理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

1 早稲田大の小保方氏学位取消し会見を見ての感想―その1


 YouTubeの総長以下の会見録
の、まだ38分目くらいまでしか見ていないのですが、ここまでの感想を備忘録的に少し・・・。

●質問の冒頭の2人が、いずれもNHKでしたが、小保方氏のコメントの主要部分を引用して、大学当局側の見解を求めています。それならば、夜7時からのニュースでも、そういうコメントの中核部分はきちんと言及すべきでした。
 おそらく、午後6時半から始まった会見に出ている記者の誰かが、急いで原稿を書いて、7時20分頃のニュース枠に突っ込んだのでしょう。会見前から、小保方氏のコメントはマスコミには配布されていたわけですから、あの部分しか紹介しないのはフェアではありません。

●続く、月刊「WILL」誌の二人の記者の質問は、本質を突く鋭いものがありました。それに対する応答によって、大学当局側が、物事の筋を理解していないことが感じられました。
(1)最初のいかにも雑誌記者風の記者の質問の趣旨は、
「昨年7月の調査委員会の結論は、論文指導は然るべくなされ、訂正指導された点も反映して、論文として仕上がったものが最終審査委員会に出されるはずだったところを、間違って初期の草稿段階のものを出してしまった、ということを認定していたはず。そこで訂正指導されたものを訂正すれば済む話だったのではないのか?」
 ということだったと思います。
 大学側の回答は、今回の指導では、論文記述の裏付けを求めるものもあったことを認めた上で、「当時の論文指導におけるやりとりの記録はないが、当然そういう指導もなされたはずだ」として、その裏付け、根拠の記載も「訂正」の範疇であるとしていました。
 しかし、それは明らかに強弁でしょう。調査委員会報告書が、小保方氏が6月に出した論文が、本来、指導をクリアして授与が認められるはずだったものだということを、公聴会でのプレゼン資料、審査者の証言などから判断しています。そのような記述の根拠の記載要求などはなかったはずです。
 もし、根拠記載要求があったはずだとあくまで主張するならば、当時の指導教官や公聴会等の審査員らに裏付けをとらなければなりませんが、とっている様子はありませんね。それに、その辺のやりとりがどういうものだったかは、論文調査委員会が調べた記録があるはずです。それに当たらないままに、そういう実質的な査読的要求をするのは、昨年の処分内容から逸脱するものでしょう。

 また、水準の高い査読付きのテッシュ誌(と調査報告書には書いてあります)での掲載が認められたことを以て、実験の実在と、内容が高い水準であることを認定し、他大学では査読付き雑誌への論文掲載を以て博士論文審査に替えるところもあるなどとも述べた上で、その内容そのものには、全く疑義を呈していません。

 昨年7月の調査報告書、10月の処分の前提と大きく乖離する、「訂正」に名を借りた査読的や審査のやり直し的な「論文指導」は、処分内容から逸脱しています。

(2)WILL誌のもう一人の女性記者の質問は、審査の合否という個人情報がリークされたのは守秘義務に反するのではないか、ということと、小保方氏の最終学歴はどういうことになるのか?という点です。
 後者の最終学歴はどうなるのか?という点は、私も記事で疑問点として書いていたところです。学士号の取消ならば、大学卒業取消になるでしょうし、博士号取消ならば、「大学院博士課程修了」が取消になるはずです。学校教育法の条文からは、
卒業や修了と、学位授与とはリンクしています。小保方氏は、あくまで早稲田大の大学院先進~~~科の大学院生であり、ハーバードに指導を委託していたと、今回の記者会見で述べていましたから、学校教育法104条の1項が適用されるはずです。

 ところが、驚いたことに、今回の会見では、その点に対する明確な回答がありませんでした。担当がまず回答し、次に総長が延々と補足していましたが、何も答えていませんでした。言葉をいくら費やしても、「学位が取り消されたということです」ということだけで、「大学院博士課程修了」を遡って取り消し、修了証書の返却を求めるのかどうか?ということに答えませんでした。WILLの記者も更に質問すればいいのに、しなかったので、そのままになってしまいました。
 これは、驚くべき詰めの甘さです。組織の対応として信じ難いものがあります。そんな質問は初歩的な想定質問なのであって、株主総会なら想定問答集の最初に入れ込むものでしょう。それに対する答えを用意していないというのは、今回の決定が、深く考えていない場当たり的なものだったということを想像させます。論文調査委員会が
 「早稲田大学がひとたび学位を授与したら、それを取り消すことは容易ではない。それほど学位の授与は重みのあるものである。早稲田大学において学位審査に関与する者は、その重さを十分に認識すべきである。」
 と述べたことは、この点を念頭においてのものだったと思いますが、大学当局は理解していないようです。

WILL誌に続く記者の質問も、本質に迫るものでした。
 2013年の処分との比較や、他の論文が訂正で済んでいるのに小保方氏の場合は取消というのは、比較衡量的にどうなのか?という質問です。
 大学側の回答は、2013年の論文の学位取消の場合には、論文の内容、結論も含めて他人の論文の剽窃であり、論文の根幹部分に関わるものであったので、学位を取消した、としています。
 それに対して、「その他論文と小保方氏の論文」の場合については、「不適切な論文の範囲を、2014年以降の文科省ガイドラインの考え方の変化を踏まえて、広く捉え、基本的注意義務違反のものも対象とする、ただし、処分に当たっては根幹にかかわるかどうかで判断する、その他論文については根幹にかかわるものではなかった」・・・と、かなり混乱しながら述べていました。
 この文脈からすれば、「小保方氏の論文の問題も根幹にかかわるものではなかった」と言っているように聞こえます。実際のところ、おそらくそうなのでしょう。昨年の7月の調査報告、10月の処分時に、本来の博士論文には捏造、改竄等の指摘はなく、NIHのHPからの無断引用はあるけれども(無断引用はあくまで草稿の話であり、最終稿には、NIHを参考文献として記載していました)、それは根幹に重要な影響を与えるものではなかったと認定しているわけですから、通常の研究不正はなかったという認定です。
 したがって、小保方氏論文は、その他論文と同様に、根幹にかかわるものではないから、取消には当たらないというのが結論になるはずですが、この説明している理事は、相当混乱していたようです。

 どちらの意味であったとしても、早大の今回の取消処分は、おかしいということが、このやりとりで分かります。
 もし、(昨年来の認識と同様に)他の論文と同様に根幹にかかわる問題ではないという認識であれば、取消処分は、比較衡量的に過重だということです。他の論文は訂正で済み、小保方氏のは訂正では済まず取消だというのでは、明らかに差別的取り扱いをしているということです。

 また、もし、根幹に重要な影響を与える不正があるのだとの認識であれば、それは昨年時点の認識とは180度異なるわけですから、新たに不正調査委員会を立ち上げて、調査を開始しなければなりません。そこで、不正だと考えられる点を指摘し、小保方氏に弁明、追加資料の提出等を求める等の手続きを経て、その上で不正と認定して、初めて取消となるものです。

  そして、基本的注意義務違反のものも、故意と同様に扱うということについては、2014年の文科省ガイドライン以降だと述べています。小保方氏の場合には、基本的注意義務違反(それも、捏造、改竄の類があるということではなくて、レベルの低い草稿を誤まってだしてしまったという点で)を問われています。ということは、不利益処分の遡及適用になりますから、その点でも、公正手続き上大きな問題ということになります。

 こうやってみると、まるで、「我が早稲田大学は、今回の処分において、不公正手続きをしております」と正直に自白しているようなもので、一体どうなっているのか?と呆れてしまいます。

●この理事?の回答で、もう一点、首をひねったのは、不服申立てに関してです。
これは、極めて重要な手続きです。
記者の質問は、今回、小保方氏に対して、不服申し立ての機会があるのかないのか?という単純な質問ですが、回答は2013年の取消の場合しか答えていませんでした。
 その際は、不服申し立ての機会を与えて取消したと説明していましたので、今回の小保方氏の場合にも機会が与えられる(与えられた)ということになるはずです。
 ところが、どうもそういう様子はないのではないでしょうか? 今後機会を与えられているのであれば、あのようなコメント(「私の研究者の道は不本意にも門が閉じられてしまいました」)にはならず、今後、不服申し立てをして理解を求めていくと述べるのだろうと思います。
 それとも、もう機会は与えているということでしょうか? 10月29日にリークされた時点では、最終決定ではなかったと言っていますが、リークされて報じられた内容は、決定を小保方氏に伝えてから、ということだったかと思います。
 10月29日以降に不服申し立ての機会を与えて、11月2日までに却下、最終決定ということは考えられませんから、これから与えるのでしょうか? それとも、その前に与えられていたのでしょうか?
 通常は、処分決定案を本人に示して、不服申立ての機会、弁明の機会を与える旨通知して、不服を書面で受け付けるなり聴聞なりを行って後、審査結果を明らかにして公表、ということであり、それは、理研の不正調査委員会でもとられた手続きでした。
 今回は、その辺はどういうことになっているのでしょう? 2013年の取消事例のことを説明していたわけですから、当然、同じ取消ということで、その不服申立て手続きは踏むと思うのですが・・・。質問した記者が確認の質問をしないので、違う話になってしまいましたが・・・。

 いずれにしても、これも初歩的な想定質問です。それにさっと回答できないというのはどう考えても杜撰です。
 とても、弁護士に相談して対応しているとは思えません。弁護士の感覚であれば、昨年の論文調査委員会の小林弁護士らような、極めて緻密な論理構成に立った処分内容になるはずです。
  ※ 今見たら、鎌田薫総長は、法学部、法科大学院教授で、弁護士でもあるんですね・・・。

  いずれにしても、学位授与は法律に基づく行為ですから、取消(=剥奪)は、取消訴訟の対象となるはずです。三木弁護士は、法的手段を示唆していたと記事にかいてありますので、そうなるのかもしれません。

 公正手続き上の視点で見れば、ホップ、ステップ、ジャンプで、ホップまでは大変良かったけれども、ステップでだいぶ崩れて、ジャンプでとんでもないところに着地してしまった・・・ということではないでしょうか?
 マスコミも含めて、昨年10月の猶予付き処分を前提に議論している方が多いようですが、出発点は、あくまで7月の調査報告書です。10月の猶予付き処分は、7月の報告書の事実認定を前提として、間違って草稿を出してしまったことを以て、「不正の方法」での学位取得としたものです。それは基本的注意義務違反と位置付けていました。しかし、本来、それは、想定されている「不正の方法」ではありません。不正の方法は、あくまで故意による捏造、改竄、盗用です。今回の会見でも、決して「不正」な論文とはいわず、「不適切な論文」と呼んでいました。
 本件は、手続き的瑕疵、錯誤とでもいうべきもので、双方が、これが本物だと認識は一致していたわけですから、それが提出されれば、瑕疵は治癒されるという性質のものではないかと思います。


 以上は、録画の38分時点までの話ですので、その後、上記を補足する質疑がなされたのかもしれません。もうすべて見ておられる方も多いと思いますので、ご教示いただければ幸いです。また、事実誤認があれば、併せてご教示ください。