理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

3 桂STAP調査委員会報告書への疑問―ES細胞混入があり得ない材料と、マウスの手交・交配ミスの可能性の無視


疑問5 小保方氏作製のキメラと、若山氏作製のキメラの比較分析はないのか?
 
 よくわからないのですが、若山氏は、一からマウスからSTAP細胞→STAP幹細胞と作製に成功しているわけですが、そこからキメラマウスを作って保存していないのでしょうか?
 先に紹介した桂委員長の下記発言で、「自分でやってみたいということで教えてもらってやったらできた。これは若山研に保存されていたので、それをいただいて調べた。」とあり、「最初から最後まで」とありますが、これは、幹細胞だけとは考えにくく、当然、キメラマウスまで作っていると考えるのが自然です。若山氏が追試した趣旨からすれば、幹細胞を保存しているのであれば、キメラマウスもホルマリン保存されていると思われます。一連の実験ノートもあるのではないのでしょうか? それらの検証はなされているのでしょうか?
 
Q 以前、若山氏が、ただ一度だけ小保方氏の指導で、一からSTAP細胞を作りSTAP幹細胞を作ったとのことですが、これは、マウスから作ったわけではなく、何らかの処理された細胞から作ったという理解でいいか。
A マウスから作った。最初から最後まで。山梨大に出る前に、若山さんでもできるかやってみようと思って、若山研の人たちが試したができなかったので、自分でやってみたいということで教えてもらってやったらできた。これは若山研に保存されていたので、それをいただいて調べた。
 
 若山氏が自らSTAP細胞作製に使ったマウスは、自らが正しい系統のものと認識していたものを当然選択しているはずです。マウスから切り出した細胞には、もちろん、ES細胞の混入もすり替えもありません。そこからスタートして、一連の追試実験を成功させたというわけですから、その結果できたキメラと、小保方氏が論文で作製したキメラとを比較すれば、真実の把握に大きく近づくと思います。
 もし、小保方氏のものと同様の結果であれば、実験使用マウスについての若山氏の認識と実際が違っていたということですので、若山研のマウス汚染が原因だということがはっきりすることでしょう。もし異なる結果であれば、若山氏は何を作ったのか? ということになりますが・・・(コンタミなき本来のSTAPキメラマウス?)。
 
 ついでですが、桂委員長の説明の中で、「若山研の人たちが試したができなかったので」という点は、若山氏の2月のCell誌インタビューでの発言と異なります。他の院生もできたと言っています。この点をなぜ確認しないのでしょうか?
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―以前成功したSTAP細胞はmESCsあるいはマウスのiPSコンタミという可能性はありますか
Y:私はSTAP細胞からSTAP幹細胞の作成にも成功していますし考えにくいです。それに129B6GFPマウスからのSTAP幹細胞作成も出来ています。当時ES細胞は持っていませんでした。STAP幹細胞作成時Oct-4強陽性でした。その条件下ではES細胞より簡易に作成できました。さらにmRNA発現の仕方からSTAP幹細胞がES細胞のコンタミでは無いでしょう。
―あなたのラボでも再現性が低いそうですね
Y:ありうる事です。私自身ラボを移った際今まで出来ていたクローンマウスの作成に半年かかりました。自分の持つ技術でさえそうですから人の技術であれば再現が難しいのは納得できるものです。以前成功した時は小保方氏の指導の下、全て自分で行いました。同じようにPh.Dの生徒もSTAP幹細胞作成に成功していました。実験をはじめた当初はES細胞やiPS細胞は扱っていませんでした。後になってコントロールとしてES細胞を培養していました。
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疑問6 なぜ、より合理的な説明ができる「若山氏によるマウスの手交ミス」「手交マウスのコンタミ」の可能性を追求しないのか?
 
 この疑問は、上記の「疑問3 なぜ「若山氏が小保方氏に渡したマウス」が若山氏の説明通りという前提に立つのか?」の延長なのですが、上記の一連の材料からすれば、「ES細胞混入」では説明が難しい材料が多々ある中で、同じ遺伝子分析結果が得られる他の可能性として、「若山氏によるマウスの手交ミス」「手交マウスのコンタミ」の可能性になぜ思い至らないのだろうか?ということです。
 ES細胞を作製した親マウスの系統、種類のマウスを誤って使ってしまった可能性が多分にあるわけですが、親マウスの分析や、そういう仮説による検証はされていないように思えます。
 報告書のP13以下に、「ES細胞混入の根拠」について総括的に述べられていますが、
そこでは、あくまで、STAPFI幹細胞の作製時にES細胞が混入したと認定しています。
 
「(1)ES 細胞混入の根拠
 (中略)
以上の論理を用いて、STAP 幹細胞や FI 幹細胞が ES 細胞に由来すると結論することができた。この場合、STAP 幹細胞や FI 幹細胞の作製時に ES 細胞が混入した可能性、ES 細胞作製時に STAP 幹細胞や FI 幹細胞が混入した可能性、の 2 つの可能性が考えられるが、今回の場合はいずれも ES 細胞の方が STAP 幹細胞や FI 幹細胞より早い時期に樹立されている。よって、STAP 幹細胞や FI 幹細胞の作製時に ES 細胞が混入したと認められる。」
 
 会見では、若山氏の手交ミス、交配ミスの可能性を念頭に置いてかどうかわかりませんが、質問がなされています。しかし、委員長はじめ他の2人は、質問の意味さえ理解できず、大きな戸惑いをみせていました。頓珍漢な答えになってしまっていますが、これは、そういう「手交ミス」「マウスのコンタミ」の可能性は、頭から排除していた証左といえるでしょう。
 以下、録画から起こしてみますが、戸惑いの雰囲気を実感するには、録画そのものをご覧いただいたほうがいいと思います(録画 11100~から5分間)。
 
Q ES細胞混入の可能性が高いという根拠で、遺伝子的特徴が極めて一致しているということだが、たとえば、FES1からキメラマウスと作って、そこからSTAP細胞を作ればここまで一致するということはないのか。
A(桂委員長) ええと・・・・ES細胞からキメラマウスを作り、そこからSTAP細胞を作れば、・・・かなり似たものができると思う。
Q そういう可能性は・・・そうすれば、ここまで極めて遺伝子特徴が一致するということはありえなくはないということか?
A (桂委員長)・・・(困惑して笑いつつ)米川先生どうですか? マウスの専門家として・・・。
A (米川委員)・・・・遺伝学の立場からすれば、そういった可能性はあまりないと思う。完全にないということはいえない。これは科学の世界では、何点何%という限られた事実でしか判定できないので、一般の方がいわれるように、たとえば99.9%、零コンマ零一%あるからそれは違うんじゃないかといわれても、そういったことは普通科学の常識としてありません。
Q 全く違う場合に極めて同じになることは確率的にありえないが、 今のようなやり方でやれば、極めて似てしまうことはありうるということでいいのか?
A(桂委員長)ES細胞とESを作ったと言われるマウスとが、かなり違った点がいっぱいあることがわかっている。
Q ということは、そういった方法で作れば似ているかもしれないが、そうした可能性はほぼあり得ないということでいいのか?
A(桂委員長)(戸惑いつつ)・・・伊藤先生、いかがですか?
A(伊藤教授)質問の趣旨がわかりかねているのだが、どういうことをお考えなのか、お聞かせ願えますか。
  ~~~~質問の繰り返し~~~~
A(伊藤教授)すみません、申し訳ないです。それは今のお話では・・・・
Q ~~~~質問の繰り返し~~~~
A(伊藤教授)それは、STAP細胞が存在しても話として成り立つのではないかということか? もし仮にそうだったとしても、論文の記載方法とは全く違うと思うが、そんな面倒くさいことをしなくても、そのままやれば個体を発生させることはできるわけだが、それはできないことではないが、論文記載の方法とは全く違うということは言えると思う。
A(桂委員長) 伊藤先生は慎重に答えたとおもうが、今回の我々の例でみてみると、マウスからES細胞を作ったときにかなり変位が入るようだ。もしそうしても、全部がそうなのかは百%の自信はないが、かなり変位が入っている可能性が高い。
Q 一度キメラマウスを通していたら、ここまで一致しないと考えていうことでいいか。
A キメラからESを作るときに、新たな変位が入る例が多い。全く入らないかといえばわからないが、その程度の変位は次世代シーケンサーを使えば全部検出できる。
 
 質問した記者は、ES細胞から作ったキメラマウスから、STAP細胞が作られた可能性はないのか?と質問しているわけですが、ES細胞を作った親マウスが誤って使われたようなコンタミの可能性もあるでしょう。
 
 報告書では、
 
「これだけ何回も ES 細胞が混入したことは、培養器具の不注意な操作による混入の可能性も考えられるが、研究者の常識としては、誰かが故意に混入した疑いを拭うことができない。p13-14
 
 と述べていますが、そんな何回も都合よく、ES細胞を混入できると考えるほうが不自然ではないでしょうか。201111月に初めてできて、「2012年1~2月に特にたくさんできた」と桂委員長は述べていますが、その「たくさん出来た」たびごとに、小保方氏がESをせっせと混入していたというのでしょうか? そういう推定のほうが現実的でないように思えます。むしろ、多くの局面でES細胞の特徴がでているということは、もともとのSTAAP細胞作製に使ったマウス自体が、ESを作ったマウスと同系統、同種のものだったのではないか、と考える方が自然ではないでしょうか。
 この点は、若山氏作製のキメラとの比較分析などによって、判断材料が揃ってくると思いますが、そういう可能性について想定も検証もしなかったというのは、科学的真実を追求するはずの科学的調査としては不十分すぎるのではないでしょうか?
 
 
●とりあえず、考えたことは以上です。
 まとめると、
 
論文調査だけでなく、科学的調査と称しながら、笹井氏や丹羽氏の指摘によるES細胞ではあり得ない材料を、論文解釈に関わるものであるにも拘わらず、完全無視しているのは明らかにおかしい。
肝心の胎盤かどうかを論文の図だけで見て、残存のマウスはおろか切片さえもチェックせずに判断しているのは理解できない。
③ES細胞混入であれば、一見すれば、大きさ、形態、増殖速度、シャーレでの状況(付着⇔浮遊)等から直ちに峻別できるはずである。若山氏にしても気が付かないはずがない。
若山氏自身が、正しい系統であるはずのマウスから、一から作製に成功した際にできたSTAP幹細胞も、大阪大岡部研から導入したマウス由来というのであれば、若山氏の小保方氏への手交マウスも間違っていたと考えるのが普通の解釈ではないのか?
  実際、若山氏のマウスの認識と残存資料の分析結果は違っているものが
  あった。
同じ遺伝子構成の一致がみられるだろうと各委員が述べた、ESキメラからのSTAP細胞作製の可能性や、ESを作った親マウスの系統マウスの手交可能性を想像もしないというのは、科学的調査としておかしくないか。若山氏の認識を正しいと所与のものとし、若山研側による「マウスの手交ミス」「マウスのコンタミ」をまったく想定もせず検証もしないのはおかしい。
 
 なにぶん門外漢なので、基本的勘違いもあるかもしれませんが、門外漢だからこそ、平気で感じたことを披歴できるという面もあります。科学者では軽々なことはいえないでしょう。しかし、ES細胞混入では説明がつかない初歩的材料を完全無視しているというのは、誰でもおかしいと考えると思うのですが、まことに不思議なことに、この点に触れる識者、マスコミはほとんど皆無だというのは、驚くべきことです。そういう様子をみると、「王様は裸だ!」と叫んでいる子供のような気分になってきます(笑)。
 最初ニコニコ動画で生中継をみていましたが、視聴者のコメントが流れますが、若山氏が一度、一から作製に成功していることを知らない人々が多いということに驚きました。マスコミも自分たちで2月に若山氏に成功の経緯をインタビューしているわけですから、その時の話との矛盾をなぜ問わないのか不思議でなりません。


 今回の桂調査委員会での質問も、追求が緩すぎました。ES細胞の大きさ一つ取り上げて、「すぐに気が付くのではないか?」という単純な問いを投げかけるだけでも違ったでしょう。あるいは、すぐ数日前の丹羽氏会見時の「ES細胞を混ぜたら、形状変化なく全壊した」という実験結果との関係を問う質問もあってしかるべきだったでしょう。最初の日経BPの記者や他の記者が、「笹井、丹羽両氏の指摘は、調査対象外です」と回答されて、あっさり引き下がるセンスがまったく理解できません。それが核心だったはずです。
 
 ES細胞混入では説明できないということが明らかになれば、マウスの手交ミス、交配ミスの可能性が浮上してきて、そうなると、一連の事件の構図は文字通り一変します。小保方氏及び若山氏の立場はまるで変わってきます。
 
 最も不思議なのは、識者やマスコミは、小保方氏のことをあれだけ、ミスが多い、研究者としての常識が欠けるといった批判をしていながら、捏造だということになると、まるで小保方氏が手品師のように緻密な捏造工作を行ったかのような言いぶりになることです。それはダブルスタンダードでしょう。あの一連の「たくさんできた」というSTAP細胞が、すべてES細胞混入によるものだとすれば、増殖力が強い細胞をタイミング良くもっともらしく偽装するために相当精緻な制御をしなければならず、ほとんどインキュベーターに張り付かなければならなかったのではないでしょうか(それでも、ES細胞とSTAP細胞は大きさがまるで違いますから、偽装しようがないでしょう)。
 
 心理学の世界では、「認知的不協和」という理論があります。社会心理学の教科書に出てきます。自分の考えや信念と相容れない事実に遭遇すると、不快感を感じたり、なんとか矛盾がなくなるように心理的操作を行うことを言います。
 このSTAP騒動も同じではないでしょうか。「STAP細胞はなかった」という考えと相容れない材料は、無視したり、ES細胞混入説や遠藤氏のES/TS細胞混合説、あるいは「若山研から渡したマウスからできるはずがない」との調査結果を聞き、そのたびに「やはりSTAP細胞はなかったんだ」と確認できて心理的平穏を得ていたように感じられます。「世界三大不正」という決めつけに拍手喝さいの趣きです。
 そういうと、「お前こそ、STAP細胞があるという期待が先行し、それが裏切られるような話は受け付けようとしないではないか」と言われそうですが、もちろん期待はありますが、別に、ないならないで仕方がないとおもっています。言いたいことは、「科学の世界のことであり、科学者であれば、科学的論点について科学的に冷静に詰めてほしい」ということです。科学者が率先してバッシングのみをしているようでは情けない限りです。
 
 笹井氏は亡くなってしまいましたし、丹羽氏は重要な材料を「ちょっと気になって」といって実験をやってみて提供しているものの、声高に自らそれを主張して他人の矛盾を突くというタイプではなく、問われたことに最小限で答えるという雰囲気です。それに乗じて、彼らの指摘を無視するというのは科学者としてあるべき態度ではないでしょう。


 小保方氏はガリレオなのか? STAP細胞は第二のドリーなのか?
 世間は忘却の彼方かもしれませんが、科学的決着が最終的に着くまで、時間は相当かかりるでしょうが、まだまだ紆余曲折はあるように思います。


 とりあえず、小保方氏への懲戒相当の判断がどうなるのか? それに対して小保方氏側がどう反応するのか? が直近の局面になりますが、その後、特許出願の扱いがどうなるのか?の件が来るでしょう。ハーバード大とかはどうするのかわかりませんが、もともと職務発明であることを考えれば、小保方氏らの特許として放棄には至らず、維持される可能性もあるでしょう。小保方氏に対して実験環境、資金を提供をするところが出てくるのかどうか、が気になるところです。
 引き続き要注目です。