理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

佐藤貴彦著『STAP細胞 残された謎』の論点提起+詫間氏のyahoo記事の不合理

 
 既にあちこちで取り上げられているようですが、佐藤貴彦という方が書かれたSTAP細胞残された謎』(パレード社 2015/12/7刊)という書籍があり、読んでみました。


 とても冷静なタッチで、STAP細胞問題に関する様々な論点について科学的視点で考察がなされており、こういう問題提起こそ、本来、科学者や科学ジャーナリストらが行って考察し、検討を加えるべきことだったと思います。
 
 この方は、名古屋大学理学部卒とあるだけで、他にも著書はあるようですが、現在どういうお仕事なのかはよくわかりません(検索するとヒットはしますが、ご本人なのか、同姓同名なのかどうかわかりません。ペンネームということもあるでしょうし)。
 ただ、この本は、パレード社というあまり聞かない出版社ですので、興味本位で検索してみると、自費出版社でした。興味本位ついでに出版コスト表を見てみると、部数によってもちろん違いますが、おそらく70~80万円かかっているのではないかと思われます。それだけ自ら初期費用を負担してでも、世に訴えたかったということでしょう。


 この本には、感情的な決め付けというものはありませんし、論点となり得る点を客観的に抽出し、具体的材料、論拠を元に考察しています。既に各種ブログ等で指摘されている点が少なくありませんが、こうやって整理されて提示されると、文系門外漢の私としては、頭の整理にもなりました(石井委員会の「画像の切り貼り」の評価のところは、微妙に「ん?」という気はしましたが)。
 
 これは、小保方氏の手記『あの日』と一緒に、広く読まれたい一書だと感じます。こういう問題提起が、既存の大手マスコミのみならず、科学界から、文字通り全く出てこないというところに、このSTAP細胞問題の異常さがあります。
 
 この次の記事に、【参考】として、佐藤氏の問題意識を述べている「おわりに」と、目次を転載させたいただきます。全体の雰囲気はそれでおおよそはおわかりになるかと思います。
 
■なお、この書籍の117ページ以下で、ショウジョウバエのオスが同性愛になる「ゲイ遺伝子」の発見で知られる東北大教授の山元大輔氏の『恋愛遺伝子』(光文社)という書籍に書いてある査読に関する科学界のドロドロの話が紹介されています。以前、DORAさんが問題提起していた話そのままです。
 その「ゲイ遺伝子」の論文発表をめぐっての米国の大学との熾烈な競争があったそうで、
 山元氏の著書では、「世界一公正であるべき論文審査システムが、競合者同士の足の引っ張り合い、蹴り合い、殴り合いの様相を呈する」「審査の過程で結果の詳細が敵にすっかり洩れてしまう」「投稿論文から盗んだアイデアで実験を進め、自分達が先に論文を発表してしまう、なんてこともしょうっちゅう起こる」等と書かれていることが紹介されています。
そして、佐藤氏が言うには、「ネイチャーも、サイエンスもセルもライバルの息がかかっていて危ない」「筆者自身も直接似たような話を聞いたことがあるが、公式には語られることのない研究世界の実情である」由。
 
 これが本当だとすれば、論文の盗用、剽窃どころの話ではないですね。究極のパクリ、インサイダー取引、審判=競争相手、匿名での研究妨害母・発表阻止・・・などなど、科学犯罪そのものです。システムとしておよそ公正さが担保できず、犯罪的行為が抑止できないなんて、一般社会の常識では測りにくい世界です。コンプライアンスどころではありません。
 
 
■ところで、元日経サイエンス詫間雅子氏の次の執筆記事が話題になっています。
 
STAP騒動『あの日』担当編集者に物申す
 
 当事者本人が、意見、弁明を書籍により公にすることは、出版の自由に関わることだから尊重されるべきだと、との趣旨の正論を述べつつ、しかし、すぐその後から、「編集者には著者を守る責任がある。著者をさらし者にするような本を出して良いはずがない。」と述べて、編集者はチェックしたのか? 裏取りしたのか? 矛盾・齟齬を見逃したのか? といった類いの話をずっと続けています。結局言いたいことは、「なぜこんな本の出版を許したのか?」ということに尽きます。「著者を守るべき役割の編集者がそれを怠り、さらし者にするようなことをしてなんだ!」というように、「著者である小保方氏を守れ」という言い方で述べているだけ、この詫間氏の記事は怪しい印象が倍加しています。
 
 主張・記述の根拠、矛盾・齟齬があると詫間氏は言いますが、然るべく手記を読めば詫間氏の指摘は当を得ていないと思います。かなりの言及が言いがかりに近い指摘だと感じます。仮にそれらがあったとしても、編集者が検閲してどうこうするべき話ではありません。それらがあるとしても、それは著者が全責任を負って世に問うているのですから、著者に対して論じるべきことです。世の中、矛盾に満ちた言論、根拠のない主張など山ほどあるわけで、それをいちいち編集者がチェックして出すのを止めろ、などという話はあり得ません(それが言論、出版の自由というものです)。そういう言論、主張に対しては、他の者が反駁し、それにまた反論し・・ということで次第に真実、共通理解に近づいていくというのが、民主社会というものです。こんな詫間氏のような主張は他に聞いたことがなく、この執筆記事で、その基本センスに深刻な疑問符が付けられたと思います。
 
小保方氏の手記について、編集者はチェックしたのか? 裏取りしたのか? 矛盾・齟齬を見逃したのか? というならば、自分が記事の材料にした若山氏、理研関係者、調査委の情報、見解について、そういうことをやったのか? ということです。佐藤氏がこの書籍で書いたような疑問、矛盾は、当然思い至るはずです。それもやらずに、小保方氏の手記に関してはそうやって封じようとするというのは、ダブルスタンダードというものです。
 
 これまでマスコミは小保方氏に対し、「何も言わないということは、弁明のしようがないからだろう」「実際は違うというのなら、言ってみろよ」と、さんざん罵倒してきていたにも拘わらず、実際に小保方氏がこうやって、「小保方氏から見た真実」を述べたとたんに、「読む気もしない」「自慢が多く、自己陶酔の書だ」「若山氏に責任転嫁する卑怯な奴だ」「ゴーストライターが書いたのだろう」という如く、詳細に書かれている、STAP細胞問題の論点に直接関わる内容に一切触れずに、別に形で引き続き罵倒し続けているのですから、呆れたものです。陶酔的だ、自慢だ、文学だ、というなら、そう感じる部分を除いた部分について根拠を持って反駁してくれ、ということです。かなりの部分がメールその他の裏付け材料があることを感じさせますが、そうではないということであれば、それを皆聞きたいと思っています。
 
 マスコミは、本問題については、もはや利害関係を持ってしまっています。あれだけ、一方的に若山氏及びリークを繰り返した理研関係者に肩入れした報道をしすぎたため、今更、それが間違っていては困る、という利害関係です。テレビ放送には、BPOという最近では放送関係者がビビり上がるほどの存在となっている第三者機関が行き過ぎをチェックしていますが、新聞・雑誌にはそういう自主的チェック機関がありません。
 
 日経サイエンス詫間氏や古田氏、そして毎日の須田氏その他のサイエンスライターは、この佐藤貴彦氏が考察し提示したように、科学的な客観的な目で、STAP細胞問題を掘り下げて取材し、思考・判断材料を社会に提示することが本来の役割として期待されていたと思いますが、そういう記事は文字通り皆無でした。古田氏などは、自分が質問して丹羽氏から貴重な証言を引き出したにも拘わらず、日経サイエンス記事ではスルーしてしまいました。桂委員会報告における胎盤の件、キメラマウスの検証の件にしても、何も追及せず、石井委員会報告との矛盾にも目をつむり、そのまま右から左に報じるだけでした。若山氏や理研関係者からのリーク情報は、拡声器的に垂れ流すだけでした。マスコミとすれば、リーク情報は特ダネとなり、他社に対して優位に立てると思って喜ぶのでしょうが、自らリークする側には、リークしてその情報を広めたい、社会に浸透させたいという思惑、利害があるということに本来は留意し、そのリーク情報は慎重に扱う必要があります。そのリーク者側の期待通りに大きく報じなければ、次回以降,お声がかからなくなる、という潜在的恐怖心があり、そこから、どんどん深みにはまっていき、最後は、リーク側と一心同体になっていく、というわけです。そのパターンを地で行ったのが、STAP細胞問題を報じるマスコミでした。
 
 日経サイエンスの記事について、1年ほど前にこのブログでも記事を書いて、なぜ桂調査委報告書等について科学的疑問点を追及しようとしないのか?と書いたことがあります。
 
日経サイエンス3月号の「STAP細胞の正体」特集について
 
そこで述べたことは今も変わっておらず、彼ら、彼女らの感覚でピリオドを打ったはずの、終わらせたはずのことが、小保方氏の手記によって覆され、これまで報じてきた中味が大きく揺らぎ、社会の受け止め方が大きく変わるような事態になってもらっては何としても困る!というのが、偽らざる本音なのでしょう。述べていることが非合理的すぎますから、一種の悲鳴なのかもしれません。