理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

1 理研・自己点検委への違和感、怪しさ(1)―徐々に浮き彫りになってきたその「政治性」


自己点検委員会についての問題性を取り上げたいと思います。


 この問題は、おそらくかなり根の深いもので、STAP否定、小保方批判のうねりの全体の動きの中で、一見地味なイメージと異なり、かなり大きな役割を担っていたと感じます。
 
 自己点検委員会とその報告書については、以前の印象は、一見地味で、経緯となる事実関係をまとめて、改革委の審議の参考に供する、という役割のものかと、漠然と思っていました。
 しかし、その後、よく読み、あれこれと出てくる材料を並べてみると、それは間違いだと思うようになりました。
 
 改革委提言のベースとなったのが、自己点検委報告書だったわけですが、その時は改革委報告書の問題性、支離滅裂ぶりにばかり注意が行って、その認識の元となる自己点検委報告書の内容には、正直なところ、あまり注意が行きませんでした。
 しかし、やがて少しずつ違和感を感じるようになったのは、次のようないくつかの段階を踏んでのことでした。
 
(1)7月末のNHKスペシャルで、鍋島点検委委員長が、「笹井氏はこの一件のことですべてを失った」と述べたこと。
 まだ、STAP細胞自体の有無についての検証はこれからという段階でしたし、あくまで 論文の記載についての不正が認定されただけで(それはおかしい認定だということは ここでは措きます)、STAP細胞が「捏造」という判断にはなっていない時期でした。
 改革委は、「レター論文まで含めて不正の有無を調査せよ」「STAP細胞の有無を検証せよ。小保方氏にやらせてみよ」と提言している一方で、提言取りまとめの土壇場で、遠藤氏と若山氏からヒアリングをして鵜呑みにしてしまい、「前代未聞の不正」と提言末尾に書き、記者会見でも「世界三大不正」であるかのように述べました。
 このブログでは、その支離滅裂さを、繰り返し批判してきました。
 
 しかし、自己点検委報告書は、改革委のような構成、記述の支離滅裂さは一見ありませんが、よくよく見ると、「前代未聞の不正」(=捏造)であることは、書くまでもない当然の前提となっているのだ、ということに気がつきます。検証実験や再現実験の結果を待たず、あのような笹井氏に向けた断定的な言葉を鍋島委員長が述べるということは、そういう認識に立ったものだということです。NHKスペシャルの番組構成でも、ずっと、ES細胞を混入させたものだ、発光は死細胞のものだという流れがあって、その最後のほうで、鍋島委員長にその問題の一言を言わせています。
 これがまず最初に、点検委に対して感じた大きな違和感でした。
 
(2)毎日新聞に自ら積極的にアプローチしてリークしたこと。
 このことは、須田記者の『捏造の科学者』によって明らかになりました。自己点検委の「事務局」である自己点検チームは、GDクラスの理研幹部ばかりです。これらの幹部なのか委員なのかわかりませんが、自ら須田記者にアプローチして、報告書を撮影させて、翌日の毎日新聞の特ダネとして紙面を飾りました。
 小保方氏の手記をみると、GDクラスの動きがおかしかったことや、山梨大の若山研側に点検委資料がわたっていたことが書かれていますので、毎日にリークしたのが、理研幹部なのか若山氏なのか、あるいは委員なのか明確ではありませんが、NHKや毎日にそのままリークしている理研幹部がいて注意しているということが、事務部門の幹部の話として紹介されていましたので、おそらく委員会事務局メンバーである理研幹部によるリークだと思われます。
 その内容は、支離滅裂な改革委提言のベースとなる、笹井氏、小保方氏ら、そして理研上層部が批判の対象となっており、そのバイアスのかかった見方が、この毎日へのリークによって、世間に強烈に印象づけられました。
 須田記者が、わざわざリークの経過を子細に書いてくれたお陰で、自己点検委員会側の「政治性」が浮き彫りとなった形です。
 
(3)遠藤氏の主張を否定する公式の外部有識者の評価書の存在を隠していたこと。
 そして更に、違和感をほぼ決定的にしたのが、昨年2月に公表されたモニタリング委員会報告書に参考添付されていた「STAP論文問題に対する理研の対応」という、一連の経過と対応についてまとめた資料に記載されていた、遠藤氏の解析手法に対する有識者の評価書の存在です。
 この点は既に何度もご紹介しています。詳細は以下をご覧ください。
 
「インターネット上の公開NGSデータの解析結果を把握した職員から、311日に研究担当理事に連絡があった。監査・コンプライアンス室長は、318日に解析結果の検証を外部有識者に依頼した。519日外部有識者から「内容はほぼ再現でき、その意味では正しい。しかしながら、その解析結果をもってSTAP細胞=ES細胞と結論づけることには無理があると思われる」との報告を受けた。」
 
という評価結果が、あのドタバタしている真っ最中の2014年5月19日に提出されていたというのです。後ほど述べますが、この時点では、自己点検委の会合は終わってはいましたが(5月11日が4回目の最終)、しかし、報告書の公表は6月10日です(改革委提言と同時)。
 極めて重要であるこの外部有識者の評価書の存在及び内容を、研究担当理事と監査・コンプライアンス室長が関わって依頼し報告を受けているのですから、点検委のチーム員である理研の幹部が知らないはずがありません(チーム員には全GDが名前を連ねています)。
 言うまでもなく、この遠藤氏の解析結果は、改革委においても、若山氏の「自分の研究室にはいなかったマウス」という例の誤った分析とともに、「前代未聞の不正」「世界三大不正」と断じた際の根拠となるものでした。
 この二本柱の根拠のうちの遠藤氏の解析が、実は5月19日段階で、ES細胞だとするのには無理があるとの外部評価を理研当局が得ていたのですから、それを隠したままあの改革委提言がなされたというのは、本来、大スキャンダルです。
 STAP細胞の有無を確かめるために、検証実験がこれからという段階で、しかもそれによって有無を確かめよと提言しておきながら、他方でSTAPESとの先入観で前代未聞の不正だとし、遠藤、若山両氏を目一杯褒め称え、あげくにCDB解体まで提言してしまっているのですから、その支離滅裂さ自体がまずスキャンダルです。加えて、ネイチャー誌は、昨年のインタビューに応じた岸、中村両氏の発言として、次のような趣旨のものを紹介しています。
 
「改革委は、真実をどうせ言わないからと考え、当事者から話を聞こうとせずに、テレビの会見中継に拠って、推測だけで判断したと岸らは述べた。」
「中村委員は、竹市氏によるCDBの研究倫理教育は他に比較してかなり進んでいたと言い、岸、中村両氏は、『解体』という言葉は、CDBに終止符を打つというよりは、怒れるマスコミを喜ばせるための戦略的選択であった、と述べた。」
 
 これらの発言の具体的ニュアンスがどうであったのか、正確にはわかりませんが、しかし、解体提言は、その根拠となる実態にはなかったということを自ら認めているようなものですから(「竹市氏によるCDBの研究倫理教育は他に比較してかなり進んでいた」)、これもスキャンダルです。
 それに加えて、「前代未聞の不正」とまで述べたその「根拠」である遠藤氏の解析は、理研として委託した外部有識者の評価として「ES細胞と結論づけるには無理がある」ということだったにも拘らず、自己点検委、理研幹部は、その評価の存在を改革委提言前に把握していながら、敢えて隠して、点検委報告書にも言及しないまま、改革委に遠藤氏の主張をを不正の根拠として援用させ、解体提言までさせたのですから、これをスキャンダルと言わずして、何を言うのでしょうか?
 
 理研は、桂報告書でES細胞の混入で決着させ、モニタリング委にコンプライアンスのお墨付きを得ることがほぼ確実になった時点で(=すべてが終わった後に)、そっと、このことに触れたわけですが、公開すべきタイミングで公開しなかった、報告しなかったということは、重要な判断材料を「隠蔽した」といわざるを得ません。
 改革委の提言の根拠が、実は砂上の楼閣だったということです(遠藤氏の解析の外部評価+若山氏の解析間違い+実はCDBの研究倫理教育は進んでいた)。
 ここでも、自己点検委のかなりの「政治性」を強く感じさせます。公式の外部識者の報告書の存在を隠蔽したのですから、そこまでくると、「政治性」というよりも、「陰謀性」に近いでしょう。


                           続く