理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

同じ追試でも色々と含みのあった丹羽氏らの検証実験

 
 DORAさんのブログを拝見して、コメント欄も含めて教えていただくことが多かったです。
 
一つ目は、ネイチャー誌のSTAP否定2論文の提出(Received)は、ずっと前だったこと。


「『Failure~』のReceived20141110日、『STAP cells are~』のReceived2015123日だから、別に新しいネタじゃない。ただ、掲載が今になったというだけの話で。」
 
 投稿はそんな前だったんですね。ということは、ジョン・デイリー教授らによる『Failure~』論文は、桂調査委員会報告書も、丹羽氏らによる検証実験、小保方氏による再現実験の結果を踏まえたものではなかったということになります。論文に日付を見ればわかることなのでしょうが、発表の時系列からして、漠然と、丹羽氏の検証実験等の結果を踏まえて、更にいろいろとトライしてみたけれどダメだった、というように受け止められていると思いますので、その点で、なんともミスリードな感があります。
 
丹羽氏の検証実験等のほうでは、まだいろいろと含みがある材料があったように思います。
「ログミー」の会見録から抜粋すると、
 
相澤氏発言
「相澤:再現することが出来なかった、このなかに可能性を見出すか見出さないかは、それぞれの研究者の判断に委ねるところで。
科学の世界に委ねる以外、私のほうから可能性がどれくらいであるとか、そのような事をお答えすることは出来ません。
検証実験を打ち切るというのは、全てのことを個々の条件からもう一度研究としてやるわけにはいかないのです。個々の検討としてやるべきこととは、たとえば酸の処理のPHの条件をちょっと変えてみるとか、いろいろしなければならないと思うんですけれども、そういう事は検証実験の範疇を超えている、という判断です。
 
●丹羽氏発言
「記者:論文のデータだけではなくて実際に目にされ、物を見たわけですよね。丹羽さんや笹井さんは。その事実っていうのはどう説明できるんですか?
丹羽:だから先ほど相澤先生もご説明されたように、緑色蛍光は出てきたんです。で、あの論文の時点では、そうやって出た蛍光は、その後の定量PCRデータにおいて、内在性タンパクの発現を反映したものであり、さらにはそれでキメラマウスが作られたと。こういう事実があったから、最初の、蛍光を発したものはリプログラミング現象である、と解釈したわけですね。
でも今回、実際に検証実験として行ってみると、なるほど、緑色蛍光はまあ、自家蛍光であるか否かはさておき、出ると。出るんだけれども、そこから先が道が無くなっちゃったわけですよ。というか我々の手では、そこから先へつなげることは出来なかった。
だとすると、見たものはなんだったんですかと聞かれれば、見たものは見たもので、ただその解釈が変わった、というふうに理解しています。
記者:ただこれまでの説明だと、緑色蛍光についても確かにそのGFPに特異的なものであるとか、当然可能性が考えられるので、ES細胞になることは注意を持って確認したと。
あるいは、胎児と胎盤が緑色に光る、あの物が残っていますよね。で、あれにES細胞、TS細胞の混入が無いとすると、いったいあれはどうやって作ったんだ、という話になると思います。
つまり今まで得られたデータ、残っているものを、STAPが存在しない、という前提で全て説明できるんですか? それとも出来ないんですか?
丹羽:まずその残っているもんがなんだったのか、というのは我々の検証実験ではなく調査委員会の調査対象ですので、その結果を待って判断することだと思います。
 
【参考】
理研チームは、論文で使われた脾臓の細胞のほかにも、肝臓や心臓の細胞も用いて「STAP現象」があるかどうか調べた。その結果、論文で書かれた手法では、光った細胞はごく少数あったが、どの細胞も万能性は確認できなかった。
 一方、肝臓の細胞に、論文とは別の酸を使って刺激すると、光る細胞の塊が効率よくできた。よく調べたところ、なかには万能性を示す目安となる遺伝子が働いているものが見つかった。しかし、遺伝子の働き方はES細胞の10分の1に過ぎなかった。これらを用いて、第3段階の「特殊なマウス」の作製を試みたが、1匹もできなかった。」(読売新聞20141220日付けより)
 
●丹羽氏発言(注:ログミーではなく、会見録から直接起こし)
「古田:FI幹細胞樹立の実験の結果について聞きたいのだが、その時にできた何らかの細胞塊(Oct4GFP発現が確認できないもの)は、FI幹細胞を作るときの条件で培養したときの細胞の形態はどういうものだったか? 丹羽先生は、ES細胞、TS細胞の形態に大変詳しいと思うが、それと比較してどうだったか?
丹羽:どう表現したらいいか・・・。ESでもTSでもない細胞だった。しかし、結局最後まで増殖できなかったので、それをFI幹細胞とはいえないので、何か増えたのか正直わからない。
 
●相澤氏発言
「記者:細胞塊ができるのは、結局なんだったのかっていうのは……
相澤:……えーと、それは検証実験の範囲を超えておりまして、個々の研究として明らかにされるならそうなることであって、そのことまで検証実験で判断するのは、その範疇を超えていると思います。」
 
●清成氏発言(検証実験でのキメラ作製担当)発言
「相澤:若山先生にはキメラ作成の検証の協力をお願いしました。しかしながら若山先生は大学の業務が多忙で、残念ながら検証実験に協力する時間的余裕は無いということでございました。
そういう意味では若山先生だけのトリックがあるという可能性を全く否定することは出来ないんですけれども、この検証を実際に担当しました清成研究員は、このキメラ作成の胚操作の技術においては極めて高い技術を有していると認識しております。そのもとでいろいろ工夫されて行った実験は、それなりの意味を持つものだと認識しています。
もちろんそれでは出来ない、という可能性が無いとはいえません。が、それは極めて特殊なことで、彼の、清成研究員をもってしても出来なかったことについては、そういうふうに判定するのが、少なくとも一般的な科学のレベルは充分に満たしていると考えています。
記者:若山先生の協力を得られなかったというのは、やってもらうとかそういうこと以外にも、聞き取りでいろいろやり方を把握するということも、思うようになかなか出来なかった、ということでしょうか?
相澤:聞き取りで得られる情報については、すでに知っておりました。もし残っているとするならば、実際にデモンストレーションをしていただいて、彼自身に注入をやっていただいてどうだったか、残されたことだと思っていますが、それはお忙しい身で叶わなかったです。
記者:今のことについて清成先生は、やりにくかった部分、ここはこうなのかもしれないと迷った部分、というのはなかったですか?
清成:私自身が、そういう細胞塊を切り刻んで入れる、ということ自体は初めてでしたので、当初その切り方等を含めて迷うことはありましたけれども、ある程度やっていくうちに、その問題は解消されました。
 
 
 これらの発言を見ると、検証実験には、一定の限界、制約があったことがわかります。
 
・ペーハーの条件を少しずつ変えてみる等の実験はできなかったこと、
・緑色発光するものはあったが、キメラマウスで万能性を確認できなかったこと、
 
等が述べられていますが、前者の点は、再現実験が成功しなかった小保方氏がコメントした
 
「予想をはるかに超えた制約の中での作業となり、細かな条件を検討できなかった事などが悔やまれますが・・・、」
 
 ということとも共通する点でしょう。
後者のキメラマウスでの万能性尾確認の部分は、若山氏の協力は得られなかったため、清成氏が務めています。相澤氏も清成氏は優秀であり、若山氏の代わりになり得るという趣旨のことを述べてはいますが、検証実験の責任者としてはそう言わざるを得ないでしょう。もちろん、優秀な研究者なのは間違いないでしょうが、「細胞塊を切り刻んで入れる、ということ自体は初めてでした」というように、若山氏のように昔から習熟していたわけではありませんし、そもそも、ハーバード大理研との共同研究をオファーしたのは、若山氏の細胞注入技術を見込んでのことだったわけですので、清成氏の担当部分がネックとなって、万能性確認ができなかったという面もないわけではないような気がします(それ以前に、万能性遺伝子の働きがずっと弱かったということではありますが)。
 実際、この切り刻んでの注入法については、若山氏が、「僕だからできた」と朝日新聞のインタビューで語っています。
 
「キメラマウスを作るには、マウスの胚に候補の細胞を注入して育てる。ES細胞などでは、細胞の塊を酵素処理し、ばらばらにして使うのが普通だが、その手法ではSTAP細胞はさっぱり胎児にならない。失敗続きだった。
共同研究を始めて1年半たったころ、手法を変えた。細胞の大きな塊を単細胞にばらさず、2030個程度の小さな塊にして注入する方法だ。刃渡り1ミリの極小メスを顕微鏡で見ながら操作して切り分ける。細胞工学初期の60年代の技術だが、切り分けるのも注入も難しい。僕はその技を身につけていたからできた。
すると、いきなり成功。体に取り込まれたSTAP細胞が緑色に光るマウスの胎児を見ても、すぐには信じられなかった。「先祖返り」の技術が決め手だったと思う。」
朝日新聞デジタル201426日付け)。
 
清成氏は、「ある程度やっていくうちに、その問題は解消されました。」と述べてはいますが、若山氏にして、長年の経験に上に身に付けたノウハウを、初めてトライして3~4カ月で若山氏並みのレベルに達するかといえば、そういうわけにはいかないと思われます。
※なお、そうやってSTAP様細胞塊を切り刻んで注入するとき、その細胞は、ES細胞と同じだったのでしょうか? おそらく違ったのでしょう。桂委員長は、細胞の大きさも無視して、「若山氏が成功したときに、塊を単一細胞にすれば、ES細胞だったことがわかっただろう」という趣旨のことを会見で述べていますが、大きさが全く違うのに、「バラせばES細胞が混入していたことがわかっただろう」などとは、ちょっと科学的とは思えません。
 
このように、同じ時期に行われた同じような追試的実験でも、丹羽氏らによる検証実験は、一定の限界を自認しつつ、STAP様細胞等、含みのある内容も含まれていたと感じますが、ジョン・デイリー教授らによる『Failure~』論文での実験では、何かそういう要素はあったのでしょうか?
新聞の簡単な報道でしかわかりませんが、
 
ハーバード大などの報告では、論文著者の小保方晴子氏や共著者のバカンティ教授が主張する手法に沿って、マウスの脾臓や肺の細胞に、酸や物理的圧力などのストレスをかけ、どのように変化するかを観察した。
 細胞は、様々な組織に分化できる万能性を持つような変化があった場合、緑色に光るように遺伝子操作した。だが光る細胞はあったものの、ほとんどは死ぬ間際に光る「自家蛍光」という現象によるものだった。死なずに光っているわずかな細胞を調べても、万能性を証明できるような結果は得られなかった。日経新聞 2015/9/24 2:00)
 
 ざっくり捉えると、丹羽氏らの検証実験の経過とパターンは似ているようですが、「含み」という点では、だいぶ異なるような気がします。
 丹羽氏らの場合は、STAP細胞があるはずだという含みの下に、共著者である丹羽氏が中心となって行い、論文投稿の際に自らが観察した経過との比較を念頭におきつつ実験がなされたのに対して、デイリー教授他のチームの場合には、単に「STAP細胞はないだろう(あってたまるか?)」「死細胞の自家蛍光だろう」という含みの下に行ったことによる差異によるものなのかもしれません。


●話は飛びますが、ネイチャー誌がこれを掲載論文としている以上、1月24日の提出から今回のアクセプトまで、査読でいろいろ指摘等していたということになりますが、前回記事で述べたように、キメラマウスが残存試料として検証対象にできたのであれば、
  「その胎盤はどうだったのか? 解析して補強せよ」


 という指摘はなされなかったのでしょうか? それとも、その点は、今回の理研論文でなされているのでしょうか?(下記記事の第二の理研への疑問部分)
 桂調査委員会は、そこは(理研に帰属しないために)キメラマウスでは確認できなかったとして、論文画像の観察だけで卵黄嚢である可能性が高いとしていましたがもし、残存キメラマウスが遺伝子解析ができたのであれば、胎盤の解析もできたはずです。その指摘がなされていなかったとすると、それもまた極めて違和感のある査読だと感じます。