理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

BPOの審理と名誉棄損等の訴訟との関係―小保方氏の名誉回復の道筋


 神戸地検による不起訴処分を受け、三木弁護士は、根拠のない告発によって「著しい名誉棄損を受けた。謝罪を求める。」とのコメントを述べています。
 地検の不起訴理由(「嫌疑不十分」)では、「事件の発生そのもののが疑わしい事案」との踏み込んだコメントをつけていましたから、名誉棄損訴訟の対象になりうることは間違いありません。

 ただ、それをどのタイミングで起こすのがいいのか、ということになると、いろいろと考慮すべき要素があるのかもしれません。
 想像するに、最も考慮している要素としては、BPOの審理との関係だろうと思います。BPOの審理対象の基準というものが公表されていますが、「訴訟が係属している案件は取り扱わない」としています。
 
「第3章 苦情の取り扱い基準
(5)裁判で係争中の事案および委員会に対する申立てにおいて放送事業者に対し損害賠償を請求する事案は取り扱わない。また、苦情申立人、放送事業者のいずれかが司法の場に解決を委ねた場合は、その段階で審理を中止する。
 
 最初は、この取扱い除外の対象となるのは、NHKに対する訴訟のことに限られると思っていたのですが、もしかすると、人権侵害や放送倫理違反の対象となる材料は、石川氏その他の言動も密接に絡んできますから、それらのNHK以外の者に対する訴訟も含めて「裁判で係争中の事案」ということになるのかもしれない・・・と思い至りました。
 それであれば、小保方氏側が、名誉棄損等の訴訟を現時点では起こさない理由も合点がいきます。
 
 そうすると、STAP細胞事件の全貌とまではいかなくとも、多くの未解明の部分が明らかにされ、小保方氏の名誉回復に至る確実な道筋は、次のようなことではないか?と考えました。
 自ら民事訴訟で立証を行うことは、相手や訴える内容によってはハードルが高い面があります。したがって、その立証材料を、外部の公的組織による調査や認定によって得ることができれば、ハードルは低くなり、訴訟での立証も進めやすくなります。
 その場合の「外部の公的組織による調査、認定」というのが、兵庫県警と神戸地検の捜査と判断であり、BPOによる認定とそれを受けたNHKの内部調査(第三者委員会による)原因究明です。それらが出揃ったところで名誉棄損の訴訟に訴えるのが、もっとも容易(負担が少ない)かつ確実な勝訴の道筋となるでしょう。
 
 そこで明らかにできるのは、ひとつは、兵庫県警の捜査資料であり、関係者の参考人聴取の調書を含めて、小保方研の冷凍庫のボックス内の細胞に関連した諸々の動きです。この点は、先日の記事でご説明した通りです。
 
 
 もうひとつは、BPOによる、NHKの編集、放映に関する問題点に加えて、取材過程の問題、事実関係も含めた諸々の材料です。
 BPOというのは、規程を読めば読むほど、オールマイティな機関であることをひしひしと感じます。「苦情の取り扱い基準」の次の規定をみると、裁判所と検察とを兼ねているような存在であることがわかります。放送局が、「総務省の電波停止、免許停止のブラフは怖くはないが、真に怖いのはBPOだ」と受け止めている理由がわかります。
 
(3) 放送前の番組にかかわる事項および放送されていない事項は、原則として取り扱わない。ただし、放送された番組の取材過程で生じた権利侵害については、委員会の判断で取り扱うことができる。
2.第1項第1号に定める事項についてのきわめて重大な権利侵害および放送倫理違反に関しては、申立てを待たずに、委員会の判断により取り扱うことができる。
3.第1項第1号に定める事項について、放送関係者による重大な権利侵害等を伴う取材活動・放送がなされ、これが継続中であって、かつ緊急に対応する必要があると認めたときは、本人または利害関係人の申立てにより、委員会は、放送事業者または所属の関係者に対し、その事態を解消するために必要な措置を取るよう要望することができる。」

 このBPOは、裁判外紛争解決手続ADR)の一種ではありますが、通常の裁判外紛争解決手続の場合には、申立てを受けた側が拒否すれば取り上げられない仕組みです。しかし、BPOは、放送業界における自主的監視機関として設置されている関係上、放送局側は拒否できない仕組みです。
 また、裁判やADRの場合は、事実関係や立証等は、基本的には当事者が主張した範囲内でしか勘案できないのが通常です。「原告の主張」「被告の主張」があって、「当裁判所の判断」という順番で判決が書かれます。ところがBPOの場合には、当事者の主張だけに囚われず、自ら問題指摘を行う例も少なくありません。そして、上記の規定にあるように、放送画面、ナレーション等そのものによる人権侵害、放送倫理違反だけでなく、「取材過程で生じた権利侵害」についても取り扱うことができるとされています。
 加えて、放送局側では、BPOの決定に不服を申し立てる道がありませんから、受け入れて、原因究明と再発防止策を提出するほかありません(申立人側はもちろん、改めて訴訟を提起できます)。
 
 また、BPOは放送局という報道機関の自主チェック機関としての位置づけであり、政府当局側からの介入は拒否するという姿勢を明確にしています。最近では、総務大臣の電波免許停止の可能性発言を批判していました。それだけに、逆に放送局側に対しては厳しく自らを律することを求める姿勢がはっきりしており、実際、人権侵害や放送倫理違反の決定が相次いでいます。その決定に至る事実認定や理由は、微に入り細を穿つが如くであり、裁判所の判決文と変わるところがありません(というか、それ以上のコメントも多々含まれています)。
 
 このように、放送局にとってのBPOというのは、戦々兢々たる存在であることが想像できます。そして、そこで明らかにされる詳細な事実関係、人権侵害等の判断は、放送局側もそれを認めた上で、原因究明と再発防止策を提出することになりますので、放送局側にとっては、実質的に最終判断機関ということになってきます。
 申立人側とすれば、ここで認定された事実関係や判断を援用して、改めて名誉棄損や損害賠償請求の訴訟を提起することができますから、マスコミ被害に対する一般国民の救済策としてはよくできた仕組みだと感じます。
 
■ 小保方氏側とすれば、BPOの決定(勧告)が行われ、更にNHKによる第三者機関に委ねた内部調査による原因究明によって事実関係がより明確になったところで、石川氏らに対する訴訟を提起できる客観材料は揃います。
 そして、石川氏らに対する名誉棄損訴訟等の中で、直接関連する兵庫県警の捜査資料の開示閲覧を求めることができますから(あるいは裁判長からの文書提出命令)、それによって、同県警が捜査した全貌を明らかにすることができます。
 
 こういうシナリオによって、現在知られていない事実関係の多くが明らかになり、不可解な要素が多すぎるSTAP細胞事件の真相、深層の解明につながり、小保方氏の名誉回復もなされることになる可能性が十分にあるように思います。
 
 なお、そういう流れの中で見ると、小保方氏の手記の出版と、婦人公論での寂聴氏との対談記事というのは、内容的にも、タイミング的にも絶妙だったのではないか、と改めて思いました。その直接のきっかけは、小保方氏側ではなく、講談社側であり婦人公論側ではありました。講談社から3カ月と10日の執筆期間が示された結果、2月末の出版となり、その手記を読んだ寂聴氏からの呼び掛けに応じて4月に対談を行い、その記事を掲載した婦人公論524日に発売されました。
 このような経過を見れば、小保方氏側が仕掛けたわけではありませんが、結果として、自らの立場と状況を世間に訴える格好の手段となったわけです。
 手記の『あの日』によって、小保方氏やSTAP細胞問題に対する一般の見方を大きく変えることになりました。婦人公論の対談記事については、いろいろな見方はあるとは思いますが、バッシングにより鬱病に至ったという深刻な「人権侵害」被害を、文章だけでなく数葉の写真によって強烈に印象付けるという効果をもたらすことになりました。これは、まさに「人権侵害」の有無を審理していて大詰めに来つつあるBPOに対するアピール材料になることでしょうヒアリングで対面して、委員たちもそのことは強く感じたとは思いますが)。
 そしてまた、それでも、寂聴氏の励ましと読者らからの手紙、そして、海外の研究者からの応援の手紙、STAPの名がついた論文の発表等によって、少しずつ意欲と体調とが回復しつつことの紹介にもなっています。
 
 今後、小保方氏にとっては、フォローの材料が相次いで出てくると思います。それらを通じて、名誉回復が果たされ、STAP細胞の研究に本格的に復帰できる日が、そう遠くない時点で来るのではないかと思います。