理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

3 理研・自己点検委への違和感、怪しさ(3)―CDB運営・人事を、分子生物学会の影響下に置くための仕掛け作りのための提言


 自己点検委員会の報告書は、改めて読んでみると、いろいろと書いてはありますが、その狙いとメッセージは、シンプルだと思います。
 そして、何が書いていないのかということからも、その狙いが浮き彫りになってきます。
 
 まず、ポイントを簡単に超訳風にまとめると次のようなものです。
 
1 問題の認識
STAP細胞問題は、一大捏造事件であり、深刻な問題を惹起した。その原因を究明し、再発防止策を講じる必要がある。
 
2 検証結果(1)―実験・研究の責任
(1)実験・研究の中核部分を一貫して主導的に行ったのは、小保方氏。
(2)念のある部分では、常に小保方氏が関わっていた。
(3)若山氏は、頼まれて技術支援の役回りで受動的に関わったにすぎない。確認・指導不足。
(4)笹井氏は、秘密保持を優先し、外部からの批判を遮断。データの再検証せず。
 
3 検証結果(2)―問題を阻止できなかった体制・運営上の責任
(1)人事委員会は、小保方氏を手続き的に不透明な採用をし、研究の秘密扱いを容認して研究内容の公開・共有を妨げた。
(2)笹井氏は、小保方氏の研究を秘密扱いし、囲い込み、GD会議と人事委員会はそれを容認した。
 
4 検証結果を踏まえた提言
(1)  少人数の人事委員会メンバーに、勤続が長いTLRULも入れるべき。
(2)  PI教育の強化―メンターに遠い分野、異なる考えのGDも入れるべき。
(3)  研究倫理教育の強化、報道発表のあり方の改善(本部広報とCDB広報の役割分担、相互監視等)
 
5 CDBの運営、組織改革に関する提案
―運営体制とガバナンスの再構築/研究組織の再構築
(1)CDB2000年に発足以来、竹市センター長の下、13年に二人の副センター長が退任するまで、ほとんど同じGDメンバーで運営。功罪あるが、独善拡大した可能性。
(2)批判精神に基づく多面的検証という科学の基本姿勢から逸脱する事態を招いたセンター長、副センター長、GD会議、人事委員会は猛省すべき。運営体制全般の点検・再構築を図る必要。
(3)GD会議に代えて、外部識者も入れた運営会議を設置。任期性、運営内容(研究内容)の報告義務を。
(4)人事委員会は、運営会議の下部におき、GDPLだけでなく、TLも含めるべき。
(5)アドバイザリー・カウンシルによる国際的視点からの評価やアドバイスを組織改革の参考にすべき。
(6)理事長に任命されたセンター長の裁量によって運営されているが、運営体制は権限と責任が不明確。
(7)戦略的運営をするために、センター長の支援、補佐機能強化が必要。
(8)相互交流・批判、オープンな情報交換を促す体制構築が必要。
 
6 結語
(1)STAP問題発生の原因は、研究の直接の関係者だけでなく、センター長、GD会議、人事委員会等にあると判断した。信頼を著しく低下させた。
(2)CDBは研究組織としては貴重で優れた活動を可能にしたが、それを支える組織としての対応があまりにも不十分であったことに今回の問題の本質がある。
  
こうやって要約しながら読み進むと、言おうとしていることは極めてシンプルであることを実感します。文章はいろいろと書いてありますが、すべては次のどれかに集約されます。

①本件は、小保方氏による捏造事件であり、信頼を失墜させた(言うまでもない当然の前提)。
②若山氏の責任は、確認・指導不足に留まる。
③笹井氏は、研究上の責任、組織運営上の責任の両面で責任大。
④組織としては、CDBセンター長、人事委員会等、上層部の責任大。
⑤長年、少人数の固定メンバーで運営していることに問題。もっと中堅、外部に関与させるべき。研究状況を皆でシェアすべき。
 
もっとシンプルに言えば、


 捏造の小保方氏主犯/笹井氏共犯化  (若山氏の実質的免責)
+ CDB上層部の放逐/運営の奪権
    
  を目的とした政治的な色彩が強く感じられ、何やら中国の文化大革命を連想させます。
GD以下も入れた運営会議、TLクラスも人事委員会のメンバー化、人事委員会を運営会議の下部組織化、センター長の裁量限定(支援・補佐の名の下に)、情報のシェアと相互監視・・・。
運営会議はまだしも、人事委を運営会議の下部組織にして、メンバーもTLクラスまで入れる?? ちょっと考えられないと思いますが・・・。「透明性、客観性の担保」といいますが、具体的にどういう方法で、そしてどういう基準で人事のそれを「担保」しようというでしょう・・・?? 


 センター長の権限、裁量を大幅に縮小し、意思決定権限を実質的に下部レベルに落とすとともに、外部の研究者(=仲間達)の影響力も入れることができるようにする・・・という構図の実現を目指しているように感じられます。今回のSTAP細胞事件の一連の展開を見ていると、何を目指そうとしていたのか、わかるような気がします。
 
 もともと、小保方氏の手記にあったように、ネイチャー論文発表から1週間後には、「日本で一番大きな生物学分野の学会に所属する有名な先生たちからの連名のメール」により「小保方氏は悪質な不正を行う人であることは明白であるので、容易に信用しないように」P142)との警告が、竹市センター長のところに届いたのが、本件STAP細胞問題の発端となっています。この学会というのは、分子生物学会のことでしょう。HPによれば、15000名の会員を擁するとあります。検索で2番目に来る細胞生物学会などは、歴史は古いですが、2500名と少なめです。


 STAP細胞問題のその後の展開からも明らかなように、その世論形成、マスコミの誘導を一貫してリードしたのは、分子生物学会の研究者たちでした。 彼らは、

①竹市氏への「小保方氏=悪質な不正を行う人であることは明白」とのメール。
②理事長の大隅典子東北大教授による、不確かなブログ記事を援用した笹井氏の説明の非科学的否定、文科省ガイドラインでの再現実験が権利とされていることについての認識欠如。
③理事長声明による検証実験の中止要求、
文科省ガイドラインも研究不正調査規程の存在も知らないままに、4月段階でES細胞の捏造と断定的に述べた副理事長の中山敬一九大教授。
NHKスペシャルに協力し、論文画像の7割に何らかの疑義があると、一方的に先入観を広めた分子生物学会の有力研究者たち。


 といったように、論文発表直後の時点から、「STAP細胞は捏造」であり、「小保方氏は悪質な研究不正を働く者」との断定をしていました。
 このような学会の主要な研究者たちの考えは


「既にこの3月中旬の時点で、総括として「日本の科学に対する信用、神戸医療産業都市構想、女性研究者、科学に興味を持つ若者の夢を裏切った、理研CDBの研究者への悪影響、共同研究における信頼関係を損なう事例」と結論付けていた。」(手記P173


 というような自己点検委のスタンスとは、同一のものでした。言うまでもなく、それは「STAP細胞の有無については、判断を留保する」との当時の理研当局と石井調査委の公式スタンスとかけ離れたものです。
 その自己点検委の実働部隊である「自己点検チーム」は、GDクラス(=理研CDB幹部)で構成されていますから、そういう点からみると、ここにも2つの公式の対外スタンスの混在という「支離滅裂」さがあるわけです。
 
 いわば、自己点検委は、分子生物学会の理研内別働部隊のようなものであり、その報告書が提言していることは、理研において、分子生物学会員である研究者たちの影響力を強め、CDBの運営、人事に至るまで関与できるようにするための仕掛け作りだったと思われます。
 CDBの主たる研究分野である分子生物学の世界などは狭い世界でしょうから、運営会議に参加する「外部有識者」なり、国際的視点での評価やアドバイスをするという「アドバイザリー・カウンシル」などは、学会の有力者が就任することになるでしょう。
 マスコミに積極的にリークしていた理研関係者らと、学会の主力メンバーとは、SNS仲間だという話も指摘されていますし、彼らは「お仲間」なのでしょう。その「お仲間」によって、理研CDBを影響下に置き、人事を含む運営の実権を握ることが、自己点検委の目的であり、提言はそのための仕掛けとなる制度作りに関するものだったと思います。
 
 CDBは、20004月の設立以来、竹市センター長、西川副センター長らが、理事長から付与されたその権限と裁量の下に、自由闊達な研究を担保する運営が行われてきたわけで、その成果については、自己点検委も評価はしています。笹井氏の世界的研究成果と予算確保のための要請活動とによって、その発展が支えられてきたという面も多分にあるかと思います。
しかし、内部の研究者からすると、いつまでたっても上に上がれないという不満もたまっていたでしょうし、外部の研究者からすると、CDBはあまりに自由闊達過ぎたと感じるところがあったと想像されます。特に、徒弟制的な?大学の世界における研究者からすれば、一部少数の幹部が、潤沢な予算を握り、その裁量で若手にも大胆に予算と権限を与えてトライさせるCDBのシステムというのは、一種の秩序破壊に映ったことでしょう。そのような受け止め方は、改革委提言の次の一文に如実に表れています。
 
「小保方氏がPIとして率いる研究ユニットは、国立大学法人大学院においては准教授クラスが運営する研究部門(講座)に匹敵するのであり、そのようなハイレベルの研究ユニットを運営するPIとしてのスタンダード域に達していない研究者を職権により杜撰なプロセスを以て採用した、竹市センター長をはじめとする理研CDBのトップ層の責任は極めて重いと言わざるをえない。」
 
 近視眼的な全く的外れな指摘だと思いますが、それが「CDB解体」という暴走提言にまで至ったわけです。
こういった内外の研究者の思惑が一致して、「お仲間達」で、予算、人事を含むCDB運営に大きな影響力を確保する仕掛けとして、
  
・外部識者も参加する運営会議、
・アドバイスと評価を行うアドバイザリー・カウンシル、
・運営内容(研究内容)の報告義務、相互監視化
・PLTLRULまで参加する人事委員会、
・その人事委員会について運営会議の下部機関化
センター長の裁量限定(支援・補佐の名の下に)
 
 というように、見る者が見れば、あまりに露骨な奪権的提言内容です。
彼らからすれば、「少数独裁体制」から「民主的集団指導体制」に移行すべきである!と主張しているつもりなのでしょうが、前提となる問題設定のおかしさ、検証内容から飛躍が過ぎる提言内容を見れば、その狙いは明白です。
 
こういった内容の自己点検委報告書ですが、順次、疑問点を挙げていきたいと思います。
主な疑問点は、ざっくりまとめると、次のようなものです。
 
疑問1:問題設定自体がおかしく、この時点で提言されるべき内容では全くない。
疑問2:提言されるべきことが、全く提言されていない(提言すべきは、文科省ガイドラインと不正調査規程に基づき、両論文とも本来の不正調査を急ぐべき、ということ)。
疑問3:ごく短期間で報告書案ができており、結論ありきの印象が濃厚。
疑問4:責任著者であるはずの若山氏への言及が、あまりに希薄で軽すぎる。
疑問5:容易に事実関係がわかるはずの各著者の関与の記載が極めて恣意的。
疑問6:秘密保持の非難、小保方氏採用経緯の曲解等、牽強付会に過ぎる。
疑問7:検証内容からCDBの運営・組織改革の提言にまで至るのは唐突で飛躍しすぎ。
 
冒頭書いたように、「STAP論文は捏造」「小保方氏は悪質な研究不正者」ということが、立論の大前提ですから、そこに誘導するために研究の構図も意図的に構成していきますし、この構図が崩れるようなことには決して触れません。
そして、そのような一大捏造事件が起きるのを許したのは、一握りのCDB上層部の運営に大きな問題があったからだ、と導き、そこから、上層部を放逐し、CDBを学会主力メンバーの影響下に置くための仕掛け作りを、「ガバナンスの確保」「組織・運営の改革」という美名?の下に提言する・・・というのが、全体の報告書の構成だと、自己点検委報告書を読み込んだ今、私は感じています。
 
そういう構図がわかってこれば、分子生物学会の主力の面々が、理研の検証実験の実施に断固として?反対した理由もわかってこようというものです。STAP細胞があってもらっては何としても困るわけです。それが捏造だという大前提が崩れてしまっては、提言どころではなくなってしまいますから。
 
以降、上記の各疑問点について、述べていきます。