理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

砂川ひき逃げ事件から考える理研第一次不正調査委の捏造「故意」認定の牽強付会さ

 昨年の4月になりますが、このブログ記事で、小保方氏の論文に関して、第一次の不正調査を行った石井調査委委員会の報告に対する小保方氏側の不服申立て却下決定について、その「改竄」「捏造」認定の誤りについて縷々書きました。
 
2 理研調査委の不服申立却下決定の根本的間違い(2)-「改竄」定義の本質を踏まえない拡張解釈
3 理研調査委の不服申立却下決定の根本的間違い(3)-「改竄」の「故意」の解釈の誤り
4 理研調査委の不服申立却下決定の根本的間違い(4)-「捏造」認定にするための無理な定義づけ
5 理研調査委の不服申立却下決定の根本的間違い(5)-「実験条件」を箇所によって異なる範囲で使い分け、「捏造」の「故意」認定につなげる不合理さ
 
 これらの記事で述べたことを、簡単に要約すると、「捏造」認定については、「故意」が必要なところ、

「故意」の解釈を、本来の研究不正としてペナルティを課すべき「偽装目的」という悪質性に限定せず、「研究論文等の信頼性を担保するという規程制定の目的」との(文科省ガイドライン仙台地裁等の司法判断、他の団体の規程趣旨等とも異なる)拡張解釈に立ち、「未必の故意」論により、本来「重大な過失」に位置付けられるべき行為(偽装意図はないが科学的に不適切な行為)まで含めて、「故意」とすることにより、小保方氏の「捏造」を認定してしまっている。

②   同じパソコンの中で、複数実験の類似データを十分整理せずに、別の実験の画像を取り違えたことは、データ混入の危険性を認識しながら、これを無視したものである、という論法で(つまり「未必の故意」論で)、画像の取り違えを「故意」と認定し、「捏造」と断じている。
 
 不服申立てを却下決定した審査書には、次のように書かれています。
 
「仮に、本件画像と画像 B が瓜二つであったとしても、前述のとおり、異なる実験で得られた本件画像データ等について、その由来を確認することなく使用することとし、画像取り替えに際してもその由来を確認していなかったこと、本件画像データを含むアセンブリされた画像が学位論文に由来するものである可能性があることを認識しながら、投稿していることに変わりはない。なお、画像 Bは、アセンブリされたものではない。いずれにしても、データの混入の危険性を無視してデータを使用したものであると評価せざるを得ない。
 
 私は、これは、「脇見運転、信号無視、飲酒運転等により車を運転して、人を轢いて殺してしまった場合、業務上過失致死や危険運転罪ではなく、殺人罪に問うようなものだ」という比喩を用いて、その牽強付会さ、不合理さを述べました。
 
 これに関連して、最近、社会面を賑わしたひき逃げ事件についての警察・検察の判断が、上記の却下決定の不合理さを考える上でいい事例になっていると思いますので、ご紹介しておきます。事件自体は、本当に悲惨なものでした。
 
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●砂川ひき逃げ、殺人容疑の立件は見送り RVの男を危険運転致死容疑で再逮捕へ
北海道新聞 628()1840分配信


【砂川】砂川市内の国道交差点で6日、乗用車と歌志内市の会社員永桶(ながおけ)弘一さん(44)の軽ワゴン車の衝突に絡み家族4人が死亡した事故で、砂川署が道交法違反(ひき逃げ)容疑で逮捕した空知管内上砂川町上砂川、解体工古味(こみ)竜一容疑者(26)を、自動車運転処罰法違反(危険運転致死)の疑いで再逮捕する方針を固めたことが28日、捜査関係者への取材で分かった。29日にも再逮捕する。
 捜査関係者によると、古味容疑者は6日午後1035分ごろ、砂川市西122の国道交差点でRVを運転中、赤信号を無視して法定速度を大幅に上回る速度で交差点に進入し、別の衝突事故で軽ワゴン車から路上に放り出された永桶さんの長男昇太さん(16)をひくなどして死亡させた疑いが持たれている。
 同署などは、防犯カメラや信号機の記録の解析などから、古味容疑者のRVが当時、赤信号を無視した上、時速100キロを超えるスピードで交差点に進入していたと断定。量刑の重い危険運転致死罪を適用できると判断したとみられる。
 古味容疑者は昇太さんを約15キロ引きずり、路上に放置して走り去ったとして、ひき逃げ容疑で逮捕されていた。RVが引きずった痕跡は複数箇所で蛇行しており、同署は古味容疑者が、昇太さんが車底部にはさまっていることを知りながら、振り落とそうとしたとみて、殺人容疑での立件も視野に捜査していた。しかし古味容疑者が「人をひいた認識はない」と一貫して供述していることなどから、立件を見送った。
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「赤信号を無視した上、時速100キロを超えるスピードで交差点に進入していた」のであれば、「人を轢いても構わない」という「未必の故意」はあったとも考えられますが、そういう認定はしていません。
 また蛇行して振り落とそうとしていたことについて、殺人容疑の立件を検討したものの、「人を轢いた認識はない」との供述により、立件を見送っています。
 客観的に見て、これだけ悪質性の高い、人の命を何とも思わないような事件であっても、未必の故意論が適用されることもなく、本人が人を轢いた認識がないと供述すれば、故意(殺人)が否定されてしまうわけです。
 
 これと比較すれば、小保方氏の画像取り違えに対する「捏造」認定(=研究者に対する死刑判決)の、「故意」認定が、如何に牽強付会で無理筋のものかが、想像できるでしょう。
石井氏が辞任した後で委員長となったヤメ検の弁護士が組み立てて筋は、小保方氏が複数の実験データをひとつのパソコンで管理していて間違いやすくなっていたことを以て、間違える危険性を認識していた⇒別の実験の画像が配置されてもいいとも思っていた⇒未必の故意である、というとんでもなく飛躍した論法です。これは、赤信号でも100キロ以上で突っ込んだことを以て、殺人の未必の故意があると認定するよりも、はるかに無理筋の論法です。


そして、別の実験条件の画像であることを調査委のヒアリングで申告しなかったとして批判していますが、大学時代の研究時の画像だということを認識して、それを誤りだとして、外部から指摘される前に正規の実験で得られた試料の画像に差し替えたわけであり、その時に学生時代の研究のものとは直接は言わなかったとしても、別の実験の画像であり間違いだったことは説明したわけですから、「別の実験条件の画像に間違えてもいいと思っていたに違いない」という論法は破綻しています。


何より小保方氏は、一貫して画像の挿入ミス、取り違えを主張していますし、それを裏付ける行動をしています。上記ひき逃げ事件で、「人をひいた認識」を一貫して否定する供述をして「故意」が否定されている如く、「画像を取り違えてもいいと認識していた」と小保方氏が言っているわけでもない中で、故意認定をしてしまうなど、あり得ない論法です。


だいたいここだけ偽装する動機もありません。取り違えたテラト―マ画像にしても、70数点あるうちのわずか1点です。ES細胞に偽装するならば、あるいは他の実験のものをこの実験のものだと偽装するならば、他の画像についても何らかの偽装をすると考えられますが、そういうことにはなっていません。
 
「改竄」の故意認定も、実際の真正実験が行われたことは認めつつ、そこで得られたデータをもとにして、見やすくなるようにとの目的で加工したにすぎず、それによって本来示すべき趣旨が偽装されたわけでもないにも拘わらず、物理的に加工したことについては意図したものだったとの論法で故意を認定するという、これもまた驚天動地の牽強付会ぶりです。無いものを有るとする悪質な偽装を本来罰すべきなのに、「科学的に不適当」というジャンルのものまで、「改竄」にいれてしまって断罪した代物でした。
 
時間が経過すると、こういう中身の杜撰さ、牽強付会さは忘却されて、不正認定がされたという事実のみが残ってしまいます。小保方氏の不服申立ての却下決定は、それ以上、司法のチェックを受けることができない仕組みですから、こういう極めて不適当な判断が是正される機会がないままに、独り歩きして残ってしまいます。
桂調査委員会のES細胞説も相当の疑問の多い内容でしたが、これらの不正調査委や改革委の運営と判断内容の問題性について、いずれ改めて認識され検証される日がくることを祈りたいものです。