理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

東大の「研究不正」告発とダブルスタンダード

最近少し仕事が忙しいため、あまりまとまった記事が書けませんが、近々また書くようにしたいと思います。

 

 とりあえず、書きたいことを挙げると、

 

 ○東大の研究不正とダブルスタンダード

 ○相澤氏の論文の位置づけ

 ○論文撤回過程の前代未聞振りと「撤回」の位置づけ

 ○「研究不正」の「解釈」と「判例」から見た、STAP論文の「不正」の評価

 

 などですが、とりあえず、メモ的に少し書いていきたいと思います。

 
東大の「研究不正」告発とダブルスタンダード
 

東大医学部、分生研関係で、「研究不正」の匿名の告発が続けてあり、計6つの研究グループの22本の論文について予備調査に入ったことが報じられています。

 http://www.todaishimbun.org/accusation20160913/


DORAさんのブログで、告発書の内容を含めて詳しく紹介されています。

 

これに対する科学コミュニティ等の対応については、既に多くの指摘がなされていますが、私も「ダブルスタンダード」による対応は問題だと感じます。

特に、STAP細胞問題に関して異常な言動を行った理研改革委メンバー、分子生物学会、日本学術会議においては、STAP論文疑惑対応と今回の東大の論文疑惑対応とで、同一基準で評価、対応がなされるのか?という点が、当然関心事項となってきます。

誤解ないように言えば、STAP細胞問題への対応は異常であったのであり、それと同じ異常な対応を今回の東大の研究不正疑惑に対しても行うべき、と言っているのではありません。今回の東大不正疑惑の件を契機に、STAP細胞問題への対応が如何に異常だったかを自覚してほしい、という趣旨です。

 

現時点では、東大は予備調査に入ったということですが、改正された文科省ガイドラインに従って、調査手続きがなされていくということかと思います。

http://www.mbsj.jp/admins/ethics_and_edu/mext_guideline.html 

 

 これまで、今回の疑義の対象となった教授の一人は、以前も研究不正の疑義を指摘されて、調査の結果、問題なしとされたとあり、そのことについての疑問の指摘も巷間あるようです。

 今回の疑惑の指摘の当否がどうなのかは、告発者自らが述べているように、生データに当たればすぐわかるそうですので、当否は早期に明らかになるのかもしれません。

 STAP細胞問題の際のように、ハーバードとの国際共同研究であるがために、実験ノートを含む生データの帰属からくる制約という複雑な要素はなさそうですから、調査は容易なのでしょう。

 

 調査委構成がガイドラインに従って適正に選ばれ、適正な基準、手続きで調査がなされることを社会は期待するわけですが、問題は、科学コミュニティである学会や学術会議の対応です。DORAさんのブログに掲載されている告発書を読むと、具体的に疑義の根拠が書かれているようですが、関係学会としては、

 

「研究不正について告発がなされたことについて、東大は真摯に受け止め、文科省ガイドライン及び内部規程に従って、早急に調査を進め、その結果を科学コミュニティ及び社会に公開することを求める」

 

 という趣旨の声明を発し、調査の進捗と適正な調査を期待し、監視しているとのメッセージを発するのが関係学会としての対応ではないのかと思いますが、今日時点では、見落としでなければ、分子生物学会や大隅典子元理事長のブログでは、サイレントの状態かと思います。

  http://www.mbsj.jp/ 

  http://nosumi.exblog.jp/

 

 研究不正への対応は、文科省ガイドラインにも示されている通り、科学コミュニティの自治に委ねられています。

 
「【研究者、科学コミュニティ等の自律・自己規律】
 不正に対する対応は、まずは研究者自らの規律、及び科学コミュニティ、大学等の研究機関の自律に基づく自浄作用としてなされなければならない。」
 

 もちろん、だからといって、すべての研究不正疑惑案件について声明を発する必要はなく、社会的影響度が低い研究、研究機関等での話であれば、特段の対応はせず、当該機関の対応に委ねるということでいいのでしょう。

 しかし、今回の案件は、あの研究不正が続発していた東大の、科学の世界ではよく知られた教授らによる研究に関するものです。その東大で再度の不正疑惑が生じたとあれば、その当否について予断を与えることは適当ではないですが(その点は告発者も慎重に留保をつけているように思います)、厳正な調査が行われるべきとのスタンスの表明は、科学コミュニティのうちでもっとも関係のある学会としてはあって然るべきだと思います。

 

 分子生物学会と科学コミュニティは、STAP細胞問題への対応について言えば、信頼と権威とを失墜させています。

 

 STAP細胞論文の疑義が生じた際には、文科省ガイドラインの存在も学内の不正調査規程の存在も知らずに、調査以前の早期の時点で前代未聞の不正と決めつけて非難した中山副理事長(当時)、同様に文科省ガイドラインで再現実験を行うことは権利であることを知らず、検証実験からして税金の無駄遣いだとして中止・凍結を迫る理事長声明を発し、個人ブログではネットの指摘を鵜呑みにし、笹井氏のES細胞ではあり得ない根拠となる指摘を、(科学的検証をしようとよびかけるのではなく、「ES細胞も角度を変えて撮影すれば小さく見える」とまで書いて)頭から否定することに終始した大隅理事長(同)、その理事長声明に賛同の意を表し、NHKスペシャルでは、STAP細胞捏造の印象付け、刷り込みに協力した学会の主要メンバーたち、自ら不正調査をせよと提言しながら、若山、遠藤両氏の第三者の評価もされていない主張を盲信して、同じ提言の中で「前代未聞の不正」と断じ、会見では「世界三大不正」と断じ、更には理研研究者の連帯責任を問うに等しいCDB解体の(マスコミを喜ばす目的によると後にネイチャー誌に認めた)提言までした理研改革委、その改革委提言をたしなめることなくそのまま追認し、「研究全体が虚構であったのではないかという疑念を禁じ得ない」とする声明を発表した日本学術会議・・・。

 笹井氏、丹羽氏らの指摘を含め、ES細胞では説明できない諸材料を一切無視し、被調査者であるはずの若山氏の説明、主張を所与の前提としてES細胞の混入と断じ、それを裏付けるために必須であり、かつ容易なはずのES細胞による再現実験さえも行わなかった桂調査委。それを誰も不思議と思わず、文字通り一切の疑義も出なかった科学コミュニティ・・・。

 

 パラダイムシフトをもたらしかねないSTAP細胞だからこそ、ここまで一丸となっての理不尽な反応となったのだろうと思われても仕方がないような一連の推移でした。

 ここまで信頼と権威とを失墜させた学会と科学コミュニティですが、今回の東大の研究不正疑惑に対する対応次第では、別の意味で、信頼と権威を失墜させることになりかねないということを、関係者はどこまで理解しているのでしょうか・・・?

 

 あれだけSTAP細胞問題で激烈な反応を示した学会と科学コミュニティですから、今回の東大の研究不正疑惑に対して、一切何もメッセージを出さないということになると、結局、学会なり科学コミュニティというのは、ダブルスタンダードの典型で・・・いや、スタンダードさえも持たず、その時の主観的気分で、安全にたたける相手は目一杯たたき、安全にたたけない相手には沈黙する・・・という行動様式をとるということなのだな・・・という印象を決定的にしてしまいかねないということです。


 自己保身というのは、社会で働く中では、多かれ少なかれありますし、それは仕方がない面はありますが、しかし他方で、自らの立場を認識して、自己保身の一環ではありますが、「アリバイ作り」ということもやるということはしばしばみられるところです。

「自分の立場上、言うことは一応言いましたよ」「決してサボっているわけではありません」ということを示すために、真剣度合いは別にしても、何らかのメッセージを出すことは、組織運営に関わる者としては一般的です。

 

しかし、今回の東大の研究不正告発に対して、その「アリバイ作り」的メッセージさえも当事者であるはずの関係学会が出さないとすれば、その状況認識、外部からの視線に対する鈍感さとともに、STAP細胞問題の際の反応が異常だったということが、改めて強く印象付けられることになります。

 

今回の東大の研究不正の告発については、早晩、調査結果が出るでしょうが、もし研究不正が認められるということになると、改正文科省ガイドラインに照らして、組織の管理責任が問われてくることになるはずですが、そういうことになるのかどうか、よくわかりません。

改正ガイドラインでは、「特定不正行為の調査の実施などについて、文部科学省等への報告義務化」が入りましたので、いい加減なことはできないでしょうが、本来は、科学コミュニティの自治に委ねられている以上、関係学会や学術会議が、研究不正の定義、調査の手続きを正確に理解した上で、そういう監視、点検の役割を果たさなければならないはずですが、そうはなっていません。

 

 STAP細胞問題において、理研改革委の提言が指摘したCDBの組織管理上の責任については、ほとんど因縁(インネン)に近いもので、小保方氏の採用過程、倫理教育の実施等に関して問題であるかのように書きたてましたが、実際にはそうではありませんでした。結局、自己点検委員会が早期の段階から描いた構図とシナリオに沿って出された、CDB内外が関係する奪権闘争と、パラダイムシフトをもたらしかねないSTAP細胞潰し等の思惑とによる政治的産物であろうことは、既に詳細に書いたところです。

 中村委員が、「竹市氏によるCDBの研究倫理教育は他に比較してかなり進んでいた」と述べ、CDB解体提言が、「CDBに終止符を打つというよりは、怒れるマスコミを喜ばせるための戦略的選択であった。」と、岸委員長と中村委員とがネイチャー誌に後に述べたように、CDBの管理に実際に欠陥があったことによるものではないことは、今や明らかになっています。

 

 しかし、東大の場合は、本当に研究室ぐるみの文字通りの「研究不正」が続き、今回、改めて研究室ぐるみっぽい疑義の指摘が、主要な6つの研究グループについてあったわけですから、本来の意味での「組織の管理責任」が問われてくることになりかねません。

 もちろん、だからといって、理研改革委の提言のような「組織解体」「連帯責任」のような馬鹿げた話になる筋合いのものではありませんが、ガイドラインで示されているような取り組みが、組織として然るべく実効のある形でなされていたのか?ということは、問われてくることになるでしょう。

 

 いずれにしても、今回の東大の研究不正疑惑の告発の展開次第で、分子生物学会、学術会議、科学コミュニティの言動のダブルスタンダード(あるいは、「たたける弱い者はたたき、たたけない権威に対しては沈黙する」というシングルスタンダード)の有無がはっきりする契機となるような気がします。