理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

三木弁護士によるNHK批判の寄稿文(「現代ビジネス」サイト)


 コメント欄でご教示いただきましたが、
 本日の「現代ビジネス」サイトに、三木弁護士による、NHK批判の寄稿が掲載されています。

NHKの「BPO勧告への反論」は報道機関の自殺行為である、
 小保方晴子さん代理人からの警告  三木秀夫

名誉棄損での人権侵害での勧告は、BPOの判断では最も重く、BPO発足以来8度目、NHKとしては初めてである。」

 とのことだそうです。 以下、末尾部分を抜粋します。
 ご指摘の通りです。

今回のNHKの取った態度は、まさに、自分たちで作った自主ルールを、自ら破るに等しい行為であり、報道の自由に対する自殺行為と言っても言い過ぎではないと思われる。

この点について、かつて民放連の広瀬道貞会長(当時)が、放送のあり方に関連した国会での参考人質疑において、

放送事業者は、いわばBPOの判断というのは最高裁の判断みたいなもので、ここが判断を出したら、いろいろ言いたいことはあっても、すべて守っていく、忠実に守っていく、そういう約束の合意書にNHK及び民放各社がサインをしてBPOに提出しております。私たちは、皆さんとともに、BPOを立派な組織に育て、放送事業者の自浄機能を確実なものにしていきたいというふうに思っております」

と発言している(2007年6月20日衆議院決算行政監視委員会)ことを、NHKは改めて認識をしてほしいと考える。

放送事業は、公共の電波を利用して社会に重大な影響を及ぼす事業であり、そこで生じた人権侵害は人の一生に影響を与えかねないものである。場合によっては自殺までも招きかねない。申立人自身も、この放送が「私の人生に及ぼした影響は一生消えるものではありません」と述べている。

NHKは、今回の勧告を真剣に受け止め、再発防止に向けた取り組みを行ってもらいたい。そういう取り組みをするというコンプライアンス体制が不十分ならば、法律でもっと規制を強めようという、公的介入が強化される契機にもなりかねない。担当者のメンツにこだわった対応に終始することは、NHKに自浄能力がないと評価されても仕方がない。

NHKのトップは、それだけの腹をもってあのような反論を放送することを許したのであろうか、と問いたい。」

■人権侵害の勧告は初めてとのことですが、2015年12月には、やはり看板番組の「クローズアップ現代」の番組で、「出家詐欺報道」が、

    「重大な放送倫理違反」

 の決定・勧告を受けています。

 しかも、その認定として、「明確な虚偽を含む」とされていますから、相当なものです。

「(中略)番組が放送された場合、視聴者が申立人と特定できなくても、申立人自身は自らが放送されていることを当然認識できる。それが実際の申立人とは異なる虚構だったとすれば、そこには放送倫理上求められる「事実の正確性」に係る問題が生まれる。
 NHKの記者は、かねてからの取材協力者であり、本件映像に多重債務者として登場するB氏の話から申立人が「出家詐欺のブローカー」であると信じていたと思われる。しかし、「出家詐欺」をテーマとする番組に、それを斡旋する「ブローカー」として申立人を登場させる以上、最低限、本人への裏付け取材を行うべきだったし、たとえ、本人への直接取材ができなくとも裏付け取材の方法はいくつも考えられる。本件映像はそうした必要な裏付け取材を欠いていた。
 また、本件映像には申立人の「ブローカー活動」の実際に関して、記者によるナレーションなどが伴っている。それらは「たどりついたのはオフィスビルの一室。看板の出ていない部屋が活動拠点でした」など、明確な虚偽を含むもので、全体として実際の申立人と異なる虚構を伝えるものだった。
NHKは必要な裏付け取材を欠いたまま、本件映像で申立人を「出家詐欺のブローカー」として断定的に放送した。また、明確な虚偽を含むナレーションを通じて、全体として実際の申立人と異なる虚構を視聴者に伝えた。匿名化のうえで「出家詐欺のブローカー」として映像化されることに申立人の一定の了解があったとはいえ、「報道は、事実を客観的かつ正確、公平に伝え、真実に迫るために最善の努力を傾けなければならない」(「放送倫理基本綱領」日本民間放送連盟日本放送協会制定)との規定に照らして、本件映像には放送倫理上重大な問題がある。(以下略)」

 この事案の読んでいて気が付いたのですが、これも大阪放送局の制作番組のようです。最初は、『関西熱視線』という関西ローカルの報道番組で放送され、その翌月に、ほぼ同じ内容で、全国放送したのだそうです。
 申立人も大阪府在住とあります。

 NHKスペシャルSTAP細胞不正の深層」も大阪放送局制作のはずですから(+藤原記者)、大阪放送局が立て続けに重大な勧告を受けたということになります。
 そうなると、普通は、組織の構造的問題ではないのか?ということになって、よほどの改善対応を迫られるのですが、どうもそうはならないようです。

 もしかすると、立て続けに看板番組で重大な勧告を受けたとなると、大阪放送局の組織としての責任を問われかねないがために、後先考えずに、決定に抗弁してしまったということかもしれない・・・ともちらと思いました。

■ ところで、上記の決定の内容を読んでみると、

「「出家詐欺」をテーマとする番組に、それを斡旋する「ブローカー」として申立人を登場させる以上、最低限、本人への裏付け取材を行うべきだったし、たとえ、本人への直接取材ができなくとも裏付け取材の方法はいくつも考えられる。本件映像はそうした必要な裏付け取材を欠いていた。」

 とありました。そういうことであれば、今回のNHKスペシャルについても、
「山梨大に持っていくはずだったのに、なぜ小保方氏の元にあるのかわからない」と疑問を提起する元留学生の証言について、

「小保方氏が不正入手したかのような疑問を提起する以上は、最低限、山梨大移転当時の、留学生の研究に関わるES細胞の管理者だったはずの若山氏(若山研)や、発見当時の管理者である理研に対して、裏付け取材を行うべきだった。本件事実の摘示は、そうした必要な裏付け取材を欠いていた。」

 としなければ、一貫しないのではないでしょうか?
 今回の人権侵害決定は、多数意見は、元留学生の証言を裏付ける根拠が示されていないとしていますから、同趣旨のようにも思われますが、しかし、「結論」部分では、取材不十分というより、場面転換の趣旨の不明確さに帰しています。ダブルスタンダードになっているように感じます。

名誉毀損の人権侵害に当たるとの判断に至った主な要因は、2.(2)で関係部分の構成として整理した⑤までの場面と⑥との間に連続性が認められたことにある。つまり、NHKの取材が不十分であったというよりもむしろ、場面転換のわかりやすさや場面ごとの趣旨の明確化などへの配慮を欠いたという編集上の問題が主な原因であった。」(p21)

 また、放送人権委員会の委員構成は、両決定ともほとんど同じです。少数意見だった、市川委員、奥委員もいます。
 上記の出家詐欺報道についての決定は、全員一致です。そうだとすれば、片や取材不足だといい、片やそうは言わずに真実性、相当性ありとすることは、やはりダブルスタンダードではないかと感じられます。

 冒頭の寄稿で、三木弁護士は、次のように述べていますが、上記のようなところをみると、「全面的に満足とは言えない」ということはその通りだと思います。

「今回の決定は、私的なメールの公表や許諾なく実験ノートを放送したことなどについては「放送倫理上問題があったとまでは言えない」とされた点もあって、全面的に満足とは言えないものの、「報道の自由」に対する配慮も必要であった点を踏まえれば、訴えの最重要部分が肯定されたことをもって、有意義な勧告であると考えている。」

 しかし、訴えの最重要部分が肯定されたことをもって、有意義な勧告である」と評価するのが適当だということは、私もそう思います。