理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

【補足】小保方氏の学位取消確定の会見関係記事を見ての気付きの点

 
 早稲田大学による小保方氏の学位取消確定の会見関係の記事を見てみました。
 
マイナビニュース2015/11/03
 
「小保方氏の学位論文について具体的には、「論文中にコピー&ペーストした箇所があったこと、企業Webサイトからの写真の盗用があったこと、参考文献情報が適切に掲載されていないこと、科学的根拠・論理性に乏しかったこと、以上の4点に問題があった」とし、再指導によって改訂稿ではコピー&ペーストや写真の盗用が行われている箇所の修正・差し替えが行われたというが、やはり「科学的根拠、および論理性が不十分」であったという。
その詳細について同大学は「現在提出されている博士論文自体は途中稿なので、コメントは差し控える」としたが、博士論文のもととなった米国雑誌「Tissue Engineering Part A」に掲載された論文の内容との不一致があったこと、実験手順などの記述が不足していることなどがあったとした。また、再指導については、「メール、電話などで本人の体調を考慮しながら十分な指導を行った。また、2名の教員が3度直接訪問し面談を実施するなど、できることは十分にやってきた」としている。なお、指導教員と審査員は学位論文審査時からすべて入れ替えたという。
 
早稲田大学総長 鎌田薫氏は今回の決定について、「最大1年間でこの問題を解決するというのは、社会に対するお約束だと思っていた。また、学位のない博士論文が1年存在するというのは異常。あと1カ月、2カ月というならわかるが、延期の希望について具体的な日程が示されていない。いつになるかわからないまま放置するわけにはいかない」と説明した。」
 
The PAGE2015.11.0315:00
 
「小保方氏は計4回の改定稿を提出。「不適切な引用」などの修正は終わりましたが 、「結論に至る科学的論拠」や「記述の論理性」について必要な訂正がなされておらず、審査を受ける完成度には達していないと大学側は判断しました。どのような訂正がなされたについては「具体的には控える」として、詳しくは説明されませんでした。「最終稿であれば、『これがおかしい』と指摘できるのですが、ご本人がこれは途中のものであるというので、これ以上のことは申し上げられません」(橋本副総長)。
 小保方氏は猶予期間の延長を求めたといいますが、同大はそれに応じないことを決めました。そして、審査に値する論文がないまま猶予期間が満了し、学位の取り消しが確定した、と説明します。「このまま放置して、論文のないまま学位を存続することはできないので、延長はしませんでした。本学はよりいっそうの取り組みを行なって信頼回復に取り組んでいく所存であります」と鎌田総長はいいます。」
 
 
 これらを読んで、少々、気付きの点を、備忘的に書いておきます。
 
(1)「指導教員と審査員は学位論文審査時からすべて入れ替えた」との点
 学位取消処分は、調査報告書に「基づいて」いますから、その事実認定と評価とが前提となるはずです。その調査報告書は、常田教授を除く審査分科会メンバー全員とそれ以外の1人によってまとめられた「自主調査」の結果を聴取して24の問題箇所をリストアップしています。
 ところが、小保方氏への新たな指導、審査に際しては、「指導教員と審査員は学位論文審査時からすべて入れ替えた」ことによって、基づいたはずの調査報告書の事実認定と評価から乖離してしまったと想像されます。
 旧指導教員、審査員は責任を問われるような誤った指導、審査をしたということを、脳内変換で、それらの指導や問題とした点はご破算になって、更地で一から指導ができると思い込んでしまったのでしょう。そして、「教員有志の所見」的要素が入ってきてしまったのだろうと思います。
 
(2)「4つの問題点」と調査報告書が指摘した24の問題箇所との関係
 4つの問題点として挙げたのは、「本件学位論文」に関するものなのか、それとも「小保方氏主張論文」に関するものなのか、今ひとつ明確ではありませんが、いずれにしても、「科学的根拠、および論理性が不十分」という点は、24の問題箇所にはほとんど含まれていないはずです。
「その詳細」として挙げた「Tissue誌に掲載された論文の内容との不一致があったこと、実験手順などの記述が不足していること」のうち、実験手順の記述の不足についての指摘はありませんでした。「Tissue誌に掲載された論文の内容との不一致」は、24の問題箇所のうちで⑰~㉑の5箇所を指しているのだとすれば、その具体的中身は、写真や図がほとんどですから、Tissue誌のものに合わせれば(余計であれば削れば)、あっさり解消する話ではないのでしょうか?
 
 (4) Tissue 誌論文の記載内容との整合性がない箇所
Fig. 11 にある3 枚の写真 (54頁 ※本件博士論文の該当ページ)
Fig. 17 にある27 枚の写真 (73 頁)
⑲「4.3.4 Differentiation potential of cells in vivo」の本文6 行目4 語目「Tissue generatedfrom spinalspheres~」から10 行目1 語目「~duct liketissue (endoderm) (Fig. 18).」まで(69 2 行目4 語目から6 行目1 語目まで)
Fig. 18 74 頁)
Fig. 1975頁)
 
 もしこの点が重要な問題箇所ならば、本件博士論文と小保方氏主張論文の比較を詳細に記載した部分で、これらの点も当然記載するはずですが、実際には記載されていません。したがって、小保方氏主張論文段階では解消されていたと推定されます(小保方氏主張論文の現物を見れば一目瞭然ですが)。
 会見で一例として挙げた「B6系統のGFP陽性細胞を用いてキメラマウスを作出したという記載があるが、用いた細胞の由来や実験結果の科学的根拠を説明しうる記述が不足している。」という指摘は、24の問題箇所にはありません。
 
(3)昨年の「猶予条件付き学位取消」は、一種の「利益誘導」的構図ではないか?
 上記のように、取消処分時の条件内容が、実質的に変更されているのはおかしなことで、変更された条件による取消確定は根拠がなく無効ではないか、ということを先日書きました。
 数日前に報じられた以下の記事をみて、この早稲田の猶予条件付き取消処分も、一種の利益誘導的構図になっているのではないか?と思い至りました、
 
○警官誘導で虚偽自白の疑い…高裁が実刑判決破棄
(読売新聞20151124 1824分)
「(中略)被告は捜査段階で「自白」し、1審でも当初は起訴事実を認め、保釈された。その後、否認に転じ、自白は、警視庁の警察官から〈1〉余罪は立件しない〈2〉他の人は逮捕しない〈3〉起訴後すぐに保釈されるよう検察官に掛け合う〈4〉刑を極力軽くする――と利益誘導されたためだと主張した。」
 
 これは、よくあるパターンで、取り調べの刑事が「自白したら死刑にはならないから、早く楽になれよ」というのと同じことです。早稲田大の場合には、「訂正して指導を受けたら学位は取り消さないから、不服申立てはするな」と利益誘導して、小保方氏としては不本意ながら不服申立ては封じて処分を確定させておき、その後、大きく異なる条件による指導を行って、条件を充足せずとして学位取消を確定させた(=研究者を死刑にした)という構図です。
 このように理解すれば、早稲田の猶予条件付き取消―条件未充足による取消確定という一連の処分が、違法であり、また不公正であるかがわかることでしょう。
 学校の退学処分や留年、大学の単位認定等に関する裁判例をみると、基本的には学校側の裁量に委ねられているものの、裁量権の逸脱になる場合には違法として取消等の対象になっているかと思います。学位取消というのは、学校教育法に基づき与えられた資格の剥奪という処分ですから、行政処分に準じた公正手続きが求められると思います。
 今回の早稲田の処分は、明らかに不公正であり、裁量権の逸脱に当たるでしょう。
 
 なお、昨日書いた「STAP細胞問題における科学と法律」とのブログ記事の中で、STAP細胞や小保方氏を否定する科学界の人々には、法律的フィルターでの思考が必要ということが理解できないようだ、ということを書きました。
 法律的要請を無視した批判、非難をさんざんやっておきながら、小保方氏を封じる局面になると、にわかに法律論を持ち出すのですから、なんとも妙な話です。この早稲田の処分についても、「不服申立ては昨年済んでいて小保方氏は抗弁しなかったのだから、小保方氏はもう何も言えない」と言い出します。その処分に付いた条件が変更されていることをこちらは問題視しているのに、そんなことはお構いなしです。
 
(4)「最終稿であれば、『これがおかしい』と指摘できるのですが、ご本人がこれは途中のものであるというので、これ以上のことは申し上げられません」との副総長発言の不可解
 橋本副総長は、「最終稿であれば、『これがおかしい』と指摘できるのですが、ご本人がこれは途中のものであるというので、これ以上のことは申し上げられません」と述べ、鎌田総長は、「論文のないまま学位を存続することはできない」と述べています。
こういう処理は乱暴で、これは指導教官や運営委員会が、既に与えられた権利・利益の剥奪処分の一環だということの認識が乏しいことに起因していると感じます。
それと、事実関係が、小保方氏の主張と食い違っているようです。


 仮に大学側主張の事実関係によるとしても、剥奪処分が確定するかどうかという段階なのですから、小保方氏に対して、「途中稿の状態では審査ができないので、いついつまでに最終稿と考えるものを提出するように。それをもとに、猶予条件を満たすかどうかを判断する」と告知すべきでしょう。そうすれば、小保方氏にしても、「これこれの訂正・修正により、昨年10月に告げられた条件は満たしていると考える」として、主張を述べることができたはずです。これは、論文指導であっても、処分の一環なのですから、処分の枠組みの中で処理される必要があります。指導側は、処分条件に照らして正当な指導であることが必要ですし、処分される側が処分条件に照らして抗弁する機会を与えられるべきでしょう。昨年10月時点で示された条件が実質的に変更されており、その変更された条件による指導自体がおかしいのですから、ここは焦点になるはずです。
 そういう告知もせずに、「最終稿とされる論文がないから審査できない」というのはおかしな話であり、筋として、「最終稿と考えるものの提出があり審査したが、かくかくの点で、条件を満たしていないと判断し、学位取消を確定することとした」というのが想定されるプロセスのはずです。


 こういうことを書くと、「昨年10月の処分時に不服申立てをせず、指導を受けるとしたのだから、文句は言えないはずだ」とか、「指導は教官の裁量で行うものであり、指導される側が指導内容の適否を云々することはおこがましい」とかいうことを言う人が必ず出てきます。しかし、小保方氏は白紙の同意をしたのではなく、「報告書に基づく処分の猶予条件を満たすという前提で処分を受け容れ、その条件に従った指導を受けます」ということで同意しているわけですから、指導内容にも枠がはまっています。先進理工学研究科では、旧指導教員や旧審査員の判断がご破算になって一度全部消えて、一から新指導教員による指導がなされると考えている節が多分に見えますが、その認識がそもそも間違っているということです。


 小保方氏とすれば、条件とは異なる全く更地の指導をされれば、話が違うと思いつつも、トライすべく「猶予期間を延長してほしい」と述べるのは自然なことでしょう。その対応がすぐには難しいことを奇貨として、予告なく指導を打ち切り、「最終稿が提出されていないから審査もできないため、論文自体ないものとして学位剥奪確定だ」とするのは、不公正です。
 総長は、「一年でできるだろうということはお約束」といいますが、求められた条件の内容が異なるのですから、お約束になりません。
 いずれにしても、「不正により」という学位取消要件に該当しない中、該当するものとして学位取消とし、猶予条件の内容も、実質的に変更されたものに基づいて、充足の有無を判断したことは、違法であり、無効ではないでしょうか。
 なお、大学側と小保方氏側とで喰い違う事実関係については、いずれ明らかになることでしょう。