STAP特許出願継続の意思を明確にしたハーバード大―日本で審査請求書を提出
コメント欄でご教示いただいたように、本日、日本の特許庁へのSTAP特許出願について、審査請求がなされていたことが判明しました。
前回の特許関連記事で次のように書きましたが、やはりそうだったか・・・と改めて感じます。
「米国で、昨年12月時点で、特許出願の持ち分をベンチャー企業とシェアし、バカンティ教授と小島教授の別途の特許出願についても同様にシェアされているわけですが、カナダで出願維持料をこの4月初めに支払っていることとも考え併せれば、日本での出願を止めるという選択肢があるのだろうか?というのが正直感じるところです。
別に、希望的観測で言っているわけではなく、米国、カナダで、直近時点で、特許出願継続の動きが明確に出ている中で、知財の日米欧の三極の一つである日本で、放棄するという選択をするというのは少々考えにくいのではないだろうか? ということです。」
4月22日に審査請求されていたわけですね。栗原先生がおっしゃるように、
サイトに反映するまでちょっと間が空いているような気がしますが、GWの連休前の手続き案件なので、連休明けにまとめて処理したということだったのでしょう。
それで、工業所有権情報・研修館のJ-Plat-Pat というデータベースから、出願状況、審査状況が検索ができます。
その右端の「経過情報」タブの、「1.番号照会」とありますので、そこに、
「2015-509109」 というSTAP特許出願の番号を入れて検索すると、表示されます。
それで、「出願情報」のところだけ見ても分からないのですが、右上の「審査書類情報」というところをクリックして表示される中で、次の2項目が追加になっていて、それで審査請求がなされたことがわかるわけです。
【書類名】 出願審査請求書
【整理番号】 A12166【提出日】 平成28年 4月22日
【あて先】 特許庁長官 殿
【出願の表示】
【出願番号】 特願2015-509109
【請求項の数】 74
【請求人】
【識別番号】 503146324
【氏名又は名称】 ザ ブリガム アンド ウィメンズ ホスピタル インコーポレイテッド
【代理人】
【識別番号】 100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】 高島 一
【電話番号】 06-6227-1156
【手数料の表示】
【予納台帳番号】 006965
【納付金額】 372,400円
それと、手続補正書をみると、特許請求の範囲が次のように記載されていて、請求項が74まで、門外漢には難しくて、どのように変わったのかまでは、よくわかりませんが、いずれにしても変更になっているようです。
ただし、請求項1は、依然として包括的な請求項として維持されています。
それと、これらの請求項の中には、STAP幹細胞の作製方法も含まれているということでいいのでしょうか・・・?(多分そうだろうとは思いますが・・・)
【手続補正1】
【補正対象書類名】 特許請求の範囲
【補正対象項目名】 全文
【補正方法】 変更
【請求項1】 細胞をストレスに供する工程を含む、多能性細胞を生成する方法。
・・・・・・【請求項74】~~~
これらの情報を見て感じた点は次のようなことです。
(1)ハーバードのB&W病院は、STAP細胞、幹細胞の存在を前提として、淡々と特許出願手続きを前に進めているようであること。日米欧その他全世界での特許成立を目指す意思を感じさせること。
逆に言うと、ネイチャー誌のSTAP否定論文を踏まえたES細胞混入説には与していない(歯牙にもかけていない?)と考えられること。
(2)その背景には、バカンティ教授の国防総省のプロジェクトでの受託研究の進捗や、その一環としての特許出願(2015年3月出願のもの)の明細書に記載されような、公開プロトコルによるSTAP細胞、幹細胞の作製成功があると思われること。
(3)米国のベンチャー企業への特許出願の一部持ち分譲渡は、産学共同プロジェクトの段階に進みつつあることの表れであることは、ほぼ間違いないと思われること。
(4)ハーバードは、請求項1を堅持していることから、サーチレポートで先行出願として指摘されたミュース細胞とは異なるとの考えを明確にしていると思われること。
・・・ということで、STAP細胞肯定、小保方氏支持の立場からは、大変明るい材料ではないかと思います。
日本の場合には、米国(というか世界の大勢とは異なり)、共有者は全員が出願者に名を連ねなければならない義務があり、そうでなければ、拒絶査定や無効になってしまいます。
したがって、可能性としては、今後、変更届があったことが表示されるのか、あるいは日本での出願分は共有にはしないということなのか、いずれかだろうと思われます。
■ しかし、それにしても、ここまで、ハーバード大の特許出願堅持の意思が明確になったわけですから、これにつついて、科学者たちが確認しようとせず、マスコミも何らの取材もしないというのは、不思議な様相です。
あれだけ、「これで特許を取るつもりなら、詐欺の方法で取ることになり刑事罰だ!」と声高に叫び、理研改革委の提言書公表の際の記者会見でも、同様の発言が委員から飛び出したくらいですから(弁護士の委員が、慌てて、「発言した委員個人の考えだ」と修正しましたが)、ハーバードがこうやって、審査請求の形で、特許を取りに来る姿勢を公式に明確にした以上、ES細胞正体説に立つ研究者やマスコミは、「ハーバードの出願は詐欺だ!」と叫ばなければ一貫しません。
国内では、高島国際特許事務所が代理人であることがわかっているわけですし、B&W病院やバカンティ教授のメールアドレスもハーバードのサイトに記載されています。また、2014年6月に、バカンティ教授と他の研究室の教授とともに産学共同研究に参加したベンチャー企業や、今回持ち分譲渡を受けたベンチャー企業などもはっきりしているわけです。あるいは、米国防総省のプロジェクトの担当窓口なり広報なりもあるわけです。
これらに、取材をかければ、状況がどうなっているのかを判断できる何らかの材料が得られるはずです。にも拘らず、全くの音なしの構えというのはどうしてなのでしょうか?
マスコミでは、特に毎日新聞の須田記者は、『捏造の科学者』と断じて受賞したわけですから、フォローして当然ですし、ネイチャー誌にしても、少なくともニュース部門は取材して然るべきではないかと思います。
STAP特許についてフォローされ、紹介されている栗原先生も、今回の紹介記事で書かれているように、
「今後、この特許出願は特許庁における実体審査に入ります。暫定的な結果が出るまでは通常1年くらいかかります。特許庁がどういう見解を出すのか興味津々です。なお、この出願の特許性が疑わしいと考える第三者は特許庁に情報提供(刊行物等提出)を行ない、審査官による審査の参考にしてもらうことができます(匿名での情報提供も可能です)。」
というような、STAP捏造説を鵜呑みにして、詐欺出願であることの通報をけしかけるかのようなことをおっしゃるのではなく、高島国際特許事務所から何か材料を得て紹介するなどの、特許の専門家ならではの情報提供をお願いしたいところです(ノーコメントならそれはそれでひとつの情報です)。(決して皮肉ではなく)「まさかの国内移行」に続いて、「まさかの審査請求」と、まさか続きだったわけですから、ちょっと状況が違うようだとお考えいただき、参考となる情報をいただければ有難いのですが・・・。
STAP細胞や小保方氏を完全否定し、猛烈なバッシングを続けたマスコミや科学者たちは、事の成行次第では、民事責任、場合によっては刑事責任を問われる可能性もあり得ないわけではありません(というか、あり得ます。名誉棄損であれば、免責事由である「捏造と信じるに足る理由」などは認めがたいと思います。桂調査委は捏造とはいっていませんし、ES細胞では説明できない事由は多々公けにされていました。その辺は、BPOが言及してくれることでしょう)。
そういう意味では彼らも利害関係者となってしまっていますので、黙秘する、ということなのかもしれません。しかし、置かれている立場からする社会的責任として、それで済む話ではないでしょう。
なお、今回の特許出願継続決定は、BPO(放送倫理・番組向上機構)の審理にも影響を及ぼすことでしょう。
今後1年の間に、BPOの決定も出され、特許出願の審査も進捗し、再現実験の結果報告等も更にぼつぼつと出てくるでしょうから、情勢もだいぶ変わってくるのではないかと思われます。
ハーバードが、米国とは制度が異なり、審査請求制度がある日本において、審査請求を行ったことにより、STAP特許出願を堅持するという姿勢を公式に明示したことになりますが、これによって、科学界での「STAP細胞に関心を示したり、再現実験をしてみたというだけで、科学者生命を失いかねないような空気」に変化が出てくることを期待したいものです。
※ なお、Muse細胞のほうが、どうなっているか気になって調べたところ、大きく進展しているんですね。別途、記事にするつもりですが、秋田のベンチャー企業が産学連携で参画し、さらにそのベンチャー企業の全株式を、三菱ケミカルホールディングスグループが取得して、連結子会社化したというのが、1年前の2015年5月でした。短期間に、産学連携プロジェクトとして、神経修復にも成功し、ほぼ実用化段階に至っているようですが、STAP細胞に関しても、同様のパターンを進みつつあるということではないかと感じます。バカンティ教授のプロジェクト関係の特許出願の明細書によれば、脊髄神経の修復に成功しているようですので・・・(JISAIさんのご教示の情報によります)。