理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

STAP画像「改竄」「捏造」認定の根拠が失われ、撤回・再調査は必須ー不服申立書と会見内容から明らかに

 
 4月9日午後、小保方氏による理研調査委報告書に対する不服申立てに関する会見が行われました。2時間半に及ぶ長時間の会見となりました。
 
 ○会見録(ログミーサイト) http://logmi.jp/10275 
○不服申立書(読売新聞より)
 
 今回の記者会見を受けてのマスコミなり識者の反応は様々です。


「法律的解釈の問題ではなく、科学的証明、説明がなされるべきだ」
STAP細胞があるというなら、科学的証拠が示すべきだった。さっさと作ればいい」
「加工したことを認めたのだから故意であり、研究不正は動かない」 
                          等々・・・ 
 全般的に好意的なものは少ない印象です。
 しかし、今回の申立てや会見については、次のことを理解した上で評価する必要があります。
 
 ①今回の会見は、「改竄」「捏造」認定に対する不服申立てであり、その内容は
  、当然、調査報告書の認定過程、根拠に対する反駁が中心になることはやむ
  おえないこと。
 ②科学的証拠の件は、小保方氏らが研究室への出入りが禁じられ、調査委員
  会に対して実験ノートも提出している以上、会見の場で示すことは物理的に困
  難であること。
 ③今回の会見で明らかになったが、ハーバード大からの「出張」扱いで来ていた
  ことから、同大との関係で機密保持契約の制約がある可能性があること。
 
 こういう理解の上に立って、あの不服申立書と記者会見と見れば、共著者の丹羽氏が語ったように、「言いたいことは言ったのではないか」という印象が私もします。
 
 そして、理研調査委の最終報告書は「改竄」「捏造」の認定の前提となる事実関係が崩れ、その調査過程の不十分さが明らかになりましたので、再調査を余儀なくされることになったと感じます。事実関係が異なるのに、それに依拠した認定などあり得ません。また、今回なされた小保方氏の説明をきちんと聴取していれば、それらの裏付けを取る形での検証ができたはずなのにそれをしなかったのは、やはり大きな問題です。


 報告書への根本的疑問は、不服申立て以前の時点でも書きました。



 これらでの指摘と重複する部分もありますが、今回の不服申立てと記者会見内容と受けて、改めて述べてみたいと思います。 

<改竄認定について>


 第一は「改竄」認定についてです。これについては、加工過程が実際と異なるのに、調査委が小保方氏から十分にヒアリングをしないままに、独自に加工過程を推論したものが誤っていたことが判明しました。縦に引き伸ばしたのではなく縮小させたものであり、ずれが生じるとしていましたが、実際には生じないことが、会見での弁護士の加工過程の再現で明らかになりました。小保方氏から十分に説明を聴取することなく、加工過程につき誤った推論をしたことになります。


「加工したこと自体は認めたのだから、それが改竄なのだ」という指摘も有識者も含めて多く見られますが、それは違うでしょう。不服申立書にある趣旨の通り、別の有利な解釈に導くことを意図して真正ではないものを用いることが、「改竄」の意味するところです。「故意に加工した」という趣旨ではなくて、「故意に誤認させるために加工した」というのが「改竄」の趣旨です。この趣旨だということは、調査報告書自体が、「データの誤った解釈へ誘導する・・・危険性について認識しながらなされた行為であると評価せざるを得ない。」としていることからも明らかです。あくまで、「誤った解釈が生じることを知っていながら」という趣旨で「悪意」を解釈しています。
しかし、報告書の「悪意」認定は、

①この加工によりどのような誤った解釈が生じ得るのかを示していないこと。
②加工前の2枚の画像データと、加工後の1枚のデータとで解釈に現実に
 差が生じていないこと。

 の2点で、根拠のないものとなっています。


●また、加工を加えた理由として、室谷弁護士は次のように説明しています。動機としては不自然なものとは思われません。
 
「ここで見やすくする、という言葉の意味ですけれども、見やすくするというのは見にくいから見やすくする、というだけではなく、ネイチャーの誌面は限られておりますので、大きな写真をどーんどーんと載せる、というわけにはいきませんので、ポイント部分を載せることになるんですけれども。誌面の関係上、小さなものを載せるわけだけれども、そのときに、このような形に見やすくしたということでございます。」
 
 加工前の2枚の画像については、調査報告書において、「改ざんされた画像は、小保方氏が行った実験データを元に、同氏が作成したものであり」として、実験において作成された真正なものであることを認定していますから、画像の由来がはっきりしないという問題はありません。


 以上の通り、加工手順自体が小保方氏本人の説明通りではなく独自に行われた誤った手順に基づくものであるということに加えて、「誤った解釈が生じることを知っていながら」という趣旨での「悪意」はなく(少なくとも、その意味での「悪意」があることを証明する根拠が調査報告書では何らされていません)、真正な2枚の画像と比べて、別の誤った解釈が生じる余地がない以上、「改竄」認定の根拠が崩れています。したがって、「改竄」認定は撤回されるべきものです。
 

<捏造認定について>
 
 第二は、「捏造」認定についてです。これについては、先日このブログ記事で書いた通り、外部からの指摘の遥か以前に自主点検で誤りに気が付き、差し替えを既に行っていたことから、「悪意」とすることはそもそもおかしいということがまず最大の問題点として挙げられます。それに加えて、今回の不服申立書及び会見により、新たな問題が生じました。
会見内容での説明は、少々入り組んでいます。まず事実関係としては、Nature誌への投稿論文の画像は、学位論文の画像そのものではありませんでした。もともと、調査報告書でも、学位論文の画像に「酷似」とするのみで、「同一」との認定はしていませんでした。ラボミーティング用に使用したパワーポイントに載っているものを持ってきてしまったとの説明があり、実際、投稿論文の画像と一致しました。その画像は学生時代に撮ったもので、学位論文にも用いられ、パワーポイントにも用いられたものであり、パワーポイント掲載用に文字の色や位置関係を調整したものとのことです。これで、「酷似」の背景事情がわかりました。
不服申立書と会見内容を整理すると、次のようになります。
 
<画像差し替えに至る経緯まとめ>
 ・投稿論文に使ってしまった写真は、パワーポイントにあったもの。
 ・パワーポイントは、もともとは201111月にバカンティ教授らに説明
  するために作成した。その後、バージョンアップを重ねた。
 ・そのパワーポイントには、細胞と刺激の種類は書かれてない(様々な
  種類の細胞が様々なストレスによって幹細胞化するという説明資料)。
 ・Nature提出後に再チェックしていたら、その画像だけ生データが見つ
  からず、それがパワーポイント掲載のものだとわかり、更に辿ってい
  くと学生時代に撮ったものだとわかった。それは学位論文にも使われ
  ていることがわかった。それに気が付いたのが、218日。
・それで、学位論文の画像をNature投稿画像として使ってもいいかを、
 早稲田大の指導教官に照会したら、問題ない旨の回答があった(小保
 方氏は、私的論文なので未公表との認識)。早稲田への照会自体
 は、笹井氏には相談せず。
 ・掲載ミスを直ちに上司の笹井氏に報告し、その指示で、219日に
   Nature誌に本来の画像との差し替え依頼のメールを出した。
 ・220日の調査委のヒアリングで、画像の誤掲載の旨を申告し、真正画
  像も提出した。
 ・本来の画像は、実験過程で撮ったもの(201269日撮影)。Nature
  に訂正用に提出したのは、保存されていた切片を再度撮影したものだ
  が、それは、「100%の絶対確実なデータとするため」との理由。
 ・本来の画像を撮影した実験は、提出した実験ノートに記載されてお
  り、少なくとも小保方氏はトレースできるようになっている。
 
 以上の経過からすれば、学位論文の画像を使う意図は全くなかったこと、掲載ミスに気が付いた後も、学位論文の画像との実験条件の差について認識する以前に、差し替え依頼がなされているということがわかります。
 すぐに差し替えに思い至らず、まず早稲田大に照会した事情がよくわかりませんが、説明ぶりからは、その時点では、実験条件についてどうこうという以前に、学位論文の画像を使ってしまったこと自体が、公表画像の使い回しにならないかどうかという点で(=未公表の画像扱いになるかどうかという点で)問題かどうかという点のみが念頭にあったことが容易に想像できます。
 
●以上の説明をもとにすれば、調査報告書の「捏造」認定には、極めて大きな問題があります。
 
 ①学位論文の画像そのものを切り貼りしたという事実誤認があること。
 ②学位論文の画像(学生時代に撮影した画像)を、故意に使ったことを裏付ける根拠がないこと。むしろ、外部からの指摘のはるか以前で、ヒアリング前の時点で自主点検により誤りに気が付き、翌日にはNatureに修正依頼を出していることから、学位論文を使おうとした故意は否定されること。
 ③したがって、Nature投稿当初から学位論文の画像だと認識していたわけではない以上、
「この2つの論文では実験条件が異なる。酸処理という極めて汎用性の高い方法を開発したという主張がこの論文1の中核的なメッセージであり、図の作成にあたり、この実験条件の違いを小保方氏が認識していなかったとは考えがたい。」
との認定はあり得ないこと。
 ④同様に、「(学位論文と投稿論文との)実験条件の差を認識せずに切り貼り操作を経て論文1の図を作成したとの小保方氏の説明に納得することは困難」「データの信頼性を根本から壊すものであり、その危険性を認識しながらなされたものであると言わざるを得ない」との捏造認定の根拠も崩れること。
 ⑤また、「実験ノートの記述や電子記録等から、上記各画像データの由来の追跡を試みたが、3年間の実験ノートとして2冊しか存在しておらず、その詳細とは言いがたい記述や実験条件とリンクし難い電子記録等からこれらの画像データの由来を科学的に追跡することは不可能であった。」と記載されているが、「これらの画像データ」とは学位論文の画像を指すが、学生時代に撮影したデータであり、それが保存されていることは、小保方氏からヒアリングをすれば直ちに特定できたにもかかわらず、それをしていないままに、「追跡不可能」との結論を出していること。
 ⑥より致命的なことには、調査委に220日のヒアリングの際に提出された真正画像とされたものについて、詳しい検証も行っていないこと。同画像は、20126月に撮影されており(保存フォルダー名は7月)、実験日誌にも載っているとの主張がある以上、それを検証すれば、実験によって得られたものであることがわかるにもかかわらず、小保方氏から聴取してその裏付けの検証を行っていないこと。(注:サンプル、スライド、実験の存在は確認したと述べているが、実験ノートでのスライドの確認ができないとのこと。しかし、小保方氏は特定できるとしており、また再撮影したものと対比すれば、実験過程でのものだということが推定できるのではないでしょうか。)
 
以上の通り、「捏造」認定に至る裏付け調査が不十分に過ぎ、事実認定に誤認があり、故意を裏付ける根拠がないどころか、逆に故意ではなかったことを裏付ける材料が存在することから、明らかに破綻しているわけですから、撤回、再調査が必要です。