理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

1 STAP問題の基本的構図を揺るがす可能性のある小保方氏による提示事実

 一通り読み終わりました。
 この本に書かれたことの一部なりとも、もっと早い段階で公開されていれば、世の中の動きや受け止め方もまた、だいぶ変わっていたのではないだろうか・・・という気がします。小保方氏は、何を言われても、理研の上司から「無視するんだ、我慢しろ」と言われ続けて、それが心に刷りこまれてしまったであろうことや、自らのミスが招いた混乱であるとの負い目、そして何より、長期間のバッシング等の中で心身が極端に疲弊・摩耗している中では、それもかなわなかったということなのでしょう。


 理研の複数の上司がそういう指示をするのは、理研当局として事態を収拾できなくなることを恐れてのことであることは容易に想像できます。理研当局としては、批判を浴びた理研自体の組織防衛と、特定国立研究開発法人法案の提出と指定のための環境作りのための早期収拾・決着とが、彼らの至上命題だったのですから、科学的真実の追求や小保方氏の研究者生命などは、切実には考えていなかったと思います。本書を読むと、個人的に同情を寄せる人たちはいても、それが組織的な対応に結び付くことはなかったということですね。 
 理研とは、利害が対立しているのですから、桂調査委報告書公表後の早い段階で、本書に書かれている事実関係が発信されていれば、NHK毎日新聞等のマスコミを通じて形成されているイメージとの大きなギャップによって、「マスコミ報道のように単純な話ではなさそうだ・・・」という空気が一部なりとも生まれていたかもしれません。
 それがかなわず、今の時点での発信となってしまったわけですが、しかし、小保方氏本人の執筆によるまとまった形での発信自体インパクトがありますし、中身もマスコミ攻勢等から「解放」された中での執筆だったことで、貴重な問題提起となる材料が多々提供されています。
 
 いろいろな材料を取り上げていきたいと思いますが、STAP細胞問題をめぐる基本的構図に影響を与える材料をまず検討するのが適当だと思います。
 大きな問題提起となると思われるのは、次のような点だと思います。順不同でメモってみます。
 
1 不公正だった理研や不正調査委員会の著者の扱い、運営


シーケンサー解析担当著者がGDから再解析を止められた。
若山氏だけが、被調査者のはずなのに、調査側の立場になっており、試料も自由に解析できたことに対する不信が、本書でも書かれているが、他の著者への差別的扱いとして、次世代シーケンサーの解析担当だった著者が、CDB2人のGDに解析を止められたと泣きながら訴えてきたとある。Kahoのブログの指摘のひどさに、再解析して反論しようにもそれができず、笹井氏から4月の会見の説明のためにさらなる分析を依頼されたが、GDに止められたとあります(P150~151)


○なお、論文のデータとして使用された細胞には、若山教授からは、ChIPクロマチン免疫沈降)は行ってもいいが、次世代シーケンサーによる解析は行わないように指示が出されていたものもあり、小保方氏は疑問を持ったとあります。後に公開されたデータに疑義が出て、その解析を深めておけばよかったと悔やまれた由(P127~128)。
 
○消えた小保方氏の試料
 20143月に、閉鎖された小保方氏の研究室から、研究試料を調査のために提出させてほしいと要請し、竹市氏らの立ち会いの下、回収されたが、その際、重要なサンプルのいくつかが箱から消えているのに気が付いた。STAP細胞からの4Nキメラと呼ばれるホルマリン漬け、テラトーマ実験のサンプルがなくなっていた(P205~206)
 
○止まらなかったリーク
 ごく一部のものしか知らないはずの個人的情報が、CDBGDからマスコミにリークされていることがわかり、小保方氏、笹井氏はショックを受けた(P174)
 
○小保方氏がポスドクの立場だったことを知らなかった理研の懲戒委
 石井調査委での不服申し立て却下決定のあと、懲戒委が開かれた際に、小保方氏が、その実験時はポスドクで、若山氏が指導教授だったことを知らず、そのことを聞いたときに、委員一同、静まりかえってそのまま解散となったとあります。
 
 
2 STAP細胞及びSTAP幹細胞の作製


○若山研では、小保方氏が作ったスフィア(STAP)細胞を元にした幹細胞株化を若山研の研究成果として論文投稿と特許化をめざすこととし、研究室員が手分け解析を進めていった様子が描かれている。若山氏は、それに必要となる「胚操作」と呼ばれる実験技術を、小保方氏にだけは教えてくれなかったとのこと(「小保方氏に教えてしまうと、もう必要としてくれなくなって、どこかに行っちゃうかもしれないから」)。(P90~103)
 
○若山研の学生は、スフィア幹細胞株関係の論文を、若山氏と相談の上、ネイチャーの姉妹誌に投稿したが、騒動になった後、静かに取り下げたとのこと(P96、P211)。
 
STAP細胞の作り方は、若山研のほぼ全員に教えており、ES細胞様に増殖するラボのメンバーもいた。若山氏自身、単独でSTAP細胞からSTAP幹細胞作成まで成功していることを、ネイチャーのインタビュー記事で述べている(P209~210)。
 
○若山氏は20128月以降、特許申請を急ぎ、理研特許室への若山氏のメールには、「若山研のラボメンバーは、スフィアの作製も細胞株化もまあまあできる」「いつでも再現できる」「iPS細胞よりすごいものを作った」などと記されていた。(P102~103)
 若山氏は、若山研51%の特許配分を提示したため、それ以降、日米の著者間で不穏な空気が流れ、小保方氏が板挟みで苦しんだ(P107)。
 
○若山氏は、独立してSTAP細胞からSTAP幹細胞樹立まで成功したときに、小保方氏はついていなかった。テラト―マ実験も、若山氏の指揮の元で行われた(P116、P210)。
 
○若山氏は、実験を行う時にコントロール実験を行わなかった。誰もそれをしてほしいとはいえなかった(P105)。
 
○正しく行われたなら、生まれてくる子供たちはすべてGFP陽性で光るはずだったが、実際には、半分しかGFPの発現がなかった。若山氏は「僕のマウスのコロニーがおかしいみたい」と言った。若山氏は、どの系統のマウスを実際に交配し、どの赤ちゃんマウスを渡していたかの記録をつけていなかった(P106)。
 
20136月頃、山梨大の若山氏から、培地を送った後の連絡では、Oct4をとてもよく発現するSTAP細胞はできるが、まだ幹細胞株化には至っていないこと、中国人留学生の元研究員も中国で、STAP細胞の実験がうまくいっているとの連絡がきているとのことだった(P122~123)
 
3 論文撤回の経緯(P190)


○論文撤回は、米国側著者が、それでは職を失いかねないと強硬に反対。最後に、バカンティ、小保方氏らが撤回に同意したのは、ネイチャーとの掲載をめぐる成行で、STAP幹細胞に関する部分が、レターだけでなく、アーティクルにも入ってしまったため。
○若山氏主導での撤回。2本一括での撤回を強く主張。
○日本側著者の知らないところで、バカンティと話していた。アーティクル論文まで、自分がシニアオーサーではないのに、ネイチャーと連絡をとっていた。
○笹井、小保方も責任著者なのに、自分に責任を負わせるような不安をもつとのメールを、著者以外の者に対して、CCで入れていた。
○若山氏が撮ったキメラの写真の取り違いが決定打となり、ネイチャー誌側も、2本の撤回を勧めてきた。
○撤回理由書の案を笹井氏が作ったが、「エラーの修正で済んでしまいそうで、これでは撤回理由が弱い」と若山氏は主張し、自分で修正するとして、マウスの系統が自分の研究室にいたものと違うとの初めて聞く文言が入れられた。竹市氏は「検証不十分で、他人の受け売りが入っており適当ではない」とコメントし、丹羽氏は「常軌を逸している」と述べていた。
○撤回理由セット後に、若山氏が勝手に理由を書き変えた。それを誰にも相談せず、発表後に丹羽氏が気が付いた。若山氏は解析が間違っていたことを知っていたのだろう。しかも、書き換えを他人にせいにしようとした。
 
 とりあえず、今日はこの辺までで・・・(疲)。