理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

1 STAP細胞=ES細胞正体説の根拠の脆弱さ―統一見解がない「閣内不一致」


 「STAP細胞の正体は、ES細胞だった」ということが、既成事実化しつつあり、ほぼ定着した感がありますが(早稲田大もそれに引きずられているのでしょう)、しかし、それでは説明できない点が多々あることも厳然たる事実ですから、その点についての説明をせずに、無視してしまうのは科学的でない、と何度も書いてきました。
 ES細胞説を主張する研究者らについて不思議に感じる点は、2つあります。
 
第一点は、ES細胞説といってもバリエーションがあって、統一見解がなく、お互いにお互いの説を否定しあっている面があるのに、なぜ平気でいられるのか? という点。
 いわば、「ES細胞内閣」内で、閣内不統一の状況であり、本当の内閣であれば、閣内不統一は即退陣になる話です。不正調査は犯罪捜査と同じで、矛盾する点を全部潰さなければなりません。重要部分で矛盾が残ったままでは立件など到底できません。それぞれの者がてんでばらばらに説を述べて、お互いに整合を取ろうとしないのですから、これは科学なのか?と思いたくもなるというものです。
 
 第二点は、なぜ、ES細胞によって追試をして見せ、ライブイメージング画像等と同一現象が生じることを示そうとしないのか? という点。
 先日の大阪女児火災死亡事件の再審・釈放に際しても、自らが主張する現象について再現実験をやって裏付けをしたことが、決定打となりました。
STAP細胞がES細胞だったというのであれば、山ほどES細胞はあるわけですから、それで実際、STAP幹細胞、FI幹細胞、テラト―マ、キメラマウス等を作ってみて、電子顕微鏡画像の一連の観察経過、胎盤の様子を再現して見せれば、百聞は一見に如かず、笹井氏、丹羽氏、2月時点での若山氏のES細胞では説明できない旨の指摘をことごとく覆すことができます。あれはES細胞だと主張する研究者が、「STAP細胞が簡単だというならやって見せてみろ」と小保方氏には迫るのに、自分がES細胞でさっさと再現しようとしないのは不思議な限りです。
 
いずれも、STAP細胞の存在を主張する側が再現して見せることが順序だ、というところに逃げ込んでしまっています。しかし、研究不正調査というのは、研究犯罪捜査に近いものですし、桂調査委員会の場合には、桂委員長が、会見冒頭で述べた如く、
 
「最初の調査委員会の後、主に理研内部でいろいろな科学的調査が行われて、データが溜まってきました。・・・報告としては、主に科学的調査が主体だが、論文についても調査した、論文の製作過程についても調査した。」
 
 というように、論文調査だけではなく、科学的調査をメインとして行ったとしているのですから、そこでES細胞の混入だと断定するのであれば、ES細胞では説明できない点についても、ことごとく反証しなければならないはずです。
 検察が、犯罪を立件する場合には、細かいディテールまで事実を積み上げていきます。しばしば贈収賄事件の捜査について新聞で報じられますが、いつ、誰が、どこで、どのように金を渡したのか?ということを、警察は突き詰めて調べて行きます。どのレストランのどの席のどこに坐って授受が行われたのか?、金を詰めたのが紙袋なのか、カバンなのか? 誰が詰めて、誰が持って行って、どう言って渡したのか? 時間は何時何分なのか? アリバイは成立していないか? 等々、一連の事実がつながらないとアウトです。
  
以下、上記の第一点、第二点について、順次述べます。
 
1 ES細胞説に統一見解がなく、相互に否定しあっていることについて。
 
 いくつか説があると思いますが、大別すると次のようなものでしょうか。
 
(1) ES細胞そのもの説 
これの代表格は、桂調査委員会の結論でしょう。しかし、細胞の形状、大きさ、増殖能、発光の経過(時間が経つにつれて発光していく)などからして、ES細胞では説明できないというのが、笹井氏、丹羽氏の指摘です。
 以下、日本報道検証機構のサイトより。
しかし、桂委員長は、笹井氏、丹羽氏のES細胞では説明できない点の指摘を、調査対象外として、ことごとく無視しました。
 
ES細胞では生じないはずの胎盤の発光については、保存されているキメラマウスも胎盤の切片も検証せず、画像だけを見て、胎盤ではなく卵黄嚢の見間違いだとしました(しかし、それも「~という専門家いる」という頼りなさです。これでよく断定できるものです)。
若山氏は、胎盤が発光しているという前提で、キメラ度が高いES細胞で作れば胎盤が光っているように見えるかもしれないと、須田記者に語っていたそうですが、それっきりになっています。
 
桂委員長は、若山氏がSTAP細胞~STAP幹細胞の作製に成功した際のことを、「バラバラの単一細胞にしてみれば、ES細胞だということがわかったはずだ」と述べていましたが、単一細胞では受精卵に注入できないからこそ、塊にして注入していたわけですから、議論噛み合わない状況です。
そして、桂調査委員会は、「ES細胞混入」との立場をとりました。この桂調査委員会の説に疑問を呈した形になっているのが、ESの浮遊細胞説(胚葉体説)かと思います。
 
(2) ESの浮遊細胞説(胚葉体説)
 遠藤氏は、桂調査委員会の「ES細胞混入」説を否定して、「ES細胞すり替え」説を主張したかと思います。「シャーレを丸ごとすり替えて、TS細胞を加えるのが小保方氏のレシピだ」という趣旨だったと思います。混入では、シャーレにES細胞が張り付いてしまってすぐにわかるとのことです。
もともと、STAP細胞は浮遊細胞なのだから、ES細胞を胚葉体にして使ったのだろうということでしょう。
大隅氏も引用する次のサイトの説も、浮遊細胞説ですが、「小保方
ES細胞をSTAP細胞と偽って渡す時には、ES細胞(接着細胞)をそのまま渡すとはできず…」と述べているのは、形状、大きさ等からES細胞そのままではあり得ないという前提に立った話かと思います。
  
   なお、遠藤氏は、一研究者~」ブログのコメント欄で、次のように述べ、ES細胞混入」説も「胚葉体】説も否定しています(すり替え説に立つ)。
 
 ◎ES細胞混入ではなく「すりかえ」「混入」では増殖速度と見た目が明らかに違う。
 「STAP細胞を作成するのに必要な7日程度の時間の間に混入が起きたとすると,ES細胞が増殖しやすい培地で培養しているため,時期を正確に知らないと細胞が増殖してしまい混入が容易に分かってしまいます。

   混入ではなくすり替えでシャーレごと交換している場合増殖の制御は不可能ではありませんので増殖するからというのは間違いでした。
しかし
ES細胞は通常シャーレに接着し浮遊細胞塊とはなりませんのでやはり見た目で区別がつきます。何らかの誤操作による「混入」ではなく,「すり替え」で説明する方が理解しやすいということです。」

 ◎胚様体では,遺伝子の転写パターンが異なる。
   (ES細胞をハンギングドロップという手法で培養すると立体コロニーになりそれをSTAP細胞塊としてわたせばばれない。」との指摘に対して)

  「その場合ES細胞というより胚様体となり,遺伝子の転写パターンが異なります。
ChIP-seqSTAPデータはESと極めて類似しており,著者らも取り違えるほどでしたので胚様体ではなかったと思います。

しかし
RNA-seq TruSeq試薬使用)で用いられたSTAP細胞は胚様体の遺伝子発現パターンに類似していました。より具体的に言うと胚様体形成開始後1週間程度の性質を示しています。」

      「一研究者・教育者の意見」ブログの20141228日付記事コメント欄「9」「19」

  また、若山氏は、日経サイエンスのインタビュー(後述)で、
 
「問:もしSTAP細胞にES細胞が混入していたとしたら説明がつくのでは?
答:ES細胞が浮遊培養によってSTAP細胞のような塊を形成するのであれば説明はつくかもしれないが,確認しない限りわからない。」
 
  と答えており、ESの浮遊細胞が塊を成すのかどうかわからないと留保しています。ES細胞の研究を長年やっていて、それがすぐに判断できないということがあるのでしょうか? いずれにしても、若山氏も、桂調査委のES細胞混入説に対しては、疑問を呈している形です。
 
遠藤氏の主張のように、TS細胞を混ぜるということは、胎盤に寄与することを説明するためでしょうし、遺伝子解析の結果としてESTS91との特徴があったことからの推論かと思います。
 しかし、TS細胞を混ぜても分離してしまい、塊にならないことは、丹羽氏が明確に述べた通りです。そうすると、ES細胞とTS細胞を混合した細胞塊を注入という説は成り立ちません。
 
 (3) 桑実胚説
桑実胚説は、形状が似ていることや、胎盤が光ることに着目した説かと思います。しかし、これは、若山氏の日経サイエンスのインタビューでの証言によって、明確に否定されています。
 
STAP細胞はどんな細胞だったか
細胞が塊を作っていて,全体のサイズも細胞のサイズも桑実胚に似ていた。増殖して塊になったのではなく,バラバラだったものが集まってできたもの。そのままでは弱く,桑実胚と違ってすぐに死んでしまう。

STAP細胞は実は桑実胚だったのではないか。それなら胎盤も光るのでは
桑実胚ならば光る。だが小保方さんが(マウスから)桑実胚を取り出すことはなかったと思う。それに桑実胚ではSTAP細胞からSTAP幹細胞を作った時の変化を説明できない。

─詳しく教えて欲しい
STAP細胞からSTAP幹細胞への樹立は35日でできる。一方,(桑実胚よりも発生が進んだ)胚盤胞からES細胞を作るのでさえ 2週間必要だ。桑実胚の混入では(これほど短期間でSTAP幹細胞になることが)説明できない。

STAP細胞からSTAP幹細胞に変わるのはそんなに速いのか
STAP幹細胞は増殖の速さからみて,1日目で増殖を始めている。樹立成績も,胚盤胞からES細胞を作るのは50%程度だが,STAP細胞からSTAP幹細胞は80100%と非常に高い。実験当時もこのことは頭にあったが,STAP細胞というのは本当にすごい細胞だと思っていた。

STAP幹細胞はどういう細胞か
外見も,増えるところもES細胞によく似ている。キメラマウス作りもSTAP細胞は独自の工夫が必要だが,STAP幹細胞ならES細胞と同じ通常の手順でできる。胎児にしかならず,胎盤にはならない点もES細胞と同じだ。

─もしSTAP細胞にES細胞が混入していたとしたら説明がつくのでは
ES細胞が浮遊培養によってSTAP細胞のような塊を形成するのであれば説明はつくかもしれないが,確認しない限りわからない。

STAP細胞からSTAP幹細胞ができなかったことはあるか。マウスの種類によってはES細胞がまだできていない。そうしたマウスからSTAP幹細胞を作ったことはあるか
STAP細胞からSTAP幹細胞を作ることに失敗した例はある。調査に関わることなので,詳しくはお答えできない。

─若山先生が持っていたSTAP幹細胞はマウスの系統が違っていたと聞く
129という系統のマウスから作ったSTAP細胞から樹立したSTAP幹細胞だったはずだが,(調べてみたら)系統が違っていた。ただし第三者機関に出すために増殖させ,ついでに自分でできる簡単な調査をしただけで,一部しか調べていない。論文に載ったSTAP幹細胞は,全部系統は合っていた。

(出所)日経サイエンス20146月号(P59-60
 
 
 こうやって見てくると、「STAP細胞の正体はES細胞だ」という話を、より具体的にブレークダウンして説明するとすると、一体どういうことなのか?? 統一見解がどこにもないじゃないか・・・ということになってきます。質問風にまとめると、次のような点です。
 ES細胞では説明できない点もまとめて、書いておきます。
 
問 正体はES細胞と一口いうが、接着細胞なのか、浮遊細胞なのか?
問 浮遊細胞なら塊になるのか?
問 接着細胞なら、形状、大きさも違うし、どう説明するのか?
 
問 胎盤は、光っているのか、いないのか? 
問 あの光っているように見えるのは、胎盤なのか、卵黄嚢なのか?
問 ES細胞でも胎盤が光ることがあるのか、ないのか? 
 
問 TS細胞は混合されているのか、いないのか?
問 TS細胞が混合されているなら、ES細胞と混ぜても塊にならないとの指摘に対してどう説明するのか?
 
問 ES細胞は混入したのか、すり替えられたのか?
問 ES細胞が混入したとすれば、シャーレに張りついてすぐわかるとの指摘に対してどう説明するのか?
 
問 自動顕微鏡のライブイメージング画像で発光しているのは、死細胞の自家蛍光か、ES細胞の発光か?
問 死細胞の自家蛍光ではないことを、PI色素による確認やFACSでの確認をしていたとする小保方氏側がの主張をどう見るのか?


問 ライブセルイメージングの画像に操作や捏造があると見るのか否か?
問 「ライブセルイメージングの画像においては、GFPCD45の二つのマーカーによって細胞の様子を経時的に観察している。最初はCD45陽性、GFP陰性であった細胞が、酸刺激によって徐々にCD45陰性、GFP陽性に変化していくところをとらえている。そこにマクロファージがいれば、当然最初からCD45陽性のはずだ。その後その細胞が死細胞を貪食しているところがみられたのならば、その時点でもマクロファージ(すなわち分化した白血球)のままのはずですから、CD45陽性であるはずである。」(ワトソン氏)の指摘についてどう説明するのか?
問 死細胞の自家蛍光なら、「STAP細胞=ES細胞」説とはどういう関係になるのか?
 
問 STAP細胞がES細胞だったのなら、STAP細胞から作られたSTAP幹細胞は何なのか? 「STAP細胞からSTAP幹細胞への樹立は35日でできる」との若山氏の証言とはどういう関係になるのか?
 
問 ES細胞であれば、次の指摘に対して、どう説明するのか?
(1)形状、大きさだけでなく、増殖能(STAP細胞はすぐに死んでしまう)、性質(核も小さく、細胞質もほとんどない)の点で、ESとは異なる。
(2)ライブイメージング画像で、ES細胞であればすぐに発光を始めるはずだが、実際には、時間が経過してから発光を始めている。
(3)丹羽氏の検証実験で「FI幹細胞作製実験時に出現した細胞は、ES細胞でもTS細胞でもなかった」「ES細胞をFI培地に置くと、4~5代の継代後で全壊してしまう。」
(4)遺伝子発現のパターンの詳細解析が、STAP細胞はES細胞や他の幹細胞とは一致しないパターンを示している。
(5)「STAP幹細胞作成時

【補足】 ES細胞説と死細胞の自家蛍光説との関係も混沌としています。ある緑色発光を捉えて、これはES細胞の発光ですか?それとも死細胞の自家蛍光ですか?と問われたときに、明確に説明できるのでしょうか?
 その点からしても、STAP細胞否定説には、統一見解がないと感じます。