理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

STAP細胞事件の分水嶺ー「信頼していた人」による小保方氏の桂調査委への証拠提出阻止


 今回の小保方氏の日記で、弁護団のことが書かれていたことから連想したことがあり、書いてみたいと思います。

 STAP細胞事件を振り返る時、分水嶺となったのは、桂調査委員会に対して、小保方氏が若山研での研究実態について証拠となる一連の資料を提出しようとした際に、助言という名の検閲が入り、都合が悪い情報はすべて削除されてしまった、ということではないかと思います(『あの日』P233)。

 この時の小保方氏の反応を読むと、深い孤独感、絶望感、聴取への恐怖感等が描かれているのみです。弁護団に相談した様子は書かれていません。川合理事への淡い期待も駄目だった、という記述に留まっています。

 この時期の小保方氏の心理状況は、小保方氏自ら「自白」を強いられるようなということを書いていますが、そういう「自白の心理学」で言われるような状況だったものと想像されます。このことは以前も下記記事で書きました。また、「とても信頼していた人」よるものだったということも、それ以上には対応できなかった要因なのだろうと思います。

 ◎「自白の心理」と共通する小保方氏の事情聴取時の心理状況

■そういう意味では仕方なかったのかしれませんが、ただ、この時、弁護団に相談していれば、流れは大きく変わった可能性が大きかったのではないか、と思っています。

 桂調査委員会において、事実認定の基本となる局面ですが、この事実関係に関わる点について小保方氏側の主張の機会を奪った、証拠資料を圧力によって隠滅したということになりますから、これは理研当局の大きなスキャンダルです。
 三木弁護士ら弁護団に相談すれば、カンカンに怒って、抗議するなり、対応をアドバイスしてくれたのではないかと想像します。
 ともかく、自己点検委員会報告書への反映も阻止されて、これで2回目だったわけですから、理研側の意図は明白です。

■ 次のような理研への申し入れ、あるいは、対外的表明をすれば、桂調査委員会の調査は実質的にストップしたと思います。

「桂調査委員会の調査に対して、私としても真摯に最大限の対応してきています。しかし、その調査と離れたところで、あたかも私がES細胞混入犯であるかのような印象操作が、明らかに理研内部と思われる者からも含めてマスコミにリークされることによって意図的に行われています。私は、理研当局の責任ある方々に、秘匿情報の流出の防止と、研究実態から来る若山先生との圧倒的な情報差を埋めるための配慮とを訴えてきましたが、残念なことに、依然として是正されるには至っていません。むしろ、一方的な、そして明らかに守秘義務違反と考えられるリークが加速化し、研究実態とはかけ離れた形で、私に対する理不尽な印象操作が続けられています。

 桂調査委員会では、基本的な事実認定として、まずは、正確な研究実態を踏まえていただきたいと考え、私のほうから、若山研での研究実態を裏付けるメールその他の証拠類を提出しようとしました。
 しかし、調査委員会に関わる幹部の方によって、重要部分がすべて削除されてしまいました。これでは、研究実態を正確に踏まえた上での調査が期待できなくなるだけでなく、私の主張の機会、抗弁の機会が奪われているに等しい状況です。

 本年(2014年)4月上旬の記者会見の際にも申し上げた通り、研究分担として、私が従事したのは、若山先生から渡されたマウスからOct4を発現するSTAP細胞を作製したところまでであり、STAP細胞からのキメラ作製や、STAP幹細胞段階での研究を主導したのは、若山先生とその研究室の方々です。
 このような基本的な研究分担についての事実認定が、マスコミリークによる社会での印象操作だけでなく、桂調査委員会の調査の場においてさえも、実態とはかけ離れた形でなされることになれば、私の主張、抗弁が一切顧みられないだけでなく、調査の公正性、適格性が確保されないことになってしまいます。

 若山研での研究実態についての証拠類の提出については、自己点検委員会の報告書取りまとめ段階においてもお願いしましたが、時間的に間に合わないとの理由から、諦めざるを得ませんでした。その結果、「若山先生は支援的立場に留まり、私が幹細胞段階まで含めて一貫して主導した」かのような記載となってしまっています。しかし、これは明らかに事実に反します。
 今回の桂調査委員会では、研究実態を正確に踏まえた上で調査を実施していただきたいと願っていますが、現状では、その若山研究室での研究実態を裏付ける証拠類の提出自体が、理研ご当局によって拒否されている状況にあります。

 このため、大変不本意ではありますが、提出を実質的に拒否された一連の証拠類とともに、それによって裏付けられる研究実態を踏まえた調査を行って頂きたい旨の要請書を、内容証明郵便にて、調査委員会宛てに送付致しました。
 また、不当なリークによって、私に関して不正な印象操作が行われていることに対ついて、それがいかに実態とはかけ離れたものであるかということを、社会の皆さまにも知っていただきたいと考え、それらの証拠類を、弁護団のサイトにて公表することと致しました。

 桂調査委員会及び社会の皆さまには、STAP細胞・幹細胞についての研究実態について、正確なご理解をお願いするとともに、マスコミにリークされている内容がいかに一方的で実態に反するものであるかについてのご理解も、併せて切にお願い申し上げる次第です。」
 
■ このような形で、研究実態についての証拠類を、強制的に桂調査委員会に受け入れさせ、併せて公表することにより、同委員会は、それを踏まえた形での調査を余儀なくされることになったと想像されます。
  若山氏が特許部門に送った「若山研の誰もがスフェアの作製も細胞株化もまあまあできる」「いつでも再現できる」「iPS細胞よりすごいものを作った」というメールひとつとっても、内容を公開すれば、そのインパクトには破壊的な?ものがあります。

 この2014年9~10月頃の時点で、小保方氏のみを「犯人」として切り捨て、ES細胞混入ストーリーで行くことは、文科省理研本部、理研CDBとも、それぞれ思惑の違いはありますが、ほぼ一致していたと思われます。実際、桂調査委員会はそのストーリーに即して結論を誘導しました。
 しかし、小保方氏が証拠類を提出、公表すれば、小保方氏に帰責させるストーリーは崩れざるを得なくなります。小保方氏の証拠提出を阻止したということ自体、大問題ですから、その手続き自体も問題化することは必至となったでしょう。

 いくら文科省理研幹部が、シナリオを書いて関係者を誘導しようとしたとしても、内容的にも、手続き的にも、頓挫せざるを得なかったことでしょう。
 …「頓挫」というより、収拾がつかない混乱に陥っただろうと、いうほうが正確かもしれません。

 「若山氏は支援的立場。全段階を主導したのは小保方氏」ということを、自己点検委員会報告書段階から、営々と?積み上げて既成事実化し、マスコミリークによってそれを補強してきた「努力」が、水泡に帰した可能性があります。

 この本来の研究実態を踏まえた収束ストーリーなどもちろんありませんし、逆に、自主点検委員会~改革委の報告書・提言書の前提が変わるわけですから、それらの妥当性に関する議論も提起されることになったでしょう。
 結果として、桂調査委員会は、12月末までに報告書を取りまとめることはできず、その後の、大目的であった特定国立研究開発法人法提出、指定もまた、大幅な遅れというか、理研は積み残しのまま、走らざるをえなくなっただろうと思われます。

■ このように、小保方氏からの研究実態についての証拠提出阻止という時点での弁護団の関与があれば、事態はだいぶ変わったのではないか・・・と感じました。
 ただ一方で、事態が長期化することにより、小保方氏が当事者として晒される期間もまた長引くことになり、心身の面ではかえって悪化したかもしれない、という気もします。
 結果として、小保方氏にとってどちらがよかったのかは、神のみぞ知る・・・・なのかもしれません。

■ ただいずれにしても、それらの提出を阻止された証拠類は、STAP細胞事件の解明の上では貴重な超一級の材料ですから、それを含めて、『あの日』の「資料編」として発行を検討していただきたいと願っています。