理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

小保方氏への「論文指導」が、「教員有志の所見」的スタンスで行われていないか?


 早稲田大の先進理工学研究科での「訂正」に関する論文指導の問題点の有無についての検討は、この後書きたいと思いますが、その前に、一点、気になる点を書いておきます。
 
 総長の記者会見や発表資料をみると、先進理工学研究科が、取消、指導、猶予条件未達等の重要な判断を委ねられているようです。早大当局としては、それを追認したということかと思います。
 一義的判断を、指導や学位授与の当事者である先進理工学研究科が担うことは構いませんが、ただし、それは、大学当局が論文調査委員会の事実認定を踏まえて決定した枠内で行うということが大前提です。
 
 その観点から気になるのは、昨年7月の論文調査委員会報告書公表の後、「先進理工学研究科有志一同」の名で公表した、同報告書への異議申立て文書です。タイトルには、「教員有志の所見」とあります。最初は、「有志一同を代表して」とありましたが、批判があったそうで、「有志一同」となっています。
 
 この「有志一同」というのは、名前を連ねている4人のみを指すのか、それ以外にもいるのかよくわかりません。「有志一同を代表して」というと、4人以外にもいることが分かりますが、「有志一同」だけになるとその点が不明になります。提出をリードしたと思われる岩崎教授のフェイスブックでの説明では、このクレジットの変更経緯が次のように書かれています。
 
2014725日追記:
学内外からのご指摘を受け,一部文言を修正させていただきました。
1)   前のバージョンでは「有志を代表して」と書いておりましたが,学内の教員から「誰がこの声明文に同意されているのか,学内外に憶測が広がり,学内外に混乱を招くことになる」との指摘を受けました。実際にほかにもご賛同いただいている教員がおりますが,迷惑をおかけすることは本意ではありませんので「有志一同」と変更させていただきます。
2)    (以下略)」
 
他にも賛同者がいるそうですが、公式には、この4人が有志の全部なのかどうか、これだけではよくわかりません。
 
 なぜこんなことを言っているかというと、これらの「教員有志」は、この所見の中で、論文調査委員会の報告内容を批判し、異議を唱えているからです。異議を唱えても、大学当局として決定されたことには従うということで行動すれば、別に問題はありませんが、もし、異議内容に引きずられて指導、決定等を行ったとすれば、それは許されません。
 大学当局は、単に先進理工学研究科の決定を追認するのではなく、指導教官の選定や論文指導の内容、決定の議論の内容が、大学当局として決定し、小保方氏に伝達された内容を即したものになっているか、逸脱していないかという点を、チェックする責務があります。
 
 この後再度、昨年の論文調査報告書、猶予付き取消決定、今回の取消確定決定、総長会見録等をよく読んでから、コメントしたいと思いますが、どうも、この「教員有志の所見」の考え方に立って、あるいは影響されて「訂正指導」「論文指導」が行われたのではないか? という印象があります。
小保方氏コメントへの早大の反論で「疑念がひとつでもあれば」という言葉を使ったり、小保方氏コメントで「ほぼ6年前の米国に保存されている研究資料を提出することなどを求められた」ということからすると、「教員の所見」の中の、
 「4 実験ノートの確認方法に関しての記載、および科学的正確性に関する評価が不十分である点」
 に書かれている点について、小保方氏に要求したのではないか?との印象を強く持ちます。そこでは、内容の査読判断のテッシュ誌への一任に異議を唱え、早大独自に科学的合理性、正確性の検証を行うべきとのスタンスに立っています。
 また、「3 大量の無断引用部分」においては、序章部分の重要性を強調し、NIHのコピペは、「その執筆に学問的誠実さと能力の欠如を強く伺わせる」として、「こうした論文に対して本来学位授与がなされることはあり得ません」としています。
 
 これらのスタンスに立って、「訂正指導」に名を借りた、再審査、査読に等しいことをしたり、論文調査委員会では、結論に大きな影響を及ぼさないとした序章部分の記述を、それとは異なるスタンスで評価したりしたのであれば、それは論文調査委員会の事実認定を踏まえて大学当局が行った決定からは逸脱しますし、今回の総長会見でも説明された、内容の評価、査読はテッシュ誌に一任というスタンス(批判はされていましたが)からも逸脱するものです。
 
 公表された資料では、昨年10月の猶予付き取消決定は、先進理工学研究科の「科長会」の議を経たものだそうですし、今回の取消確定は、「運営会議」で決めたものだとあります。そうすると、論文指導だけでなく、それらの会合での議論や意思決定においても、「教員有志の所見」の考え方に影響されている可能性は多分にあります。副総長の発言にも、「教員有志の所見」的なニュアンスが滲んでいたように感じました。
 
 これらの点を念頭において、改めて関連資料を読んだ上で、問題点の有無を検討するようにします。
 学位授与というのは、学校教育法に基づくものであり、大学の学位規則は、その法律に基づく下位規範です。今回の一連のことは、法律に基づいて授与された権利・利益を剥奪するというものですから、事実認定がまずあって、それに照らしての取消根拠や、猶予条件という「条件」の充足性等について、法律的妥当性を問われることは言うまでもありません。


総長会見で、「研究科の判断で」という言葉がしばしばあったかと思いますが、「研究科の自治」的に捉えて、「科学研究、教育の世界だから、研究者、教員の考え方で独自に行うのだ」と考えているとすれば、それは間違いです。
総長が述べたように、学位を与えるまでは厳しくやるが、いったん与えた権利・利益である学位を剥奪するということは、よほど慎重に行われる必要がある、ということであり、本件「指導」は、その剥奪過程での話ですから、公正手続き原則に則った対応が必要です。
 
ざっくり言うと、昨年の決定はそれほど難しい話ではなくて、次のような趣旨だったはずです。
 
公聴会論文の存在は、主査らの証言で存在は間違いない(ただし残っていない)。PPT資料と照らし合わせて聴いたので、コアとなる画像等も配置されていたことは確認済み。合格の水準に達していると認められたので、審査会への付議が決まった。
②審査会までに訂正すべき箇所は、主査が赤字で書いて小保方氏に渡した。
③小保方氏から昨年5月末(電子媒体は6月末)に提出された最終論文だったはずのものは、草稿(「本件博士論文」)時点での問題は概ね消えているが、NIHの文章等まだそのまま残っており、事後に修正したものとは思われない。したがって、これが本来提出すべきだった論文と推定される(序章部分は、根幹となる結論部分に大きな影響に与えるものではなく、不正な方法には当たらない)。
④なお、内容については、テッシュ誌の査読を経ており、調査委員会によるハーバード大での調査でも、実験の実在は確認して、問題とは考えていない。
⑤論文指導の中で、主査らが指示した訂正や、序章部分の問題についての「訂正」が適切に反映されれば、学位は維持する。
 
そこを、「論文指導」との名の下に、論文内容を独自に再審査・再査読し、序章部分の修正について過大なものを要求したとなれば、処分内容である取消「条件」をなし崩し的に拡大したものとなり、違法ということになるでしょう。
総長会見では、指導教官の名前や、論文指導の中身を(一例を除き)明らかにしませんでしたが、「教員有志の所見」に書かれたようなスタンスによる指導ではなかったこと、昨年の取消条件の枠内であり、逸脱したものではなかったことを、説明する必要があるでしょう。
 
昨年7月の論文調査委員会報告が、法律家的視点が前面に出ていることに対する批判があったようですが、その反動でしょうか、昨年10月の猶予条件付き取消決定とそれ以降は、そういう法律的視点がどこかに飛んで行ってしまったような気がします。先進理工学研究科は、そういう法律的視点を念頭においていたか、法律的視点で説明がきちんとできるか、問われることになるでしょう。

※しばしば、昨年7月の論文調査委員会の報告書の考え方、内容がひどかったから、今回の指導で、正しい姿に戻したのだ、といったような指摘が見られますが、それは、「今回の論文指導と取消確定は、論文調査委員会報告書を踏まえて昨年10月におこなった決定を逸脱するものである」ということを認めているに等しいもので、法律的視点を無視したものです。