理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

STAP細胞関連の報道2件―①小保方氏告訴見送り/②理研川合理事インタビュー

 

 STAP細胞関係で、2件の記事が出ています。


1 小保方氏の告訴見送りへ


一つ目は、理研による小保方氏の告訴見送りの記事です。先日の小保方氏らの懲戒相当の発表の際に、告訴の可能性を検討する旨、広報室長が述べていましたが、その検討結果ということになります。

 読売新聞が先行して報じていますが、他のプレスは後追いになっているようで、産経と時事がほぼ同趣旨の報道をしていますが、今現在(2040)、毎日、朝日等の後追い記事はGoogleニュースでは拾えていません。

 

     読売新聞

  http://www.yomiuri.co.jp/science/20150316-OYT1T50081.html 

理研、小保方氏の告訴見送り…謎残し究明終える

読売新聞20150316 1601

STAP細胞の論文不正問題で、理化学研究所は、捏造ねつぞうなど不正4件を認定した小保方晴子・元研究員(31)の刑事告訴はしない方針を決めた。

 近く理研の不正防止策などに対する評価をまとめる外部有識者らの「運営・改革モニタリング委員会」も、告訴見送りを容認する見通し。STAP問題は、昨年1月の論文発表から約1年2か月を経て、不正の経緯に謎を残したまま、真相究明を終えることになる。

 理研は先月、小保方氏を「懲戒解雇相当」とする処分を発表。「STAP細胞は、別の万能細胞であるES細胞(胚性幹細胞)が混入したもの」とした昨年末の調査結果に基づき、小保方氏を含む誰かが理研のES細胞を盗んだ可能性などを検討した。

 しかし、関係者によると、保管中のES細胞は誰でも持ち出せる状態で、混入の経緯は突き止められていない。理研が弁護士と相談した結果、故意ではなく器具の誤操作で混入した可能性も排除できず、新たな証拠を得る見通しはないと判断。告訴の要件に該当するような疑義はないと結論づけたという。

 また、小保方氏の不正が理研の業務を妨害したとまでは認められないと判断した。」

 

 産経も同趣旨ですが、外部有識者委の見送り了解理由について少し触れていますので、その部分だけ抜粋しておきます。

産経新聞

http://www.sankei.com/life/news/150316/lif1503160036-n1.html 

「・・・理研改革の進行状況を監視している外部有識者委員会も「混入者の特定は問題の本質ではない」などとして、告訴の見送りを月内に認める方向だ。」

 

 以前のこのブログ記事で述べた通り、もともと、桂調査委の報告書を前提とする限り、小保方氏を告訴する理由も根拠もありません。

  http://blogs.yahoo.co.jp/teabreakt2/16253864.html 

 

 石川氏が、理研による処分発表直前のタイミングを見計らって、告発状を提出したので、それを支持するような動きがそれなりにあったのに引きずられて、「全く検討していないわけではない」というポーズを取っただけでしょう。

 理研として、被害対象となるべきES細胞がなぜあるのかもわからず、まして自らの所有のものを盗まれたとの認識もない中で、告訴もないもあったものではありません。当事者がそういう状況では、警察も動きようがありません。「ここに保管してあった私の所有の細胞が、あるとき無くなっていた。」という大前提となる被害事実、認識がなければ、窃盗もなにもないでしょうに。何か、警察が強制捜査することによって、真相解明が進むというような警察幻想を持っている向きが、マスコミを含めて少なからずあるようですが(日経の解説委員が告訴を受けた捜査を望むようなことが書いてあったので驚きです)、上記のような大前提となる事実関係、認識がなければ、捜査しようがありません。

 

 ちょっとびっくりしたのは、

 

理研が弁護士と相談した結果、故意ではなく器具の誤操作で混入した可能性も排除できず、・・・」

 

 との記述です。桂委員会報告書では、

 
「これだけ何回も ES 細胞が混入したことは、培養器具の不注意な操作による混入の可能性も考えられるが、研究者の常識としては、誰かが故意に混入した疑いを拭うことができない。」
 

 となっていて、故意の疑い濃厚という認識で、誰がアクセスできたのか? という調査を研究室の配置の図解入りで説明していましたので、「誤操作の可能性」は実質的に排除されていたかと思います。ですので、ここで、「誤操作の可能性も排除できない」というセリフが持ち出されるのは少々違和感を感じます。

 しかし、まあ、告訴の検討に当たって、その拠って立つべき報告書で、「故意に混入した疑い」以外に「誤操作の可能性」も指摘しているのであれば、窃盗容疑で告訴する根拠が薄弱だと、顧問弁護士は判断したということでしょう。

 

 石川氏のほうの告発も、受理されるような様子は見えません。告訴、告発騒ぎは、これで終結でしょう。

 

2 理研・川合理事インタビュー
 

もうひとつのSTAP関連の記事は、理研川合理事のインタビュー記事です。朝日新聞によるものです(311~12日)。

  http://www.asahi.com/articles/ASH35521TH35ULBJ009.html 上

  http://www.asahi.com/articles/ASH3972HWH39ULBJ027.html 下

 

 いくつか注意を惹いた箇所があります。

 
①「「初動のところは、今思うと悔しい。(小保方晴子氏の)研究室を封鎖するなど大きなアクションをとれば、社会が受け取るメッセージは違っただろう」などと振り返った。」
 
 この研究室封鎖の点については、そうすれば、小保方氏のためにも良かった気はします。その間、理研「有志研究者」なる人々が、勝手に出入りして、嘘かほんとか鍵も替えたとか替えないとかいっている始末で、保存庫の写真を撮りまくって、NHKなど外部に流すような狼藉がなされていたわけですから(あの写真は、まさかNHKを研究室に入れ込んだのではないでしょうね・・・?)、そういう反小保方による、別の意味で不正を招きかねないような跳梁跋扈を許すままにしておいたのは、失敗だったと感じます。
 それから、もうひとつの大きなミスは、山梨大側にある若山氏の手元にある試料の「封鎖」をしなかったことです。若山氏が撤回呼び掛けをしたことで、本来、小保方氏とともに調査対象(被調査者)であるはずなのに、あたかも調査する側と位置付けてしまっていました。「小保方氏の不正を調べるための協力者」のような位置づけで、理研も捉え、改革委や学術会議に至っては、理研の「良心」のような評価までされていました。別に彼が不正を働いたということではないと思いますが、一連の疑義が出たのは、小保方氏担当部分と若山氏担当部分の双方にまたがるのですから、調査対象者は、小保方氏と若山氏の双方でなくてはならないはずです。そのけじめが曖昧なまま、最後までいってしまいました。
被調査者だとの位置づけをすれば、第三者機関に依頼するのは、若山氏ではなく理研側であるはずです。理研が、山梨大に依頼して、若山氏の手元の試料を確保し、その試料は理研の調査委が自ら、又は第三者機関に委託して、調査分析するのが筋です(といっても、理研の調査を実際に担う者の公正中立性の担保には疑義はありますが・・・)。そして、若山氏の発言の変遷については、科学面からみて不自然さが残るのは事実ですから、然るべく調査がなされる必要があったと思います。
       若山氏が不正をしたということではなく、2月にプレスインタビュー等で述べていた話と、その後の話の整合が取れないという意味での不自然さということです。
 
②「――東京大などの論文不正の調査では、もっと時間をかけている。早すぎるという意識はなかったのか。
 あまり早いとか、遅いとかは(当時)分からなかった。理研の規定は、調査委が結論を出す期限を150日と定めている。昨年3月10日ごろに(ネイチャーに掲載された)論文(の画像)が早稲田大の博士論文と同じと分かり、単なるお作法(の問題)じゃないぞとみんなが思った。それが調査を始めて1カ月ごろ。150日は5カ月なので、夏くらいまでに調査を終えられるか判断しないといけない。試料は集めていたが、実験ノートがちゃんと書かれていないので、あの時点ではあまり希望がもてなかった。ここで出来ることを認定しましょう、という委員会の判断だった。私も妥当だと判断しました。マウスの起源を明らかにする作業は別途にやろうと。」
 
 150日で調査が完了できるものとできないものがありますから、150日以内にできそうもないから、再現性の確認は切り離すという判断は、本末転倒のような気がします。不正調査規程の上では、再現できるかどうかが、不正の有無を大きく左右する材料になるのですし、権利として付与しているのですから、再現実験の機会を与えた上で、調査を進めることが必須でした。
 やはり、あの時に、まず論文撤回を勧め、それが難しいとみるや、1か月を目途に結論出せと迫った文科省の圧力が、川合理事ら理研幹部の判断を狂わせたのは間違いないでしょう。文科省の判断を狂わせたのは、もちろん、特定研究開発法人法の提出、認定の問題だったのは言うまでもありません。その問題がなければ、東大のような時間をかけた調査になったものと思います。
 
③「「取り下げる論文は調査しなくてよい」という表現が(昨年6月末の)改革委員会の提言に入ったが、私は委員会に1回も呼んでいただいてない。弁明、説明する機会がなかったことは悔しいです。残念でならないです。」
 
 ここでも、改革委が、ろくにヒアリングをしなかったことへの批判がでています。竹市センター長も、あんなCDB解体というような重大な提言をするのに、改革委はヒアリングをほとんどしなかったことや、点検委報告書ばかり見ていたことを批判的に指摘していますが、そういう杜撰なやり方を改革委はやっていたということが、ここでもわかります。
 この後の別途の記事で紹介したいと思いますが、結論ありきで、極めて政治的に動き、須田記者らを利用しました。そのことを、図らずも、須田記者の著書が明らかにしているのは皮肉なものです。