理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

【再論】小保方氏に「実験データ・ノートを開示して説明せよ」との指摘は、構図の複雑さを踏まえていないと思われる

【注】2016年5月22日に少し加筆しました。

 小保方氏がデータを出して説明しないことを以て、説明責任を果たしていないという批判がしばしばありますが、これは、


① STAP細胞研究が、複数機関の共同研究であるとの全体構図
② 研究実験で得られた試料(実験ノートを含む)の帰属の問題


 について理解しなければならず、一般的な一研究者、一研究室だけの研究実験の場合とは異なる、という点は、これまでもこのブログでご説明してきました。
 
 
 依然として「小保方氏は、実験データとノートを出して説明せよ」との批判が繰り返し出てきますが、この点の理解がなされないままに繰り返し批判がなされても詮無い話ですので、改めて簡潔にまとめておこうとおもいます。
 
■ STAP細胞に関する実験データ、ノートの開示を論じる上で踏まえる必要がある点として、次の4点をご説明したいと思います。
 
(1)ハーバード大との共同研究契約に基づくものであり、スフェア細胞塊の作製のパーツまでの実験ノート、実験試料は、ハーバード大に帰属しているため、小保方氏の一存では公開できないこと。
(2)桂調査委でも、実験試料の帰属が理研にあるとされたものだけで解析せざるを得なかったという制約が、モニタリング委報告書に書かれていること。
(3)小保方氏は、記者会見等において、知財、秘密保持の事情から、公開が難しい旨を述べていること。
(4)早稲田大学の調査からも、ハーバード大の非公開方針が固いことが分かること。
 
 以下、順次ご説明します。
 
1 ハーバード大との共同研究契約に基づくものであり、スフェア細胞塊の作製のパーツまでの実験ノート、実験試料は、ハーバード大に帰属しているため、小保方氏の一存では公開できないこと。


ハーバード大B&W病院、理研東京女子医大との国際共同研究だったということ。
②小保方氏は、そのためにハーバードに籍を置く客員研究員であったこと。
③日米双方に研究分担や試料の帰属関係が共同研究契約で決まっており、実験ノートや実験試料を含む一連の試料も、その契約に従って日米のいずれかに帰属すること。
④小保方氏の実験ノートやキメラマウス等の実験試料は、ハーバード大に帰属するものであり、小保方氏の判断では扱えないこと。
 
【解説】
 もともと、小保方氏が理研の若山研でSTAP細胞関係の研究を行ったのは、ハーバード大で作製したスフェア細胞の多能性を裏付けるためのキメラマウスの作製が発端でした。小保方氏は、早稲田大の博士課程に籍を置き、そこから女子医大に留学、更にハーバード大バカンティ研に留学して研究を続け、早稲田大の博士課程を修了後(20111月)、バカンティ研で研究を続けることになりました。その渡米の際、ビザが下りるまでの間に時間がかかったので、一時的に若山研で研究をさせてもらったときに、若山氏から若山研の研究員になることを誘われましたが、バカンティ氏はSTAP細胞の発想は、あくまでバカンティ研のオリジナルだから、先進設備がある理研で研究できるよう便宜は図るが、論文がでるまでは籍はバカンティ研に置いてほしいとのことでした。
 こうして、小保方氏が、2011年春以降、若山研で研究員として研究を行ったのは、ハーバード大からの客員研究員としてでした。客員研究員は、理研の客員規程にあるように、「研究所と大学、研究機関、民間企業等(以下、「研究機関等」という。)との研究協力協定、共同研究契約等に基づき、当該研究課題等を遂行する者」です。
 共同研究契約の内容は、「共同研究規程」というものに従って、共同研究内容や費用の分担などのほか、研究試料の取扱についても決めることになっています。
 
 もともと、スフェア細胞の様々なストレス条件による作製や、その万能性のキメラマウス作製による確認ということが、当初の共同研究の目的だったはずですが、具体的にどのような契約内容になっているかはわかりません(これは情報公開請求によって明らかにすることができると思われます)。ただ、この共同研究の経緯と目的からすれば、スフェア細胞(後のSTAP細胞)の作製に関する一連の実験は、バカンティ研としての論文作製のためであることは明らかです。後に、笹井氏に論文執筆を手伝ってもらうことをバカンティ教授らに報告した際に、同教授は喜びつつも、「でも情報の流出には気をつけて」と念を押すのを忘れていません(『あの日』p113)。当然、その実験ノートや実験結果の試料については、バカンティ研(ハーバード大B&W病院)の帰属になります。
 
 こうして、ハーバードからの客員研究員である小保方氏は、2011年春以降、様々なストレス条件によるOct4陽性の細胞塊の安定的な出現に向けた研究実験や(小保方氏としての主な研究関心はここまで)、若山氏の協力による万能性確認のためのキメラマウスの作製に向けて取り組みました。そして、同年10月に、若山氏が、細胞をバラバラにするという手法ではなく、マイクロナイフでスフェア細胞塊を切って小さくした初期胚に挿入したところ、キメラマウス作製に成功しました。そしてその残りの細胞で、STAP幹細胞ができたと若山氏は小保方氏に告げました。それ以降、若山氏の強力な主導により、STAP幹細胞、FI幹細胞の研究に若山研が総力を挙げて取り組んだわけです。
 この幹細胞化以降のパートは、若山氏が特許化を主導し過半の持ち分を主張したり、レター論文のラストオーサーになったこと、そして、自己点検委報告書が「STAP 細胞研究における若山研究室のクレジット及び CDB の貢献が明確となった。」と書いていることからもわかる通り、実験試料は若山研(理研)に帰属するということでしょう。
 
 このように、小保方氏の若山研での研究実験は、様々なストレスを加えることによるOct4陽性細胞塊の作製というところまでは、ハーバード大との共同研究契約の範囲内のものであり、幹細胞研究については、共同研究契約の範囲外で若山研によるものであるという整理だろうと思います。もっとも、幹細胞作製についての特許出願に際して日米間で熾烈なやり取りがあったとされることから、幹細胞研究部分については、ハーバード大との共同研究の範囲なのかどうか、寄与度がどうかといった点の判断は微妙なところがあったのだろうと想像されます。
いずれにしても、様々なストレスを加えることによるOct4陽性細胞塊の作製というところの研究実験までは、ハーバード大(の駒である研究員の小保方氏)によるものであり、その実験ノート、実験試料の帰属はハーバード大にあるということであって、小保方氏の一存で公開できるものではないということが、以上の経過、構図からわかると思います。
 
 
2 桂調査委では、実験試料の帰属が理研にあるとされたものだけで解析していることが、モニタリング委報告書に書かれていること。
 
【解説】
 実験試料に帰属の問題があるということは、モニタリング委報告書に書かれています。桂調査委では、帰属について精査し(帰属の分別は小保方氏が従事)、理研に帰属することとなったものを、順次解析したとのことです。
 上記「1」の経過からすれば、ハーバード大との共同研究契約の目的及び範囲内で小保方氏が研究実験を行った部分は、理研の帰属にはならなかったはずですから、桂調査委であっても、調査対象にはできなかったということになります。しかし、桂委員長は、会見でそのことを明確に説明しませんでした。キメラマウスを解析しなかったのか?と問われて、「できませんでした」と述べて、すぐ「しかし証明があったとは考えていません」と話を逸らしてしまいました。記者たちは、残存試料を解析すれば分かるから解析せよ!と主張していたはずですが、それ以上何も聞きませんでした。
 ここでわかることは、調査委であっても、試料の帰属の問題があって、重要部分であっても触ることができなかったということです。したがって、小保方氏も同様に、ハーバードに帰属する試料を、同氏の個人のものであるかのようにその裁量で扱えるわけではないということが分かります。
 理研に帰属するものは、保全措置がなされて以降、小保方氏が触れることはできません。
 
 
3 小保方氏は、記者会見等において、知財、秘密保持の事情から、公開が難しい旨を述べていること。
 
【解説】
 小保方氏が、石井調査委の捏造・改竄認定に対する不服申立てに関して、201449日に記者会見を行いました。その際、実験ノートについて問われて、何点か答えています。また、その後出された補足資料においても、若干の記述があります。
 
 ○STAP実験に関する実験ノートは、2冊だけでなくもっとあること。
○これまで研究所を渡り歩いたので、その時々の実験ノートはそれぞれ所属したところに保管されていること、
知財の関係もあって一存では公開できないこと、
○秘密実験もあるので一般公開はするつもりはないこと、

等を述べています。
 
■記者会見での応答
 抽出すると次のような回答です。「ログミー」からの抜粋です(http://logmi.jp/10299)。
 
「最終報告のなかでは3年間で2冊というふうになっているようですが、実際にはそんなことはありません。もっとノートは存在します。ただ、理化学研究所の調査委員会のほうに提出したノートが2冊だった、ということです。」
 
「記述方法につきましては、当時の私にすれば充分トレースが出来るものだったんですけれども、第三者がトレースするには書き方が不十分だったということに関しては、本当に私の反省するところであります。そして提出が2冊だったという点におきましては、ノートの提出自体を突然その場で求められたので、その時にあったノートが2冊だった、ということです。」
 
「(記者 もし必要とあれば、まだ提出できるノートはお手元にお持ちだということですか?)はい、そうです。」
 
「調査委員会の方が資料を確認されに来たときには、ノートの何々に対する記述の部分を、ということでしたので、すべてのノートの用意をしておりませんでした。で、私は幾つかの研究所を渡り歩いておりますので、残りのノートにつきましては、それぞれ別のところに保管してあります。」
 
「テラトーマに関しては提出しているノートに書かれてあります。ただ調査委員会の方は、詳しくこの、どこの部分に記載がありますか、と質問をするわけではなく、ご自分たちでノートを精査して追跡ができない、というご判断をきっとされたんだと思いますので、もし詳しく聞いてくだされば、もう少し理解していただけたのかなとは考えております。
「(記者 それはその、小保方さんのほうから説明はされなかったんですかね? その部分に記述があるということを。)はい、あの、ノートを持って帰る、という形でしたので。」
 
「公開実験につきましては、私の判断では何ひとつ決められることではないので、お答えすることはできないですけれども、あと実験ノートにつきましても、秘密実験等もたくさんありますので、ちょっとあの、全ての方に公開するという気持ちはありません。」
 
記者会見の補充説明(クリックして下さい)
 
「現在開発中の効率の良い STAP 細胞作成の酸処理溶液のレシピや実験手順につきましては、所属機関の知的財産であることや特許等の事情もあり、現時点では私個人からすべてを公表できないことをご理解いただきたく存じます。」
 
 
4 早稲田大学の調査からも、ハーバード大の非公開方針が固いことが分かること。
 
【解説】
 早稲田大学での博士論文に関する調査委員会の調査では、ハーバード大まで出向いて研究実験の存在について裏付けをとっています。
 
早大報告書では、ティッシュ誌掲載に関連しては次のように述べています。
Tissue 誌は、いわゆる査読付欧文学術雑誌であり、その分野の高度の専門的知識をもち、かつ独立、公平性の高い査読者が論文内容のオリジナリティ、教育的価値及び有効性を考慮に入れた上で、内容を評価、検証し、その結果、内容の明確性、正確性、論理性等が掲載に値するとされた場合のみ、掲載を許される。そのため、Tissue 誌がその掲載を受理したことは、査読者が上記一連の実験の実在性に疑問をもたなかったことを示している。
この事実に加えて、本調査においては、以下の事情が認められた。
(a) 小保方氏は、「これらの実験は主にハーバード大学で実施した。」、「それを裏付けるデータ等(ラボスタッフ共通の実験ノート等)は同大学に存在する。」等と供述する。
(b) S 氏は、小保方氏と同様の供述をした上、さらに具体的に、
   ■■■(ブログ主注:本文では25行分が黒塗り)
等と供述する。
(c) 平成 21 年から平成 22 年の日付が入った小保方氏のノートの抜粋(写し)及び顕微鏡写真等の電子データが存在している。
 これらの事情等に照らすと、本件博士論文第 2 章から第 4 章のもととなった実験の実在性を推認できる。」(p29~30)
 
 上記の(c)が、内容まで確認したのかどうか、この記述からは曖昧ですが、小林委員長は、会見で次のように述べています。小保方氏の手元にないノートは、ハーバード大の規定で、閲覧さえできなかったということのようです。
 
********************************
 記者「Tissue誌掲載論文,若山さんとの共同研究部分の実験ノートは見たのですか?」
 小林委員長「すべてかどうかはわからないが小保方さんからみせていただいたものは見ました。」
 記者「実験ノートの記載は論文を網羅したものでしたか?」
 小林委員長「小保方さんの供述に一定の信頼性を与えるものだったと考えている。」
 記者「ハーバード大時代の実験ノートをご覧になったのですか?」
 小林委員長「小保方さん所持分だけ見せてもらった。」
 記者「ハーバード大にある実験ノートは取り寄せられたのですか?」
 小林委員長「ハーバード大の規定で持ち出し禁止,コピーも禁止で見ることはできなかった。」
 記者「若山さんとの共同研究部分の実験ノートは入手されたのですか?」
 小林委員長「全部がどれだけあるのかわからないので,全部かどうかわからない。」
 記者「実験は実在していたと認定したからにはそれなりの根拠のあるものだったけれども,すべて網羅したわけではないということですね?」
 小林委員長「小保方さんの供述を裏付けるものがあるという心証をえるに足るものであった。」
*********************************
 
 また、小保方氏の手記では、再指導で不合格とされた状況について、次のように書かれています(P249)。小林委員長の発言と同様の趣旨です。
 
*********************************
「博士論文のデータとして用いられている、アメリカで取られたすべての生データの写真と、その写真の由来となるすべての試料が真正であると証明せれない限り、判断は変わらないと告げられた。」
「(いったん当時の指導教官が精査し合格を出したデータについて)このような厳しい条件をつけ、不合格を出すのは不条理だと感じた。もちろんアメリカの研究室にはデータの提出をお願いしたが、ハーバード大は情報の管理が厳しく、容易にコピーなどもらえることはない。」
*********************************
 
 これらの点から推定できることは、ハーバード大は、自らに帰属し保管している実験ノート類は、一切外には出さないということです。たとえ、実験当事者だったとしても、既に所属がなくなり、該当する実験も終わり論文公表も終わっているような場合には、閲覧・コピーによる公開は難しいということでしょう。

 特に、STAP細胞の研究は、特許出願され、世界主要国で順次審査入りしつつあります。日本の特許庁でも4月22日に、審査請求がなされ、特許出願維持の姿勢が明確になりました。米国では、特許出願の持ち分の一部譲渡により、産学連携研究の段階に進んでいます。
 こういう状況下では、ますます、ハーバード側の非公開の姿勢は固くなることでしょう。
 
  以上の事情により、小保方氏に対して、「実験データ、実験ノートを公開して、説明責任を果たさないことは、極めて問題だ。」と論難することは、事実上不可能なことを求めているものであるということがわかると思います。
 それが理解されれば、そういう安易な批判はできないと思いますし、それでも同様の定型的批判をするのであれば、それは小保方氏バッシング自体が目的だと取られても仕方がないと感じます。
 
■ このことは、「簡単だと言っていたのに、本人も他の科学者も誰も再現ができないではないか。」というやはり定型的批判にも当てはまります。もともと、「培養系の実験では、極めて微妙な環境条件で左右され、再現は場所が変われば自分自身でも簡単ではない」ということは「周知の事実」であり、若山氏自身がそのように詳しく述べていたわけです。シャーレや試薬のメーカーが変わっても結果が変わってくるという話を聞くと、再現というのは、針に糸を通すようなものなのかもしれないと感じられます。
ところが、理研は、そのような「周知の事実」を無視するかのような再現実験での多大な制約を小保方氏に課してしまいました。それは、検証・再現実験の責任者である相澤氏自身が、異例の謝罪コメントをしたことからも、不合理であることが分かります。
 
「小保方研究員にカメラや立会人を置いて検証実験をするというのは科学のやり方ではない。犯罪者扱いのようにやることは科学としてあってはならないことだ。責任者として深くおわびを申し上げるとともに、責任を感じております」
 
STAP細胞の作製の難しさ、失敗しやすい事情は、笹井氏が会見での配布資料で説明していますし、ましてや、キメラマウスの作製がいかに微妙な手技を必要とするかは、若山氏自身が述べているところです。これらをすべてクリアして、安定的に再現することはそうそう簡単にできることではなさそうだ、ということが想像されます。つまり、プロトコルといっても、必ず再現できるとは限らないということでしょう。
上記のような「周知の事実」があることを理解すれば、それを無視して、「簡単だと言ったではないか」「本人も含めて誰も再現できないじゃないか」という批判は、(特に科学者が言う場合には)ためにする議論(台詞)のように聞こえます。

【以下加筆 2016年5月22日】
逆に、桂調査委は、「STAP細胞には矛盾があり立証できない」という以上に踏み込んで、ES細胞の混入によるもの」とほぼ断定したのであれば、その立証責任を負っています。研究犯罪を立件するのであれば、ES細胞によって観察事象が一致することを証明するために再現してみることは、当然の義務だということは、法律の世界では当たり前のことです。研究犯罪の解明と断罪とを科学界の自治に委ねられているのですから、そのことは特に強調され認識されなければなりません。
仮に訴訟になれば、ES細胞では説明できない事象が少なからずありますから、それをオーバーライドするために、必ず再現実験による立証が求められるでしょう。そのES細胞であれば慣れた周知の細胞なのでしょうから、容易に再現できるはずです。
しかし、決してSTAP細胞否定しES細胞で決まったことだとする科学者たちはそれをしようとしません。当然やるべきことをやらずに、前提が不確実な遺伝子解析の結果と、STAP現象(キメラ化まで)をなかなか再現できないことを以て、捏造のレッテルを張り続けています。
また、ES細胞」と単に言うだけで、それが浮遊状態のものかどうか等の統一見解もありません。「混入」では説明がつかないとし「すり替え」だと遠藤氏にも批判されていたかと思います。

ES細胞といってもいろいろな性質のものがあるし、また、多能性マーカーを発現する細胞などいくらでもあるのだ。Oct4が発現するからといって別に珍しいことではない」といったことを述べる人たちもいますが、それであれば、それらがどういうものなのか、それらによって、今回のSTAP細胞作製に関する事象がすべて説明できるのか、説明しなければなりません。丹羽氏は、日経サイエンス記者に、検証実験でできた細胞の形態等を問われて、「ESでもTSでもない。しかしキメラはできなかった」と言っていたかと思います。
多能性マーカーを発現する細胞などいくらでもあるのだ」と言うのであれば、それはES細胞ではないということなのでしょうか?その辺りのディテールを曖昧模糊とさせたまま、「あれはES細胞だというのは、もう決まったことだ」と切り捨てようとするのは、科学とは思えません。
【加筆終わり】

■ 話を元に戻して、研究不正調査については、従来は個別の研究者・研究室単位での研究実験を念頭においていたと考えられますが、STAP研究のような国際共同研究における場合には、実験の裏付けとなる実験ノート・試料の調査が、帰属や保秘の事情からうまく機能しないということが、今回の教訓として浮き彫りになったわけです。
本来、それであれば、その教訓を踏まえて、国際共同研究における研究不正調査の進め方や、関係諸機関による試料開示協力等の枠組み作りを検討しなければならないはずです。ところが、そういうことにはなっていません。
 
しばしば、「技術の進歩に法令が追い付かない」ということが指摘されます。最近では、「AIによる創造物の著作権はどうするのか?」「ビットコインは通貨か?」「自動運転の車の道交法上の扱い、事故時の責任等はどうするのか?」 等々、様々で、難問ばかりです。「国際共同研究における研究不正調査の円滑化」などは、それらに比べれば、簡単に思える話ですが、課題として対処しようという動きはないように思います(事実誤認であればご教示下さい)。


そういう状況の中で、定型的に「実験データやノートを提出、公開しないのはけしからん」と小保方氏を批判するのは、それが科学者であればなおのこと、小保方氏批判自体が目的ではないのか?と感じてしまいます。国際共同研究における不正調査において、試料の帰属に伴う開示の制約という問題についてどう対処するのか?について、今回のことを契機に、きちんと議論してほしいと思います。