理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

なぜ若山氏は、「共同研究者から譲与されたSTAP幹細胞」と表現したか?


1 若山氏の「共同研究者から譲与されたSTAP幹細胞」との表現について


もし、20143月に若山研が解析し、更に第三者機関に解析に出すとされた細胞が、若山氏が小保方氏に対して株分けした細胞のことだ、との前提に立つと、なぜ若山氏は、「共同研究者から譲与されたSTAP幹細胞がありますので」と表現したのでしょう?

「自分が作成・保有し、山梨大に持ってきた細胞を第三者機関に解析に出す。なお、同じ細胞について、小保方氏に株分けしているため、理研にも保管しているので理研側でも解析してもらいたい」と表現すればよかったのではないでしょうか。それを、「譲与された」という表現をとったのはなぜでしょうか?

 「若山氏が小保方氏に株分けしたのだから、山梨大に移った若山氏の手元にあるのは当然」ということにはならないと思います。知財権の対象となっていることが明らかな試料だからです。ですから、「何らかの正当な手続きを経て自分の手元にあるのであり、それを第三者機関に解析に出すのだ」いう含みを出さないといけないので、「共同研究者から譲与された」との表現を取ったのだろうと想像しています。

 

2 STAP幹細胞は、機関管理でMTA対象であることについて


 STAP幹細胞は、STAP細胞とともに、ハーバード大とともに理研等が共同特許出願をしている対象ですから、知財権の対象になっていることは明らかです。

 自己点検委報告書にある通り、「当初は、ハーバード大学が中心になって2012 4 24 日に仮出願していた特許とは別に、若山研での研究のデータを基に CDB を中心とする特許出願も考慮されていた」わけですが、ハーバード大学理研知財担当者とが交渉し、一つの特許として米国特許庁に国際出願した(注:2013 4 24 日)」という経緯です。
 『あの日』によれば、20128月以降、若山氏はSTAP幹細胞の特許申請手続きを開始し、米国側研究者と大きな軋轢となったそうですが、その申請は、同報告書でも記載されている通り、「若山研究室のクレジット及びCDBの貢献が明確になった」レター論文に基づいているものです。

 特許出願となれば、その研究成果の知財化は、職務発明として研究者の手を離れますし、研究試料は、その資金、施設等で研究がなされた研究機関に帰属するもののはずです。STAP細胞研究においては、あるものはハーバード大であり、あるものは理研であったわけです。

 

 そのような知財権の対象であり、理研の帰属となっているはずのSTAP幹細胞は、若山氏が山梨大に移るからといって、手続きになしに持っていけるわけではありません。理研から京大に移った大田氏のES細胞のように、知財権の対象でもなく、使用者管理で簡易な手続きで持っていける(使用権の付与)ものとは性格が大きく異なります。

 文科省ガイドラインにもあるように、「学術的・経済的価値が高いもの」は「機関管理」になりますし、たとえば、京大の有体物管理規程をみても(理研の規程は検索でヒットしません)、知財権の対象となる場合には、MTAの締結を前提として、知的財産権等の権利の対象となることが明らかである場合は、契約を締結するにあたり、当該権利に配慮して契約を締結するものとする。」(第7条)と定められています。
 

 また、若山氏は任期制研究者ですが、理研の「任期制職員就業規程」においても、他の機関に移転する際には、次のように、理研当局の許可が必要とされています(仮に受けていたとしても、機関管理である以上、MTAの締結は山梨大と理研との間で必要になってきます)。

  http://www.riken.jp/~/media/riken/about/info/kkitei_ninki_160902.pdf

 
「(研究成果物の移転)
第15条 任期制職員が、研究成果物を他の機関から又は研究所から移転するときは、研究所の許可を受けなければならない。」
 

■このような経緯と性格の下にあったSTAP幹細胞ですから、若山氏が何らの手続きを経ずに、自分の手元に、STAP幹細胞があるということを問われると窮地に立つ恐れがあるため、「共同研究者から譲与を受けた」とコメントしたということでしょう(「譲与」という用語は、有体物管理規程にしばしば出てくる言葉です)。

 それは、有体物管理規程との関係からしても、小保方氏の記憶からしても、事実に反していたからこそ、その後のMTA締結になり、小保方氏の『あの日』での不審の記述になったものと思います。

 こういった事情を踏まえれば、「若山氏が作製して小保方氏に株分けしたのだから、作製した若山氏の手元にあるのは当然だ」という前提に立った議論は、生産的ではないということが理解されるかと思います。

 

■研究者の移籍に伴う研究試料の移転については、米国では経済スパイ法に基づき立件される例があります。理研職員が逮捕され、文科省ガイドライン策定のきっかけとなった事件や、その後も続いた日本人研究者逮捕に至った産業スパイ事件にしても、自らがその研究に携わっていたけれども、それがその研究室が受けた助成に基づくものであったり、蓄積されていた知見を応用して発見したものであったりというケースです。

  http://www.arsvi.com/d/ss2002s.htm 

  http://www.arsvi.com/d/ss2001s.htm


 自分が、その研究で貢献した研究者であっても、移籍する場合にはきちんと手続きを踏まなければ、刑事事件になってしまうという話です。

 こういう経緯を踏まえれば、理研が若山氏に対して、「このままでは窃盗で訴える」と迫ったのも、(株分け云々に関わらず)小保方氏が若山氏の発言に不審を抱いたのも、決して不自然な話ではないと思います。