理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

理研の「特定国立研究開発法人」指定の件はどうなったのか?―すべてはそのための早期決着ではなかったのか?

 今回の記事は、理研の「特定国立研究開発法人」指定の件はどうなったのか? という話です。
 
STAP問題に関して、当初、理研の方針が大きく迷走した大きな要因は、「特定国立研究開発法人」の指定問題でした。
理研が迷走したというよりも、文科省の思惑が先行して、それに理研が振り回されたというのが実態でしょう。
論文の問題発覚後、下村文科相が論文の撤回を勧めたり、文科省ガイドラインやそれに基づく不正調査規程とは異なって、ごく短期間での不正調査とし、試料調査や再現実験を伴わないような「不正調査」として、早期に決着させようとしたのも、すべては、この「特定国立研究開発法人」の指定とそのための法案提出・成立のためでした。指定予定だったのは、理研だけでなく、産総研もありましたから、一人、理研文科省だけの問題ではありませんでしたし、なにより、野依理事長の悲願でもありました。それらの事情が異例の短期間での決着を急がせた最大の要因だったとみて間違いはないでしょう。
その後、この法人指定問題は先送りとなり、丹羽氏らによる検証実験と小保方氏による再現実験、第二次調査委(桂調査委)での調査が進みました。小保方氏による再現実験は、笹井氏の自死という悲劇がありましたが、当初予定の11月末までとの予定は変更されず、検証実験も当初、今年3月までとされていましたが、それは実験の不調もあり、12月で打ち切りとなりました。それはまだ仕方がないのでしょうが、桂調査委は、これらの再現実験、検証実験の結果を踏まえないで、検証実験等の結果報告のわずか1週間後に「調査結果」を発表し、それまでも笹井氏らの記者会見での指摘や、丹羽氏らによる検証実験結果等との齟齬について、「彼らが何を言っているのかはわからないが、それらは調査の対象外だ」と述べて、何らの説明もしないまま、「ES細胞混入でほぼ間違いない」との結論を出し、打ち切ってしまいました。ホルマリン漬けのキメラマウスや、胎盤の切片などの誰もが重要視していた残存試料の検証は行われていないことを明示しないという不自然さでした。検証実験と再現実験の結果報告が1219日、桂調査委発表が1226日ですから、やはり、その急ぎぶりは極めて不自然でした。
桂調査委が、期待されていたような
 
・笹井氏、丹羽氏(+かつての若山氏)によるES細胞ではあり得ない旨の指摘に関する説明
・検証実験、再現実験の結果報告との関係での説明
 ・残存試料の分析に関する説明(残存試料を分析しなかったことも含めて)
 ・大々的に発表されSTAP細胞否定の決定的印象を与えた若山氏や遠藤氏による分析との関係(昨年5月に、「遠藤氏の分析結果を以てES細胞とするのには無理がある」とした有識者の報告との関係も含めて)。
 
等の諸論点は、ことごとくスル―してしまっていますが、これらも含めて調査分析をしていたならば、残存試料の帰属先であるハーバード大との調整の必要性も出てきますし、とても昨年度内には終わらず、結論としてもES細胞混入との断定は難しくなり、「真相不明」とせざるを得なかったと思われます。
 
 しかし、そのような結論では世間を納得させられず、「特定国立研究開発法人」指定などは遠のいてしまいますから、法案提出のスケジュールから逆算して、昨年12月末までに「真相を解明した」という形を取らなければならなかったのでしょう。「処分」や野依理事長交代まで含めて、年度内にすべて終わらせることが必要だったのでしょう。
 また、ES細胞混入は故意によるものであることを強く示唆しながらも、刑事告訴は見送りとしましたが、もし自らが告訴していたら、更に問題が継続する惧れがあったことも勘案されたと思われます。
 
 結局、理研当局の目論み通り、桂調査委の報告書発表と、関係者の処分により世間は納得し、その後、理研のモニタリング委員会も、改革委提言等に基づく「改革」は着実に進んでいるとの報告を出し、すべては一件落着、いよいよ「特定国立研究開発法人」指定に向けた作業が進むのかと思われました。
 実際、山口科学技術相は、次のように述べ、今国会に法案を提出したい旨を述べています。
  
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理研の特定法人化、今国会の法案提出めざす 科技相
  日経新聞 2015/3/31 10:40 
 
 山口俊一・科学技術相は31日、閣議後の記者会見で、世界的な研究成果を目指す「特定国立研究開発法人(仮称)」に理化学研究所を指定する新法について「準備が整い次第、国対(国会対策委員会)と相談して今国会に(法案を)提出したい」と述べた。
  理研はSTAP細胞を巡る研究不正問題で改革に取り組んでおり、4月から新理事長を迎えて新体制が動き出す。山口科技相は「(理研改革には)おおむね区切りがついた」とし、与党との調整や世論の動向をみながら「粛々と一歩一歩進める。文部科学相とも相談したい」と話した。
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 さらに、424日の下村文科相の記者会見でも、大臣は次のように述べています。
 
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記者)
 理化学研究所について伺います。
 今週開催された自民党の部会で、特定研究開発法人化に必要な法律を、政府が今国会に提出することを求める意見が多く出されました。このことの受け止め、理研を所管する大臣としての受け止めと法案提出に向けた検討状況をお話しください。
 
大臣)
 今日、自民党の科学技術・イノベーション戦略調査会の渡海会長をはじめ、代表の方々が、私のところに来られる予定であります。その中で、特定国立研究開発法人の法案について、早期に国会に提出すべきであるということが昨日決まり、政府にその働きかけをしていきたいという意見が出されて、今日、私のところに来られるということでございますので、よくお聞きして検討したいと思います。
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 しかしその後は、ぱったりと話題にならなくなり、今に至るも法案提出の動きは見られないように思います。自民党の部会までが、早期提出を要請しているのであれば、環境は整っているようにも思われるのですが、国会での法案成立率が低いというようなことが新聞にのっていますので、科学相が述べているような国会対策的観点からの先延ばしなのかもしれません。

 少々紛らわしいのですが、従来の「独立行政法人」の名称が、その性格によっていくつかに分類され、研究開発関係の独法は、「国立研究開発法人」という名称に、この4月からなっています。理研も「国立研究開発法人 理化学研究所」と名称変更されています。
 一時は、この独立行政法人の分類をする独法関係の法令改正によって、「特定国立研究開発法人」も指定することができる仕組みができたのだろうか?とも思ったのですが、そうではなく、やはり別途の特別法の制定が必要なようです。
 
 「今国会」の本来の会期末は過ぎて、今は大幅延長されています。ですから、今国会中に提出されるのかもしれませんが、それにしても、あれだけ決着を急いだ割には、その後の動 きが遅すぎるようにも感じます。
 指定自体は、研究開発促進のためには悪くない話だと思いますので、早く法案提出と成立を急いだ方がいいと思うのですが、その辺は、国会対策など、文科省や科学技術相だけの思惑では決め切れない要素があるのかもしれません。

 しかし、そうなってくると、逆に波乱要因が今後出てきてしまい、かえって逆風になる恐れもなきにしもあらずです。前々から書いているように、
 
① 石川氏による刑事告発による県警の捜査の動向
② ハーバード大側の不正調査の動き
③ STAP特許出願の審議の動き
④ バカンティ教授グループ(小保方氏を含む?)の動き(8月末で1年の研究休暇が終了)
 
県警の捜査で、もし告発者の目論みとは違って、小保方氏以外の誰かが関わっていたということになると、それは大きな注目を集めてしまいます。
それ以外のハーバード等の動きで、理研の「ES細胞混入」との結論とは相容れないような話が出てくると、それはもう蜂の巣をつついたようなことになってしまって、収拾不可能になってしまい、理研の信頼性は失墜してしまいます。特定国立研究開発法人の指定などは、はるかに遠のいてしまいます。
 
丹羽氏らによる検証実験や小保方氏による再現実験結果については、詳細な分析結果が3月までに公表される予定だったはずですが、いまだに公表されていません。丹羽氏は、熊本大に転出してしまいましたから、詳細な検証実験等の結果は既にまとまっていることは間違いないでしょう。それを未だに公表しないということは、特定国立研究開発法人法案の審議に影響を与えるようなことは防ぎたいという思惑によるものだろうと想像されます。
また、相澤氏が、検証実験結果公表の記者会見の最後に、補足として、
 
「小保方研究員にカメラや立会人を置いて検証実験をするというのは科学のやり方ではない。犯罪者扱いのようにやることは科学としてあってはならないことだ。責任者として深くおわびを申し上げるとともに、責任を感じております」
 
と述べ、自身が別途取材で答える用意があるとの趣旨の発言もしていました。しかしその後、相澤氏が何か取材を受けて答えたという形跡はなく、竹市元センター長も、処分を受け容れて以降は沈黙を保っています。それは、ひたすら特定国立研究開発法人法の成立、指定を待つという理研当局の思惑により、説得を受けているからでしょう。
それが、県警の動き、米国側の動きなどによって、何かきっかけが生じると、それを境に、一斉に発言もなされ(というか取材を受け)、検証実験結果等の詳細も公表され、一連のこれまでの経過の再検証が始まることは十分想像できるところです。
ともかく、桂調査委が結論したような「ES細胞混入」では説明できないミステリーが多々あることは事実ですから、その再検証がなされる契機がどこかで生じてくれるのを期待したいところです。
 
 
  なお、職務発明の特許を取る権利の帰属の原則を、社員から企業に移す特許法改正案が、73日成立したと報じられています。
 
「◎改正特許法が成立 社員の発明、企業のものに   
2015/7/3 13:36 日経新聞
 社員が職務としてなし遂げた発明について、特許を取る権利を「社員のもの」から「企業のもの」に変えられる改正特許法が3日の参院本会議で与野党の賛成多数で可決、成立した。企業は「発明の対価」をめぐる訴訟リスクを減らせる。一方、社員の発明への意欲をそがないよう企業は特許庁の指針に沿って社員に対価を支払う。
 改正法は、特許を取得する権利が企業に帰属するのは、あらかじめ権利の取得や対価の支払いを社内規定などで決めた場合に限った。発明に携わった社員は「相当の金銭、その他の経済上の利益を受ける権利」を持つと明記した。きちんとした規則がない会社だと、従来どおり従業員に特許を取る権利がある。」