理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

「第八章 桂調査委員会報告書の矛盾」ー佐藤貴彦氏『STAP細胞 事件の真相』より抜粋


佐藤貴彦氏の2番目の著書である『STAP細胞 事件の真相』(20161214日刊)は、文字通り事件の真相に迫るものだと思いますが、そのうちの第八章に、「桂調査委員会報告書の矛盾」という章があります。
和モガさんの記事とともに、STAP細胞事件を考える上では必須の内容だと思いますので、抜粋させていただきます。
 和モガさんのFES1についての追及は、この佐藤氏の指摘とともに読むとよく理解できます。


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第八章 桂調査委員会報告書の矛盾
 
おかしなことが一杯ある
 
前著『S T A P 細胞  残された謎』では、 桂調査委員会の調査報告には、数多くの不自然な点があるということを指摘した。 主な点をまとめてみると、次のようになる( l
 
(一 )丹羽仁史氏が「 確かにS T A P 細胞由来と思われるG F P 陽性細胞が胎盤組織にインテグレートしていることを見ています」と証言した胎盤の標本の存在について 、桂委員長は徹底して言及するのを避けている。
 
(二 )丹羽氏は「 F I 幹細胞の培養条件ではE S 細胞は全滅する」と証言している 。したがって、 桂委員長が主張するような「 E S 細胞の混入 」による捏造は不可能だということになる。
 
(三 )キメラマウスの作製は、 E S 細胞の時のように、 酵素でバラバラにしていたのをやめ、細胞の塊のまま胚に注入した時点(手法を変えた時点 )で成功している。 これは、 E S 細胞による捏造であるという結論に矛盾する。 また、「もう一度酵素でバラバラにして注入していれば成功したであろう」という桂委員長の説明には何の根拠もない。
 
(四 )そもそも小保方氏がS T A P 細胞と偽って若山氏にE S 細胞を渡すことは困難である。 S T A P 細胞は浮遊状態で培養されているが、E S 細胞はそうではないからである。したがって、もしE S 細胞をS T A P 細胞と偽って渡すとすれば、E S 細胞を浮遊培養(すなわち胚様態)にして渡さなければならないが、 E S 細胞を胚様態にすると性質が変化するので、それでキメラができるという保証はない。
 
(五 )S T A P 幹細胞G L S の性別は、 2014年7月22日の段階で若山氏とC D B が「 精査してオス」としているのにもかかわらず、桂調査委員会の報告書ではいきなりメスになっている。これについて何の説明もない。
 
(六)S N P が九九パーセントのオーダーで一致しているから同一細胞である 」という桂委員長の説明には説得力がない。 1 2 9 B 6 などの近交系マウスは、最初からその程度の一致率はあるからである。したがって、この程度の一致率であれば、同じ系統のマウスを用いたという結論にしかならない。
 
(七 )S T A P 幹細胞F L S では、 染色体の欠失変異は細胞の樹立時に生じたというのが桂調査委員会の結論だが、 S T A P 幹細胞A C 1 2 9 E S 細胞1 2 9 B 6 F 1E S 6 については、染色体の欠失はすべて親マウスに元から存在したものであって、樹立に伴う変異は報告されていない。 これは不自然である。
 
(八 )胎児と胎盤の画像の切り貼りを不正と認定していない。 これは小保方氏以外の人物による不正行為であったため、それを見逃したのではないかと思われる。
 
(九 )データ解析の結果、 F I 幹細胞( O c t 4 G F P B 6 由来 )はE S 細胞とT S 細胞を九対一で混ぜたものと言っておきながら、その現物が見つかっていない。 そもそも若山氏はB6 由来のF I 幹細胞を作製した記憶はないと証言している。こんな矛盾がなぜまかり通るのか。
 
そして、新たに次のことを付け加えたい。
 
(十 )桂調査員会では、「 S T A P 幹細胞A C 1 2 9 E S 細胞1 2 9 B 6 F I E S 1 ( 以下ES l と略記 )は『第六染色体のB 6 ホモ領域』で一致している 」と報告されている。しかし、情報公開窓口を通じてその解析データを取り寄せたところ、 次のことが判明した。
じつはE S 1 の全ゲノム解析は行われておらず、わずか二十八箇所のS N P をピックアップして調べていただけだった。
解析の方法は次の通りである。 まずA C 1 2 9 1 2 9 B 6 F l E S 6 ( 以下E 5 6 k
記)を全ゲノム解析したところ、 両者の第六染色体のホモ領域が88.6M から94Mにわたってズレていることがわかった。 すなわち、この領域ではA C 1 2 9 はホモであり、 E S 6 ヘテロであった。
次に、 この領域のおよそ一万のS N P から89M、91M、92Mのところ23箇所を選んで調べてみると、 A C 1 2 9 E S 1 もホモであった。 そしてホモ領域の外側95Mのところを調べてみると、 A C 1 2 9 ESl ヘテロであったという。
しかし、 このような大雑把なやり方では、「『 第六染色体のB 6 ホモ領域』で一致している 」などと言えるわけもない( 2
つまり報告書では、89M、91M、92M の二十三箇所だけを調べて、 そこがホモであるものを「 A C 1 2 9 タイプ 」、 ヘテロであるものを「 E S6タイプ 」と大雑把に二つのタイプに分け、E S 1 は前者に属するから両者は同一であると結論していたわけで、 これはかなり疑問のあるやり方と言わざるを得ない。
 
以上、 おかしなことだらけである。「 これだけおかしいことが一杯あるのに、優れた研究者の目を通っているはずなのに、 なぜ表に出てしまったのか 」という桂委員長のセリフは、 この間査報告そのものについて当てはまる。
 
  ( l )詳しくは、 拙著『S T A P 細胞 残された謎』第五章・第十一章を参照いただきたい。


  ( 2 1 2 9 マウスと B 6 マウスを交配して1 2 9 B 6 F1という子マウスが生まれると、 その子マウスは両方の遺伝子をペアで持つ。つまり、129/B6という組み合わせである。しかし、親マウスの1 2 9 の方に、 一部B 6 の遺伝子が混ざっていることがあり、この場合、 子マウスは一部B6/B6という組み合わせを持つことになる。 これを「B 6 ホモ領域 」という。 この領域がぴたりと一致していれば、 同一細胞の可能性が高いが、 逆に一致していなければ、 異なる細胞であることがはっきりする。理研の解析チ―ムは、 ぴたり一致しているかどうかを確かめなかったのである。


 
F E SI は本当にF E S Iだったのか
 
日経サイエンス(2015年3月号 )のS T A P 問題特集記事に、 次のような記述がある。
 
遠藤氏の解析で最初に問題となったのは、岡部マウスと交配した1 2 9 マウスの素性だった。
  1 2 9 なのは確かだが、その中にも細かい系統がある。 若山氏が使っているのはS L C 社の白マウス12 9 x l で、 大田氏が好んで用いたのはクレア社の茶色マウ ス1 2 9 T e r だ。 論文に書かれていたのはクレアの1 2 9 T e r だったが、 遠藤氏はS T A P 論文のN G S データから、 F L S の親マウスは1 2 9 x 1だと予測し た。 1 2 9 x l マウスにはゲノムの所々にB 6 の黒マウスの配列が紛れ込んでおり、 そのパターンがアクロシンプロモーターのあるST A P 幹細胞やF I 幹細胞とよく似ていたからだ。
 
その後、 理研の解析チームは、ネイチャー誌に『STAPcells are delivered from EScells』という論文を掲載し、改めて「 S T A P 細胞はE S 細胞由来である 」としたが、これをみると、 興味深いことが判明し た。
この論文には、 解像度の高いS N P のパターンの図が載っているが、 それをみると、 たしかに1 2 9 X 1 1 2 9 T e r には特有のSN P のパターンがあり、 両者は、はっきり区別することができる。 S T A P 幹細胞F L S の作製に用いられたのは1 2 9 X 1 なのだ。
となると、 これは大問題である。 大田氏の論文には、 E S 細胞F E S 1 の作製に用いられたのは1 2 9 T e r の方だと書かれていたからだ。 マウスの系統が異なる。これでは、「 F L S HF E S l 」という桂調査委員会のシナリオが根底から覆ってしまう。「日経サイエンス 」がこの事実を突きとめながら、 この問題をあまり突っ込まずにスルーし たのは奇妙という他はないが、 ここではこの問題をもっと突き詰めて考えてみよう。
 
まず、 F L S と「 1 2 9 G F P E S 」の中身が同一だということは、 それほど重要ではない。「 1 2 9 G F P E S 」とラベルされたチューブには、 最初からS T A P 幹細胞が入っていたのだとすれば、 両者ともS T A P 幹細胞なのだから、両者の遺伝的特徴が一致するのは当たり前である。問題なのは、 桂調査委員会がF L S F E S 1 が同一だと断定したことなのだ。 これが決定打となっているのだが、 ごく普通に考えれば、 そんなことはあり得ないのである。
繰り返すが、 小保方氏はFE S1を入手できな い。 そのうえさらに、 F L S FE S l はマクスの系統が異なることが判明し た。 しかも、 F L S と「 1 2 9 G F P E S 」は99.9% のオーダーでS N P が一致しているのに比べ、 F L SF E S 1 は99% のオーダーの一致しかない( l
 これで同じ細胞だというのは、いかにも苦しい主張である。
 にもかかわらず、桂調査委員会が、「 F L S F E S 1 は同一としたのはなぜか。それは、 ともにアクロシンG F P が挿入されていたということ、 そして両者の遺伝的特徴( すなわち第三染色体と第八染色体の欠失変異)が一致していたということが根拠となっている。 これはどう考えるべきだろうか。
あくまで可能性として考えると、F E S1として解析に供されたものは、 F L S を作製したのと同じマウスから作製された別の細胞だということだ。したがって、 G F P や欠失は一致するが、 S N P の一致率はやや劣るということになった。
 ようするに、 F E S lとして解析に供されたものは、じつはF E S1ではなかったということだ 。
そう考えれば、「 F ES1 」と称する細胞の母方が1 2 9 T e r ではなくて1 2 9 x 1だったということも含めて、 すべてが上手く説明できる( 2
 
   ( 1 S N P の一致率について、 詳しくは拙著「 S T A P 細胞 残された謎」第十一章を参照いただきたい。
   ( 2 S N P の一致率の低さを培養変異で説明する向きもあったようだが、 D N A の複製に伴うエラーの率は10のマイナス9~10乗程度だと言われている。培養変異では説明がつかない。
 
しかし、 どうしてもそう考えるのが嫌だというのであれば、 他の可能性として考えられるのは、大田氏が自分の実験に使用するマウスを間違えたということである。しかし、「 日経サイエンス』にもあるように、 1 2 9 x 11 2 9T e r はマウスの毛色が異なる。 一方は白で、 一方は茶色である。 同じ毛色ならまだしも、 毛色が異なるにもかかわらず、それを間違えるというのは非常に考えにくい。
しかし、『日経サイエンス』は、「 大田氏の記憶では母マウスはクレア社の茶色い1 2 9 T e rマウスだったが、 実際には1 2 9 X 1 の白マウスだった 」として、 大田氏の記憶違いということで済ませている。 なんとも適当である(3
大田氏は、 以前にも「(FE S 1 は)すべて運び出したつもりだが、 同じ株がC D B にあったのなら、 私が置き忘れたのかもしれない」と答えている。 記憶違いがあったとすれば、 これで二度目である。 S T A P 幹細胞が捏造の産物であるというシナリオと矛盾することは、何でもかんでも「 大田氏の記憶違い 」で片づけてしまうというのは、 いかにも安易である。 矛盾だらけの調査結果を何が何でも強引に押し通そうとしているようにしかみえない(4)(5)
 
  ( 3  )ちなみに、 移植核E S 細胞のn t E S G ln t E S G 2 は、 ちゃんと1 2 9 T e r となっている。FE S 1 の時だけマクスを間違えたというのも奇妙である。
 
  ( 4 )さらに『STAPcells are delivered from EScells』のS N P のパターンをみると、F E S1と nt E S G 1 ntE S G 2 とでは、 使われているB 6 がはっきりと異なる 。これも非常に気になるところである。
 
  ( 5 )さらに付け加えると、 F E S 2 は、 調査報告では1 2 9 x 1となっているが、『STAPcells are delivered from EScells』のS N P のパターンをみると、 1 2 9 x l 1 2 9 Te r が混ざったものになっていることがわかる。 すなわち、1 2 9 x l1 2 9 T e r は第六染色体 、第十一染色体、 第十二染色体に特徴的なホモクラアスターを有しているが、F E S 2 は、この特徴を両方とも有しているのである。しかし桂調査委員会では、 このことには触れず、 ただF L S F E S 2 よりもFE S 1 に近縁であるとだけ述べている。しかし、 使用しているマクスの系統が、F L S F E S 1( と称するもの )では一致しているが、F L S F E S 2 では一致していないのだから、 それは当たり前である。


 
公正さの欠如
 
  (略)