理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

2 桂STAP調査委員会報告書への疑問―ES細胞混入があり得ない材料と、マウスの手交・交配ミスの可能性の無視


疑問3 なぜ「若山氏が小保方氏に渡したマウス」が若山氏の説明通りという前提に立つのか?
 
 マウスの系統の混乱の問題は、若山氏が6月に記者会見で発表した「若山研究室にあったマウスからは絶対にできない」と断言したことが間違っていて、7月に訂正を行ったことから、注目されていた重要な論点のひとつだったはずです。
「幹細胞の目印が・・・若山研究室で飼育されていた別のマウスと遺伝子の目印の特徴が似ていることが分かった」ということは、7月の訂正の時点では報じられていました。しかし若山氏は、小保方氏と渡したはずのマウスとは別系統のマウス(大阪大の岡部研究室から譲渡されたもの)が飼育されていたことは認めましたが、その系統のものを渡した可能性は否定していました。
NHK
「・・・ただ、若山教授がSTAP細胞作製のために小保方リーダーに渡したマウスと、そのマウスから作ったSTAP細胞だとして小保方リーダーから渡された細胞が異なるものだという点は変わっていないということで、理化学研究所や若山教授の研究室でさらに詳しく調べています。」
 
 残存しているSTAP幹細胞やES細胞が、岡部研由来マウスのものであることは、今回の調査報告書で改めて明らかにされました。
 
「1)Acr-GFP/CAG-GFP 共挿入の位置、コピー数、周囲の塩基配列
表:STAP 幹細胞株一覧に挙げた 12 種類の幹細胞から STAP 幹細胞 FLS-T を除く 11 種類の幹細胞株、それらの幹細胞が作製された 129 系統、および C57BL/6 系統の NGS による全ゲノム解析を行なった。その結果、Acr-GFP/CAG-GFP の共挿入は、STAP 幹細胞 FLS3FI 幹細胞 CTS1、そして ES 細胞 FES1 並びに FES2ntES1 並びに ntES2, および 129/GFPES 7 株の第 3 染色体の同一部位に共通に存在することが判明した。また、Acr-GFP が第 3 染色体の片方にのみ挿入されていること(FISH により確認)、Acr-プロモーターのコピー数がどれも約 20 コピーであること、GFP 挿入部位を挟んで第 3 染色体の約 20kbの重複があることと、GFP 挿入部位に隣接して第 4 染色体 20kb 断片の逆向きの挿入があることも共通していることが判明した。これらの特徴は、2003 年に CDB 若山研が大阪大学岡部研より導入した Acr-GFP/CAG-GFP マウスの特徴と完全に一致する。P4-5
 
「3)次世代シークエンサー(NGS)による解析結果
表:STAP 関連細胞株一覧に挙げる 12 種類の幹細胞のうち、FLS-T を除く 11 種類、それらの幹細胞が作製された 129 系統、および C57BL/6 系統に関して、全ゲノム SNPs 分析を行なった。その結果、STAP幹細胞 FLS3FI 幹細胞 CTS1 および「129/GFP ES」と呼ばれる小保方研のフリーザーから発見された ES 細胞は、2005 年に若山研で樹立された受精卵由来の ES 細胞 FES1 および FES2 と遺伝的背景の類似性が高いことが明らかになった。」
 
 これによって、若山氏が小保方氏に渡したマウスも、やはり岡部研由来のマウスではなかったのか?という連想が湧くと思いますが、しかし、あくまで本来渡すべき系統のものを渡していたという可能性もないわけではありません。
 しかし、その点は、桂委員長の説明によって、図らずも、岡部研由来マウスだったことが強く示唆されていると思いました。
 
理由の第一は、若山氏が一から作製に成功した際には、マウスからスタートして成功しているということが明言されていることです。そして、その若山氏が自ら一から作製したSTAP幹細胞(表:STAP 関連細胞株一覧の「FLS-T1T2」)も含めて、その遺伝子構成が、ES細胞のもの(=岡部研由来のもの)と一致していることが明らかになったことによります。
【補足注】上記の点は、事実誤認でした。若山氏がマウスから一から作製したSTAP幹細胞は、岡部マウス由来のものではなく、「若山マウス」由来のES細胞のものと一致したということでした(「STAP 幹細胞 FLS-T を除く 」とある記述の見落としです)

 委員長は次のように説明しています(5514)。
 
Q 以前、若山氏が、ただ一度だけ小保方氏の指導で、一からSTAP細胞を作りSTAP幹細胞を作ったとのことですが、これは、マウスから作ったわけではなく、何らかの処理された細胞から作ったという理解でいいか。
A マウスから作った。最初から最後まで。山梨大に出る前に、若山さんでもできるかやってみようと思って、若山研の人たち田試したができなかったので、自分でやってみたいということで教えてもらってやったらできた。これは若山研に保存されていたので、それをいただいて調べた。
Q なぜ一回再現できたか不思議ですが・・・。
A 不思議です。STAP細胞ができたというのは、小保方氏以外で操作してできたというのは、我々の確認している限りでは、この若山氏の1回だけ。
Q 引きちぎって挿入するようにしたらできたとあるが、その時にES細胞が混入したということか。
A 前の状況が何も残っていないのでわからないが、小保方氏が理研に来てから半年ほどはできなかったが、2011年の11月くらいになってから急にキメラができるようになった。なぜできなかったはわからない。樹立日のFLS3GLS1とが、20121月から2月の初めにかけて、この時にたくさんできたようだが、少なくともこれはESコンタミだった。なぜ急にできるようになったのかを尋ねたら、答えは二つ。若いマウスと使うようにしたことと、細胞をバラバラではなく引きちぎって塊にして挿入するようにしたらできるようになったとのこと。そう信じていたようだ。しかし、我々としては、できるようになった時点で、もう一度塊をバラバラにしてできたら、これだけ(騒ぎは?)大きくはならなかったろうという思いはある。
 (注)報告書のP30に同趣旨の記載あり。
 
 質問した記者は、若山氏が作製に成功したのはマウスからでないと思い込んでいたようですし、若山氏の主張が正しいとの先入観に立てば、そういう発想になることでしょう。ところが、意外なことに、桂委員長の答えは、「マウスから一から作った」でした。となると、若山氏が作製で使ったマウスは、当然、自分が小保方氏に渡したはずの系統のものと同じものだったはずです。間違うはずがありません。しかし、そこから作製したSTAP細胞から作ったSTAP幹細胞として残存しているものが、岡部研由来のES細胞の特徴と完全一致したということであれば、若山氏が手交したマウスがそもそも間違いだったという論理的帰結になるのではないでしょうか?要するに、若山氏側のマウスの手交ミスということです。
 
 もう一つ、若山氏側の手交ミスと推定される理由は、若山氏の説明と、論文、残存資料の相違についての、桂委員長の次の説明です(104:●~)
 
Q 若山研の管理状況は、ES混入を排除できる実験環境は整っていたのか?
A わからない。そこにいたわけではないので。・・・(中略)
 論文の投稿をしているときに、査読者からESの混入ではないのかとの指摘があった。それで最初にFLS・・・というのは非常にやっかいな細胞で、若山氏が小保方氏に渡したマウスは、129GFPのメスと、B6のCAGGFPのオスを掛け合わせてそれのF1のはず。ですからCAGGFPはホモで入っているはず。ところが、論文では、B6のほうにだけCAGGFPが入っているような記載になっていた。どうしてそうなったのかわからない。しかし、実際に調べてみたら、アクロシンGFPCAGGFPとが入っているという第三のものだった。ですから、若山氏が渡したマウスと論文の記載と残存資料の3つが違っているというやっかいな細胞だ。
 
 ここでも、若山氏の説明が、小保方氏の論文と残存資料の分析結果と異なっていることが示されています。これは、若山氏が手交したつもりのマウスが、実際には違っていたということが十分あり得ることを強く示唆するものでしょう。
 
 マウスの飼育管理に関連しては、報告書では次のような言及があります。
 
「(2)ES 細胞の混入を行った者を特定できるか
これだけ何回も ES 細胞が混入したことは、培養器具の不注意な操作による混入の可13能性も考えられるが、研究者の常識としては、誰かが故意に混入した疑いを拭うことができない。そこで、本調査委員会では、誰に ES 細胞混入の機会があったかを調査した。小保方氏と若山氏の聞き取り調査から判明した各実験過程の担当者は、以下の通りである。
[STAP細胞作製のためのマウス] STAP 細胞作製に用いたマウスは、若山氏がマウスの交配を行い、小保方氏にマウスを手渡した。ただし、Oct4-GFPを持つ STAP 細胞作製のときは、CDB 若山研メンバーが管理していた GOF マウスのケージから、小保方氏が子マウスを取り出して使用した。(p13~14)
 
「3)STAP幹細胞FLSGFP 挿入パターンがホモではなくヘテロであったことを著者が認識していながら、その実験の不整合の原因を確認しなかった疑いについて(なお、論文に書かれているB6GFP×129/Sv129/Sv×B6GFP等の表記は、実際にマウスの交配を行った若山氏によれば、間違いとのことである。)
(調査結果)
STAP幹細胞FLSから作製した4Nキメラを戻し交配して得た子にGFPを含まないマウスが含まれていた。このことは、STAPFLS幹細胞FLSを作成したマウスは129(CAG-GFPホモ)B6CAG-GFPホモ)を交配したF1であるとの、若山氏の認識と矛盾する結果だが、若山氏と小保方氏はこの矛盾について、それ以上の追求をしなかった。
本件について、若山氏は質問状に対する回答で「その当時、STAP現象は絶対に本当だと思っていたため、この疑問点は自分のマウスの交配のミスによるものだと判断しました」と回答している。そして、若山氏の結論として「誰かの実験を手伝ったとき、つじつまが合わない現象が起こった場合、真っ先に自分の担当した部分を疑うのは当然」とも回答した。
(評価)
上に述べた状況から、CDB若山研のマウスの飼育管理体制は若山氏が中心となり、それに数名のスタッフが携わっていたと、若山氏の説明からうかがうことができる。また、マウスの系統管理も、系統間のコンタミネーションに対しては、部屋、あるいはラックを変えるなどの防止策は採られていた。一方、小保方氏に関しては、マウスの飼育を若山氏に全面的に依存していたことから、この問題に関する責任は低いものと認められる。
以上から、その実験の不整合の原因を確認しなかったという点については「若山氏のミス」ということで片付けられ、問題であることは認めながらも、その原因を追求しないままにしておいたことは、科学者として避けるべきであった。しかし、調査により得られた証拠に基づき判断する限り、研究不正とは認められない。」P29
 
 ここでは、マウスの系統管理はできていたとの認識に立っているようで、マウスのコンタミの可能性は排除しているように見えますし、若山氏が交配ミスと考えたのは間違いとの認識に立っているようです。しかし他方で、若山氏の認識と残存資料の分析結果とが相違していたことが判明し、若山氏自身がマウスから一から作ったSTAP幹細胞も、岡部研由来のES細胞の特徴と一致しているという結果だったことからすれば、やはり、若山氏の交配ミスだったというのが、実際に生じたことだったのではないでしょうか。


 
疑問4 ES細胞が混入すれば、大きさ、増殖速度の差異等で直ちに峻別できるのではないのか?
 
 調査委員会は、「インキュベーターでシャーレで培養中に何者かがES細胞を混入した」との見立てに立ち、わざわざ、研究室の見取り図まで示して、アクセスできる者、時間、管理状況について説明しています。小保方氏とは断定はできないものの、ほとんど小保方氏であるといわんばかりのニュアンスを出しています。
 しかし、ES細胞が混入したならば、大きさや形状が異なることから、すぐに見てわかることは、研究者の常識ではないのでしょうか? それに、ES細胞だったら増殖能が強いですから、数日の培養期間中にどんどん増えてしまうことでしょう。
 桂委員長は、笹井氏や丹羽氏のES細胞混入の可能性を否定する指摘を、調査対象外だとして検討していません。委員長の説明からしても筋として調査対象外になるはずがないことは既に述べましたが、笹井氏、丹羽氏は次のように説明していたわけです。
 
 笹井氏の記者会見での説明資料での否定
 
 笹井氏は、次のように資料に記載し、ES細胞や他の幹細胞の可能性は疑問視し、STAP現象が最有力の仮説としているわけです。
B 特徴ある細胞の性質
リンパ球やES細胞よりSTAP細胞はさらに小型サイズの特殊な細胞
・遺伝子発現パターンの詳細解析でも、STAP細胞は、ES細胞や他の幹細
 胞とも一致せず
ES細胞は、増殖能は高く、分散培養可能; 一方、STAP細胞は増殖能が
 低く、分散培養不可
イメージ 1
C 胚盤胞の細胞注入実験(キメラマウス実験)の結果
ES細胞、TS細胞の混ざり物では細胞接着が上手く行かず1つの細胞塊に
 ならない
ES細胞と異なり、分散した細胞ではキメラを作らない
 
「一個人の人為的な操作」が困難である確度の高いデータのみを見ても
Oct4GFPを発現しない脾臓の血球系細胞からOct4GFPを発現する「他の細胞では知られていない」形質を持った小型細胞の塊が生じること
胚盤胞への注入された細胞の貢献は、ES細胞やTS細胞では説明できない特別な多能性の表現型を示し、また内部細胞塊や桑実胚の細胞とも考えにくい」
                                  
② 丹羽氏の記者会見での否定
 丹羽氏は、4月の記者会見で、問われて次のように答えています。
 「 --STAP細胞は、胚性幹細胞(ES細胞)の混入を見間違えたのではないかとの指摘がある
 丹羽氏 「私が知る範囲の知見では、その仮説が真である確率は低い。専門家の判断からすると、それほど単純ではない」
「若山氏は、今でこそ信じる信じないと言っているが、小保方氏から渡された細胞集団は極めて均一な細胞集団で、これをマイクロナイフで刻んで注入したと聞いている。」
 
これは、笹井氏と同じ知見に立っての発言でしょう。
丹羽氏は、更に、1219日の会見で、
ES細胞を混ぜたら、形態変化することなく、4~5回の継代後に全壊した」
 「(検証実験では)プロトコルエクスチェンジの作成の際に、小保方氏の実験で見たときと同じ形状の細胞ができてきた(細胞死滅のときとは異なる多能性マーカーは発光したが、キメラにならなかったので多能性が確認できなかったので、結局それが何者なのかわからないが)」
 
 要は、大きさや形状自体が全く違うということです。
 桂委員長ら調査委員会は、この基本的な知見を持っていないのではないでしょうか。それは、次の報告書の記述と同趣旨の委員長の発言から伺われます。
 
「論文の共著者は論文原稿の最終版を全部読んで内容を承認する責任があるが、共著者全員がこの責任を果たしたのだろうか。STAP 幹細胞が急に効率良くできるようになった時に、若山氏は、それまで STAP 細胞塊をバラバラにしていたのを、引きちぎって注入するように変更したためと説明した。しかし、ここで再び細胞をバラバラにして注入する対照実験をしていれば、ES 細胞の混入を発見できた可能性がある。P30
 
 暗黙の前提として、ES細胞もSTAP細胞も同じような大きさ、形状のものだと理解しているのは明らかでしょう。バラバラにした一個のSTAP細胞の大きさは、半年にわたって失敗してさんざん見ているでしょうから、それとES細胞1個の形状とはまるで違うことはわかるでしょう。小保方氏が、ES細胞の塊を渡したと思い込んでいるようですが、そうしたら、巨大な塊になるはずでしょうから、一発で峻別できるはずです。
 なお、若山氏のこの実験成功したときの状況は、若山氏への当時のインタビューにビビッドに書かれています。
 
 そして、コメント欄でJISAIさんからご教示のあった遠藤氏の、次の説明からしても、ES細胞が混入したらすぐわかるはずでしょう(遠藤氏は、シャーレの丸ごとすり替え論のようですが)。
 
「混入ではなくすり替えでシャーレごと交換している場合増殖の制御は不可能ではありません・・・しかしES細胞は通常シャーレに接着し浮遊細胞塊とはなりませんのでやはり見た目で区別がつきます。
                                                 続く