理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

1 理研STAP細胞論文調査委員会報告への根本的疑問ーあえて改めて小保方氏を擁護する

【2014/4/3(木) 午前 0:00】投稿

 理研によるSTAP細胞論文の調査結果が、41日に発表されました。
 一読して、その調査に根本的疑問を感じました。そして理研の対応は極めて拙劣だと思いました。

マスコミが一斉にバッシングを始めた時は、逆に怪しんだほうがいいというのがこれまでの経験則であり、明らかにおかしいことでも(ワンパターンの)非難の嵐にかき消されてしまいます。今回もその局面に入りましたから、よほど注意してニュースに接しなければなりません。それに1月のSTAP細胞発表の時にはあれだけ賞賛の嵐で持ち上げておいて、バッシングとなると、自ら検証することなく、発表を鵜呑みにして増幅させる日本のマスコミの掌返しに嫌悪の情さえ覚えます。
 
画像に「改竄」「捏造」があったとのことで、マスコミ報道ではその文字が躍っていますが、これでは、かつての韓国の黄禹錫(ファン・ウソク)教授のES幹細胞捏造事件と同類扱いされかねず、馬鹿な発表の仕方をしてものだと思います。これまでの捏造事件のように研究自体が捏造の事例とはケースが全く異なるのですから、それと同じ扱いにされないよう、慎重にも慎重に言葉を選ぶべきでしたし、調査委員会だけ午前中に先行して発表させたこと自体、拙劣としかいいようのないものでした。
 当初論文の画像の問題、STAP細胞の存在の有無の問題、バカンティ教授サイドとの関係、特許の問題等々、いろいろな話が絡んでいるのですから、全体パッケージにしてメッセージとして発しないと、STAP細胞の研究自体が捏造だというメッセージになりかねません。実際、大手紙のひとつは、一面トップで「小保方氏が画像捏造-STAP論文で」という大見出しをつけていました。「画像」という一語は入ってはいるものの、「捏造」という言葉ですべてのニュアンスは消えてしまいます。

しかし、理研のスタンスとしては、STAP細胞の存在の問題は今後検証する、ということで研究自体は何ら否定はしていないですし、コメントを発表した4人の共同研究者のうち若山氏を除く3人は、ニュアンスの差はありますが、「それでもSTAP細胞は存在する」というメッセージを発しているわけですから、なおのこと、慎重に言葉を選ぶべきでした。調査委員会からすれば、部内規定の研究不正の定義がそうなっているということなのでしょうが、韓国の黄禹錫教授の文字通りの捏造事件の事例と同一視されかねないような認定表現の仕方は、愚かとしかいいようがありません。小保方氏の反論はその点では、全く正しいといえるでしょう。
 
 以下、小保方氏のデータ管理の杜撰さ、論文作法や研究倫理面での著しい認識不足といった問題があることは否定できないことはもちろんとしても、それでもSTAP細胞製作の立役者である可能性は依然として大きく残っているという認識の下に、小保方氏擁護的な指摘をしてみたいと思います。

●今回の調査委員会の調査報告は、小保方氏らのコメントと合わせ読むと、調査委員会の調査自体の根幹に関わる疑問が湧いてきます。
 
疑問1:既に全員で訂正論文が出されていたなど、どこにも触れられていないではないか?
訂正前の論文だけを調査し断罪するのはおかしいではないか?!

 最初に、
 
    話が全く違うではないか!?
 
 と感じたのが、小保方氏のコメントの末尾にある
 
「なお,上記2点を含め,論文中の不適切な記載と画像については,すでにすべて訂正を行い,平成26年3月9日,執筆者全員から,ネイチャーに対して訂正論文を提出しています。」

 との指摘です。ここで嘘を言っても裏を取ればすぐばれるわけですから、本当なのでしょう。ポイントは、
・指摘された問題を含め訂正論文を出していたという事実
・その日付が39日だということ、
・執筆者全員で提出していたということ。
 
 です。そんな話は、理研の発表や説明のどこにも出てこないですし、事実だとすれば事は重大です。そういうことであれば、理研は、一体何を対象に調査したということなのでしょうか?
 論文の修正などはしばしばあるはずです。実際、小保方氏が2011年に米国の科学雑誌に掲載した論文については、「図表の重複使用や誤った配置が見つかった」との共著者のバカンティ教授の指摘にもとづいて訂正がされています。データ管理が杜撰なことをうかがわせるにしても、修正されれば、その経過は措いて、修正後の内容は内容として評価されるべきものでしょう。
 
 少なくとも、訂正後の論文も含めて調査をすべきであって、訂正前の論文(しかも、後述のように、外部からの指摘前に自主点検により行われた根幹部分の差し替えが反映されていない論文)のみを対象にして調査し断罪するなどありえないのではないでしょうか?
 そして、今回指摘されていた写真の取り違え、引用注記忘れ、手順の記載ミスなどについて訂正され、全員でその訂正論文が既に提出されているとするならば、今の時点での理研による論文「撤回勧告」というのは何なのでしょうか?不可解です。
 
【補足】もしかすると、理研は訂正論文提出の事実を知らないままに、調査を行なっていたのではないでしょうか? 論文自体は、理研は本来は関係なく、共著者のものですから、その訂正は彼ら自身が判断すべきものです。後述のように、特許出願がなされていたことも知らなかった模様ですし、理研に来るのは理研側の要請による場合だけで、自らの発信は禁じられていたようですから、訂正論文提出の事実も、理研側は知らなかったと考えると、理研と調査委側の不可解な言動も合点がいきます。


疑問2:訂正論文提出日と、若山教授が論文撤回の勧めを表明した時期とがほぼ同時期というのはどういうことか?(39日、10日)
 
 驚いたのは、訂正論文が提出された39日という日付です。最初に、共著者の一人の若山教授が、それまでの発言を変更して、「信じられなくなってきたから論文撤回を提案している」旨を述べたのが、310日です。ということは、若山氏は、訂正論文を一緒に提出するそばから、撤回を勧めるという支離滅裂なことをしていることになります。訂正論文が、自分も含めて「執筆者全員で」提出されていたことを知らなかったというのでしょうか? その点について、若山氏には説明義務があります。

 それに若山氏は、論文のうち「自分の担当した部分はチェックした」と述べていましたが、しかし、改めて公表した手順が論文記載の手順と違うと指摘された部分は、若山研究室のスタッフが行った部分です。小保方氏はそこの部分は十分理解しないままに書いたと調査報告書でも書かれていますから、若山氏は、自分の担当した部分は「共著者より提供された細胞からのキメラマウスの作製、および幹細胞の樹立」だと思っているとしても、自分の研究室での実施手順が誤っていたことがチェック漏れとなったことについては責任があります。この点は、調査報告書でも指摘されたとおりです。
調査報告書(スライド)では、Methods の記載の一部の間違いについて次のように述べています。
 
「*小保方氏がこのMethods部分を記述したが、実際の実験は若山研のスタッフにより行われた。
*小保方氏は、使用されていたプロトコールの記載が簡単であったため、詳しく記載した方がよいと考えて詳しい文章を参考にしたが、出典を記載し忘れたと説明。
小保方氏が実験の詳細を知らなかったため、後半部分が実際の実験と異なっている。
*若山氏も論文をチェックしていなかったため、このミスが見落とされた。
 
 それに、若山教授は、自らの担当部分の根本的疑問に答える必要があると思います。前回のブログ記事で、次のように書きました。
「若山教授の検証によって、ES細胞の混入・取り違え疑惑が改めて注目されている。しかし、それでは、ES細胞ではできないはずの胎盤の存在はどう説明されるのか? 実は胎盤ではなかったということか? 胎盤でなければそれは何なのか?」
 自分で増殖させて自信があるというのであれば、その点が一番のキーポイントの部分なのですから、何らかの言及があって然るべきでしょう。
 こういった諸々の点について、若山教授は何も触れませんでした。あたかも、自分がだまされて利用されたかのような位置に自分を置こうとするように見える言動はおかしくないでしょうか? 少なくとも、訂正論文を自らも名を連ねて提出したことと、それとほぼ同時に論文撤回の勧めを述べたこととの整合性については説明をすべきです。週刊誌に、小保方氏が、若山氏の論文撤回の勧め発言を聞いて烈火のごとく怒ったと書いてありましたが、事実関係がこういうことだとすれば、当然の怒りです。
 
【補足(4月4日追加)】

 この点に関して、次のブログ記事に、若山氏の事情説明が書かれていました。
 
Natureへ修正依頼を提出したことは、日付はわかりませんが事実です。僕もその数日前にサインをしています。そして10日に僕は博士論文の写真の不正を知り、すぐ撤回を呼びかけました。そのことを知っていたら、サインをしませんでした」
 
 若山氏は訂正論文提出のサイン時点では、学位論文の画像が当初論文に使われていたことを知らなかったこと、撤回を呼びかける直接の原因が、外部指摘でそのことが判明したことへの不信感だったことが、これでわかりました。
 もし、笹井、小保方両氏が、脾臓由来の画像ではなく骨髄由来のものだったという点だけでなく、学位論文の画像を誤って使ってしまった旨も含めて若山氏に説明していれば、受け止め方もまた違っていたかもしれません。
 実験条件が同じであれば、投稿論文に学位論文の画像を使えるだろうという点は、笹井氏も、早稲田大も、理研調査委員会も(会見で)認めていますから、「使い回し」を問題視する若山氏とはやや認識ギャップがあるのがわかります。


疑問3:論文共著者のバカンティ教授チームの動向も踏まえずに、なぜ勝手に論文撤回の勧めができるのか?

 共同執筆者のバカンティ教授は、依然として、「論文作成において過ちと判断ミスがあったとしているが、科学的な内容や結論に影響するものとは思えない」と声明で反論し、撤回には同意していません。それどころか、STAP細胞培養成功の可能性さえ示唆しています。ネイチャー誌も淡々と独自に評価中と述べるのみです。
 
バカンティ教授は・・・論文作成において過ちと判断ミスがあったとしているが、科学的な内容や結論に影響するものとは思えない」と反論。「過ちを正すのは不可欠だ」としつつも、STAP細胞の存在自体を否定する決定的な証拠がない以上、論文撤回に応じるべきではないとの考えを示した。・・・研究室のホームページで公開したSTAP細胞の詳細な作製法に従って、香港中文大のチームがSTAP細胞とみられる多能性幹細胞の培養に成功した可能性があるとし、「時間がたてばおのずから真実は明らかになる」などとしている。
 一方、論文を掲載した英科学誌ネイチャーの広報担当者は1日、同誌ウェブサイトのニュース欄で「理研の調査結果も考慮したうえで独自の評価を進めており、現段階で論文の訂正や撤回についてはコメントできない」とする談話を発表した。」

 39日時点で、全ての疑問点を踏まえて修正した訂正論文を提出し、それに基づいた実施手順を公表しているのであれば(訂正論文における手順と、35日に理研3人が公表した改善手順、バカンティ教授が321日までに公表した改善手順の関係がよくわかりませんが)、再現成功の可能性はありうることでしょう。ネイチャー誌のニュース欄の記事の末尾を見ると、香港中文大というのは、小保方氏の論文再現に3回失敗したとあり、熱心にフォローしているようです。

 
疑問4:小保方氏らの聴聞の機会を経ることなく、「捏造」「改竄」という死刑宣告に等しい結論を出して公表したのは、手続き面で著しい問題があるのではないか?

 不服申し立てを事後にやれば済むというものではありません。不利益な処分をする場合には、まず弁明の機会を与えることが必須だということは、イロハのイです。その上で、処分をし、それに不服の場合には、不服申立て、審査請求、訴訟という手順で審査が行われるというのが、物事の順番というものです。理研の研究不正の調査に関する内部規定がどうなっているか知りませんが、本人の弁明を聴くことなく断罪するなどあり得ないことだと思います。
この点について、調査委の記者会見では、調査委メンバーは、信じがたいことを述べています。以下、毎日新聞の記者会見録の抜粋です。
 
「Q 検察、警察の捜査をやって裁判もやって初めて不正となる。今回本当に不正が証明できたのか。弁明の機会は与えられたのか。
渡部 不正があったか。悪意があったか。悪意は、刑事事件なら故意というところ。「知っていながら」というところは2件で確認しているので不正。弁明についてだが、今回は「これはどうなんですか」という質問で対象者からいろいろ話を聞いており、それが弁明の機会になっている。
Q 「故意」という判断について弁明の機会を設けないのか?
渡部 委員会としては研究不正と認定した。さらに不服申し立ての権利を認めている。
 
 答えている渡部氏というのは、調査委メンバーの弁護士の渡部惇氏だそうです。弁護士がこういうことを言うとは度し難い話で、「故意」認定による「捏造」「改竄」という断定自体について弁明の機会を与えなければならないのであって、途中のヒアリングでのやりとりを弁明の機会とするなどあり得ません。実際、小保方氏からは承服できないとのコメントが出されていますが、そこでの主張に対しては、調査委はどう抗弁するのでしょうか? 
39日の全員による訂正論文の提出、外部からの指摘以前の自主点検による画像差替えは、調査の根幹に関わる点です。
 しかも、理研は、小保方氏に対して、対外的発信を禁じていたことが明らかになりました。これまでは、「心身が疲労しきっているから」とか「どこにいるかわからない」とかいった説明により、「小保方氏は雲隠れして、対外的説明を自ら行なわないのはおかしい」というマスコミからの批判についても特に事情説明するまでもなく、小保方氏を悪者のままにしていました。ところが、小保方氏は、「調査中は外部に情報を発信しないように」という指示を理研側から受けていた旨が、小保方氏の代理弁護人により明らかにされました。そして、聞き取り自体も、「理研から直接聞き取りを受けたのは1回で、メールのやり取りが中心だった」とのことです(41日付日経新聞) http://www.nikkei.com/article/DGXNASHC0101A_R00C14A4000000/

 それでいて、論文撤回に小保方氏も同意したという情報も勝手に流していました。ヒアリングをメールでほとんど行なっていたというのであれば、そのやり取りのすべてを公表して、実際に調査委側がどういう質問をして、それに小保方氏がどう答えたのかを正確に明らかにして、調査過程自体の第三者による検証をさせるべきでしょう。
小保方氏は、410日頃までに研究不正の認定に対して不服申し立てをし、その前後で記者会見をして自ら説明するそうですから、その際に明らかにするかもしれませんし、明らかにしてもらいたいものです。

いずれにしても、一方で外部への発信は禁じておき(+小保方氏への雲隠れ非難も放置し)、他方で「捏造」「改竄」認定について事前の弁明の機会を与えず、いきなり「捏造」「改竄」発表というのは、手続き的に不公正です。理研の内部規定が事後的な不服申し立てのみになっているとすれば、その規定がおかしいです。「捏造」「改竄」認定は、研究者生命を断つことを意味する重大な「処分」です。外部への論文提出は受け付けてもらえなくなります。企業でも、重い懲戒処分(免職、停職等)は、事前聴聞という手続きを経なければ、権利の濫用で無効となり得ますし、実際なっています。
理研という研究者集団には、こういう手続き面での配慮を考える総務・法務系の人間はいなかったのでしょうか? 当然いるべきだと思いますし、弁護士が調査委員会メンバーとして加わっていながら、その弁護士委員自身があのようないい加減な説明でうやむやにしようとするとは許されることではありません。
 

 以下、次の点について書いていきます。
 
疑問5 「捏造」「改竄」という言葉を安易に使って、黄禹錫教授の研究自体の捏造事件と同一視されるような認定はおかしいではないか? 何もないところをあるかのように見せかけるのが「捏造」であり、今回のようなケースで適用する日本語ではないのではないか?
 
疑問6 2年前に出願済みの特許は、理研も含めて出願人になっているが、一体どうするのか? 半年後に迫っているはずの国際出願の各国内手続き移行はどうするつもりか?