理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

1 Muse細胞関係―(1)特許取得後の実用化の急進展ぶり

 
 STAP細胞の特許出願の先行研究調査(サーチレポート)において、先行特許としてあげられていたMuse細胞の研究開発の進展状況について、みてみました(Muse細胞は、20131月に、物質特許と製法特許とが成立しています)。
 短期間に実用化まで急進展している様子で、大変驚きました。
 
 まず、半年前の201510月初めに、東北大学が「東北大学大学院医学系研究科」名で発表したプレスリリースです。


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Muse細胞がもたらす医療革新
‐動物モデルにおいて脳梗塞で失われた機能の回復に成功‐
 
【研究概要】
東北大学大学院医学系研究科の出澤真理(でざわまり)教授と冨永悌二(とみながていじ)教授らのグループは、ヒト皮膚由来多能性幹細胞(Muse細胞)を用いて脳梗塞動物モデルの失われた神経機能の回復に成功しました。Muse細胞は生体内に存在する自然の多能性幹細胞です。ヒト皮膚由来Muse細胞を脳梗塞のモデル動物(ラット)に移植したところ、梗塞部位に生着して自発的に神経に分化し、さらに大脳皮質から脊髄までの運動・知覚回路網を再構築しました。脳梗塞で失われた運動・知覚機能の回復は約3ヶ月後も維持され、腫瘍形成は見られませんでした。Muse細胞は自然の多能性幹細胞であり、遺伝子導入で多能性を持たせる必要が無いので腫瘍形成の可能性が極めて低いと考えられます。また今回の結果から移植前の神経への分化誘導も必要としないことが分かりました。したがって、成人皮膚・骨髄などからMuse細胞を採取し、細胞をそのまま投与するという簡潔な操作で治療を行うことが可能です。Muse細胞による治療は、脳梗塞に対して細胞移植による機能回復という根本治療を提供するのみならず、再生医療を特別な治療から一般的な治療へと変える革新を起こすと期待されます。本研究結果は、921日に米国学術誌Stem Cellsに掲載されました。本研究はNEDO能代替プロジェクトの支援を受けて行われました。
 
【研究のポイント】
脳梗塞ラットにおいて、ヒトMuse細胞は神経分化、錐体路・知覚回路網の再形成、運動・知覚機能の回復をもたらした。
生体内におけるヒトMuse 細胞の神経分化は外来遺伝子導入などの操作によるものではなく、梗塞脳の微小環境に応じて自発的になされた。
ヒトMuse細胞の生着と機能回復は約3ヶ月間という長期間にわたって維持されていた。
腫瘍形成はみられなかった。
Muse細胞移植は脳梗塞に対する根本的治療となりうる。
ヒトへの臨床応用では迅速かつ低コストでの治療法となる可能性が高い。
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 とてもインパクトのありそうな成果です。
 
 そして、このMuse細胞の研究については、上記の発表以前に、かなりの進展が見られていました。地元東北(秋田)の大学発ベンチャー企業の(株)Clio社が産学連携で参画し(特許の独占的実施権を保有)、さらにそのベンチャー企業の全株式を、三菱ケミカルホールディングスグループが取得して、連結子会社化しています。それが、1年前の20155月です。
 
Muse細胞及び分離方法に関する基本的な特許が成立(2013222日 NEDO
 
Muse細胞を利用したアッセイ系の確立等に関する共同研究契約締結について(2013126日 DSファーマバイオメディカル、Clio東北大学
 
◎(株)Clioとの再生医療事業に関する共同研究実施について(平成26 6 2 日(株)免疫生物研究所群馬県))
 
Muse細胞を用いたヒト3次元培養皮膚が実用化へ(20141211日 NEDO東北大学Clio、他)
 
◎株式会社Clioの株式取得(連結子会社化)について(2015514日(株)三菱ケミカルホールディングス、)(株)生命科学インスティテュート
 
2013年に共同研究契約を結んだDSファーマバイオメディカルは、大日本住友製薬の子会社であり、Clio社本体を買収した三菱ケミカルホールディングスは、生命科学インスティテュート社のほか、田辺三菱製薬を傘下に有しています。
Muse細胞が、20131月に特許化されたのち、とんとん拍子に実用化、産業化に向けた動きが急展開していった様子が見てとれます。
応用範囲も、3次元培養皮膚による化粧品用テストから、脳梗塞の神経回復まで、幅広いものになっています。
産業化に向けての応用可能性がある研究開発成果が、ひとたび特許化されれば、それは、急テンポで利活用が大きく広がっていくという典型的な事例でしょう。
 ハーバード大B&W病院が、STAP細胞の特許出願を断固として維持しようとするのも、こういう展開可能性を見据えているからでしょう。持ち分の譲渡を受けたベンチャー企業は、Muse細胞の場合におけるClio社のようなもので、医療その他の応用可能性に期待をかけているものと考えられます。
 
 
■ しかしそれにしても、Muse細胞の利活用の急展開振りは目覚ましいものがありますが、Muse細胞については、東北大学の組織細胞学分野のサイトに、研究概要が紹介されています。素人としては、ものすごくインパクトのある研究成果のように感じられます。
 
◎生体内に存在する新しいタイプの多能性幹細胞―Muse細胞
   (中略)
 多能性を備えながら腫瘍性が無いので再生医療への応用が期待されているわけですが、Muse細胞の持つ最大の利点は
誘導もせずそのまま血中に投与するだけで組織修復をもたらす。
 
ということです。すなわち
腫瘍を作らないという安全面だけでなく、分化誘導もせずにそのまま生体内に投与するだけで組織修復細胞として働く簡便性にある。
 
ということです。例えばES細胞やiPS細胞を再生医療に用いる場合には、目的とする細胞に分化誘導し、さらに腫瘍化の危険を持つ未分化な細胞を除去するという2つの要件が前提となります。しかしMuse細胞の場合、採取してきて体内に投与すれば障害部位を認識し、そこに生着して組織に応じた細胞に自発的に分化します。ですからCell Processing Center (CPC)での分化誘導などの操作を必ずしも前提とはしません。さらにMuse細胞の母集団となる間葉系幹細胞は現在世界中で数多くの臨床試験が展開されており安全性が担保されています。従ってMuse細胞以外の間葉系細胞が残存したとしても腫瘍化の危険は極めて低く、再生医療への応用が現実的であると考えられます。」
 
 こういう話になってくると、素人の妄想ですが、自分の組織から抽出したMuse細胞を注射してもらえば、認知症やボケ防止、心筋梗塞防止その他成人病全体の治療に直結するように感じるのですが、そうは簡単ではないのでしょうか・・・・??
 
 いずれにしても、iPS細胞よりも、安全性、簡便性の点で、大きく優るようですが、骨や筋肉、脂肪を形作る間葉系細胞の範囲内のことなので、ES細胞やiPS細胞はより広範囲な組織再生に役立つということなのでしょうか・・・?
 小保方氏の手記では、スフェア細胞は、間葉系幹細胞のように脂肪、骨、軟骨だけでなく、それ以外の細胞腫にまで分化能を有することを示すことができれば、という問題意識で、バカンティ研では取り組んでいたことが紹介されていました(p53)。