理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

若山氏が「第三者機関」に依頼した解析の費用は、実は理研が負担していたのか?!―だとすればなぜ隠したのか?負担する筋合いにもないはず

 
 この2~3日、日経サイエンスの一連のSTAP細胞特集を読み直していました。こうやって改めて読んでみると、発表者側、取材先の者の主張を分かりやすく解説しているのは、門外漢にとっては助かります。しかし、改めての印象としては、日経サイエンスにしても、須田氏の『捏造の科学者』にしても、それら発表者側、取材先の者の主張の紹介以上の独自の情報の整理、整合性のチェック等がほとんどないように感じられます。
 このブログで何度も書いていますが、科学ジャーナリズムであれば、単に相手の主張を右から左に流すのではなく、論点をそこから抽出して、それぞれの側の裏付け材料の妥当性や、前後の発言の整合性等も含めて、冷静に整理分析して、追加取材をかけ、それらも含めた解説記事を読者に提供する、ということが期待されている役割だと思うのですが、残念ながら、ことSTAP細胞問題となると、それらの作業はほとんどなされなかった感があります。小保方氏に対してはあれだけ追及するのに、STAP否定論者たちに対しては批判的視点はほとんど見られません。というか、明らかに、STAP否定につながる情報は徹底的に無視する姿勢を取っています。そのことが、如実に表れたのが、昨年12月の検証・再現実験報告、桂不正調査委報告についての記者会見でした。
 
 それでも、須田氏の著書もそうですが、日経サイエンスも、STAP否定派の主張をいろいろ詳しく書いてくれているので、整合性が取れない点などを抽出するには、いい材料になります。
 それで、若干気が付いたことを書こうと思うのですが、今回書くのは、若山氏による例の第三者機関(放医研)へ依頼した遺伝子解析の費用のことです。STAP細胞の有無という大筋に関わる話ではありませんが、筋として不合理で、当事者の説明に明らかに齟齬があると思われますし、科学者やマスコミのダブルスタンダードを表す材料でもあると思い、皮肉の一つも言いたくなって、備忘的に書くものです(笑)。
 
 昨年(2014年)6月号の「STAP細胞は存在したのか」との特集記事の中に、若山氏へのインタビュー記事があります。
 その中に、「第三者機関」へ解析依頼の費用ことが書いてありました。どうも、見落としていたようで、改めて読み直して、あれ?と思いました。そこでは、詫間記者の質問に対して、若山氏は次のように述べていますP60
 
「――調査の費用は誰が払うのか
 私のポケットマネーでと考えていたが、それで済むような額ではない。最近になって理研と共同でという話になり、経費についても交渉中だ。」

 このインタビューは、若山氏の解析結果発表前に行われたものです。その後の解析結果の発表の際、この経費の点などに関する発言についての違和感を、以前このブログでも述べたところです。
http://blogs.yahoo.co.jp/teabreakt2/15641124.html(この記事の2番目の段落の●)
 
 若山氏が述べたのは、
 ①本当は、自分と一緒にこの会見で第三者機関から発表してもらうつも
  だったが、それだと、自分の応援というようにとられるので中止した。
 ②どこの機関かはいうことはできない。
 ③第三者機関の公正中立性を担保するために、私からは無報酬でやっても
    らった
 
 私の勘違いや聞き洩らしでなければ、若山氏は、上記の日経サイエンス詫間記者によるインタビューで述べたような話には触れていなかったのではないでしょうか?
「私からは無報酬」という点は事実としては正しいのかもしれませんが、では、その費用は実は理研が持っていたということであれば、構図はだいぶ変わってきます。
 放医研は、独立行政法人でしたから、組織として依頼を受けるのであれば、外部からの依頼を無償でやるはずがありません。ですから、「無報酬でやってもらった」ということであれば、若山氏の個人的知り合いの研究者に依頼したのだろうと考え、そういう知り合いの相手を「第三者機関」と称するのはおかしくないだろうか?との疑問を呈したわけです。
 ただ一方で、上記ブログ記事でも次のように書いた通り、解析結果は理研ともシェアされていて、理研までも、「第三者機関」と呼称しているので、妙だな?と当時は思いました。
 
「しかし他方で、6月16日の理研の発表では、
 山梨大学若山教授は第三者研究機関にSTAP 幹細胞株のDNA解析を依頼した。その情報は理研と共有され、理研 CDB保全されている STAP関連幹細胞株の解析を進めてきた。
  と書かれていますので、やはり機関自体に依頼したのだろうか?とも思われますし、合点がいかない部分です。」
 
 それが、若山氏のインタビューにあるように、理研と共同ということになり、理研がコスト負担をしていたということだったのなら、理研が上記のような発表するのも、ある意味では合点がいきます。
 
 しかし、そういうことだとすると、若山氏も理研も、虚偽とまではいいませんが、実態を大きく誤解させるミスリーディングな説明ぶりになっていないでしょうか?
 
① 若山氏は、理研によるコスト負担の話は一切せず、「私からは」無報酬だ、という言い方で、実際のコスト負担の構図を隠した。そして、無報酬でしてもらった理由として、「第三者機関の公正中立性を担保するため」と説明しているが、若山氏の理屈(無報酬=公正中立)からすると、理研による資金負担がなされているのであれば、公正中立性が担保できず、理研寄り?の解析になってしまうということにならないか?

 【補足】これは、私の認識不足だったようです。「私からも理研からも経費はもらっていない」「高精度遺伝子解析をすればそれなりの経費がかかるだろうが、そここまでは至らなかったので」と説明していますので、理研からも無報酬ということのようです。

② 理研の発表の説明文では、
 「STAP 論文に関する疑惑が明らかになった後、山梨大学若山教授は第三者
 研究機関に STAP 幹細胞株の DNA 解析を依頼した。その情報は理研と共有
 され、理研 CDB 保全されている STAP 関連幹細胞株の解析を進めてき
 た。」
  とある通り、解析依頼をしたのはあくまで若山氏であり、その結果を
 理研も共有したという言い方となっていて、もし、この理研の説明のよう
 な構図であれば、理研がコスト負担する筋合いではないはず。また、第三
 者機関が若山氏保有の細胞株の解析をしたのに対して、理研CDB保有
 している細胞株を解析したのだから、理研がコスト負担する筋合いには更
 にない。しかし、実際には、理研がコスト負担したのだとすると、筋の違
 う支出をしたことにならないか?
 
もし、資金負担するのであれば、「真相解明のために、理研時代に行われた実験の残存試料の解析を理研として行うべく、そのコストを負担することとした」という説明ならば理解できますが。しかし、若山氏も理研も、そういう構図での説明はしていません。
  
 この若山氏による解析依頼の件は、どうも不自然な点が目立ちます。「第三者機関」というだけで、「その具体的組織名は言うことはできない」というのは、もっとも不自然な点です。それに加えて、解析のコスト負担の実態が極めて曖昧になっています。
 その一方で、第三者機関とCDBとは、別々に解析をしているはずですが、解析間違いは共通でした。


・・何か、不都合なことが、隠されているように感じます・・・。
 
 情報公開請求なり、照会なりすれば、この辺の解明材料が出てくると思うのですが、個別具体的な疑問としては、次のようなことです。
 
 理研は、若山氏が第三者機関に依頼して解析に関して、何らかの資金負担をしているのか? 負担しているとすれば、
・それはどういう名目、理由なのか? 
・若山氏は当初、自らのポケットマネーでやろうとしたところ、それで済むような額ではないということで、理研と共同での話になったとのことだが、それはどういう経緯いか?
経費について交渉中と若山氏は述べていたが、具体的総コストはいくらなのか? どういうコスト分担になったのか?
・第三者機関との間は、組織間の委託契約なのか、それとも研究者個人への委託契約なのか? 
 【補足】放医研の広報は組織としては関知していないとしていますので、個人ということです。
・資金負担している旨を明らかにしなかったのはなぜか?
・なぜ、若山氏が個人で依頼した解析結果であるような発表をさせたのか?
CDB保有株についての解析は、誰がやったのか? 理研内部の研究者
 か、それとも第三者機関側か? なぜ、同じ解析ミスになったのか?
③「第三者機関」及び解析した研究者名を明らかにしない理由は何か?
  
 どういう資金分担になったとしても、何らかの不都合があるはずです。
 もし、若山氏だけでなく、理研もコスト負担していないとすれば、第三者機関である組織であれ、研究者個人であれ、負担する筋合いのないコストを負ったということになり、一種の背任的行為になってしまいます。
 理研が(一部なのか全部なのかわかりませんが)、何らかのコスト負担をしているのだとすると、理研の発表文のような説明であれば、負担する筋合いにありません。
 山梨大が一部でもコスト負担しているのだとすると、山梨大としては直接関係のない他組織の過去の実験に関する検証であり、負担する筋合いにありません。
 
 そして、理研がコスト負担しているのだとすると、その筋合いにないという問題だけでなく、その解析結果が間違っていた、そしてそれがNature論文撤回の決定的要因となってしまったという、より重大な問題が生じてきます。まるで、論文撤回勧告をしていた理研が、その撤回を確実にするための「誤まった材料」をそのコスト負担の下に提供した、という構図になってしまいます。


 
 小保方氏らに批判的なマスコミや科学者たちにしても、小保方氏の再現実験や理研の検証実験にかかるコストについては、あれだけ厳しく批判するのに対して、こういう筋の違うコスト負担(があるとすれば)に対しては、何も言わないというのは、数あるダブルスタンダードの一つと言えます。
 日経サイエンスは、せっかく、大きなヒントとなる若山氏の発言を引き出したのに、その件はそれきり封印してしまうのですから、おかしな話です。