造部分があったとしても、捏造仮説では説明できない点を突き詰めて考察しようとしなかったというだけで、科学者の姿勢としてアウトでしょう。
 
 門外漢からの感想としては、なんで、「ES細胞、TS細胞といった既存の細胞と特性が似ているから、それに違いない」という発想をするのかがよくわかりません。STAP細胞の特性というのは未知なのですから、あるいは未知の細胞の可能性があり、特性も共通する点があるのかもしれないとして、留保をかけておくというのが科学的な姿勢ではないのか? と感じます。
 
 誇大妄想のレッテル貼りをする暇があるならが、もっと冷静に、STAP現象の有無を検証するために、これまで指摘されている点を含めた科学的論点整理をすることに少しでもエネルギーを使ってほしいものだと思います。


【御参考】
 今月の文藝春秋(9月号)に、小保方氏について2本の記事が載っていますが、大変興味深いです。
 一つ目は、小保方氏の来し方をずっとフォローして、関係者の証言を紹介しています。先々で日米の一流の教授陣を惹きつけてしまう優秀さと性格とがあったことが書かれています。
 2つ目の記事は、小保方氏の弁護人2人に対するインタビュー記事です。身近な観察も交えてざっくばらんに語られていて興味深いです。