理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

BPO決定公表時の記者会見議事録を公表ーNHKの意図的編集への批判が滲み出ている

 BPOの決定公表時の記者会見議事録が公表されました。

◎放送人権委員会  決定の通知と公表の記者会見( 2017年2月10日)

■ まず、補足意見や反対意見を書いていない3人の委員の発言を抜粋します。

曽我部委員
「補足として3点あげる。1つ目は、双方の主張は科学的なことにかなり集中していたが、本決定はあくまでこの番組が示した内容が申立人の人権侵害に当たるかどうかなどの観点から判断したことを確認してほしい。2つ目は、調査報道を否定するものではない。本決定は、個別の正確性ももちろん重要だが、それを編集した時に視聴者に与える印象というのも重要だということを示したものだ。3つ目は、この番組は非常に緻密なところと非常に粗いところが奇妙な同居状態にあるという印象を受けた。場面、場面を報道する趣旨が不明確だったのではないか」などと述べた。

城戸委員
「この番組は調査報道、つまり発表に頼らずに自身で検証していくという番組だった。そういう現場が萎縮してしまうようになってはいけないというのが委員共通の認識だった。また、内容自体が大変複雑で専門的な分野に関することだったこともあり、問題の理解や論点の絞り込みなどに丁寧な議論が重ねられたということを報告したい」と審理に臨んだ委員の認識などを説明した。

中島委員は、
「調査報道等を萎縮させるべきではないというのはそのとおりだが、調査報道であれば、ゆえなく人を貶めていいかというと、もちろんそういうことにはならない。個人的な意見だが、調査報道というのは第一義的には権力に向かうべきものだと考えている。この番組で言えば、権力は理研なのであって、STAP細胞が理研にとっていかなる意味を持っていたのかを組織と個人という視点から追及するのが本来のあり方ではなかったのかと思う」と述べた。

■ 読んでいくと、NHKは意図的編集をしたのではないのか?という疑問を持っていることがにじみでています。

(質問)
(5)と(6)は本来は関係ないことで、それは取材者であるNHKにもわかっていることなのに連続しているような編集をしているということか。
(坂井委員長)
連続しているように見えるし、2年間の時期の違いは知らないはずはない。専門的な知識の話ではなく、事実の話だ。
元留学生のES細胞にアクロシンGFPが入っているかどうかを、NHKが分かっていたかどうかは委員会には分からない。委員会決定は、分かっていたかどうかはともかく、そういう作り方をしてしまったら視聴者にはこう見えるということを指摘している。アクロシンGFPが入っているかどうか分からなければ、分からないと言い、元留学生のES細胞の発見は2年後のものだときちんと言えばこんな問題にはならない。
なお、時期については、この問題に詳しく、2年の時期の差が分かる人が見たとしても、この作りでは意味が分からなくなるので、やっぱり(5)(6)を繋がったものとして見るだろう、と委員会決定には両面から書いてある。
■少数意見の市川氏も、印象操作についての多数意見を支持しています。

(質問)
つまり元留学生が作ったES細胞があたかもアクロシンGFPが入ったES細胞であったかのように、見た人が誤解してしまうところがいけないのか。

(坂井委員長)
正確に見たら元留学生のES細胞にアクロシンGFPが入っていたのかどうかということを考えなければわからないという理屈はある。しかし、あの番組を普通の人が見る場合、アクロシンGFPの説明の部分で印象に残るのはES細胞混入疑惑なので、その後に元留学生の作製したES細胞というのが出てくると、こっちにはアクロシンGFPが入っていないから関係ないとは思わないのではないか。

(市川委員長代行)
それは、少数意見の私も同じで、STAP細胞がES細胞に由来しているのではないかという疑惑があるという所まで映像が進んで、次に若干の映像は入るが、元留学生のES細胞があったという映像がでると、それはやはりSTAP細胞が元留学生のES細胞に由来すると、当然繋がって理解されるだろう。
もしそういう意図が無いのであれば、そこはきちっと切り分けて、そういう印象を与えるような映像にはすべきではなかった。こうすればよかったという仮定の議論は色々あると思うが、そこの点では基本的には私も同じ意見だ。

■次の委員長の発言は、NHKの主張と中身が合っていないという指摘です。

(坂井委員長)
摘示した事実について真実性・相当性が立証できれば名誉毀損は成立しない。
そもそもNHKは別の話だと言っていて、元留学生のES細胞が、なぜ小保方研究室にあったかを、理研の保管状況がいい加減だという趣旨で問うていると主張している。
しかし、番組ではそういう作りになっていない。元留学生のES細胞の樹立当時にSTAP細胞研究をやっており、それが混入したのではないかという文脈ではない。逆にそういう事実があるのであれば、STAP細胞研究当時に元留学生が作ったES細胞があった、それが混入したのではないかという話をする分には、そのような事実を立証できればいいわけだ。
疑惑を提示するなら「疑惑を提示する」と言って、その疑惑を持つにはこういう裏づけ事実があると言えば人権侵害にならない。けれど、この作りで提示された事実については裏づけ事実はない、という構成だ。


■メールのナレーションについては、委員長はかなり厳しく批判しています。これが常識的な捉え方でしょう。だいぶすっきりしました。

(質問)
電子メールのやり取りのくだりだが、「科学報道番組としての品位を欠く表現方法」という所が出てくるが、申立人の主張の概要を見ると、「科学番組という目的からすると重要ではない」とある。あえて「科学報道番組としての品位」という表現を入れたのは、一般の報道番組と違うという趣旨か。
(坂井委員長)
メールの内容はほとんど具体的なことは言っていない。それをわざわざ男性と女性のナレーターを使って、何か意味ありげに表現するのは、その番組の目的からしてどうだろうか、ということだ。
世間的に大変話題になった問題を調査していく科学報道番組と、いわゆるバラエティとか情報バラエティの中で作っていくのとでは、自ずからその表現は違うと思う。この番組は、硬派というか、高い公共性を持ってやっていく中で、それほど重要性でないメールの内容を、あのやり方で表現するというのはどうかなという、そういう趣旨だと私は考えている。
(質問)
メールの所だが、中身は一応論文作成上の一般的な助言だということで放送倫理上の問題が無いということだが、声優による吹き替えで男女の関係を匂わせるといって、メールの文章を書いた本人がこういう形で訴えている。放送倫理上問題があるとまでは言えないとした根拠は何か。
(坂井委員長)
そこについては、見解の違いとしか言いようがない。これは委員会決定としてはここに書いてある通りだが、私としては、いかがなものかと思っている。この番組のテーマからは、ここが必要だとは、私は個人的には全然思っていない。
ただ、こういう決定となったのは、放送されたメールの内容が一般的な時候の挨拶というレベルの話で、男女関係とは全然関係ないということがある。その前に週刊誌の記事があったということがあって、そう見えてしまう人もいるという話だ。
問題があるとすれば、男性と女性のナレーションの仕方で、個人的にはこの番組でこういうことをやる意味があるのかと思ってはいるが、言葉の内容としては、大した話ではない。そうすると、そのようなやり方でナレーションに女性と男性の声を使ったということだけの問題になってしまう。それについて放送倫理上の問題という話なのかというと、そこまでは言えないということだ。
■最初の方の曽我部委員の発言は、名誉棄損というのはどうやって判断されるものなのか?ということを端的に示したものです。「BPOは委員の主観で判断した」という「批判」は、イロハを踏まえない論外な話です。

(曽我部委員)
摘示事実と言うのはNHKが言いたかったことそのままではなく、視聴者が番組を見てこの番組がどういうことを言っているかを受け止める内容だ。編集の問題がどこに関わるかというと、摘示事実の受け止めに関わる。紛らわしい編集をした結果、この番組はこういうことを言っていると視聴者が受け止めるだろうというのが摘示事実のc)d)だ。
それに対してNHKはc)d)に真実性・相当性があると立証できるかというと、それはそうではない。

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 坂井委員長は、留学生のES細胞の実験時との2年の差を当然知っていたにもかかわらず、それを明示しなかったことへの批判や、メールの読み上げなど「必要だとは全然思っていない」「その前の週刊誌記事からそう(男女関係があるかのように)見えてしまう者もいる」等の批判など、相当批判的に見ているように感じられました。