理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

【小保方氏手記の雑感的感想(1)】日米の研究施設の充実レベルの差異

 
 小保方氏の手記を読んで感じた、雑感的感想を少々・・・・。
 
第一点は、日米の研究施設の充実レベルの差異についてです。
 少し前に、山中教授のWill誌でのインタビュー記事をご紹介しました。
 ここでは、次のような趣旨のことが書かれていて、イメージ通りの記述でした。
 
「こうして3年の研鑽を積んで帰国し、学術振興会の特別研究員に採用されて収入の目途はたったものの、1年もしないうちにPAD(ポスト・アメリカ・ディブレッション)というアメリカ後欝病という留学経験がある仲間内でいわれる病気にかかってしまった。
それは、研究環境の圧倒的なギャップによる。研究費の潤沢さ、意見交換できる相手の豊富さ、分業化によるサポート体制の充実により、研究に集中できる米国に対して、日本では全部自分でやらなければならない。増えるマウスの飼育管理が大変でそれも自分でやらなければならず、研究者か飼育係かわからず、情けなくて泣けてきた。臨床に戻ろうかと思った。」
「米国は寄付文化が発達し、最先端の研究施設が次々と建設されていくが、日本は耐震補強が中心であり、iPS細胞研究所の新研究棟の建設などは例外的。それでも、非正規の研究員が9割という雇用環境で不安定・・・等々。」
 
 ところが、小保方氏の手記を読んで、イメージが逆転してしまい、どういう状況なのだろう・・・と思った次第です。小保方氏が、博士号取得後、いったんはバカンティ研に所属することになったものの、ビザがおりるまで間に、理研CDBの若山研に実験をさせてもらいに行き、そこで若山氏に研究員にならないかと誘われて、バカンティ氏に相談したという流れです。小保方氏は、バカンティ研留学時代の研究を、施設の充実した理研でやりたいと相談したのに対して、バカンティ氏はその研究はバカンティ研で着想されたものだから、籍はバカンティ研に置いてほしい、理研で研究を続ければ配慮する、ということで、若山研に客員研究員として来たわけです。その時の考えとしては、米国での自由な束縛のない開放的な研究環境の雰囲気は素晴らしいが、他方で、ハーバードのバカンティ研よりも、理研CDBのほうがずっと立派な実験施設環境で、その魅力に抗しがたいというものでした。キメラマウス作製の件にしても、実験者の手技レベルの問題もあるのでしょうが、実験施設的にハーバードでは難しいということだったかと思います。
 
 また、米国留学から戻ったときに、久しぶりに触れる東京女子医大の先端生命研の近代的設備・施設に対しても、改めて素晴らしいと述べてり、最新の光学顕微鏡の明るさに驚いたと述べています(p57~58)。.
 これらの理研CDB、女子医大の先端生命研の施設・設備環境のレベルの高さの描写振りを読むと、山中教授の描くところとは印象が大きく異なります。
 
 やはり、iPS細胞研究所と同様、理研CDB、女子医大先端生命研は例外的存在なのでしょうか・・・。ES細胞、細胞シート等、生命科学再生医療分野では日本も先端をいっていて、少なくとも、ハード面ではハーバードを凌ぐほどということでしょうか・・・。
 
 この研究施設の充実振りとの関連では、小保方氏には、ダブルスタンダードがある点は感じられるところです。手記では、若山氏が、山梨大に移ることが決まっていて、STAP関連の幹細胞研究によって、「ど~んと立派な施設を作ってもらえるかな」と小保方氏に吐露する場面が書かれていました。それを小保方氏は、若山氏が変わっていってしまう、遠くに行ってしまうように感じられ、寂しく思ったというようなことが書かれています。


 しかし、そういう見方はフェアではないと思います。そもそも、小保方氏は、理研CDBの近代的な実験環境に惹かれて、ここで研究を続けることにしたわけです。それらの近代的な研究実験環境は、笹井氏、若山氏その他の多くの研究者の優れた研究の蓄積があったからですし、その蓄積がまた研究実験環境の充実を生む、という好循環によって築かれてきたもののはずです。
 笹井氏にしても、CDBを築き上げた立役者なわけですが、それも、文科省にも出入りして、自らの研究成果や他の研究者の成果をテコに予算確保のために活躍したからこそ、実現できたものです。若山氏が、そういう優れた研究環境の理研CDBでの10年の任期が切れて、なかなか就職先が見つからず、やっと採用が決まった山梨大で、近代的な研究実験環境を確保したいと考えることは、当然すぎるほど当然のことです。


 笹井氏は、研究者としても経営者としても既に優れた感覚を持っていたわけで、研究成果をテコに施設環境を充実させるという発想・行動は当たり前のものになっていたはずです。だから、小保方氏もそういう笹井氏には違和感を感じることはなかったのでしょう。iPS細胞をライバル視するような言動についても、批判的角度では見ていません。
STAP研究にもおそらく触れつつ、文科省に出入りして予算確保に奔走していたことなどは、知らなかったでしょう。予算担当GDなのですから当たり前の行動です。
 
 他方、若山氏は、クローン研究の世界的権威でありながら、初対面の際の「時折見せる笑顔に少年のような純真さを感じさせる穏やかな方だった」「謙虚な姿勢」(P63~64)といったイメージがずっと続いていたことでしょう。そのイメージと比べて、にわかに、再就職先の山梨大での京大・iPS細胞研究所並みの研究実験施設に「色気」(期待)を示したことに、俗物的匂いを嗅ぎ取って、強い違和感を感じたということでしょうが、若山氏がそう考えることは当たり前のことであり、小保方氏のほうが、ウブすぎると正直思います。
 
 小保方氏とすれば、スフェエ細胞自体に研究関心があったところに、若山氏が研究室でのテーマを幹細胞研究一色にしていき、小保方氏を幹細胞を作るためのスフェア細胞作りためだけの手足として扱うことに違和感と不満とが蓄積していったということでしょうが、だからといって、若山氏のその言動を俗物的に捉えるのはあまり適当ではないと感じます。
 人間は霞を食って生きていけるわけではないのと同様、研究者は近代的実験研究設備があって初めて優れた成果を出すことができるのではないでしょうか(紙と鉛筆でできる数学はまた違うのかもしれませんが)。物理学の世界などは、スーパーカミオカンデSpring8のような巨大施設があって初めてノーベル賞級の成果が上げられるという時代です。様々な研究分野でも、「京」のような世界最速のスパコンの開発を競うことによって、世界に先駆けての発見、成果を上げることができるわけです。「なぜ二番ではだめなのか?」と愚問を発した政治家がいましたが、そういう政治家には、「なぜ選挙で二番ではダメなのですか?」と言ってやればいいのです。論文、特許、ノーベル賞、すべて一番に意味があります。それを支えるのは先端的施設・設備でしょう。
 
そういうことを考えれば、地方大学で研究生活を送り、研究室の主宰者となることになったクローン細胞の世界的権威の若山氏の発想とすれば、当たり前すぎるほど当たり前だということが、小保方氏にも理解できると思います。自分はその恩恵を受けておきながら、その施設設備の確保に意欲を示す研究者を俗物的に捉えるとすれば、それは矛盾というものです。
 謂わば、笹井氏らは、大企業の研究者兼経営者だとすれば、若山氏は、これから起業するベンチャー企業のようなもので、近代的設備、優秀な人材を如何に確保するかは喫緊の課題だったという事情は理解する必要があります。
 
P241で、小保方氏が「科学ってもっと優雅なものだと思っていた。」と相澤氏に吐露したところ、「やっぱりお前はばかだな。こんなどろどろした業界はなかなかないぞ」と言われたと書いていますが、若山氏の発言に対する感想をみても、「科学業界」で生きる身としては、認識が浅すぎる感があります。

山梨大に移った若山氏から、予算要求をするので(共同で)手伝ってほしいと言われて、笹井氏や丹羽氏に相談したところ、今は適当ではなく、予算確保に伴う事務的負担に煩わされることなく、自分のやりたいことに集中して立派な研究者になっていってほしい、と諭される場面が書かれています。しかし、そういう研究だけに集中できる環境などは滅多になく、先端研究であればあるほど、若山氏のように予算、施設、人材の確保に四苦八苦しながら、研究を進めていくというのが、通常のパターンだということを、小保方氏には理解してほしいところです。

手記を読んで、小保方氏に対してやや批判的に感じた、数少ない点の一つです。