理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

2 理研・自己点検委への違和感、怪しさ(2)―小保方氏の手記によって「政治性」が明らかに

続き

 小保方氏の手記が発売されるまでの段階で、自己点検委の問題性を色濃く滲ませる、以上のような種々の材料が判明していたということです。
 そして、小保方氏の手記を読んで、それは裏付けられた形です。更にそれを契機に読み直してみると、その「政治性」はより明確になってきました。
 
 まず、小保方氏の手記で、自己点検委に触れた部分では、次のように書かれています。
 
p173174
「論文への疑義がマスコミに取り上げられるようになってから、理研CDB内部では著者らに対する圧力が高まりはじめていた。3月中旬にはPIメーリングリストを通じ、内部調査委員会の設置案が議論されていた。その中には委員会の責任者として林先生を推す意見や、山梨大学の若山研にいる元CDBの研究員の大日向康秀さんを窓口にする提案などがあった。第一次調査委員会の調査がまだ継続中であり、何も結果が出ていないはずの3月中旬の時点で、すでに内部調査委員会は総括として「日本の科学に対する信用、神戸医療産業都市構想、女性研究者、科学に興味を持つ若者の夢を裏切った、理研CDBの研究者への悪影響、共同研究における信頼関係を損なう事例」と結論付けていた。
実際に立ち上がった内部調査委員会は、自己点検検証委員会と名付けられた。その目的は、著者らに聞き取りをして、なぜこのようなことが起きたのかを著者以外のCDB幹部(GD)を中心に先端医療センター長の鍋島陽一先生などの外部委員を交え検証するというものだった。私は入院中で、自己点検委員会の面談に応じることができなかった。この時に、笹井先生が研究内容を秘匿にし、私を囲い込み状態で指導したといった内容の報道につながる報告が内部から相次いだそうで、笹井先生から、「センターのために尽くしてきたのに辛い、僕を引きずり落とすことしか考えていないようだ」という内容の連絡を受けた。仲間だと思っていた人たちからの突き上げと確証のない内部情報のマスコミへのリークはとどまることを知らず、私のもとにはCDBの幹部(GD)か初期の頃から論文執筆に参加していた著者しか知らないはずの内容の問い合わせがメディアから相次いだ。そのために何度も理研のコンブライアンス部門に個人情報を含む情報流出の通報をしたが、まったく効果がなかった。リーク情報に関する取材のため、三木弁護士の事務所には連日、ビルのドアが壊れるのではないかと危倶するほど大勢の記者さんが押しかけていたそうだ。
CDBのGDにマスコミにリークしている人がいるなんて信じたくはなかったが、三木弁護士と新聞記者さんの会話の中であるGDの名前が出た際、「明らかにそのGDから情報提供を受けているようだった」と三木弁護士から聞き、強いショックを受けた。笹井先生の「辛いとの真意がわかったような気がした。私と若山先生では通らなかった論文を助けようと尽力してくれただけなのに、なぜか多くの人から責められている。その状況を作ってしまった原因が自分にあることを痛感し、申し訳なさで心が痛んだ。」
 
P181182
5月下旬になると、センター長の竹市先生から、理研が設置した外部有識者による正再発防止のための改革委員会」に提出する自己点検委員会の書類の中で、私が関与している部分の確認をさせてほしいという要請を受けた。部分的に聞かされた内容は、若山研での実験状況などは省かれていて、実情とはかけ離れ、責任の多くを笹井先生に押しつけているような内容だった。「このまま発表されては実情とはあまりにも異なっているので、私にも陳述させてほしい」と申し出たが、竹市先生ももう手一杯だったのか、「いまさら変更が増えると混乱が起きるので、もうあきらめてほしい」と言われた。若山研での実験状況の実情やSTAPの研究が秘密裏に行われていたわけではないことなどを盛り込むことは叶わず、自己点検委員会の報告書に私の証言は一切盛り込まれなかった。その上、事務方の幹部の一人からは、「事実が淡々と、ということになっていますが、実際にはかなり推測が入っているし、多くの部分について小保方さんに何の事実確認もなく偏重して書かれていて、かなりの試練になると思う」と伝えられた。
この書類の内容は発表前からいつものように毎日新聞社にリークされ、STAP問題一笹井氏、枠超え小保方氏を『固い込み』」といった記事や、「小保方氏採用も特例 通常審査の一部省略」といった個人攻撃的な報道がどんどんと流された。三木弁護士の事務所には毎朝、大勢の記者さんが押しかけてくるが、他社の新聞記者さんたちが「毎日新聞さんの報道姿勢はおかしいと感じているから後追い取材はしない」と言っていることなどを三木弁護士から聞かされた。」
  
 一次の石井調査委の結論も出ておらず、STAP細胞の有無についての検証の話が出てくるはるか以前の3月中旬時点で、既に総括がなされていたとあります。そもそも、若山氏が唐突に撤回を呼び掛けたのは、39日です。3月中旬というのは、310日~20日頃のことです。若山氏が撤回を呼び掛けた直後に、もう自己点検委の設置案と総括ができていたというのは、手回しがよすぎないないでしょうか? 
 
 自己点検委報告書については、「前代未聞の不正」(=捏造)であることは、書くまでもない当然の前提となっているのだ、と先ほど書きましたが、原因分析や提言内容も、石井調査委員会が認定したような「STAP細胞の有無についての判断は留保した、論文上の不正のみの判断に留まる」という当時の現状とはかけ離れ、あたかも一大不祥事があったことが所与の前提となってしまっているのです。


 一見、もっともらしいことが書いてあって、すっと読めてしまうのですが、ネットでの指摘や一方的リークにより、ES細胞による捏造可能性という印象形成が定着しつつあったからだと感じます。改革委提言は、ページによって書いてあることの前提が異なり、表現ぶりも繰り返しが多い等の拙劣さが目立つので、支離滅裂で素人的ということにすぐに気が付くのですが(公式文書にNHKWebニュースに言及されていたのには驚きました)、自己点検委の報告書は、文章や構成がこなれていて、事実経過―原因―改革の方向性―提言と、いかにも官僚的な文書の雰囲気が漂っています。ですから、その不自然さ、怪しさに気が付きにくいところがあります。ネットとリークとで「洗脳」された頭で読むと、当たり前のことが書いてあるように見えてしまいます。
 
 しかし、その大前提がそもそもおかしいではないか、ということに気が付き、前回記事で整理して書いたような様々な違和感、政治性を認識するようになって、改めて読んでみると、その怪しさが滲みでているように感じます。違和感の3つ目で書いたように、書いていないことはなにか?という目で見てみると、その怪しさは更に増幅されていきます。
 
Kaho氏こと遠藤氏らのネットでの指摘を前提として、「ES細胞(+TS細胞)の混入等による捏造だ」という一大不祥事であったかのようなシナリオを敷き、それに基づいて、現CDB体制(というか上層部)を「改革」の名の下に「打破」する(主要対象は「実権を握っている」笹井氏と竹市氏)ことを目的とし、そのための「事実認定」と「改革提言」を改革委にオーソライズさせ、世間に当然視させるための仕掛けが自己点検委だったのだ、というのが真実に近いのではないかと思われてきます。
 
これを表の舞台装置とし、裏ではマスコミ操縦による恣意的リークを誘導手法としたのが第一段階であり、それは、論文撤回と改革委提言とによって結実しました(ただし、CDB解体の提言は想定外の誤算だったと思います。)。
そして、第二段階が、第二次調査の桂不正調査委を舞台装置とし、自己点検委を誘導した理研関係者らが実際の「解析」に当たるという水面下での「工作」だったのでしょう。
 これは、相当危ういながらも、桂調査委報告書という形で結実し、更にその内容をネイチャー論文に投稿して、「正体はES細胞だった」ということを、世界の科学界に浸透させたことで、彼らから見れば、「大団円」を迎えた・・・ということだったのでしょう。現状は、彼らの当初シナリオが現実のものになっているように思えます。
 
 ところが、博士号も剥奪され、科学界からも社会的にも抹殺されたはずの小保方氏が、手記の公表という形で、メールや資料の裏付けがあると思われる「事実」の数々を提示し反論を始めたこと、そして、小保方氏を葬るはずの石川氏の告発が、結果として小保方氏を相手ではなく、被疑者不詳ということで受理されたことによって、捜査対象が広がって、水面下の工作の裏を取られている可能性が大きくなってきたことによって、彼らの思惑は大きく狂いつつあるというのが、私なりの現状認識です。
 
 次回以降、具体的に、自己点検委員会報告書を読んだ上での違和感の所在を書いてみたいと思います。
                           
(参考)  
 自己点検委の自己点検チームは、報告書のP18にメンバーが載っています。GDクラスで構成されていますので、小保方氏が言及するGDというのも、このうちの誰かでしょう。
 
「(3)CDB 自己点検チーム
竹市雅俊 CDB センター長、グループディレクター
松崎文雄 CDB グループディレクター
林茂生 CDB グループディレクター
倉谷滋 CDB グループディレクター
齋藤茂和 神戸事業所 所長
 オブザーバー 柴田達夫 CDB 研究ユニットリーダー
 今井 猛 CDB チームリーダー      」
 
                             (続く)