理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

小保方氏には十分静養の上、再起を期していただきたい―STAP現象を巡っては未解明部分が多々ある

  
 小保方氏のSTAP細胞の再現実験が不調に終わり、理研による検証実験も同時に打ち切りとなった旨の記者会見が1219日午前中に開かれました。

   https://www.youtube.com/watch?v=NMH3Sxl_Gs4(フル録画) 
   http://logmi.jp/31861 (ログミーによる質疑応答の全文書き起こしのPART1
 
大変残念な結果でした。小保方氏は、理研に自主退職願いを出し、これが認められました。朝日新聞記者が、自主退職を認めたのは非常識だと非難していましたが、小保方氏は、もともと任期付き研究員=契約職員ですから、退職金は初めから予定されていません。通常、不祥事を起こした社員の退職願を認めないのは、不祥事が懲戒免職に値しそうな場合には、退職金の支払いの可否に影響することがもっとも大きな要素です。退職金に関わらない場合でも、政党等で離党届を認めず、除名処分にするなどの例もありますが、除名という「極刑」に値するような場合でしょう。
 小保方氏の場合、第二論文を中心とした不正調査委員会がまだ調査中で結論が出るまでには時間がかかりますし、何より、小保方氏の心身の疲弊はずっと続いており、更に実験不成功による精神的打撃については、誰しも想像してあまりありますから、心身状態を更に悪化させるような状況に置くのは望ましくないという「労務管理」的判断も働いたのでしょう。そのような判断をした理研当局の判断は、賢明だったと思います。


 笹井氏が亡くなったとき、早く解放してあげるべきだったとか、しばらく米国にでも行って環境を変えればよかったのに、といった声が、後付けで多数出ていました。小保方氏への対応が、笹井氏への対応の轍を踏むようなことがあってはならない、ということが、現時点で、最も優先すべきことですから、三木弁護士が述べている通り、心身を休ませることが何より必要なことです。
 理研は、小保方氏が退職したとしても、不正調査委員会の結果を踏まえて懲戒委員会を再開し、「○○処分相当」という判断と公表はするとしています。小保方氏は、文科省ガイドラインの中でも、不正調査の中の鍵として位置づけられている再現実験が不調に終わったということからすれば、ルールとしては、論文は間違いだったということにならざるを得ませんから、それを前提として判断を受け入れざるを得ないでしょう。ただし、今回の再現実験不調を以て、即、「不正あり」ということになるわけではないということは、誤解混同されるべきではなく、あくまで一連の残存試料や関係者のヒアリング等から不正があったと認定される場合に初めて、懲戒処分になるということです。現時点では、不正だったのか、誤認だったのか、細胞は存在するが再現できなかっただけなのか、等がすぐに確定できるわけではありません。
また、自主退職したことにより、今回の一連の件に対する処分(処分相当の判断)が仮にあったとしても、それについて法的に訴訟で争う機会を放棄した形になります。そういった諸々の構図、諸状況を勘案すれば、小保方氏への理研の対応は、非難されるべき話ではないと思います。バランスのとれた判断だと言えるでしょう。
 朝日新聞記者は、随分とエキセントリックに、「自主退職を認めた理研は非常識だ!」と叫んでいましたが、人権重視のはずの朝日新聞として、笹井氏の悲劇を繰り返してはいけないという視点は、どこかに飛んでしまっているのでしょうか・・・?


●今回の一連のSTAP細胞をめぐる事態の真相解明のために、小保方氏の協力が必要な局面もあるでしょうし、説明責任の問題もあるでしょうが、それは、笹井氏逝去の衝撃も冷めやらぬままに再現実験に当初予定通り取り組むことを余儀なくされ、それが不調に終わって心身ともに疲労困憊している中で、すぐに続けて聴取をしなければならないというような一刻を争うものではありません。心身の不調が定着してしまうような事態は絶対に回避する必要があります。不正調査委員会による一連の調査によって、残っている資料、マウス等の解析によって、「STAP細胞」の実態分析、遺伝子やマウス系統等の検証などの、実験経過についての調査結果が出されてからまた考えればいい話です。
 
 もちろん、小保方氏の処遇は別としても、「真相解明」については、今後も続けられるべきでしょう。再現実験には不調に終わったとしても、科学的な論点は依然として残っています。そのためにはまず、論文を書く上で実際に行われた実験過程について、残っている標本マウス、細胞等の分析結果が報告される必要があります。それらのデータについては、今回の記者会見でも、不正調査委員会によって検証されていると述べられていましたので、その結果を早く知りたいところです。
 世の中は、「ES細胞混入の可能性が濃厚」として整理をしようとしていますが、それでは説明がつかない事象は多々ありますし、遠藤氏の遺伝子解析結果は、登録された遺伝子データに基づくものですから、実際の細胞がどうだったのかということは、重要な判断材料です。
 
 今回の会見では、丹羽氏は、従来の見解からは、かなりSTAP細胞否定に近いニュアンスで発言していました。趣旨をまとめると、


 ・自分が参加した時点での前後にあったとされた現象が正しいとの前提に立った上での判断だったので、その現象が揺らいだ以上、解釈は変えざるを得ない。
 ・自分が顕微鏡で見た形態的現象は、当時見たものと同じだった。
 
 ただし、胎盤の緑色発光については、調査委の分析結果を待って判断することだとしています。丹羽氏の今回の発言は、「プロトコルを書くために、小保方氏の横で3回程度自身の目で見た」という以前の発言に対応するものでしょう。ただ、丹羽氏は以前の会見で、それ以外にも、


 ・ES細胞とTS細胞とは、自分自身で混合してみたが、くっつくそばからすぐ離れてしまい細胞塊にならない。
 ・若山氏が注入した細胞は、極めて均一な細胞集団だった。


 旨を述べており、遠藤氏が主張したようなES細胞・TS細胞混合説では説明がつかない点を指摘しています。この点は、笹井氏も4月の会見時に「STAP現象を前提としなければ説明が付かない」点の一つとして挙げています。これについては、依然としてミステリーでしょう。
 
 また、若山氏が2月時点で、まだ小保方氏擁護の時期に述べた一連のインタビューでの発言で指摘した点もまた、ES細胞説を否定するものですし、何より、若山氏自身が「小保方氏から教えてもらって、一からSTAP細胞製作に成功した」と述べているのですから、それらの点は、今の時点でどう説明されるのか? ということは疑問として残されたままです。
 これらの疑問点は、以前のブログ記事に書きました。
 
 
 STAP細胞否定派の学者たちは、「まずはSTAP細胞があると主張する者がその存在を証明しなければならない。証明がなされていない以上、それについて検討しても時間とエネルギーの無駄である」という建前論に終始し、ES細胞混入説、ES細胞・TS細胞混合説の矛盾について何も説明も解説もしてくれません。専門の学者だったら、その矛盾を解く合理的説明可能性を、すらすらと挙げてくれてもいいと思うのですが、思考停止、発信停止状態です。
 
 他にもたとえば、次のような疑問を、STAP否定派の学者自ら吐露しています。
 
「個人的に99.9%、STAP細胞の正体はES細胞(にTS細胞をまぜたもの)だと納得した。だが、それでも疑問は残る。たとえば、笹井芳樹副センター長らは、目の前で弱酸性溶液に浸された細胞が、時間がたってから光り始めることを確認している(「動画」に記録されている)。多能性があると光る仕掛けなのだから、ES細胞だったら最初から光っているはずだ(ES細胞は最初から多能性を持っている)。光り始めるまで時間がかかったということは、弱酸性の溶液に浸したために多能性を獲得した、と考えるのが理にかなっている。うーん、時間を遅らせるトリックでもあるのか・・・。」
 
 これは、竹内薫氏が、7月時点で週刊誌のコラムに書いた文章です(週刊文春201473日号「サイエンス宅配便」第254回「小保方さん「マウスの闇」」)。
 この点は、どう説明できるのでしょうか? 笹井氏の以下の発言とも併せて、明快な説明がないと、STAP細胞はないと断定はできないのではないのでしょうか?
 
◎笹井氏会見時発言
「二つ目は特徴のある細胞性質です。STAP細胞は非常に小さな細胞でありまして、リンパ球、幼弱なリンパ球やES細胞などは一般に小さな細胞と考えられますが、そのさらに半分程度の直径の小さな特殊な細胞です。これは電子顕微鏡写真を左にもつけておりますが、ES細胞と比べてもさらに小さな、核も小さく細胞質もほとんどない、特殊な細胞であることがわかります。また遺伝子発現のパターンの詳細解析、これの場合もSTAP細胞はES細胞や他の幹細胞とは一致しないパターンを示します。共通の部分もありますが、共通でない部分も統計的に明らかに出ておりまして、そうしたものを考えますと、ES細胞やほかの細胞の混入で説明ができないパターンとなっています。
 三つ目には、ES細胞は非常に増殖能が高く、分散培養すなわちばらばらにして一個一個の細胞から培養することが可能でありますが、STAP細胞は増殖力が低く、分散してしまいますと死んで増えません。ですから、もしもそういったものを混ぜていればES細胞のような増え方をするはずでございます。」http://gohoo.org/column/140413/
 
 今回の記者会見で、理研側が


STAP現象の確認に至らなかった」
STAP細胞が存在するかどうかは、科学者としてお答えすることが出来ません。お答えすることが出来るのは、それを再現することが出来なかった、ということだけ。」
「再現することが出来なかった、このなかに可能性を見出すか見出さないかは、それぞれの研究者の判断に委ねるところで。」


といった慎重な物言いに終始したのも、こういった諸々のことも含めて、未解明であることが多々あるからではないかと想像しています。
 
●会見での相澤顧問の説明の中で、どう理解したらいいのか分からない点が一点ありました。次の発言です。
 
理研チームは、論文で使われた脾臓の細胞のほかにも、肝臓や心臓の細胞も用いて「STAP現象」があるかどうか調べた。その結果、論文で書かれた手法では、光った細胞はごく少数あったが、どの細胞も万能性は確認できなかった。
 一方、肝臓の細胞に、論文とは別の酸を使って刺激すると、光る細胞の塊が効率よくできた。よく調べたところ、なかには万能性を示す目安となる遺伝子が働いているものが見つかった。しかし、遺伝子の働き方はES細胞の10分の1に過ぎなかった。これらを用いて、第3段階の「特殊なマウス」の作製を試みたが、1匹もできなかった。」(読売新聞20141220日付け)
       発表資料のP3末尾以降の「(3)丹羽副チームリーダーによる検証結果」。
 
 しばしば、緑色発光は、死滅する細胞が光ったものを誤認したのだろうと言われ、今回の会見でもそういうものが含まれているのではないかと示唆する説明はありました。しかし、上記の説明だと、肝臓細胞の場合であれば、死滅細胞の発光とは明らかに異なる発光現象が生じ、それが万能性を示したということですが、それはどういうメカニズム、性格の発光現象なのでしょうか? 当然、有意な割合で発光し、万能性を示したということでしょうが、既存の研究で説明できる発光現象なのかどうか、よくわかりません。
 論文にはない肝臓細胞の場合ではあっても、酸に浸すことによって、死滅細胞の発光とは明らかに異なる万能性を示す発光現象が確認されたということは、キメラマウス作製には至らなかったとはいえ、もう少し突き詰めて実験を繰り返していけば、STAP細胞の再現につながる余地があるのではないのか?と考えるのは、素人の浅はかさなのでしょうか。
 
●もっと時間があり、環境も落ち着いたものになれば、STAP細胞は再現できるのではないかと感じる理由として、若山氏の別途のインタビューでの発言があります。
 年末ということで雑誌の整理をしていて、文藝春秋の今年の4月号に、若山氏のインタビューが載っていました。8ページの記事ですが、以前のCell誌や朝日新聞などのインタビューと重なる発言もありましたが、よりビビッドで詳細に、この実験の難しさ、分子生物学分野での一般的な再現の困難さを説明しています。文藝春秋4月号は310日頃に発売ですので、おそらくこのインタビューは、Cell誌などと同様、2月下旬時点でのものでしょう。小保方氏を擁護していた段階でのものです。
 このブログ記事の最後に掲載しておきますので、一度全文を読んでみて下さい。興味深いことが述べられています。以下は、実験の簡単そうで簡単ではないことを述べた箇所です。

・レシピは単純でも、匙加減が難しい。
・マイクロマニュピュレーターの手足を使う操作は難しい。
・細胞の濃度を揃えたり、洗浄を何回やらなければならないというコツがある。
・実験室が変われば成功率も変わってくる。
・水でさえどの会社の水かで違ってくる。試薬も最適なものを使わないと再現できない。
・自分が成功し、自分が世界で一番テクニックを持っているはずでも、半年間うまくいかなかった。
 
そして、さらっと、自ら作製に成功していることを紹介しています。
 
「反省点があるとすれば、僕たちが「(STAP細胞の)作り方は簡単。紅茶程度の弱酸性の液体に浸すだけ」と強調しすぎたことでしょう。
iPS細胞は作製できるまでに数週間を要しますが、STAP細胞は弱酸性の液体に二十五分浸したあと、一週間培養するだけ。一見、簡単なように見えますが、実際に再現は簡単ではなかつた。現時点で、世界中のどの研究者も実験結果を再現できていません。レシピは単純なのに、火加減、塩加減の難しい料理のようなものです。
作製法の簡便さでは、STAP細胞はiPS細胞に完全に負けていると思います。マイクロマニピュレーターも同じですが、手のさじ加減が大事。iPS細胞は、皮膚とか血液などの体細胞に遺伝子を入れて作りますが、遺伝子を入れるだけなら、素人がその日はじめて教わってもできる。一方、マイクロマニピュレーターで行う体外受精や核移植などは、覚えるのに数カ月かかります。
STAP細胞は、体細胞を弱酸性の液体に浸して作るので、小学生でもできそうですが、細胞の濃度を揃えるといったことや、洗浄は何回しなければならないといったコツがあります。遺伝子を入れるか入れないかは作業としてはっきりしていますが、コツが含まれる作業というのは、際限なく難しい場合がある。僕も理研から山梨大に引っ越す直前、STAP細胞の作り方を教わってやってみたら成功しましたが、山梨大に移ってからは、まだ成功していません。
コツの習得以外に、どの実験室でやるかによって成功率も変わってきます。昔、ハワイ大学からロックフェラー大学に移ったときも、ハワイ大学で何度も成功していた体細胞クローンマウスの作製に半年間、成功できなかった。自分自身が開発して世界でいちばんのテクニックを持っているにもかかわらず、うまくいかないことがある。
水ひとつとっても、どの会社の水でなければならないとか、すべての試薬について最適なものを使わないと、再現できない場合があるんです。」
 
 こういった話を聞けば、今回の小保方氏のような状況下では、論文実験を行っていた当時とは勝手が大きく違って、思うようにいかなかったという面が多分にあるのではないか、と思えてきます。小保方氏のコメントにおける
 
「予想をはるかに超えた制約の中での作業となり、細かな条件を検討できなかった事などが悔やまれますが・・・、」
「このような結果に留まってしまったことに大変困惑しております。」
 
 というのは、そういう状況を示唆しているでしょうし、相澤顧問が「制約」として種々言及したような要素がなければ、また違ってきたかもしれない・・・と思いたくなります。
最後に相澤氏が番外で述べた点は、小保方氏を、第2論文不正調査委員会発足前から、若山氏、遠藤氏の主張を鵜呑みにして、最初から重大不正をしたと決めつけ、犯罪人扱いして監視カメラによる実験を提言した理研改革委に対する痛烈な批判でしょう。
 
「小保方研究員にカメラや立会人を置いて検証実験をするというのは科学のやり方ではない。犯罪者扱いのようにやることは科学としてあってはならないことだ。責任者として深くおわびを申し上げるとともに、責任を感じております」
 
【補足】「予想をはるかに超えた制約」に関して、相澤氏が少し述べていましたが、スポーツ紙には次のように書いてありました。相澤氏の言う「犯罪人扱い」そのものでしょう。
「小保方氏の隣には立会人が張り付き、モニター2台で常時監視。モノの出し入れも記録され、生成した細胞塊の解析は別の研究員が行うことが義務付けられた。(中略)

「出社した小保方さんはいつも孤独で、机の上の整理ばかりしていた。人と談笑するところは見たことがない。彼女のせいで神戸の事業所は規模が縮小され、職を失った人もいる。彼女を露骨に無視する人もいましたね」とは、内部関係者の話だ。」

東京スポーツ1221日付 http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/347654/2/



 もちろん、ルールはルールなので、小保方氏も同意した形での再現実験の不調により、「論文は間違っていた」(不正によるものかどうかは別問題)ということが一応は確定するわけですが、今後の調査次第で、STAP細胞の有無に関連してどういう判断材料が出てくるかわかりません。
 「やはりES細胞だった」「ES細胞とTS細胞の混合だった」という結果は、現在の諸材料から見る限りでは考えにくいですし、若山研から提供されたマウス系統と一致する細胞の遺伝子分析結果も、一部ではあるわけですし、スパッと合理的説明ができるような材料がきれいに揃うとは想像しにくいところです。むしろ、混迷が深まる可能性もあるでしょう。

【補足】下記コメント欄のJISAI氏の次の指摘をご参照ください。

「今回の検証では、丹羽氏がES混入疑惑への検証も行っていたことが(日経サイエンス古田との質疑応答の中で)報告されていて、FI幹細胞の培養条件下でESを混入させても4,5回の継代後にはボロボロに崩壊し全滅したとする実験結果が得られています。
 これは、メディアでは全然報じられてませんが、FI幹細胞の培養条件下で幹細胞が樹立できキメラマウスの胎仔と胎盤に寄与できたとされる"STAP細胞"は、ESでは有り得ないことが判明したということです。遠藤論文で指摘されたFI幹細胞でのES細胞90%+TS細胞10%コンタミ説は有り得ないことが確実になりました。
FI幹細胞樹立からキメラマウス作製はすべて若山氏の実験範囲ですので、ES様細胞90%の実態がESでなければ何だったのか若山氏が検証すべきでしょう。(古田は胚葉体ではどうなるかと食い下がっていましたが)
 
  ということであれば、ES混入説、遠藤氏のES細胞90%+TS細胞10%コンタミ説は成り立たなくなり、実際混迷の度を深めつつあるということになります。これで、残存試料がES細胞ではないことが明らかになれば、一体どういう展開になるのでしょうか?? それこそ科学界、とりわけ分子生物学会の出番になってきます。
 
●今回の再現実験不調と検証実験打ち切りを以て、理研当局としては、「STAP細胞は確認できなかった」とし、特許出願も放棄する方向で協議するとのことです。
 小保方氏は、コメントを見ると、三木弁護士が述べたように、STAP細胞はあると考えているでしょうから、改めて一研究者として、実現に取り組んでほしいものです。巨額の研究費が必要なわけではありませんので、どこかからオファーがあって、研究環境が用意されることになるような気がします。
 特許は、理研が放棄するのであれば、バカンティ教授ら、米国の大学グループだけのものになります。彼らがすんなり放棄することはないでしょう。東京女子医大理研とが放棄した分を小保方氏に与えて、共同で引き続き取り組むことになるのではないでしょうか。再現可能性の裏付けのない出願で拒絶されるというリスクはあるでしょうが、本格審査に入るまではまだまだ時間はあります。その間に成功させれば、特許取得は可能です。
 そういう特許取得の可能性を権利として有しているバカンティ、小保方氏らには大きな強みがありますから、投資ファンドなどで、中リスク・ハイリターン的な投資として研究資金、研究環境を用意するところは出てくることでしょう。それが中国等であっては困りますが、欧米、できれば日本の然るべきところが支援する形になってほしいところです。
日本の会社、投資グループだと、こういう結果になった研究に対して資金拠出をすると、株主、投資家から背任で訴えられるリスクがありますから、難しいかもしれませんが、個人オーナー等の企業や投資家であれば可能性はありえます。

STAP細胞をめぐる一連のことが、ここまで大きな騒ぎになってしまった要因として、小保方氏のミスと理研広報の過剰演出、文科省の特別研究法人の早期指定の思惑による指導の混乱とそれを受けた理研の初動対応の誤りとが、もちろん大きな要因としてはあるにしても、その後の科学界、マスコミの対応の非科学的要素も多分に影響したと感じます。それは笹井氏が指摘した「STAP現象があると仮定しなければ説明がつかない」とされた諸現象に対して、ほとんど(というか全く)反論がなされなかったこと一つとってもわかります。遠藤氏が遺伝子解析によって、「ES細胞とTS細胞の混合されたものだ」と言えば、それは経験上考えにくいということを認識していながら、議論はもちろん指摘さえしようとしないというのは、どういう科学的センスなのでしょうか・・・。
改革委に至っては、
 
「この2月の頃には、共著者として小保方氏の研究不正及び論文の真正性を疑うべき事情が生じているにもかかわらず、笹井氏は、「STAP 現象はリアルフェノメノンである」「STAP現象は有力仮説である」との発言を繰り返し、一般国民、とくに再生医療への応用を期待したパーキンソン病などの難病患者に大きな期待を生ぜしめた。・・・・」
 
 という、およそ信じがたい断罪をし、笹井氏を追い込みました。科学者として仮説を立てる、それを支える科学的材料を提示することは、当たり前の行為であるはずなのに、それ自体を否定し指弾するなどということは、科学としての自殺行為です。CDB潰し自体が目的だったと思われても仕方ありません。こういう愚かな改革委によって文字通りの牽強付会で、論旨がダッチロールで次々と変遷していくような代物の提言書によって、理研CDBと逸材の笹井氏とが追い込まれ、極めて残念な結果に立ち至ったことは日本の科学界の悲劇であり、一種のスキャンダルでした。相澤顧問の会見最後の監視付き再現実験に関する批判発言も、改革委に対して腹に据えかねるものがあったことの反映でしょう。
小保方氏の再現実験が不調に終わったことで、再生研CDBが大幅な縮小に追い込まれ、ポスト等の面で不利な状況に陥った研究員の人々から恨み節がでているという報道もあります。STAP細胞の一件がなかりせば・・・という気持ちはよくわかりますが、しかし、それは理研改革委員会による理不尽な提言のためにであって、責める相手が違います。
既に詳細に述べた通り、理研改革委の提言にあるCDBの組織的欠陥なるものは、根拠のない話ばかりです。CDBのこれまでの多くの成果と貢献については一顧だにせず、特許との関わりなど無知ともいえる認識欠落により、俗耳に入りやすいレッテル貼りに終始し、どうやっても出てきようがない「解体」という提言を出したことが主たる要因です。
 小保方氏らに問題があったとしても、それを以て「CDB解体」ということは、全く関係ない研究者に連帯責任を負わせるに等しい話です。東大は、盗用論文による学位授与された偽学者採用問題から、2つの研究室における研究室ぐるみの文字通りの捏造、改竄が連続して生じたわけですが、東大の理系学部、研究室の解体などという話にはなりません。理研の初動対応のミスも、文科省の指導の混乱が原因であることを踏まえる必要があります。
 
 なお、蛇足ですが、改革委が指弾した竹市センター長(現・特別顧問)が、11月に、
AAASアメリカ科学振興協会)から2014AAAS フェローの称号が授与された由。
2014AAASフェローは各研究分野において、イノベーション、教育、及び科学におけるリーダーシップに貢献した会員へ贈られ、米国の研究者を中心に401名が選ばれました。米国外からは11名、日本では理研所属の上記2名のみが選出されています。」
とのことです。日本の逸材の一人であり、ノーベル賞候補の一人だと聞きました。
 そういう竹市氏ですが、改革委は、若山氏の山梨大転出後に、形式上は小保方氏の直属の上司になるというだけで、小保方氏の実験ノートのチェックをしなかったと言って指弾しました。きちんと、笹井氏と丹羽氏とをメンターとして指名して委ねたにも拘らずです。
 数ページにわたって、竹市氏らの批判をしていますが、今、冷静にみれば、言いがかりに等しい話であることは容易に理解されることでしょう。
 
 
●小保方氏には、ともかくまずは、心身を休めることが最優先で、物理的に静謐な環境に身を置くことが必須です。労務管理的視点からいえば、ストレス源から物理的に距離をおくというのが基本です。いったん、パニック障害になってしまっては取り返しがつきません。まずは十分に静養したのち、再起を期するということを期待したいと思います。
 
 今後の不正調査委員会による調査が、先入観を持つことなく、5WHの事実関係を明らかにし、科学的解明に資するような材料提供をしてくれることを期待したいと思います。そこからまた、いろいろな検討要素も出てくることでしょう。それを見て、また考えていきたいと思います。
 
 このあと、別記事で、若山氏の文藝春秋4月号のインタビュー記事を参考掲載しておきます。いかに微妙で難しいものであるかが伝わってきます。
 
【ご参考】本ブログ記事一覧