理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

パラダイムシフト的革新研究の受難の歴史―ES細胞も最初は誰もできなかった、Muse細胞も拒絶査定を受けた


 STAP検証実験の中間報告の会見時に、質疑応答で相澤リーダーより以下のような発言がありました。

「小保方さんを参加させている意義は、発展段階の研究においてはその人がやらないとできないというという事がどうしてもサイエンスにはある。例えば、ES細胞でも最初は誰でも樹立できたわけではなく、ごく稀な人しか作れなかった。そういう事がサイエンスにはあり、最終的な決着はやはり小保方さんにつけて頂く事が大きな意味をもつ。」

 ES細胞においても、最初は再現が難しかったとのことです。

 他方、新潮社フォーサイトの記事(7月5日付配信)が掲載されています。大西睦子氏によるもので、「ザ・ニューヨーカー」誌の記事を引用紹介したものです。

「米誌で読む「STAP細胞」真相(上)小保方さんは「プリンセス晴子」と呼ばれた」

 その中に、ザ・ニューヨーカー」誌の記事として、次の一節がありました。

「約15年前、ボストンにあったバカンティ氏の研究室で、のちに「STAP」と呼ばれることになる、ある細胞の仮説が生まれました。この仮説は、生化学分野において歴史的にも内容的にも有名な学術雑誌『The Journal of Biological Chemistry (細胞生化学)』誌に、バカンティ氏が弟のマーティン・バカンティ氏らとともに、「芽胞様細胞(spore-like cells)」として発表しています。芽胞様細胞とは、すべての組織に存在する、極めて小さな(5ミクロン以下)、休眠状態にある細胞のことです。極端な低温、高温や、低酸素といったストレスのある状況でも生き残ることができます。その仮説でバカンティ氏らは、芽胞様細胞は、ケガや病気によって活性化するまで休眠していて、ケガや病気で失われた組織を再生する能力をもつと主張しました。
 ニューヨーカー誌の記事によると、その主張は、学会で同僚たちにナンセンスだと否定されました。バカンティ氏は同誌でグッドイヤー記者に、当時を振り返って、「人々は憤慨し、我々は“君たちは狂っている。ジャンクだと分かっているぞ”と言われたんだ」と語っています。幹細胞研究者たちだけでは なく、学校の教師である妻を含め、バカンティ氏がなぜこの研究を進めているのか、当時は誰も理解できませんでした。

 「芽胞様細胞(spore-like cells)」は、Muse細胞と同じコンセプトかと思いますが、Muse細胞の研究、実用化の最近の進展ぶりは、以前の記事に書いた通りで、大変驚きます。

 Muse細胞も、最初は日本の特許庁で拒絶査定を受けて、不服審判に持ち込んだ末に成立したのだそうです。

「東北大・出澤真理教授の「Muse細胞」に関する特許出願が、日本国特許庁に審査請求を行って拒絶査定を受けたあと、不服審判に持ち込んだ結果、特許査定を勝ち得ていた事実をつかんだことを報告しておく。出澤教授らのもとの国際特許出願には「X文献」(出願の新規性を否定する文献)が多数あったから、「特許請求の範囲」を限定して成立したものと思われる。

 このような話に接すると、ES細胞にしても、Muse細胞にしても、最初は科学界は拒否反応だったということがわかります。それが今では、ごくごく当たり前の存在になっています。

●他方、培養系の実験では、「微妙な調整が必要でありプロトコル通りでも同じ結果を得られない」というのは、若山氏も当初は強調していたわけですし、生物学の世界では「周知の事実」だといいます。

●こういったことを考え合わせると、STAP細胞の再現というのは、なかなか難しく、科学界からの受難も、パラダイムシフト的な革新的研究においては「よくある話」なのかもしれません。
 パラダイムシフト的研究開発というのは、産業界においても科学界においても、それに関係する人々にとっては、その生死を左右するものですから、おのずと反応も激烈になるのは、やむおえないのでしょう。
 そういう革新的研究の実用化は、従来の研究、商品にとっては、死刑宣告、退場勧告に等しいものです。
 直接関係しない外部の人間にとっては、利害関係がありませんので、気楽に見ていることができますが、利害関係者にとっては、心穏やかでいられるわけがありません。そのことは、理解できますが、かといって、ここまで極端な、人格的罵倒まで含めたバッシングや陰謀的臭いが強く漂う状況というのは、許されることではないでしょう。

Muse細胞の出澤真理教授は、次のように語っています。

「───生命科学の研究者になるには、どんな資質が必要と思われますか。
 
粘り強く研究しなければ成果が出ないので、粘着性の気質が必要でしょうね。私がMuse細胞を発見できたのも、捨てようとした細胞をもう一度確認したから。最後まで諦めずにやらなければだめ。それと、実験をしていて、「あれっ?」とか、「変だな」とかを感じ、目の前で起こっている現象を見逃さない能力でしょうか。」

 ───中高校生にメッセージがありましたら。
 私は大学受験をするときに、予備校にも、塾にも行っていません。全部独学で勉強しました。受験というのは、答はもう決まっていることを勉強することですね。それなのに、他人から解答を導くためのノウハウまで教えてもらっているようでは、とてもクリエイティブな仕事はできません。
 私たちの研究は、必ずしも答がないもの、道筋のないものを、自分で道筋をつくり、答をつくりださなければなりません。答がないから、方法がないから研究するんです。中高校生のころから、他人に頼らず、自分で解決の道を探ろうという姿勢を持つことは、研究者を目指すなら、ぜひ必要なことでしょうね。
 トラブルに直面したときも、なぜうまく行かないのか、どうしたらいいかを常に考えていく。そのための想像力も大切にしてください。」


 STAP細胞問題の一連の経過を思うと、なかなか示唆的な話だな、と感じます。 
 小保方氏にもかなり強靭な粘り強さがあると感じますので、いずれそれが実を結ぶことを期待したいものです。