理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

1 桂STAP調査委員会報告書への疑問―ES細胞混入があり得ない材料と、マウスの手交・交配ミスの可能性の無視

 
 STAP論文に関する桂不正調査委員会の報告書が提出され、次のように結論されました。
STAP細胞はなかったというのは、科学的検証からほぼ確実」
STAP細胞の証拠となる細胞は、すべてES細胞の混入で説明できることが科学的証拠で明らかになった」
 
これまで様々な指摘がなされていましたが、再現実験・検証実験や、遠藤氏の登録遺伝子データの解析によるものではなく、残存試料の分析によるものということで、その結果は注目されていました。そして、これまで、STAP細胞があることを前提としなければ説明できないという事象その他の科学的論点についても、科学的に合理的な解説がなされるものと考えていました。
 
しかし、そういう期待に反し、STAP細胞の有無に関わる科学的論点は、ほぼことごとくスルーされていたように感じましたし、「小保方氏による作製実験段階でのES細胞自体の混入」という先入観に立った推論をしてしまっていないだろうか・・・と思いました。
もっと言うと、大きな「見立て違い」をしてしまっていないのだろうか?というのが、文系の門外漢ながら、説明を聞いての率直な感想です。今回の調査委の調査とそれ以前に出ている一連の材料を踏まえれば、
 
「小保方氏に手交されたマウスが間違っていた(汚染されていた)」
 
と推論するのが、自然なのではないかと思いました。
そう思ったのは、若山氏自らが小保方氏から指導を受けて作製に成功した際には、「マウスから一から作製した」と明らかにされたこと、その若山氏が作ったSTAP幹細胞の残存試料の解析でも同じ結果だったこと、残存の「11 種類の幹細胞株の特徴は、2003年に若山研が大阪大学岡部研より導入したAcr-GFP/CAG-GFP マウスの特徴と完全に一致する」(報告書P4ー5)との結果が出たこと、それらのES細胞のもととなるマウスや樹立したマウスが若山研にいたこと、等の「事実」をつなぎ合わせれば、若山氏側から渡されたマウス自体が、今回分析された特徴を持つES細胞によって汚染されていた(ES細胞によって樹立されたものだった)と考えたほうが筋道が通っていないだろうか?との理由によるものです。


若山氏自身が作製した際には、当然、小保方氏に「渡したはずのマウス」と同じタイプのマウスから作製したはずなのですから、その若山氏作製の残存試料の分析結果が若山氏の想定と違っていた、それも、使っていないはずの岡部研からの導入マウスの特徴と完全に一致する、というのであれば、若山氏による「若山研にはいたマウスからは絶対にできない」との主張は完全に覆されたことになって、やはり「手交ミス」「マウス汚染」だったことを疑うのが自然のはずではないのでしょうか・・・?
そして、おそらくその点も念頭においたと思われる「今回のような特徴を持つES細胞から作ったキメラマウスからSTAP細胞を作ったらどうなるか?」と質問した記者がいましたが、桂委員長、伊藤武彦教授ともに、質問の趣旨が理解できず戸惑っていたものの、「(今回の分析結果と同じことになることは)ありうる」と答えています。


そもそも論として、
 
①「ES細胞をFI幹細胞培養条件下で混ぜたら、特段の形態変化なく、4~5回の継代後に全滅した」「2月に観察したSTAP細胞の形態と今回できた細胞の形態は同じだった」との丹羽氏の1219日の会見時の説明
②笹井氏、若山氏らによる一連のSTAP細胞の存在(=ES細胞ではあり得ないこと)を推定させる諸材料
 ・「ES細胞と比べてもさらに小さな、核も小さく細胞質もほとんどない、特殊な細胞   である。また遺伝子発現のパターンの詳細解析もSTAP細胞はES細胞や他の幹  細胞とは一致しない」(笹井氏)
ES細胞は非常に増殖能が高く、分散培養すなわちばらばらにして一個一個の細胞から培養することが可能だが、STAP細胞は増殖力が低く、分散してしまうと死んで増えない。もしもそういったものを混ぜていればES細胞のような増え方をするはず」(笹井氏)
「・・・その条件下ではES細胞より簡易に作成できました。さらにmRNA発現の仕方からSTAP幹細胞がES細胞のコンタミでは無いでしょう。」(若山氏)
笹井芳樹副センター長らは、目の前で弱酸性溶液に浸された細胞が、時間がたってから光り始めることを確認している(「動画」に記録されている)。ES細胞だったら最初から光っているはずだ(ES細胞は最初から多能性を持っている)。光り始めるまで時間がかかったということは、弱酸性の溶液に浸したために多能性を獲得した、と考えるのが理にかなっている。」(竹内薫氏)
 
といった諸点を考え合わせると、「小保方氏の実験段階でのES細胞混入」では説明できず、むしろ、「小保方氏へのマウスの手交ミス」「元々のマウス汚染」で説明するほうが合理的、と考えるのは無理があるでしょうか? その説の延長には、「やはりSTAP細胞はあったが、非常に制約のあった実験環境によって、再現には失敗した」という想定がありますが・・・。
 

以下順次、会見を見ての疑問点を書いていきます。私の勘違いならご放念ください。
 
疑問1 なぜ、笹井、丹羽氏らの「ES細胞では説明がつかない」との指摘を無視して結論が出せるのか?
 
 質疑応答の冒頭で、日経BPの記者が、「笹井、丹羽氏は、ES細混入ではないかと疑われたので、そうではないという点は注意深く観察した、と言っているが、この点はどうか?」と質問したのに対して、
 
「両氏がどうしてそう考えたかは、わからない。我々は、論文がどうなのかを調べているので、その点は、調査対象外だと考えた。」
 
としてスルーしていました。この質問の前になされた「胎盤の残存資料の分析結果についての見解」の質問に対する回答とともに、絶句しました。STAP否定派であっても、「それはないだろう・・・」と感じた人も少なくないのではないでしょうか。
この回答は明らかに委員長の説明と矛盾しています。まず、笹井氏らが指摘した点は、上記にある通り、すべて論文に記載されている画像から読み取れる点です。細胞の大きさ、形状、光り始めるまでの時間等、論文そのものの内容です。それらの点をとの関係を整理分析しないのはどう考えておかしな話です。
 
また、最初に桂委員長は、調査の趣旨について、冒頭の説明で次のように説明しています。
 
「最初の調査委員会の後、主に理研内部でいろいろな科学的調査が行われて、データが溜まってきました。・・・報告としては、主に科学的調査が主体だが、論文についても調査した、論文の製作過程についても調査した。科学的調査としては、理研の各所の人が、自浄作用だと思うが、いろいろデータを出してきたので、それを第三者の目でどうかということをやった。」
 
 この説明と、先ほどの笹井氏、丹羽氏らの指摘に関する回答は、明白に矛盾していることは誰にでも理解できることでしょう。この調査委の調査は、科学的調査が主であり、論文について「も」調査したということで、それが主ではないということです。そして、さまざまなデータを理研内部の研究者がデータを出してきてものを評価したと言っているわけですから、当然、科学的真実の追求のためには、笹井氏、丹羽氏の指摘、若山氏のかつての実験観察について発言の内容との整合性についても分析し、合理的に説明をつけなければならないはずです。ところが、日経BP記者の質問に対しては、「論文がどうなるのかを調べているので、調査対象外だ」と、急に冒頭の説明と矛盾することを述べて、逃げてしまいました。これでは、自らが標榜した「科学的調査が主である」とのスタンスが崩れてしまうではありませんか。
 
 若山氏へのヒアリング結果に関しては、後ほど触れますが、上記のように2月の雑誌インタビューで「ES細胞より簡単にできたし、mRNA発現の仕方からESとは異なる」と述べていた点を裏付けるデータはあるはずで、それは実験ノート等の資料があるはずですが、その点を調査しなかったのでしょうか?
 そして、丹羽氏がつい数日前の1219日の再現・検証実験結果についての会見時に述べた「ES細胞をFI幹細胞培養条件下で混ぜたら、特段の形態変化なく、4~5回の継代後に全滅した」との指摘との関係でどう整合性のある説明ができるのか? という点は大きな注目点だったはずです。あの19日の会見からいくらも経っていないのに、調査委員会が最終報告を発表するというので、ちょっとタイミング的に早過ぎないか?と思いましたが、丹羽氏の指摘は無視するということだったとは唖然とするばかりです。


 丹羽氏は、4月の会見でも、
ESTSとは混ざって一塊の細胞塊にならない」
 として、混合疑惑に対して早期の時点で材料を提供し、今回の19日の会見でも、
ES細胞を混ぜたら、形態変化することなく、4~5回の継代後に全壊した」
というように、いずれも、「自分でもちょっと気になって」として、付随的実験をした結果を紹介しています。それについては、丹羽氏自らが積極的にデータを調査委に検証材料の一つとして提出するという雰囲気ではありませんが、公の記者会見で述べているわけですから、「理研の各所の人が、自浄作用だと思うが、いろいろデータを出してきたので、それを第三者の目でどうかということをやった。」というのと同列に、検証材料として取り上げるべきでしょう。それらの点は、STAP細胞に関心のある関係者すべてが注目していた点ですから、なおさらです。

 
疑問2 胎盤の確認をなぜ残存資料(マウス+切片)からしなかったのか?
 
 ES細胞かどうかの判断材料として、残存しているキメラマウスの胎盤の有無が注目されていました。だからこそ、質疑応答の一番冒頭の質問が、それだったわけです(日経BPの記者による)。 ところが、委員長の説明は、極めて曖昧でした。
 
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Q 胎盤がなぜあるのか?という疑問についてはどう考えるのか?
A これに関しては、我々は疑っている。あの光る胎盤は、血液とか胎盤以外ものだった可能性があるということは、専門家に見てもらったところ、そのような回答を得ている。これは切片を切ったらそうでなかったというのがあるが、それがどうだったかは最終的に検証できなかった。しかし、胎盤であるとの証明があるとは思っていない。胎盤でないというところまで突き詰めて証明することは難しかったが・・・、胎盤であったとの証明があったとは思っていない。
Q つまり、GFPで光っている胎盤が確認できていないのか?
A 我々の調査委では確認できなかった。
Q はぁ・・・、胎盤の形状を保持しているものは確認していないのか?
A 光っているものが、図によっては胎盤なのか別の組織なのか、専門家は、疑わしいと言っている人がいる。疑わしいという言い方だが・・・。
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 意味不明の回答だと感じます。この点が一般には最も注目されていて、残存資料を分析すればわかる話だということで、確認結果について、どういう説明がなされるのか大きな関心を持って皆が待っていたわけです。
 
 ところが、桂委員長の答えは、疑問だらけです。
①残存している現物を実地に確認したのかどうか自体が曖昧。「調査委では 確認できなかった」というのはどういうことか? なぜ確認できなかった のか? 専門家ではないからか? 何か物理的制約があったのか? シー ケンサー?にかければすぐわかるというのが、もっぱらの指摘だったはず ではなかったか?
専門家に見てもらったところ、「図によっては、疑わしいと言っている人がいる」というが、「図によっては」ということは現物を見せていないということか? 「~人がいる」というのはどういう意味か? 数人に見せて、その一部が言っているだけなのか?
切片を切ったらそうでなかったというのがあるが、」とはどういう意味か? 丹羽氏は、切片によって、間違いなく胎盤だと確認したと4月の会見時に言っているが、それとはどういう関係になるのか? 切片は専門家にみせたのか?
胎盤であるとの証明があるとは思っていない」というが、何を以て証明があったと判断されるのか? 証明のための基準、方法が示されなければ、ある、ないといっても仕方がない。
 
 この点の調査委の調査は明らかに杜撰です。丹羽氏の指摘は調査対象外と桂委員長は述べましたが、ご冗談でしょう。
 丹羽氏は、4月の会見時に、次のように答えています。最も関心のある部分だとして、自分の目で慎重に確認したと答えています(11:25~)
 
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Q 胎盤に分化していることを確認しているのか? 血管が光っているのではなく、細胞が光っていることを。
A 自分自身もその点は、実験に参画した上で最も強いモチベーションだったので、・・・GFPの自家蛍光の問題は、免疫染色等で確認すべきだとのご意見があったが、まさにそのような手段を用いて、かつ 胎盤実質細胞で発現するマーカーともキョーセンショクを以って、確かにSTAP細胞由来と思われるGFP陽性細胞が胎盤組織にインテグレートしていることを、切片を顕微鏡で自分の目で確認している。
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 これだけ慎重に見極めをしているのですから、同じ切片を見せて、別の判断をする専門家がいるのであれば、なぜ判断に相違が生じるのかを、突き詰めて検討する必要があるはずです。図によって疑わしいと判断しているというのであれば、同じ図を丹羽氏にも見せて判断を求めることが順序からいって当然でしょう。
 「疑わしいと言っているという人がいる」という言い方もひっかかりますが、そういっているのであれば、その理由をきちんと提示させることが、科学的調査であるはずです。
 
 以上のような疑問を持って報告書で関連記述部分はないかと探したら、ありました。ありましたが、実にあっさりと、「専門家の意見によれば、胎盤ではなく卵黄嚢の可能性が高い」と書かれているのみです(p21)。この認定の書きぶりと上記の委員長の説明ぶりにはかなりのニュアンスの差があります。「疑わしいといった人もいる」という委員長の説明が、報告書では「可能性が高い」というところまで断言してしまっています。
 
4)Letter Extended DataFig.1a について
 2N キメラの写真ではなく、Article Extended Data Fig.7d と同じ 4N キメラ胎児胚の写真の疑いがある点(論文撤回理由 2)(これについては、2014 5 10 日に著者から報告、5 21 日に報道されている)
この写真で胚の一部を胎盤と誤同定している可能性がある点
(調査結果)
4N キメラ胚であることは、マウス胚撮影に用いた PC に残存する写真(2011 11 28日撮影)と若山氏の実験ノートから確認できた。論文の図の説明には 2 つの矢印があって、胎盤と卵黄嚢とされているが、専門家の意見によれば 2 つとも卵黄嚢である可能性が高い。
(評価)
2N キメラか 4N キメラかは、論文の重要な論点とは考えられず、過失による可能性が高いと判断した。STAP 細胞の胎盤への寄与は、Letterの論点として重要であり、研究の価値を高めるために強引に胎盤と断定した可能性があるが、調査により得られた証拠に基づき認定する限り、研究不正とは認められない。(以下略)」
 
この報告書の記述で明らかになったことは、意見をもらった専門家には論文の図しか見せていないということです(!?)。そんな杜撰な調査など、あり得るのでしょうか?? ここに書かれている通り、「STAP 細胞の胎盤への寄与は、Letterの論点として重要」であり、当然、誰もがホルマリン漬けのキメラマウスで確認するに違いないと考えていたはずです。ところが、これでは、切片さえも見せていないということではないでしょうか? 丹羽氏は、切片によって慎重に確認したと言いました。しかし、科学者やマスコミその他は、「切片を作ったのは小保方氏だから」と言って、その捏造を強く疑っていました。ですから、当然、調査委とすれば、切片はもちろん、残存キメラまで含めて改めて検証しなければ、調査の体をなしません。ところが、報告書及び委員長の説明から、論文掲載の図を「専門家」に見せただけだということがわかりました。キメラの現物チェックもできない、切片の再検証さえもしない、というのであれば、その然るべき理由を説明する必要があります。報告書は、「研究の価値を高めるために強引に胎盤と断定した可能性がある」としていますが、論文の図を見せただけで「誤同定」だと断定してしまうとは、それこそ、「ES細胞混入説の邪魔にならないように、強引に卵黄嚢の誤同定だと断定した可能性がある」ということではないでしょうか?
                                      続く